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「絶滅危惧種〜鳥〜」(1)
コーチャー/尾崎清明(おざききよあき)さん(山階鳥類研究所)
「山階鳥類研究所」のHPはコチラ>>http://www.yamashina.or.jp/
大村正樹&尾崎清明

大村正樹

キッズのみんな、こんにちは。サイエンステラーの大村正樹です。今週も東京浜松町にある秘密の科学研究所シークレットラボからお送りします「大村正樹のサイエンスキッズ」。さぁ、今回は鳥のお話です。人間って海にもぐったり、ある程度のことはできるんですが、自力で空を飛ぶことだけは絶対できないよね。鳥にあこがれるキッズもいっぱいいるんじゃないかなと思います。ただその鳥の中にも絶滅危惧種、場合によっては本当に絶滅しちゃうような鳥もいるんだよねぇ。有名なのは、トキです。今日は鳥に日本で一番詳しいといわれるサイコーにお話をうかがいます。


大村正樹

今週のサイコーは、山階鳥類研究所の尾崎清明さんです。こんにちは。

こんにちは。


大村正樹

山階鳥類研究所、聞いたことあるような、ないような…。これはもしかしたら、かつて皇族だった黒田清子さんがよく通っていた?

はい、職員でおられました。


大村正樹

黒田清子さんは職員でいらっしゃったんですか?

はい。


大村正樹

通ってたんではなくて?

週に3回ほどみえてました。


大村正樹

そうですか。場所は千葉県?

ええ、今は千葉県の我孫子市というところです。以前は東京の渋谷にございました。


大村正樹

これは、日本で唯一の鳥の研究を専門にされているという…。

そうですね。鳥だけの研究所は、私どもの研究所だけですね。


大村正樹

今、鳥の中で有名なのはトキ。絶滅しそうで、何とか繁殖も増えてますよね、中国からレンタルなどして。

はい。


大村正樹

今、日本で絶滅危惧種の鳥は何があるんですか?

けっこういろいろありますが、危険なほうでいうとヤンバルクイナとかアホウドリ、タンチョウとかシマフクロウ。


大村正樹

北海道ですね、タンチョウ、シマフクロウ。実は北海道はこの夏、あの有名な旭山動物園からフラミンゴが逃げちゃったんですよね。

あぁ、そうですね。


大村正樹

ご存じでした?

ええ、うちにもいろいろ問い合わせが来てました。


大村正樹

そうなんですか(笑)。

「どうやってつかまえるか?」とかね。


大村正樹

いやぁ、そうですか。この夏は北海道はその話で持ちきりでした。

そうですか。


大村正樹

さて、やっぱりトキですよ、ニッポニア・ニッポンという名前。

ええ。


大村正樹

日本の鳥といえば、かつてはトキといわれた。ただ、トキを肉眼で見られるキッズは、東京にほとんどいないと思うんですよね。

いないですね。


大村正樹

トキについてまずうかがいたいんですが、今年の春に放鳥されたトキのカップルが初めて産卵してヒナが産まれたという。ニュースになりましたよね。

はい。


大村正樹

あれがいかに奇跡かというお話をうかがいたいんですけれど。

ヒナが巣立ったのは38年ぶりといわれてますが、非常に長い保護の歴史があるんですね。トキに関してはちょうど私が生まれた頃に佐渡でまだ生き残ってたというニュース、1950年代に少数が佐渡にいたという。


大村正樹

60年前。

ええ、そうです。それが徐々に減ってきました。いくつか理由がありますがもう一ケタになって、このまま野外に置いといたのでは絶滅してしまうということで、当時の環境庁が私ども山階研究所に全部捕獲−5羽いたんですが、捕獲して人工増殖するので手伝ってほしいという依頼がありました。


大村正樹

はい。

私どもは79年80年81年の3年間かけて、5羽のトキをつかまえて無事にケージに入れることまでは成功したんですね。


大村正樹

30年ちょっと前に?

30数年前ですね。そこまではうまくいったんですが、残念ながらその時に飼われていたキンちゃん含め6羽しかいなくて、風前の灯で、その6羽からは次の代の子どもが産まれることはなかったんです。


大村正樹

ええ。

中国で81年、捕獲した年にそれ以前は日本にしかいないと思われていたのが、実は中国にもわずかいた。それも7羽、一ケタですね−いたということがわかって、中国では非常にうまく野外で、あるいは飼育下で数が増えてきまして99年でしたか、そのうちの1つがいが日本に送られてくることになりました。


