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「キッズの質問に答えます」(2)
コーチャー/寺門和夫さん(科学ジャーナリスト)
寺門和夫さんのブログはコチラ>>http://blog.scienceweb.jp/
大村正樹&寺門和夫

大村正樹

キッズのみんな、こんにちは。6月になりました。サイエンステラーの大村正樹です。今週も東京浜松町にある秘密の科学研究所シークレットラボからお送りします「大村正樹のサイエンスキッズ」。さぁ、今日もキッズからの質問に答えますよ。ユニークな質問が来ていますよ〜。科学ジャーナリストの寺門和夫さんがスタンバイしているけれど、この質問には答えてくれるかなぁ?何でも知っているから大丈夫か。お知らせの後で〜す。


大村正樹

今週のサイコーも科学ジャーナリストの寺門和夫さんです。こんにちは。

こんにちは。


大村正樹

キッズからの質問が来ていますよ。ドラえもんの話ですね。千葉県のチカシ君、小学校4年生。「この前、妹とドラえもんの映画をテレビで見ていたら、パラレルワールドという言葉が出てきました」。−見てないなぁ。「ほかの漫画でも見たことありますけれど、パラレルワールドって何ですか?インターネットで調べたけど、いまいち難しくてわかりませんでした」。このドラえもんは見てないんですが、寺門さん、パラレルワールドって何ですか?

はい。たぶん非常に難しくて、僕にもちゃんとこたえられるかどうかわからないんですが…。一般にパラレルワールドといっているのは、この世界と別な宇宙があって、そこには自分と同じようなもう一人の自分が住んでいて別な生活をしている。そういった並行して存在する世界という、基本的にはそういう考え方だと思います。


大村正樹

よくSFに出てくる話ですよね。

そうですね。アニメやSFに出てきます。実はこれをまじめに研究している学者もいて、非常に難しい物理学の理論の中にも入ってくる考え方なんですね。


大村正樹

ということはラジオの前のキッズと、もう一人同じキッズがいるという。

そうです。あるいは、もう一人だけではないかもしれない。今、物理学者が考えているパラレルワールドはいろんな説があり、僕も全部説明することはできませんが、ある考え方では宇宙が誕生してから今になるまでにいろんな事件が起こっているわけですね。


大村正樹

はい。

いろんな事件が起こるたびに別な世界ができて、たくさんの宇宙が今存在しているという考え方なんです。そういってもわかりにくいのでチカシ君の例でいいますと、例えばチカシ君が映画館へ映画を見に行ったとします。


大村正樹

ええ。

その時にドラえもんの映画を見に行ったんだけれど、同じところで面白そうな映画をやっていて「ドラえもんを見ようか、それとも別な映画にしようか?」、ちょっと考えたとします。その結果、チカシ君はドラえもんの映画を見たとします。今のここに存在しているチカシ君は、ドラえもんの映画を見たチカシ君が存在していますね。


大村正樹

はい。

ところが、その映画館でもしも別な映画を見たとしたら、別なチカシ君が別な宇宙に住んでいるかもしれない。つまりその時点で宇宙がわかれて…。


大村正樹

わかれている。

ドラえもんの映画を見たチカシ君とドラえもんの映画じゃない別の映画を見たチカシ君の宇宙がそこで分かれて、もう一人別なチカシ君−ドラえもんを見ないチカシ君がどこかに存在しているかもしれないという考え方です。


大村正樹

はい。

そうすると、こっちの世界にいるチカシ君からすると、自分がここにいてもうひとつ別の世界にドラえもんの映画を見なかった自分が存在している。それから、向こうの世界のチカシ君からみれば、ドラえもんの映画を見ていなかった自分がいて、別な宇宙にはドラえもんの映画を見た自分がいると考えている。それはどっちが正しいかとか、どっちがウソかホントかではなく並行して実際に両方が存在しているという考え方、それがパラレルワールドなんですね。


大村正樹

映画を見たチカシ君と映画を見てないチカシ君が枝分かれして、それがまた元に戻ってばったり会うことはないですか?

それはあり得ないというふうにいわれてます。


大村正樹

へぇ〜。

そこで宇宙がわかれてしまうと、お互いに別な宇宙なので通信する手段がない。これは理論の世界で成り立つ話であって、例えばどこかで通信してもう一人の自分と話をすることはできない。そういった考え方ですね。


大村正樹

なるほど。次は埼玉県のマリちゃん、小学校5年生。「新聞に宇宙の年齢は138億2,000万年歳とありました」。−すごい、天文学的な年齢ですね(笑)。「宇宙の年齢138億2,000万年歳はどうやって調べているんでしょうか?想像もできないので教えてください」。確かに子どもからしてみると「何で?」と思いますよねぇ。

そうですねぇ。


大村正樹

誰がどうやって決めたんだろうか?

