
キッズのみんな、こんばんは。サイエンステラーの大村正樹です。今週も東京浜松町にある秘密の科学研究所シークレットラボからお送りします「大村正樹のサイエンスキッズ」。この間、新語・流行語大賞が決まったけれど、みんなもおぼえている言葉っていくつかあると思うんだよね。例えばちょっとイヤな話だけれど「PM2.5」とか、けっこう話題になったでしょ。それ聞いてマスクしたキッズもいたと思うんだ。これ、何だか考えたことある?お父さんお母さんに聞いたことある?先生もよくわからなかったと思うんだよね。お知らせの後、PM2.5を研究しているサイコーが登場しま〜す。

今週のサイコーは、慶應義塾大学医学部教授の井上浩義さんです。こんばんは。
こんばんは。

今年はたぶんキッズたちも聞いたと思うんですがPM2.5。これはよくわからないけれど「何かこわいよねぇ」という空気です。PM2.5の研究を10年前からしていらっしゃって、アーク出版から『ここまでわかったPM2.5本当の恐怖』という本も出版されています。PM2.5、まず漠然としか僕らはわかってないじゃないですか?
はい。

今、大気中にあるといわれてますよね。吸い続けると僕ら、ラジオの前のキッズたちの将来はどうなるんですか?
一番大きいのは、やっぱり肺の病気ですね。

肺の病気。
肺の病気が一番多くて、その次は循環器といって血管とか心臓の病気が増えているんですね。現在、世界では7600万の人がこのPM2.5で寿命を縮めている。これはわれわれの報告ではなくて、WHOという国連の機関がまとめた報告で7600万人という数字が出ています。

7600万人というと、日本人の6割以上じゃないですか!
そうですね。

6割以上の人が…。
PM2.5で寿命を縮めているといってるわけです。

それは恐ろしいですね。でも、見えないものですよね。
そうなんですよ。

予防できるかというと、マスクすればいいという簡単なものじゃないですよね。
簡単なものじゃないんですね、それが。

詳しくPM2.5のことをうかがっていきましょう。PMというと午後ですよ。PM 2.5というと午後2時半かと思っちゃいますけれど、そもそも語源は何ですか?
PM2.5の「P」はパーティクルといって小さな微粒子、粒です。

ちっちゃい粒。
「M」というのはマターといって、これは物質です。

パーティクルマター。
はい。ですから小さな物をすべてPM2.5。そしてPM2.5の「2.5」というのは、大きさをあらわします。2.5は2.5マイクロメーターといって、1ミリの400分の1です。

1ミリの400分の1。
はい。定規を持ってきて1ミリを見ますよね。それを400に割った時に、その大きさより小さいものがPM2.5というんですね。

ホントにちっちゃい、ホントにちっちゃい物質。
これはすみません(笑)、もう肉眼では見えません。

日立ハイテクノロジーズの電子顕微鏡は?
電子顕微鏡は見えます。

あっ、見えますか!
見えます。

今度、見に行こう! どんな形をしているんですか?
形はさまざまです。

えっ!
ですから、2.5マイクロメーターよりも小さいものはすべて含みますから。

そうなんですか!
そうです。ですから、例えば石が小さくなったものとは決まってないわけです。

いやぁ、知らなかった。
だから、逆にいえば水滴がありますよね。水滴の小さな水滴も、実はPM2.5というんです。

ミクロの霧とかありますけれど。
そうです、そうです。あのミクロの霧もPM2.5です。

有毒物質もPM2.5でもあるし、水の霧もPM2.5?
ええ。

何だ!
だから、それを全部まとめてPM2.5という名前で呼んでいるんですね。

すっごい“目からウロコ”です、今。
ありがとうございます(笑)。

みんな、わかった? 1ミリの400分の1のサイズ。
はい、より小さいサイズですね。

これよりちっちゃいものを全部PM2.5といいます。だから、みんなの目に見えないところに実はPM2.5はふわふわと浮遊しているわけですね。
浮遊しているわけです。

でも、害があるかないかは別問題。
別問題です。

有害なPM2.5といったら何ですか?
一番有害なPM2.5は、例えば水滴の中に硫黄酸化物とか窒素酸化物とかいわれる体に非常によくない…。

吸い込んだら?
吸い込んだらよくない。

死んじゃうようなもの?
死ぬまではいかないですけれど、肺が傷ついたりあるいはのどが傷ついたり…。そういうものが含まれた水滴などが一番こわいです。

あぁ。
あるいはもっと小さいものですと、元々肺の病気を持っている方、血圧が高いとか心臓が悪い方は小さな物質が体の中に入っていって血管を詰まらせるんですね。

へぇ〜。ちっちゃいですものね。
ちっちゃいので詰まらせてしまうんです。そうすると今まで流れていた血液が流れなくなったり、あるいは今まで呼吸ができていたのができなくなることによって病気が出てくるんですね。

