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「睡眠の大切さ」(2)
コーチャー/神山潤(こうやまじゅん)さん(地域医療振興協会「東京ベイ・浦安市川医療センター」CEO)
神山潤さん オフィシャルWEBサイトはコチラ>>http://www.j-kohyama.jp/
大村正樹&神山潤

大村正樹

キッズのみんな、こんにちは。サイエンステラーの大村正樹です。今週も東京浜松町にある秘密の科学研究所シークレットラボからお送りします「大村正樹のサイエンスキッズ」。みんな、眠りに関して先週学習したけれど、何で眠るのか分かりませんでした。でも、動物たちも寝ているよね。やっぱり地球上の生き物は、みんな寝ているような気がするんだよね。この後、ちょっとサイコーにうかがってみたいと思います。今日も眠りに関するお話です。


大村正樹

今週のサイコーも地域医療振興協会「東京ベイ・浦安市川医療センター」CEOの神山潤さんです。こんにちは。

こんにちは。


大村正樹

神山さんは「子どもの早起きをすすめる会」発起人でいらっしゃいます。睡眠に関して、人それぞれその人に合った睡眠時間があるというお話を先週うかがいました。睡眠のよさというか、あり様みたいなものはまだ解明されてない。「何のために人は寝るのか?」、よくわかってない。だけど、動物も寝ますよね。生きているものはみんな寝るんですか?

え〜と、例えばマグロはずーっと泳ぎ続けているんですよ。


大村正樹

魚。

マグロが寝ているかどうかは、よくわかってないところがありますね。


大村正樹

ほぉ〜。

ただサメはじっとしている時間帯とそうでない時間帯があるということで、たぶん眠りに近いような状態があることはわかっているんですけれど、マグロが寝ているかどうかは実際よくわかってない。ずーっと泳いでいる。


大村正樹

動いているということですね。回遊し続けている。

彼らは止まると死んじゃうらしいですよね。


大村正樹

ふ〜ん。

ほんとにどうなのか突きつめられると、まだわかってないことが多々あるんじゃないでしょうか。


大村正樹

生き物を観察してると、動かない時間は確かにありますよね。

はい。


大村正樹

でも、イコール目を閉じているかというとそうでもなくて、じゃあ睡眠をとっているのか休憩しているのか、あるいはボーッとしているだけなのか?(笑) 実は休憩しながらも活動しているのか、物事を考えているのかいろいろあると思うんですけれど。全く寝ている気配がないのはマグロぐらいですか?

ハエ

マグロは確かにそうですよね。あとはたいてい、それこそ昆虫のハエなどでも−実はハエはすごく研究しやすいらしく、眠りについての研究をされているんですが、静かにしている時とそうでない時がはっきりしていたりというのもあるし、それからハチでも明らかにありますし昆虫類もやっぱりそういうのは確かめられています。


大村正樹

動いている時と動いてない時が?

はい。


大村正樹

じゃあ、ほぼ100パーセントに近い形で。

ただ僕がアメリカに留学している時のボスは、ほぼ100パーセントといわれることをすごく嫌がっていて、「まだまだ調べられていないものがたくさんあるんだから、それはまだわからないだろう」というのがボスのアメリカ人の立場でした。そのマグロなどを例に出して。


大村正樹

立ったまま寝る動物とかいますよね。

いるらしいですね。


大村正樹

でも人間は立ったまま寝られない。ガクンとなるじゃないですか。

うちの父は戦時中の訓練の時に、それこそ「歩きながら寝た」みたいなことをいいますからね。


大村正樹

歩きながら寝る!?

はい。


大村正樹

それはもう意識が飛んじゃったということですよね。

だからおっしゃるように歩いているわけですから「ほんとに寝ているのか?」といわれると、それは確かに違うのかもしれません。


大村正樹

肉体は疲れているわけですから。

脳は寝ていたのかもしれませんね。例えばイルカやクジラは脳の半分ずつ寝るわけですよね。片一方は寝ていて片一方は起きていることで、脳の休憩をとっているんだろうと思います。


大村正樹

なるほど、よく分かります。確かに僕も山登りしてひたすら登っている時は、寝ながら歩いたという記憶がありますねぇ。先週、先生は4時に起きるとおっしゃっていました。4時に起きる、このメリットは何でしょうか? 太陽の光がある時間がいいというんですが、僕なんか実は4時過ぎに起きちゃうんですよ。カーテンを使ってないので、日の光がある時に起きているんですけど、太陽の光を浴びることは人間にとってプラスなんですか?

