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「ロボットの今」(2)
コーチャー/富山健(とみやまけん)さん(千葉工業大学教授)
大村正樹&富山健

大村正樹

キッズのみんな、こんにちは。サイエンステラーの大村正樹です。今週も東京浜松町にある秘密の科学研究所シークレットラボからお送りします「大村正樹のサイエンスキッズ」。さぁ、今週もロボットを取り上げます。日本のロボット技術は世界最高レベルということで、いろんな役立つロボットなどもあるそうですよ。お知らせの後、サイコーに詳しい話を聞いてみま〜す。


大村正樹

今週のサイコーもロボットの専門家、千葉工業大学教授の富山健先生です。こんにちは。

こんにちは。


大村正樹

先週の介護支援ロボット、とても印象的でした。人のために役立つロボットに絞ってお話をうかがうと、近々で「こういうロボットが実はとても役に立っている」というのはありますか?

やっぱりお掃除ロボットですかねぇ。


大村正樹

お掃除、そこに戻りますか。

ハハハ。


大村正樹

家庭では相当役立っていますか?

私の家でもワイフが「これがないと生活できない」というくらい。


大村正樹

そこまでのものですか?

そうですね(笑)。


大村正樹

いやぁ、ラジオの前にもし奥さまがいたら、これおねだりする価値ありですね。

そうですね。


大村正樹

そんなにいいですか?

素晴らしいですね! あれをつくっている会社も本当に「どうつくったらいいか?」−ちょっと逆説的ですが、「どう機能を削ったらいいか?」ということをよく知っていますよね。


大村正樹

ほぉ〜。無駄な動きとか?

いろいろなセンサーをつけていろいろなことをする、というのが元々のロボットです。例えばうちのfuRo(フューロ)という研究所でつくっているモルフスリーというロボットは、小さな体の中に100以上のセンサーがのっているんです。


大村正樹

モルフスリー。

はい。それも本にのっけておきましたが、元々のロボットはそういうものです。ですけれども、何か仕事をする時に必要ないものを削って、その代わりに確実に仕事ができるようにするのはすごく大切なことなんです。


大村正樹

なるほどねぇ。先生は『はたらくロボット』という本を監修されています。汐文社から出ていて、そこに様々なロボットが出ていますよ。そういう中で、福島第一原発であの放射能の中をロボットが映像撮影したりするのがニュースで流れていますよね。

ありがとうございます。


大村正樹

あれの製作にも携わってらっしゃるんですよね。

私は製作には携わってないんですが、うちの千葉工業大学の未来ロボット技術研究センター副所長で小柳という者がおりまして、彼のチームがこれをつくっています。


大村正樹

やっぱり千葉工業大学のチームが、あの福島第一原発の人間が入れないところに入っている(レスキューロボット)クインスを…。ニュースで映像が流れますよね。

流れます。大変ですよ、あれ。


大村正樹

いやぁ、あれは結局、放射能汚染の日本にとっては未知の領域じゃないですか。

そうですね。


大村正樹

そこにロボットが入っているわけですよね。

はい。


大村正樹

初期の頃はそのロボットが映像として流れましたけど、今やもう当たり前すぎて、そのクインスが撮った映像がニュースになっている。

ハハハ、その通りです。


大村正樹

そのロボット本体の映像はちょっと風化してるんですよ。

そうですね。


大村正樹

あらためてそのクインスはキャタピラーのような形をしていて、デコボコのところも乗り越えることができる。

どんなところへも行かれますね。


大村正樹

大きさはどれぐらいですか?

足みたいになっているキャタピラーがありまして、伸ばすか縮めるかでだいぶ違うんですね。縮めてしまうと、だいたい67センチぐらいです。


大村正樹

ほぉ〜。

伸ばすと110センチ。


大村正樹

1メートルを超える。

それぐらいになります。伸ばしたり縮めたりしていろんなところへ入っていったり、階段を上ったり下りたりするわけですね。


大村正樹

もうガレキはもちろん、階段の上り下りも可能で、カメラを搭載しているわけですね。

カメラもこれ、苦労がいっぱいあるんですよ。


大村正樹

どんな苦労が?

小柳先生が自分のお風呂の中で一生懸命開発したという。


大村正樹

ええ。

原発の中は水蒸気がたくさんあります。湿度100パーセントです。普通のカメラだったらすぐくもっちゃって、何にも見えないんですね。


大村正樹

はい。

ですけれど、このクインスが持ってるカメラは100パーセントの水蒸気でもちゃんと見えるんです。


大村正樹

いわゆる曇らないという?曇らないレンズ?

はい、曇らないです。曇らないレンズです。


大村正樹

それは小柳先生がくもらないレンズを開発したんですか?

曇らないカメラを開発しましたね。


大村正樹

ほぉ〜。僕メガネかけていますけれど、このシーズンはすぐ曇るわけです、鍋物とか開けた瞬間。

そうですね(笑)。


大村正樹

曇らないカメラ、曇らないレンズとなると、光学系の企業はそういうものを開発したくなる発展系ですね、また。

だから仕掛けがあって、その仕掛け自体がちょっとかさ張るので、ということじゃないかと思います。


大村正樹

なるほど。メガネには応用がまだ早いんですね。

あまり詳しいことはいえないので。


大村正樹

わかりました(笑)。曇らないカメラが開発された。

そのほかにも例えば線量計ですとか…。


大村正樹

あっ、放射能の線量計。

はい。


大村正樹

それも搭載しているんですね。

もちろんそうですね。


大村正樹

それがやっぱり一番重要ですよね、「今どれぐらいか?」という。

それとか赤外線ですが、倒れたりしてる人がいた時に検知する温度センサーみたいなものもついてます。いろんなものがついてますが、そのバージョンによってどのセンサーかはまたいろいろあるので、今、実はクインスではないんですね。その後継機が入っているんです。


大村正樹

へぇ〜。

ローズマリーというんですけれど。


大村正樹

ローズマリー?

