番組内容
放送時間
番組概要
  「みんなの寅さん」第21回 2016年8月20日放送分 「名脇役列伝 その2」

文化放送「みんなの寅さん」 
・放送時間:文化放送 毎週土曜日6時40分~6時50分 

▪️山梨放送 土曜朝9時~
▪️北海道放送 日曜朝5時25分~

「みんなの寅さん」第21回 2016年8月20日放送分 「名脇役列伝 その2」

「ラジオで楽しむ"男はつらいよ"の世界『みんなの寅さん』」
主題歌第21作『男はつらいよ 寅次郎わが道をゆく』ヴァージョン(8/20のみ)

タイトルコール「寅さん名場面!」
寅さん名場面!第21作『寅次郎わが道をゆく』寅の改悛

さくら「九州から戻って来てからは、真面目にお店の手伝いをしてくれてるんですげど」
御前様「なるほど、近頃寅が生まれ変わったようだというもっぱらの噂はそのせいですか、なるほど」
さくら「でも、いつまで続きますか」
御前様「まあ、長続きするように、私からも仏様にお願いしてあげよう」
さくら「恐れ入ります」
御前様「もっとも寅のことは何度もお願いしたからなあ、聞いてくださるかどうか、難しいなあ」
さくら「...」
つね「今すぐお茶入れますからね」
客「ごめんください」
寅「はい、いらっしゃいませ」
客「お団子ください」
寅「おいくらの」
客「五百円のを一つ」
寅「ありがとうございます。おばちゃん、五百円のお団子一箱どうぞ」
つね「はいはい」
寅「きょうはお参りでございますか。あ、いいお天気ですね」
寅「あ、備後屋さん、いつもおりこうそうですね、どうも」

 娯楽映画研究家・佐藤利明です。「みんなの寅さん」今週も始まりました。
 本日の"寅さん名場面"は、第21作『男はつらいよ 寅次郎わが道をゆく』です。熊本県で、宿代が払えずに、例によってさくらにSOS。この時はさすがの寅さんも改悛の情を見せて、生真面目になって、御前様も一安心です。しかし、毎度「相変わらずバカか?」と言ってる備後屋さんに、「いつもお利口そうですね」とは極端な・・・果たして寅さんの反省はいつまで続くのでしょうか?

それでは「みんなの寅さん」すすめてまいりましょう!」 

タイトルコール「寅さん四方山話」
「男はつらいよ」シリーズの名場面とともに、寅さん博士の佐藤利明さんの、寅さんトリビア、名づけて「寅ビア」をお送りします。
 
「男はつらいよ」シリーズには、日本映画、演劇界を代表する名優たちが、ゲスト出演して、様々なキャラクターを演じ、それが物語に深い味わいをもたらしてくれました。というわけで、今週も「名脇役列伝 その2」をお届けします。

渥美清さんは昭和32年、初めて浅草から、喜劇人にとって檜舞台の有楽町の日劇に出演しました。その時共演したのが、ハナ肇とクレイジーキャッツでした。そのベーシストだった、犬塚弘さんも「男はつらいよ」には欠かせない俳優です。初めて犬塚さんが演じたのは、第7作『奮闘篇』の沼津駅前交番の巡査役でした。

名脇役列伝2 その1 犬塚弘 第7作『奮闘篇』

寅「あ、旦那、急がねえと、上野からの連絡、間に合いませんよ」
警官「ああ」
寅「これが・・・」
警官「うん」
寅「あ?」
警官「・・・」
寅「それで全部ですか?」
警官「いや、月給日前だからな、合わせて二千四百・・・二十・・・」
寅「いいでしょう。どうぞ、用立てておくんなせえ」
警官「いや、そうはいかないよ」
寅「何を言ってるんですか、旦那、急ぎの用じゃござんせんか、さ・・・私も月給日前ですから、2、3と、いいでしょういいでしょう。千二千三千500円と。何とかなるよ・・・な」

榊原るみさん演じる、津軽出身の太田花子を、なんとか故郷に帰そうとする寅さんと、犬塚さんのお巡りさん。二人ともなけなしの財布をはたいて、交通費を工面しようとします。朴訥で真面目な巡査と寅さんが、花子のために懸命になる名場面です。犬塚さんによれば、撮影当日、近くの旅館で、渥美さん、榊原るみさんとリハーサルを重ね、練り上げたところで、深夜になって、撮影を開始したそうです。

犬塚さんは、山田洋次監督の『馬鹿まるだし』に始まる「馬鹿シリーズ」に出演、山田演出に惚れ込んだ話を「みんなの寅さん」でしてくださいました。「男はつらいよ」シリーズでは、第21作『寅次郎わが道をゆく』では旅館の主人、第24作『寅次郎春の夢』では寅さんの幼馴染の大工さんを演じ、最終作となった第48作『寅次郎紅の花』ではリリーと寅さんを乗せるタクシー運転手役で出演されました。

犬塚さんと、井上ひさしさんの名作舞台「きらめく星座」で共演した、すまけいさんもシリーズ後期には欠かせない名脇役でした。第37作『幸福の青い鳥』から、福岡県は飯塚市に古くからある嘉穂劇場を寅さんが訪ねたシーンです。