基本的に人間の脳の中には時計があって、思考叉上核(しこうさじょうかく)という脳の中心部に近いところのある部分に時計があるんですね。そこで基本的なリズムがつくられて、そのリズム情報が全身の細胞−全身の細胞にもやっぱり時計があるわけですね。いわゆる親時計が脳にあって子時計が全身の細胞の中にあるという感じになるんですが、その親時計の周期はだいたい24時間よりもちょっと長い。全員が全員ではないんですが、大多数の人が24時間よりもちょっと長いんですね。


大村正樹

親時計。

毎日毎時この親時計の周期を短くして地球時間に合わせないと、地球で暮らす上では不都合、ズレがどんどん大きくなって時差ぼけのような状態になり不都合が生じるんですね。その長い周期を短くする作用が、朝の光というか最低体温の後に浴びる光です。最低体温というのは人間はだいたい明け方にあって、午後から夕方にかけて最高体温という体温にも周期がある。その最低体温の後に浴びる光によって親時計の周期が短くなることがわかってきているので、朝の光を浴びることは自分の体の中にある時計を地球時間に合わせる上では非常に大事な意味があると思いますね。


大村正樹

ほぉ〜。

だから朝早く起きることが大事だと。逆にいうと、夜に光を浴びちゃうと最低体温の前に浴びた光には周期を延ばしてしまうという作用があるので、やっぱり夜更かしをしちゃうと元々地球時間と体の中の親時計にはズレがあるため、そのズレを増長する可能性があるわけです。そういった意味で、夜の光を浴びてしまうのは決して好ましいことじゃないんだろうと思います。


大村正樹

ほぉ〜、なるほどね。すごく重要なことだと思うんですが、僕も受験時代にそうだったし家の子どもたちもそうですが、睡眠時間を削ってまで勉強する子どもたちが多いじゃないですか。

全く意味ないですねぇ。


大村正樹

やっぱりそうですか!

全然ナンセンスですよねぇ。


大村正樹

はい。

適切な睡眠時間よりも少ない睡眠時間で脳そのものが働かなくなっちゃうんだから、それは無理ですよ。受験勉強はあくまで勉学のひとつじゃないですか。そうするといろんな意味での学習を考えると、そこで短期的にやっても全部はなかなかおぼえられない。ちょっと違う話になっちゃうんですが、何かつらいことがあると眠れなくなりますよね。


大村正樹

はい。

つらいことがあって眠れなくなる。「あぁ、やだな。もっと眠りたいな」と思うじゃないですか。だけど、あれは「睡眠時間が短いことによって記憶されないがために、嫌なことを忘れるためのある意味メカニズムだ」とおっしゃっている先生もいる。


大村正樹

ええ。

つらいことがあった時に眠れちゃったら、そのつらいことを全部おぼえちゃうというような考え方もあるんですね。つまり何を申し上げたいかというと、睡眠時間が短くなって眠れないということは、その時におぼえたことをおぼえられなくなっちゃうのと同じで、睡眠時間が短い状態でいくら学習してもたぶん身についてないと思います。


大村正樹

意味がない?

はい。


大村正樹

今、世の中では病院へ行くと、「枕外来」という昔から考えると全くジャンルの違うお医者さんがいらしたり、あと睡眠に悩む女性とかいろいろな睡眠ビジネスがあるじゃないですか。

僕などもある意味それに加担しちゃった面があるのかもしれません。「眠りが大事だ」、「みなさん寝てないからもっと寝ましょうよ」といいますよね。そうすると、眠りが義務になっちゃうんですよ。前回もいいましたように眠ること食べること出すこと、体や脳を動かすことは人間が生きるための基本条件ですから、おそらくこころよさ、“快”(かい)があるはずなんですよ。食事もやっぱりみんなで楽しくこころよく食べる。眠りも「今日はどんな夢を見るのかなぁ?」「明日の朝起きたら、どんなに気持ちいいのかなぁ」と、眠りをこころよさ“快”にしなきゃいけないのに、何か今の睡眠ビジネスは眠りを義務化しちゃっている。それにみんなせき立てられて「眠らなきゃいけない」と思っちゃっている。これは僕が「子どもの早起きをすすめる会」をつくった時の基本概念と全く正反対、真逆にいっちゃっていますよね。


大村正樹

あぁ〜。

みなさん、気持ちいいことをしたらどうですか。食にしたって眠りにしたって、体を動かすことにしたって排せつにしたって全部こころよさがあるわけですから。“快”の追求というのを日本人はもうちょっと思い出してもいいんじゃないのかなと思うんですけどねぇ。


大村正樹

わかりました。今週のサイコーは、地域医療振興協会「東京ベイ・浦安市川医療センター」CEOの神山潤さんでした。どうもありがとうございました。

ありがとうございました。


大村正樹

神山さんは最後に“快”という言葉を使っていましたねぇ。“快”、爽快の“快”ですよ。こころよいという“快”ですよ。だから、こころよく眠ることを快眠といいますね。こころよく食べる快食、こころよくトイレに行く快便。“快食快眠快便”、人間が生きてく中で必要なことかもしれませんね。眠りに関して「眠れない」「寝たりない」とかいろいろあるかもしれないけれど、やっぱり自然のままに眠りたい時に眠って起きたい時に起きるという。そういう暮らしになれればいいですけどね。僕らの暮らしって、けっこうカツカツだもんねぇ。決まっているもんねぇ。何か変わればいいなぁ。それでは、また来週も夕方5時半に会いましょうね。キッズのみんなも楽しい週末を。バイバ〜イ!