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「走る科学」(2)
コーチャー/桜井智野風(とものぶ)さん(東京農業大学准教授)
大村正樹&桜井智野風

大村正樹

キッズのみんな、こんばんは。サイエンステラーの大村正樹です。今週も東京浜松町にある秘密の科学研究所シークレットラボからお送りします「大村正樹のサイエンスキッズ」。さぁ、今回のテーマも長距離走、マラソンです。この時季は校内マラソン大会が多いですよね。ということで、いかにしてマラソン大会でいい成績を残せるのか? この後、サイコーの登場です。


大村正樹

今週のサイコーも、マラソン博士といっても過言ではありません東京農業大学准教授の桜井智野風先生です。こんばんは。

こんばんは。


大村正樹

桜井先生の専攻はスポーツ科学、スポーツ生理学で、秀和システムから『ランニングのかがく』という本も出版されてます。先週、うちの娘のマラソン大会前のアドバイスをいただきました。やっぱりこのシーズン、各地の学校でマラソンやってると思うんですよね。

はい。


大村正樹

例えば「じゃあ、朝早く走ろうか」というキッズもいれば、「夜、塾が終わってから走ろうか」「日が暮れてから走ろうか」というキッズもいるかと思います。では、トレーニング時間は朝と夜どちらがいいのですか?

時間ですね。朝というのはどうですか、みなさん起きてすぐ運動するという感覚は?


大村正樹

私はけっこう…、朝がんばっちゃうんですよ。

がんばっちゃう。


大村正樹

それで、日々の放送にのぞむという。

なるほど。実は、朝の運動って慣れている人はいいんです。でも、急に行うと体にはやっぱりよくないですね。


大村正樹

えぇ〜!?

というのは、寝てる状態から起きてる状態は、体が目覚めて動き始める状態ですね。一番変化が激しい時間です。


大村正樹

はい。

その時間に強い、強度の運動をバーンと入れると、体はよけい驚いてしまう。


大村正樹

あら、そうですか!

そういう驚きに耐えられるようなきちんとした習慣、いわゆるトレーニングを積んでいる人はいいのですが、例えば何もやってなかったとか、夏休みに入って急に走り始めるという時は、一番体によくない状態が起こり始めますね。


大村正樹

では、お母さんに「ほら、朝よ」と起こされて、「あっ、走んなくちゃ!」とパーッと走るのはよくない?

よくないと思います。


大村正樹

逆に夜はどうなんですか?

夜は体が逆に起きてますから一番いいんですが、そういうことから考えるとトレーニングは体が動きやすい時間、僕らでいうお昼間が一番いいです。


大村正樹

あぁ、昼はちょっと体育の授業ぐらいしかないので…。

アハハハ。


大村正樹

あと部活?

そうですねぇ。


大村正樹

じゃあ、部活は放課後だからちょうどいいんですね。

あの時間がいいんじゃないですかね。体の中のいわゆるホルモンだとか調節する機能が高まっている時間が一番いいといわれてるんです。


大村正樹

ええ。

ただし人間って難しいもので、いろんなリズムを持っていてバチンと重なる時間はないんですよ。


大村正樹

なるほど。

ですから、やはり自分が決めた時間にしっかりトレーニングするのがいいと思います。ただ夜遅くにトレーニングして睡眠時間が短いとかは一番よくないので、もし夜トレーニングするなら、しっかりとした睡眠をとっていただくほうが体にはやさしい。


大村正樹

はい。

特に夜トレーニング、筋肉のトレーニングをすると少しこわれるのですが、寝てる間に修復しますから、夜のトレーニングが体づくりにはいいかもしれない。


大村正樹

朝よりも夜のほうが望ましい。ただ、一番いいのは昼間。

そうですね。


大村正樹

なるほど。これだけ切り取って聴いて、夜「宿題しなさい!」といわれて、「夜はやらないほうがいいんだよ」というのは違うから(笑)。

あとはマラソン大会が近いとすると、マラソン大会の時間にトレーニングするのが一番いいです。


大村正樹

そうなんですか。走る時間に?