これもとても難しい問題で、うまく説明できるかどうかわかりませんけれども。実は、しばらく前は宇宙の年齢ってあまりよくわかってなくて100億年だとか200億年だとか、私も昔はそういうふうな原稿を書いていました。それぐらいラフな数字しかなかったわけです。


大村正樹

アバウトでよかったんですね。

ところが、今から10年ぐらい前にアメリカが「ダブルマップ」という衛星を打ち上げて、宇宙の果てを詳しく観測したんですね。その結果、宇宙の年齢は137億年だということがわかったんです。


大村正樹

ほぉ〜。

この時はいろんな調べ方があって一番果てを調べるのと、それから宇宙は膨張してるので膨張の速度を調べる。これはほかの衛星を使って調べるんですが、もちろん物理学の理論を使い、いろんなことを総合して考えると137億年ぐらいとなって、だいたい今まではそれぐらいだと考えられたんですね。


大村正樹

はい。

ところが、最近ヨーロッパが打ち上げた「プランク」という衛星が新しい観測の結果を発表した。それによると、もっと正確に決まって138.2億年と発表されたということです。


大村正樹

1億2,000万年プラスされたんですね。

そうですね。1億年ぐらい年をとったからといってそう影響はないんですが、科学的にいうと、やっぱりそれだけだんだん正確に観測できるようになったことが大事なわけです。


大村正樹

1億2,000万年も年をとったってことは、その間に何世代の人間が入れ替わっているかという(笑)。そう考えるとすごい年齢ですよね。

そうですね。しかも、これやっぱりすごいのは、だんだん宇宙がどうやって生まれてきて今まで来たかがほんとによくわかってきてるんですね。この「プランク」という衛星だけではなく、いろんな観測でわかって、それらを総合するとだんだん宇宙の歴史がわかってきたわけです。


たぶんこのマリちゃんも聞いたことがあると思いますが、ビッグバンという宇宙の始まり。


大村正樹

ビッグバン。

宇宙の始まりってほんとに小さな火の玉から始まって、それが膨張して今になったわけですけれど、そういった宇宙の最初は非常に熱くて熱くて、しょうがないぐらい熱かった。それがだんだん広がってきて、今の非常に広く冷たい宇宙になってきたわけです。


大村正樹

はい。

そういった熱い宇宙が今の宇宙になるまでの温度などを調べると、宇宙の年齢がだんだんきれいに決まってくるようになった。ですから、これはすごい科学の進歩です。


大村正樹

もうある程度この138.2億歳は決定的な数字ですか?

また次の衛星が打ち上がって、もっと厳密に調べればもっとわかるかもしれません。もちろんこのプランク衛星の発表は138.2億年ですがプラスマイナスいくつというふうに誤差があって、その範囲の中となっていて完璧にきちっと決まっているわけではありません。科学の研究は常にそうですが、だんだん精度が高まるけれど、やっぱりきちんと数字が決まらないである程度の範囲の中でだんだんとその範囲がせばまっていくという感じでしょうね。


大村正樹

こういう話を聞きながら、実は人間よりもはるかに高等な生き方をしている宇宙人がどっかにいて、「けっ、人間が勝手にいってるよ」と思っているかもしれないと考えると、またロマンを感じてしまうんですが(笑)。

その辺も今度のことで僕が考えているひとつで、われわれは今こうして存在してますが、当然ほかの天体にはほかの宇宙人がいるかもしれませんね。ただ宇宙の性質はわれわれが観測する宇宙も、それからほかの場所で観測する宇宙も全く同じに見えているはずなんです。


大村正樹

ええ。

だから、どこかよその天体にいる宇宙人が宇宙の果てを観測して「宇宙は何億歳ぐらいだろう?」と考えたら、やっぱり138.2億歳と観測しているかもしれないんですよ。


大村正樹

ほぉ〜。

つまり宇宙のどこへ行っても見えている宇宙は同じなので、われわれよりもっと文明が発達していればもっと正確に定まっているかもしれないけれど、おそらくわれわれが見ているのと同じ宇宙を見ているわけですから、同じような結論に達してくるんじゃないかと。


大村正樹

じゃあ、この数字は全くもって当てずっぽうじゃなく、それなりに理論めいたものなんですね。

そうです。宇宙のどこででも成り立つ数字だと思います。


大村正樹

へぇ〜。いやぁ、面白かった!もう時間ですね。またお願いしますね。

はい。どうも失礼しました。


大村正樹

今週のサイコーは、科学ジャーナリストの寺門和夫さんでした。ありがとうございました。

どうも。


大村正樹

パラレルワールドね。ある程度年をとってくると、人生に分かれ道はたくさんありましたよ。そうなると、大村正樹の分身はどれぐらいいるんだろうね。寺門さん曰く「分身になって分かれた人には、もう二度と会うことはない」というから、そっちの道に進んだ大村正樹は元気かなぁ?それでは6月です。元気に過ごしていきましょう。来週もまた夕方5時半に会いましょう。バイバ〜イ!