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「地震発生の確率とは」(1)
コーチャー/寺門和夫さん(科学ジャーナリスト)
大村正樹&寺門和夫

大村正樹

キッズのみんな、こんにちは。サイエンステラーの大村正樹です。今週も東京浜松町にある秘密の科学研究所シークレットラボからお送りします「大村正樹のサイエンスキッズ」。さぁ、3月3日、ひな祭りの日です。女の子は桃の節句をお祝いしてもらったかな。そして3月というと、あの東日本の大地震、津波からもうすぐ1年となります。みんな、周りはどう? 今後、マグニチュード7クラスの地震が首都圏で起きる確率は4年以内で70パーセントって、1月頃ニュースでいってたでしょ。けっこう、騒いでいるでしょう。あのね、大村さんの子どもたちも大変なのよ。ということで、この数字が何なのか、お知らせの後、サイコーに聞いてみるよ。


大村正樹

今週のサイコーは、おなじみ科学ジャーナリストの寺門和夫さんです。こんにちは。

こんにちは。


大村正樹

来週末あたりは大変なニュースになるんでしょうけれど、東日本大震災からもうすぐ1年ですねぇ。寺門さん、今、東京の子どもたちが戦々恐々としているのは、東大の地震研究所の「首都直下型などマグニチュード7クラスの地震が4年以内に発生する確率70パーセント」。

はい。そうですね。数字がどちらかというと一人歩きしている感じで、この数字がどうやって出てきたかというあたりもきちんと理解しないと、どういうふうに受け止めていいか、本当はわからないですよね。


大村正樹

その「4年以内70パーセント」の出どころですね。

はい、そうです。


大村正樹

気になりますねぇ。どうやって出したんですか?

ちょっと難しい話になるんですが、基本的にはこういうことです。去年の3月11日に大きな地震が起こった後、関東地方でも比較的小さな規模の地震がたくさん発生しているんですね、3月11日の地震に関連して。


大村正樹

ええ。

その3月11日から半年間、首都圏で起こったマグニチュード3以上の地震をある計算式に当てはめてみたわけです。


大村正樹

はい。

その計算式は何かというと、新聞にも載っていると思いますが「グーテンベルグ・リヒター則」というひとつの計算方法です。


大村正樹

グーテンベルグ・リヒター則?

そうです。このグーテンベルグ・リヒター則というのは、過去にいろいろ自然界で起こったことがだいたいどんな傾向で起こっているかを見るためのもので、ごく大まかに自然現象のある傾向がわかるというものです。


大村正樹

はい。

一般的にいわれているのは、地震などが特にそうですが、大きい地震はなかなか起こらない。だけれども、小さな地震はしょっちゅう起こっている。


大村正樹

ほんと、この1年しょっちゅうでしたよね。

というふうな、ごく大まかな自然の傾向がわかるのが、このグーテンベルグ・リヒター則です。


大村正樹

ほぉ〜。

ですから、実は正確な、これから何が起こるかという予測に使うものでは本来なくて、過去に起こったことを解釈するための計算式です。


大村正樹

いわゆる「プレートが云々」ではなくて、「地震がこういう頻度で起きてるから、こうなりますよ」という?

「こういう頻度で起きていましたよ」ということを見るためのもので、本来は「だとしたら、これからこういう確率で地震が起こりますよ」というところまでは使わない法則なんです。


大村正樹

はぁ、はぁ。じゃあ、何で今回使ったんですか?

つまり東大の地震研では、半年間の過去の傾向を見ました。それから当てはめて、「首都直下型でマグニチュード7ぐらいの大きな地震が起こるとしたら、この計算式で当てはめたところでいうと、これから4年間に起こる確率は70パーセントぐらいのところに来てます」というだけのことで、首都圏の地下で地震が活発になっている兆候があらわれているとか、直下型が迫っているといういろんな観測的な事実に基づいて予測したものとはまったく別なものなんですね。


大村正樹

安心したような…。何かこうやってやるんだという感じで、不思議な感覚なんですけど(笑)。

今のは単なる計算式だけの話で、しかも東大の地震研では3月11日から半年間だけだったんですが、さらに京都の防災研究所で同じ式を使って今度は3月11日から約10ヵ月間統計をとって、もう1回同じ計算をしてみたんですね。