大村正樹

ほぉ〜。

そこから、日本の中国産のトキの増殖がスタートしたわけです。現在は100数十羽、200羽近くのトキが飼われてます。


大村正樹

みごとに繁殖に成功しているわけですよね。

人の手をかけてやったことで野外での危険が減らされて、1回に卵を4個産みますが、最初の卵は全部取って人工ふ化して次の卵を抱かせる。1シーズンに2腹といいますが2回チャンスがある。そうすると数が増えていきますね。人が助けてやれば、そういうことが可能です。


大村正樹

はい。

ただ、これはあくまで飼育の中であって、野外に返すのが元々の目的だったので、これまで90羽ぐらい野外に放鳥してます。そのうちの3つがいが、今年やっと繁殖した。非常に長い保護の歴史があります。


大村正樹

30年計画でようやく放鳥したトキのつがいが産卵し、ふ化したということですね。

そうです。


大村正樹

これは結局どういうことですか? トキは人間の手を借りずに野生のトキとして日本で生活できる可能性ということですか?

先ほどちょっといいませんでしたが、絶滅した理由がいくつかあります。ひとつは江戸時代から明治時代になって鉄砲を使って…。


大村正樹

乱獲ですね。

そうですね。ツルとかハクチョウが全部減りました。その中でトキも羽根がきれいだということで捕られたことがあります。それに追い打ちをかけたのが農薬。


大村正樹

はい。

農業のやり方はご承知かもしれませんが水田はほとんど工場みたいになってまして、水が必要な時は水をいっぱい入れるけれど、いらない時は全部落としてしまえるという構造です。


大村正樹

はい。

ということは、水がない時があるんですね。


大村正樹

はい。

そうすると水で生活していたドジョウやカエルなどがいなくなってしまう。そのやり方が、トキがいなくなった大きな原因です。


大村正樹

ふ〜ん。

トキは水の中、泥の中にいるエサを食べるという動物で、しかも泥の中に口ばしを突っ込んで、口ばし探りをしてとる。見えないエサをとるんです。


大村正樹

ええ。

エサがある程度以上減ると、全然効率が悪くてエサがとれなくなってしまう。


大村正樹

はい。

泥がなくなって、その中にいるドジョウがいなくなる。ですから、トキはエサがとれなくなってしまう。


大村正樹

日本の農業形式の変化も、トキの絶滅に拍車をかけてしまったわけですね。

そうです。同じような環境にいるサギなどは目で見てエサをとりますので、もうちょっと効率が今でもいいわけです。


大村正樹

ほぉ〜。

トキは減ったドジョウに頼ってたものですから、急速に数が減ってしまったということですね。


大村正樹

なるほど。北海道でタンチョウ−鶴が十数年前は100羽ぐらいになってる。今は1,400ぐらいに増えている。これも人の手を借りて増えているわけですよね。

そうですね、冬の間エサを維持するということで。


大村正樹

こういう形で人間が種の保存をお手伝いすることは、その種にとっては幸せなことなのかとふと思う時がありますがいかがでしょうか?

そうですね。トキを捕獲する時、実はすごく記憶にあるんですが地元で反対がありました。「このまま絶滅するのも美学だ」−変な話ですね(笑)。「絶滅するものを何も無理やり生かすこともないんじゃないか」というお考えもあって、私どもが捕獲した直後に雪のところに文字が書かれて「トキをとるな」というような…。どなたが書いたかわかりませんけれどレスポンスはありました。


大村正樹

へぇ〜。

ただ私は人が原因で減ってきたものは、やっぱり人が何らかの手を尽くしてやるべきだと思います。それでも絶滅する場合もあると思いますが、やはり人が責任を持って何らかの手助けをして回復できるものは回復させたいという気持ちで今、関わっています。


大村正樹

いやぁ、よくわかりました。私も疑問を呈しながらも、そのほうがいいと思うんですよ。そこに追い込んだのは人間ですから。北海道はクマも出るわけですよ。ほんと人間が生態系を犯すからいろんな出没になったり、絶滅する可能性になるわけです。それをなるべく元の現状に戻してあげるのが、その山階鳥類研究所の役割のひとつということですよね。

はい。


大村正樹

もっと来週もお話をうかがいたいので、ぜひお時間をいただけますでしょうか?

はい、わかりました。


大村正樹

今週のサイコーは、山階鳥類研究所の尾崎清明さんでした。ありがとうございました。

ありがとうございました。


大村正樹

ほんとだよなぁ。トキも昔はたくさんいたのに人間の都合で絶滅危惧種になって、だからこういう方の手によって何とか生きていける環境を整えてあげようという。いやぁ、そうか。いろいろ考えてしまいました。みんなはどうだったかな?それでは、来週もまた夕方5時半に会いましょう。すてきな週末を。バイバ〜イ!