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「秋の虫」(2)
コーチャー/谷本雄治(たにもとゆうじ)さん(プチ生物研究家)
大村正樹&谷本雄治

大村正樹

キッズのみんな、こんにちは。サイエンステラーの大村正樹です。今週も東京浜松町にある秘密の科学研究所シークレットラボからお送りします「大村正樹のサイエンスキッズ」。さぁ、今回も秋の虫を取り上げます。コオロギ、スズムシ、マツムシなどがいるけれど、満を持してサイコウ(最高)の虫の声をご用意しましたからね。お知らせの後、みんなも一緒に聴いてね。


大村正樹

今週のサイコーは前回に続きまして、プチ生物研究家の谷本雄治さんです。こんにちは。

こんにちは。


大村正樹

先週うちの助手が提供した虫の声が、イマイチだとおっしゃったので…今回は完璧なスズムシの鳴き声を聞いていただきたいと思います。いきますよ、スズムシ。
(※スズムシの鳴き声)

いいですねぇ、この間より(笑)。いいですねぇ!


大村正樹

よかった、よかった。あぁ、よかった!

やっぱり聞いていて心地よいですよねぇ。


大村正樹

先週は顔をしかめて「これは違う」と。

ハハハハ。


大村正樹

「もう帰る」といい出した時には、どうしようかと思ったけれど(笑)。よかった、よかった。これが秋にふさわしいスズムシ。

スズムシのいい声ですねぇ。これはいいと思います。


大村正樹

そうですか。さらに、谷本さんが秋の虫では秀逸というエンマコオロギの声を。あらためて、もっとレベルアップしたエンマコオロギの声です。

楽しみに聞きます。
(※エンマコオロギの鳴き声)


これもいいですねぇ!いい鳴きしてますねぇ。


大村正樹

つかみOK! よろしくお願いしますよ〜、谷本さん。

いやいや、いい声で。


大村正樹

先週うかがったのですが、これらの秋の虫は羽根をこすり合わせて鳴くという。これを「声」といえるんですか?

そうですね。のどで鳴いているわけではないですが、それに関わるちょっと面白い話があるんです。私はスズムシを小学校3年の時からずーっと飼い続けているんですけれど、子どもの頃に近所の大人の人たちが「スズムシのいい声を出すためには、あめ玉をなめさせたほうがいい」というんですよ。


大村正樹

ええ。

「あめ玉をなめればのどがまろやかに、声もまろやかになるのかなぁ」と子ども心に信じて一生懸命やったんですが、よく考えたら今おっしゃったようにスズムシは羽根をこすり合わせて鳴く昆虫ですから、のどで鳴くわけではないですね。


大村正樹

はい。

だから、あめ玉をなめてもいい声が出るわけではない。その時には「ちょっとこれ、おかしかったなぁ」と思ったんですが、後々考えてみますと昆虫はだいたい甘いものが好きなんですよね。甘いものを食べればエネルギー源になる。それで「一生懸命鳴くぞ!」と羽根をいつも以上に、先ほど聞いたみたいに鳴けば結果的にあめ玉をなめていい声で鳴く。


大村正樹

あぁ。

声というのは、例えでいってるだけですね。羽根をこするといっても、あまり面白くないですからね。


大村正樹

なるほど。エネルギー源。

エネルギー源にはなっていると思います。


大村正樹

へぇ〜。エンマコオロギがとてもきれいな鳴き方をするということを先週初めて知ったんですけれど、コオロギという漢字を調べたらメチャメチャ難しい。

難しいですね。


大村正樹

当て字だろうけど"燃える闘魂"の闘うという字に、虫偏に恋みたいな漢字と虫偏に卒業の卒みたいな、円周率の率みたいな。これでコオロギ(蟋蟀)と読む。

今おっしゃった「闘う」の部分をはずしていただいて後ろの虫偏がつく部分、それが蟋蟀と日本でも使っているんですけれど、コオロギのことを「しつしゅ(蟋蟀)」というので、大村さんがおっしゃった「闘う」という文字を入れると「とうしつしゅ(闘蟋蟀)」。闘うコオロギを簡単に「とうしつ(闘蟋)」といったりもするんです。


大村正樹

ええ。

これは日本ではあまりそういう習慣はないですけれど、中国では唐の時代−今から1300年ぐらい前ですか、そういった時代からコオロギ同士を闘わせるという遊びに大の大人が熱中してきた歴史があるんです。


大村正樹

コオロギは闘う昆虫ですか?

闘う昆虫だったんです。


大村正樹

日本ではコオロギは漢字2文字だけれど、中国では闘うという文字を入れてコオロギ(闘蟋蟀)というふうになったんですか?