そうです。その時間に合わせて。


大村正樹

たいがい授業中ですからねぇ。

アッハハ。さぼって出るわけにいきませんものね。


大村正樹

あと、食べた後とかはお腹が痛くなるじゃないですか。

はい。


大村正樹

あれは食後どれぐらいに?

研究するといろんなデータが出てくるんですが、だいたい日本人の平均的には−外人は違うんですよ−1時間半から2時間ぐらい、食べた後にあけたほうがいいといわれてます。


大村正樹

なるほど。

というのは、食道を通って胃に入って小腸に入りますね。その時間をちゃんと経過してあげないとエネルギーに代わるような状態ではなくなりますから。


大村正樹

はい。

ご飯を食べると、消化するために胃袋に血液が集まるんですね。僕らが運動してしまうとその血液が筋肉に散らばってしまいますから、消化が悪くなってお腹をくだしたりするんです。


大村正樹

なるほど、そうですよね。お腹くだしですが、過度な緊張から走る前にお腹をこわす子がいません?

はい、あります。


大村正樹

あれはどういうものですかねぇ。

子どもだけじゃないですよね。


大村正樹

ええ。大人も、はい。

マラソンもそうですし、箱根駅伝でもいますけれど。緊張すると体が興奮状態におちいりますから、やはり血液のめぐりがあまりよくなくなる。


大村正樹

ええ。

というのは、緊張すると脳みそがものすごくたくさんエネルギーを使うんですね。


大村正樹

えっ、緊張で頭に来る?

緊張した時に顔色はどうなりますか?


大村正樹

青ざめるといいますよね。

あれは、緊張というよりも怖くて青ざめちゃいますね。どっちかというと、緊張するとバーッと顔が赤くなる。


大村正樹

ほてるのか、あぁ。

あれは、頭のほうに血液が行くからなんですよ。


大村正樹

なるほど。箱根といえば上り下りがありますけれど、肉体的に上り下り−たぶん素人的には下りのほうが足を出してれば下りられるからいいやと思うんですが、筋肉は当然、上りのほうが疲労するんですか?

走ってる最中にエネルギーを使うのは、当然上りです。重たい体を持ち上げて行きますから。でも実はその後のことを考えると、下りのほうがつらい。


大村正樹

どうしてですか?

実は、下りを走ると筋肉が多少こわれるんですね。例えば足が自分の体重を支えよう、上から落っこってくる体重をすべて支えるわけですね。そうすると、筋肉が多少こわれるんです。その筋肉を修復するために、後々エネルギーを使います。


大村正樹

でも心臓の心拍数的には、下りのほうが楽ですよね。

はい。


大村正樹

心拍数をとるか筋肉の破壊度をとるかといったら、どっちをとるか?

どうなんでしょうねぇ。


大村正樹

私、心臓バクバクはイヤ、苦手…。

ハハハハ。


大村正樹

筋肉だったら、筋肉痛は3日くらいで治るじゃないですか。

ひどい筋肉痛は、気持ちが悪くなるぐらい筋肉痛になります。


大村正樹

あぁ。

みなさんは、すごくトレーニングしている人は筋肉はこわれないと思いきや、実は箱根駅伝の山下りを終わった後の選手は、次の日ものすごい筋肉痛で悩まされるぐらいです。


大村正樹

へぇ〜。じゃあ、2日目のほうが、みんな選手たちはキツイんですね。

その通りです。


大村正樹

あら、そうですかぁ。

ですから上りと下りというと、やってる最中は上りのほうがキツイんですが、あとのことを考えると実は下りのほうがキツイのかもしれません。


大村正樹

ちなみに上りは心臓にどれぐらいの負荷がかかるんですか?

