
キッズのみんな、こんにちは。サイエンステラーの大村正樹です。今週も東京浜松町にある秘密の科学研究所シークレットラボからお送りします「大村正樹のサイエンスキッズ」。さぁ夏休み、8月に入りましたねぇ。楽しんでるかなぁ。毎日を有意義に過ごして、宿題もちゃんとやってね。思い出もつくってください。この時季だから悩んでる子も多います、「自由研究は何にしようかなぁ?」って。身近なところにヒントがあります。僕らの暮らしの周辺にいろんな生き物がいるでしょ。その生き物って、どんな生活をしているのか考えたことある? いわゆる生き物の巣。お知らせの後、サイコーが登場します。

今週のサイコーは、サイエンスライター&イラストレーターの北村雄一(きたむらゆういち)さんです。こんにちは。
はい、こんにちは。

去年の春でしたか、化石の話を北村さんにしていただいて、東京の都心のビルの中にも化石が混じっているという話でした。
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ええ、石材とかに混ざってますね。

いやぁ、あれは衝撃だったんですけれど。あれから僕は大理石とかデパートの床を見ながら、化石があるんじゃないかとずっと見る1年数ヵ月でした。
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肌色とかピンク色がかかっているところをよく見ると、アンモナイトの断面などよく入ってますよね。

そうですか。北村さんは、保育社から『生きものお宅拝見!』などといった科学のたいへんユニークな本をたくさん出していらっしゃいます。今日は生き物のお宅、いわゆるネグラ、巣について話をうかがっていきたいと思います。巣というと、スズメやアリの巣とか、いろんな巣があります。
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ありますね。

ツバメの巣って中華料理に出てきますね。
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出てきますね。

あれは巣ですか、本物の?
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あれは巣です。ただ僕らが知っているツバメの巣ではなくて、食用アマツバメというツバメに似ているけれどツバメじゃない鳥の巣です。

ツバメの巣は、本当はツバメ科のツバメの巣ではないということですね。
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そうですね。アマツバメといって雨のツバメと書く。何でかというと、例えば関東などもそうですが雨が降る直前、ちょっと曇天だなぁという時に空をピューッと飛んでいくカマのような姿をした鳥がいて、実はツバメに見えるけれどツバメじゃなくてアマツバメです。

ふ〜ん。
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雨が降りそうになると来るからアマツバメなんですね。

雨の時に飛んで来る鳥で、あだ名みたいな感じでアマツバメとつけられてる。
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見た目が似てるのでツバメっぽいけど、実はツバメじゃない鳥です。

ほぉ〜。
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その中でさらにややこしいんですが、外国にいるアナツバメというのもいて…。

アナツバメ。
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こっちは穴なんですよ。ほら穴に巣をつくるんでアナツバメなんです。雨のツバメの中にアナツバメがいるという、かなりややこしい話で。

日本にやって来るツバメは、何ツバメですか?
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あれは、普通のツバメです。

普通のツバメ。
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ええ。

普通のツバメの巣って、昔よく民家の軒下にありましたよね。
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ええ、ありました。

あれはどういう巣になりますか?
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あれは泥ですね。

泥。何の泥ですか?
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例えば田んぼや、工事現場とか水たまりで、土が出てて水がドロッとしているところにやって来て、あいつら時々ちょこんと降りて土を口にほおばって飛んで帰るんですよ。

ほぉ〜。
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あのツバメの巣は、もちろん食べられません(笑)。

日本のツバメは、泥の巣に住んでいるんですね。
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そうです。

最近は、東京でツバメの巣があるお宅ってありますかねぇ?
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あんまり見当たらないですけれど、いるのかもしれないです。泥が出ているところがないと、彼らはつくれませんから。

なるほど。
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家の近くはけっこういっぱいいますよ。

ツバメは渡り鳥ですよね。
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渡り鳥ですね。

元々はどこで生まれて、どこを経由してどういう暮らしをしてるんですか?
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子育ては僕らの周りでしていますが、成長して冬になったら南に行こうと。南はどこへ行くかといったら、東南アジアとかフィリピンのほうまで行っちゃうんですね。

ほぉ〜。そっちでも泥で巣をつくっているわけですか?
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いえ、つくらないです。

つくらない?
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ええ。なぜ、鳥が渡りをするのか? 南にいる鳥がわざわざ北に行くのは、どうも「俺、子育てここじゃ無理だ」と。

はい。
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子育てはたくさんの食べ物を集めなくちゃいけない。子どもに与えるためと、それから働くと腹もへるから自分も食べなくちゃいけない。