その一文字の違いが大きくて、ずっと先程来お話しているように秋の鳴く虫の声を日本人は楽しみますよね。鳴き声を楽しむ。中国のそういう人たちは、闘いを楽しむ。闘わせるためなんですね。


大村正樹

どんな闘いをするんですか、コオロギ同士で?

オス同士ですが1匹ずつ闘技場といいますか、容器の中に入れて、真ん中に仕切りがあると思ってください。隣同士に1匹ずつ置いて仕切りをまず立てておいて、仕切りをあげてけしかけるような道具があるんです。コオロギは自分のヒゲを触られたりすると嫌がるんですね。ヒゲをちょこちょことこすったりすると怒り出して、「これは目の前にいる相手のコオロギが俺をけしかけたんだな」と闘いになるわけです。


大村正樹

はい。

それで、ほんとにキバを向くような感じで闘うんです。


大村正樹

へぇ〜。勝ち負けは?

勝ち負けは、片一方が負けてこそこそと逃げ出したりすれば勝どきの声をあげるんです。


大村正樹

ほぉ〜。鳴くんですか?

鳴くんです。「俺の勝ちだ!」と宣言するんです。


大村正樹

ヒュルーン、ヒュルーンと?

もっと強い声ですが、そうすると相手のほうは1回負けると基本的にはもう闘おうとしない。


大村正樹

ほぉ〜。

そういったコオロギのケンカ遊びですね。それを「とうしつしゅ(闘蟋蟀)」と中国ではいってきたんです。これはまた日本の虫の鳴き声を聞く文化とは違うんですけれど、非常に興味深いですね。


大村正樹

一番きれいなのは、エンマコオロギでいいんですか?

はい。


大村正樹

それは、谷本さんのいわゆる独断で決めた一番?

そうですね。個人的にいいと思っていて、世間一般にはこういう例えがあるんですが"鳴く虫の女王"といわれるのがいまして、カンタンという虫です。


大村正樹

カンタンというのが鳴く虫の女王ですか?

はい。


大村正樹

カンタン? 「簡単」だって(笑)。本当にあるの? それが鳴く虫の女王?

はい。


大村正樹

これから秋、東京でも聞けますか?

毎年、「カンタンの声を聞く会」という催しがあると思います。


大村正樹

聞こう! これからいきますよ、鳴く虫の女王。
(※カンタンの鳴き声)

カンタンは、ひと鳴きが長いんですよ。これ、いつまで続くかわからないんですが、私が飼ってた時には20分ぐらい鳴くことがあったんです。


大村正樹

へぇ〜。延々と?

たぶんこのまま流れていると、放送終わっちゃう。


大村正樹

終わっちゃう(笑)。簡単には終わらないんですね、鳴き声が。これ、女王?

女王とはいうんですが、実際に鳴くのはオスです。


大村正樹

アハハハハ。

これも、物の例えということで。


大村正樹

ハハハハハ。でもいいじゃないですか。これ、聞いたことあるかも。

あるかもしれないですね。くず湯にするくず粉、いわゆる雑草でくずの葉っぱとか秋を代表する植物のハギのところにけっこういるんですね。


大村正樹

ふ〜ん。虫をつかまえるには、どこでつかまえればいいですか?

鳴く虫はそんなに遠くへ行かなくてもいいんです。エンマコオロギやミツカドコオロギとかけっこう身近にいまして、草むらでまず鳴いている方向を確かめる。そのためには自分の耳の後ろに手を当てて、アンテナのようにちょっと首を振ったりして音の方向を確かめて近づいていく。


大村正樹

ええ。

それで目の前で鳴いているのが見えたら、コップのようなもの−コップでもいいんですが、「コップのような」というのはいってみれば両方が抜けたようになっている竹筒の片方に網でも張っておく。あるいは布キレに輪ゴムでふたをしておいて、鳴いているところをかぶせるんです。


大村正樹

はい。

そうすると虫は上のほうに行こうという習性があるものですから、筒の下から逃げるんではなく上のほうに来る。それを用意した虫かごなどに、上の布の部分をはたいてやると虫かごに落ちるという形でけっこうつかまえることができます。


大村正樹

草むらに行けばとれるわけですね。

はい。


大村正樹

いやぁ、面白かった。もうおしまいですね。面白かったですね、2週にわたって。また、ぜひ来てください。

はい、ありがとうございます。


大村正樹

今週のサイコーは、プチ生物研究家の谷本雄治さんでした。ありがとうございました。

ありがとうございました。


大村正樹

これから虫をとりたいキッズもいるんじゃないかなぁ。草むらに行くと、秋の虫は簡単に採集できるということですね。筒状のものの片方にネットを仕込んで、筒でパッとつかまえる。そうすると「虫は上のほうに行く習性があるのでネットに入ってきます」ということでした。それでは、来週もまた夕方5時半に会いましょう。キッズのみんなも楽しい週末を。バイバイ!