大村正樹

はい。

そうしたら、実は発生する確率は低くなっている。これはなぜかというと、半年間に比べて10ヵ月のデータをとると首都圏で起こっているマグニチュード3以上の地震は減ってきているんです。


大村正樹

はい。

だんだん地震がおさまってきている。したがって、発生する確率も低くなってきたということです。


大村正樹

はぁ〜。

ですから、最初の東大地震研の予測は、「大きな地震の発生直後にマグニチュード3クラス以上の地震がたくさん発生している時の状態がこれからもずーっと続いたとしたら、4年以内に70パーセントですよ」ということですが、実はそういった状況でずっと続くわけではなくて、だんだんとおさまってきているのが今の観測結果です。


大村正樹

ということは、大きなニュースになって子どもたちも戦々恐々としてますが、東大のほうでは、近い将来この確率みたいなものを訂正する可能性もあるということですか?

ただ、これは「計算した結果、こうなりました」ということです。実は東大の地震研のほうも、それしかいってないんですね。


大村正樹

はぁ〜。

つまり「過去の地震を当てはめてみて、当てはめた結果からある程度予測するようなことをやってみるとこういう結果になりました」という。これは、実は実際の首都圏の地下でプレートがどんな動きをして、どのくらいエネルギーがたまっているという観測とはまったく別に単なる数字の計算として出しただけです。


大村正樹

研究機関として数字の計算結果がこうなったという。で、マスコミが報じたわけですね。

そうですねぇ。


大村正樹

では、国、日本そのものは、どう対応するんですか?

政府としては別な計算の仕方をして、これから首都圏がどれくらい大きな地震に見舞われる可能性があるのかについて計算をしてます。


大村正樹

はい。

それはどういうことになっているかというと、今のグーテンベルグ・リヒター則ではないです。ずっと過去数百年の地震の結果を見て、「これくらいの周期で大きな地震が起こっているから、今後何年以内に大きな地震が起こる確率がありますよ」ということです。


大村正樹

はい。

これは、基本的に過去の地震の発生例をグーテンベルグ・リヒター則とは別な方式で計算したわけですが、それによると「30年以内に70パーセント、マグニチュード7クラスの地震が起こる」という。


大村正樹

あっ。

ですから、今回の東大地震研の結果に比べると、かなり発生する確率は低くなっている。


大村正樹

これはまた微妙といえば微妙で…。今、6年生のキッズが聴いてたら、高校1年生のあいだに70パーセントというよりも、キッズからするとお父さんお母さんになった30年後に70パーセントといわれたほうがちょっとホッとはしますが、でも残り30パーセントは起きないという解釈もできるわけですよね。

基本的に、地震はいつか必ず起こる仕組みになってます。


大村正樹

いつか起きる−それもヤダなぁ。

日本列島が置かれている地球の場所によるので、地震が必ず起こる場所の近くに日本列島はあるわけですね。ですから、ごく大きな時の流れでみれば、大きな地震は繰り返し起こっているので、いつかは必ず起こるというわけです。


ただ、それは急に起こるのか、それともまだ準備する時間がありますというのでは、対応の仕方がずいぶん違いますよね。


大村正樹

はい。

今回の報道はどちらかというと、すぐにでも起こりそうなことになって話題が広がったんですが、十分起こることはあり得るし必ずいつかは起こるわけなので、それまでにみんなが準備をして、なるべく都市の防災をしっかりする。それから、実際に起こった時に、今の子どもたちもどうやって身を守ったらいいかも含めて訓練したり準備をする。


大村正樹

はい。

そういったことを常にやっておかなければいけないのは、事実ですね。


大村正樹

わかりました。今日は寺門さんにお出でいただいてよかった。ちょっと安心したな。みんなもそうでしょう。ということで、まだ地震に関して聞きたい話もありますし、来週はあれから1年ということもありますので、また来週よろしくお願いします。

はい、わかりました。


大村正樹

今週のサイコーは、科学ジャーナリストの寺門和夫さんでした。


大村正樹

本当に寺門さんのおっしゃった通り、備えることが大事。ただ個々には限界があるので、やっぱり国あるいは東京都−大きなところが備えてくれる態勢が大事ということで、ほんとに動いてくれるといいですね。どうだったでしょうか?それでは、来週も夕方5時半に会いましょう。キッズのみんなも楽しい週末を。バイバイ!