はい。
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南にはいろんな種類の鳥がいっぱいいるので、「こりゃちょっと無理だぞ」と。しょうがないので出稼ぎに行くんですね、遠い場所に。

ほぉ〜。
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敵がいない、ライバルがいないところが日本だったりする。考えてみたらツバメ以外に超高速で空をピュンピュンピュンピュン飛びまわって虫をつかまえている鳥って、日本にいるかと思うといないよなぁと。

ツバメは稀有な存在ですか? スピード感とか?
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圧倒的ですね。

はぁ〜。
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この間、オオタカといって鷹の仲間が家の近くの公園にいるんですが、ツバメに追われてました。

そうですか。
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圧倒的にやられまくっている状態で(笑)。

オオタカのほうがボリュームもあるし、はるかに強い鳥ですよね。
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そうです。圧倒的に強いけれど、ツバメのほうが小回りもきくし高速移動もできる。オオタカも速いんですよ。以前出かけようと道を歩いていたら、後ろからビョーッと音がして「何だ!?」と思ったら、目の前をワッと何かが転回した。

はい。
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右上から入ってきてキュッと急カーブして左上に上昇していく。よく見たらハトを追いかけているオオタカだった。

へぇ〜。
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風を切る音がするから高速で飛べるのに、ツバメには対抗できない。

へぇ〜! トラックとスポーツカーみたいな感じですか?
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そうですね。トラックに対して超高速で走っているバイクみたいな感じですね。小回りがきかないので、さすがに。

そんなツバメが泥の巣に住んでいるんですね。泥の巣というと土の中のモグラ。北村さんが特に工夫されていると思われたモグラは、ホシバナモグラの巣?
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ええ。ホシバナモグラといって、鼻がお星さまみたいな形をしているので星の鼻を持ったモグラ。

へぇ〜。それの巣が工夫されている?
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不思議なのが水辺に住んでて、例えば雨が降って水位が上がってくることがありますね、川があふれるとかして。そのまま自分の巣まで水没しちゃうと困るので、ちょっとモコッと盛り上がってる高いところにお家をつくるんです。

はい。
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本人は水の中も平気なので、川とか池の中にポコッとトンネルが出ていて、そこから出勤するんですよ。

ホシバナモグラが?
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ええ。

東京にもいるんですね。
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いえ、日本にはいなくて北アメリカですね。それもかなり北のカナダとか五大湖の周辺にいるんです。

日本のモグラは水陸両用ではない?
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泳げることは泳げるらしいんですよ。非常にうまく泳げるらしいけれど、水中で狩りをすることはしないですね。

日本のモグラは何モグラというんですか?
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コウベモグラとアズマモグラといって…。西の神戸と、アズマは東の意味ですから。

何それ!?(笑)
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東と西で分かれてるんですよ。

ハハハハ。すごい!
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だいたい富士山あたりで勢力が衝突するらしいです。

いわゆるフォッサマグナの大地溝帯のあたりで。
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あのあたりでぶつかって勢力圏が(笑)。

へぇ〜。
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確か若干神戸が押してるんじゃなかったかなぁ。

だんだん神戸のほうからジリジリ来て…。陣地争いで富士山界わいまで来ちゃって、山梨とか埼玉千葉あたりに来たら、アズマモグラの生息域は東北から北海道に変わっちゃうかもしれない。
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そんな感じですよねぇ。

えぇ〜、夢がふくらみますねぇ!
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何というか、動物の世界でもいろいろなことがあるんだなぁと。西と東で生き物とか草や木が違うことはよくある話ですが、地下でもそんなことが起こるんだというのは。

そうかぁ。もう時間。すごく勉強になった。僕も自由研究をしたくなってきました。今週のサイコーは、サイエンスライター&イラストレーターの北村雄一さんでした。来週もまたよろしくお願いします。
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はい、よろしくお願いします。

そういえば大村さんが子どもの頃は、水槽に黒い紙を貼って土とアリでアリの巣をつくったんだよねぇ。今のキッズはやらないんだよね、うちの子どもたちもやらなかったし。あのアリの巣を思い出しましたが、けっこう東京にもいろんな巣があって、意外に君たちの暮らしの近くに妙な土が盛られていたら、ひょっとしたらモグラの巣かもしれないよ。自由研究のヒントにしてください。それでは、夏休みの真っただ中です。みんなも楽しいお休みをエンジョイしてください。バイバ〜イ!