あまりにも小さなものですから、それを摂取したから明日すぐに病気になるとかという問題ではなくて?
はい。

長い長い時間をかけてということですか?
そうですね。ですからすぐに影響が出る人は元々病気を持っている方たちで、そうではない健康な子どもさんなどの場合には、長い長い時間をかけて、いつのまにか肺の病気になってくる。あるいは循環器といって血管や心臓の病気になってくるというわけです。

PM2.5は物のサイズであることがわかりました。決してすべて悪者ではなくて、ただ体に害を及ぼすものがあることもわかりました。7600万人が身体的な被害を受けている。
実際に、ですね。

これ、僕らニュースとして知ったのは中国から来ているんだと思ってるわけですよ。中国はPM2.5の有害物質が多いという?
多いです。それは間違いない。

多い?
はい。

何が原因ですか?
一番多いのは、中国の冬場に都会で使われる石炭とか重油で、こういうものを燃やしたカスですね。

石炭とか重油?
はい、油です。石油ですね。そういうものを燃やした後に出てくるススみたいなものですね。

じゃあ、日本だって昔は蒸気機関車が走ってましたよね。
そうです、そうです。

それからエネルギーだって石油エネルギーがメインだったじゃないですか。
-
メインです。

場合によっては、そっちに戻ってくるわけですよね、エネルギーも。
-
そうです。

そうすると、かつての日本もPM2.5だらけだったわけですか?
-
そうです。

でも、その時は騒ぎになってなかったですよね。
-
それは、PM2.5が測定できなかった。

研究できていなかった?
-
できていなかったから。

先生のおかげですね。
-
いえいえ、違います(笑)。測定する人たちは工学部系の人たちで、その人たちが測定器を開発されたんです。

科学技術の進歩によって?
-
進歩です。

そういう1ミリの400分の1までが見えるようになった。
-
測定できるようになったんですね。

そうなんですか!かつて日本はそうだったけれど、今の中国ほどではない。
-
ない。

中国はPM2.5の発生源であることは疑いようがないんですか?
-
疑いようがないです。というのは去年の九州の五島列島−長崎の東シナ海に浮かぶ島があるんですが、そことか対馬という韓国に一番近い島でPM2.5が異常値を示したんですね。

ふ〜ん。
-
そこではもちろん車も走っていますが、そんなにたくさんの車が走ってるわけでもありませんし。

のどかな島ですものね。
-
そうです。そこでもPM2.5が異常値を示すのは違うところからやって来ているんだろうということで、測定してみると中国あるいは韓国からやって来ていることがわかった。

発生源は中国、韓国。
-
はい。

ちなみに日本は、PM2.5は発生している?
-
もちろん発生しています。

そこで悪いPM2.5はどういうところから発生していますか?
-
一番多いのが、やはり自動車の排気ガス。特に東京都はディーゼル車は乗り入れられない。

石原慎太郎さんが変えましたからね。
-
というような素晴らしいことになっているんですが、逆に周辺の千葉県や埼玉県というところでPM2.5は異常に高い値を示している。

ディーゼル規制がないから?
-
はい。

PM2.5のドーナツ化現象が起きているわけですか?
-
そうです。

へぇ〜。
-
確かに30年ぐらい前の日本の大気に比べると今の日本の大気はきれいにはなっているんですけれど、それでも硫黄酸化物という物質は半分、そして窒素酸化物はほとんど減っていません。

あっ、そうなんですか! 30年間で?
-
30年間で。

もう時間になっちゃう。この話は興味深いですよ。ぜひ来週ももっと熱いトークを展開してください。今週のサイコーは、慶應義塾大学医学部教授の井上浩義先生でした。どうもありがとうございました。
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どうもありがとうございました。

おさらいだよ。定規の一番ちっちゃいメモリ、1ミリ。これを400に割った1つ、1ミリの400分の1以下の物質をPM2.5と呼ぶ。来週はもっと詳しく話を聞いていきます。引き続き聞いてください。もうクリスマスムードですね。みんなも楽しい週末をねっ。バイバ〜イ!