はい。


大村正樹

またかわいらしい。

名前ですね。


大村正樹

ネーミング、どうやってつけているんですか?

お気づきになりません?


大村正樹

えっ?

クインス、Qですよね。ローズマリーはRです。


大村正樹

あっ、アルファベット順ですか?

そうですね。


大村正樹

ABCDEFGH&JKLMNOPQ・・・♪、17番目。

はい。


大村正樹

クインス。ローズマリーは18番目。

そうですね。


大村正樹

じゃあ、Aから開発に開発を重ね、今18代目のロボットが福島第一原発内でいろいろな情報を提供している。

小柳先生たちのグループのすごさは、現場に行きますよね。現場って、すごくその日によって変わってしまいますし、「設計図にはこう描いてあったけど現場は違うよ」というのがいくらでもあるわけです。


大村正樹

はい。

そうすると設計図通りにつくっていたロボットじゃ動かない。で、どうするか? 現場で直すんですよ、ロボットを。


大村正樹

ええ。

だから2週間ぐらい経ったら、もう全然違うロボットができちゃう。それだけの能力を彼らは持っているんです。


大村正樹

マイナーチェンジをササッとできて、ちょっと直して…。

それでも大丈夫というやつを、そういう技能を持っています。


大村正樹

小柳先生らのチームは、福島に臨場してるんですね。

そうです。なかには入れさせてもらえないようですけれども。


大村正樹

十分それは国にしても東電にしても重要な情報源になっていますよねぇ。

前回もいいましたけれど、ロボットにはロボットに向いている仕事があると思うんですよ。


大村正樹

はい。

これはまさにロボットに向いている仕事で、人間にすごく役に立っている仕事だと思います。


大村正樹

ですよねぇ。この番組は、明日を担う子どもたちにいろんなサイコーの方からメッセージをいただいているんですが、先生すごいです!

そんなことないです。


大村正樹

楽しかったですもの。

楽しいの大好きですから(笑)。


大村正樹

ロボットでもいいですし、これからの子どもたちにメッセージがありますか?

そうですねぇ。もっともっとロボットのよさ面白さを知って、ロボットに入ってきてもらいたいです。そのためには、いろんなものをぶちこわして欲しいですね。


大村正樹

はぁ。

要するに例えば昔風の時計−今の時計はこわしても面白くないですが、昔の時計はこわすと面白いですよ。分解して中を見てみる。例えばシャンプーがありますよね。押すと1回分だけ出ます。どうしてそんなことができるんでしょう。分解してみればわかりますよね。


大村正樹

はい。

そういう「なぜ?」というのをぶちこわして欲しいんですよ。それでお父さんお母さんに怒られて欲しいですね。


大村正樹

当たり前のことの仕組みを知るという…。

そうです。当たり前じゃないですよ、何にも。ほんとに当たり前のようにできているということが素晴らしいと思うんです。


大村正樹

はい。

そういう人たちが大きくなっていくと、やがてロボットはいなくなると思います。なぜかというと、すべてがロボットになってしまうので「これがロボット」、「あれがロボット」という必要がなくなってきますね。それが理想的な社会じゃないかと思っています。


大村正樹

もうロボットがロボットと呼ばれない時代が来るということですね。

そうですね。お医者さんは病気を治します。病気のない世の中をつくろうとしているわけですね。われわれもロボットをつくっていますが、「ロボットということが意識されない世の中をつくりたいな」と思ってますね。


大村正樹

その時代、来るでしょうね。

来ますよ。


大村正樹

当たり前のように機械にスイッチを入れて充電し1日が始まるという。自分たちの目覚ましと同じようにロボットにスイッチを入れるのが、サポートとしてあるかもしれないですね、日常生活の中に。

たぶんスイッチも入れないじゃないですか(笑)。


大村正樹

入れない? あぁそうか。ちょっと僕、自慢できることあるなぁ。子どもの頃からブラウン管のテレビとか必ず分解してました。

わぁ、素晴らしい! 素晴らしいです!


大村正樹

ありがとうございます(笑)。

私の研究所に来てください。


大村正樹

ぜひお願いします。楽しいお話を2週間にわたってうかがいました。今週のサイコーは、千葉工業大学教授の富山健先生でした。ありがとうございました。

ありがとうございます。


大村正樹

いやぁ、物をこわすって怒られない程度にやってみるといいかもね。機械に詳しくない人は、機械じゃない領域を見るという手もあるよね。「この動きがどういうふうにして働くか?」とか。機械に詳しくてコンピューター的なものに興味がある人は、「これはこういう電気系統でこうなっているんだ」とか。やっぱりこわすことによっていろんな発見があると思いますからね。それでは、もう春休み始まってるよね。キッズのみんなも楽しいお休みを過ごしてくださいね。バイバ〜イ!