これも人によるんですが実際は1.3倍ぐらいの負荷はかかる。勾配にもよりますけれど。心臓が送り出す血液の量がそういうふうになってきますし、体が動いてますからなかなか心臓がポンプとして押し出す力がないんです。ずーっと上り続けるには、ポンプの作用がものすごく力強くなくちゃいけませんから。


大村正樹

相当心臓が強くなければ、上り坂に対応する体ができないわけですね。

当然そうでしょうね。


大村正樹

下り坂の筋肉の負担はどれぐらいですか?

平坦地に比べると、下ってきた筋肉はみなさんが感じる筋肉痛の度合いだと思ってくれてけっこうです。


大村正樹

あぁ、なるほど。

特にふだん走ってない方が急に下り坂を走ると筋肉痛になって、1.5倍から2倍ぐらいの負荷にはなってしまうんじゃないでしょうかねぇ。


大村正樹

最近、長距離の中継を観てると、給水場で選手が本人専用の「スペシャルドリンクを取ったぁ」とかあるじゃないですか。昔はだいたい同じ物を取って、スポンジで頭から水をジャーッとかぶるかドリンクを飲むかでしたが、今は選手個々に大きなワッカがついたスペシャルドリンクを取りやすいようにやっている。あれは何ですか?

はい。中身はいろんな選手によって違うんですよね。


大村正樹

例えば何ですか?

オレンジジュースやコーラを飲んでた選手もいます。


大村正樹

えっ、コーラ!?

コーラを薄めて炭酸抜きにして。


大村正樹

それは何でですか?

昔はカフェインが興奮するのにいいといわれたんですが、最近は逆にカフェインはダメだといわれてるんですね。


大村正樹

へぇ〜。

最近の選手はあまり飲まないんですが、昔の選手で紅茶とかコーヒーを飲んでた選手もいます。


大村正樹

カフェインが入っているから。

最近はどちらかというと、みなさんご存じのようにメーカーがつくっているスポーツドリンクを飲んでる選手が多いですね。


大村正樹

強壮剤のようなドリンクとか飲んではいけないんですか?

いいんですよ。


大村正樹

えっ、いいんですか!?

強壮剤を含んでいるものを飲んでいる選手もいるそうです。


大村正樹

でも、ドーピング検査とかあるじゃないですか。どこまで許されるんですか?

レースが終わって上位の選手はドーピングかかりますから、当然そこに引っかからないようなものを飲むんでしょうね。


大村正樹

ある程度の滋養強壮剤みたいなものはOKなんですか?

だいたい一般に売られているようなものは大丈夫だと思いますが…。


大村正樹

えぇ〜。

最近、ドーピングも厳しくなっていますからねぇ。風邪薬が引っかかる時代ですから。


大村正樹

そうですよねぇ。

ただ、われわれ市民マラソンのレベルではありませんのでいいのではないかと。


大村正樹

なるほどね。オリンピックになると、けっこう慎重になるわけですね。

当然、ならざるを得ませんね。


大村正樹

今年のロンドンオリンピックでマラソンを見るのがすごく楽しみになってきましたよ、先生。

がんばってもらいたいもんですね。


大村正樹

すごく勉強になる話で楽しかったなぁ。あっという間でした。

ありがとうございます。


大村正樹

今週のサイコーは、東京農業大学准教授の桜井智野風先生でした。またお願いします。

どうもありがとうございました。


大村正樹

ところで、マラソンちょっとやったら何かできそう気がしてきたんですけれど。先週のおさらいも含めるといいですか、みんな。マラソンに勝つための筋肉は、今からでも鍛えることができるということですね。短距離走に適した筋肉は遺伝的な要素が強いんですが、長距離を走る筋肉は鍛えれば成長するということなので、日頃からトレーニングを続けていたら、もしかしたら君もフルマラソン走れるかもしれないよっ。僕もチャレンジしたくなってきたなぁ。それでは、1月ももう終わりだね。来週も夕方5時半に会いましょう。みんなも楽しい週末を。バイバイ!