名脇役列伝2 その2 すまけい 第37作『幸福の青い鳥』

寅「ああ、そうだ、オレは前この小屋で東京の歌舞伎を観たことあったっけなあ。高麗屋。あら、いつだったっけ?」
おじさん「昭和38年3月10日」
寅「はあ、好きだねえ、フフフ。勧進帳、よかったなあー」
寅は「おじさん、おじさん」
寅「よお!」
寅「とお!!」
寅「いやあ!!」
寅「高麗屋!!!」
寅「上手いねえ!!」
おじさん「へへ」
寅「おじさん、元役者やってたんじゃないかい?」
寅「やってたんだよー、ハハハハ」
おじさん「フフフ、わかるー、フフフ」

すまけいさんは、昭和10年に国後島に生まれ、敗戦の二日前に根室に引き上げて、昭和30年代に俳優となります。昭和40年代「すまけいとその仲間」を結成。演劇界の伝説となり「アングラの帝王」と呼ばれましたが、昭和47年に引退。それから13年後、井上ひさしさんの舞台で奇跡の復活を遂げ、山田洋次監督の『キネマの天地』に続いて出演したのが『幸福の青い鳥』でした。だから寅さんの「おじさん、元役者やってたんじゃないかい?」の言葉には深い意味があったのです。

さて、すまけいさんとともに、シリーズ後半になくてはならない名脇役が、笹野高史さんです。笹野さんは第36作『柴又より愛をこめて』で、寅さんの昔からの仲間、伊豆の長八を演じ、カタギではない男の雰囲気を見事に醸し出していました。そして第37作『幸福の青い鳥』では、葛飾区役所の結婚相談係、こちらは生真面目なキャラクターでした。

名脇役列伝2 その3 笹野高史 第37作『幸福の青い鳥』

近藤「ええ、見つけるという言葉は、あまり適当じゃありません。え、幸せな結婚を希望される方々のために、良き配偶者となられる方をご紹介し、え、お二人の相互理解お作りする、ご相談と斡旋を行うのが、私どもの事業なんです」
寅「よ、よ、よ、あの、そういう難しく言わないで、な、分かりやすい言葉で、すっと言ってみな、すっと言ってみなよ」
近藤「ですから、平たく言えば、まぁ、見つけてあげるということになりますが」
寅「さっき、ここへ入ってきた時、俺、同じこと言ったじゃないか、近藤さん」
近藤「そら、平たく言えば、ですよ。」
寅「で、こっち、どうしたらいいの?」
近藤「は、え、こちらに書いてある書類を提出していただいた上で、私が、そちらのご希望を伺うことになりますが」

寅さんは、志穂美悦子さん演じるマドンナ、美保の結婚相手を探しにやってきたのですが、いつしか近藤さんに自分の女性の好みを話し始めてしまいます。笹野さん演じる区役所の近藤さんをからかう寅さん。笹野さんが「みんなの寅さん」に出演された時に、かつて佐山俊二さんたち軽演劇のコメディアンが演じていた役回りを、山田監督に託されたと思って演じたと話してくれました。

笹野さんは1970年代、串田和美さん、吉田日出子さんと「自由劇場」で「上海バンスキング」などに出演。小劇場ブームの立役者の一人です。笹野さんたちの舞台にも、渥美清さんがそっと見に来ていて、それが「男はつらいよ」シリーズへの出演のきっかけになったそうです。

山田洋次監督の「家族はつらいよ」でも、笹野さんは、コンサートホールの守衛役で短いシーンながら、見事にコメディリリーフを演じています。

まだまだ、ご紹介したい名優はたくさんおられます。「脇役列伝」ぜひまたの機会に特集できればと思っています。

エンディング
「寅さんに関する最新情報は、寅さんFacebook をご覧下さい。」

次回、「みんなの寅さん」は、第22作『噂の寅次郎』の名場面と「寅次郎音楽旅・寅さんの日スペシャル」をお送りします。お楽しみに!

2016.08.21
  「みんなの寅さん」第20回 2016年8月13日放送分 「名脇役列伝 その1」

文化放送「みんなの寅さん」 
・放送時間:文化放送 毎週土曜日6時40分~6時50分 

▪️山梨放送 土曜朝9時~
▪️北海道放送 日曜朝5時25分~

「みんなの寅さん」第20回 2016年8月13日放送分 「名脇役列伝 その1」

プロデューサー 岩田清(文化放送)
ディレクター 永野英二
構成・パーソナリティ 佐藤利明

「ラジオで楽しむ"男はつらいよ"の世界『みんなの寅さん』」
主題歌第20作『男はつらいよ 寅次郎と殿様』ヴァージョン(8/13のみ)

タイトルコール「寅さん名場面!」
寅さん名場面!第20作『寅次郎頑張れ!』寅のアリア

寅「まずいな...、いくら広い屋敷とはいえ、同じ屋根の下、世間が黙っているわけがない。まして、こんなちっちゃな島だ。噂は島中にパッと広がる。『おい、聞いたかい?寅のやつがお藤さんと怪しいらしいぜ』『へえ~...』こんな噂を聞いてオレは黙ってここにいられない。『お姉さん、長い間お世話様になりました。あっしはこれで失礼いたします』『あら、寅さんも行っちゃうの?』『はい』『あなた、世間の噂に負けたのね...、私は平気なのに』フフフ、そんなこと言われたらオレ、たまんねえなあ」

 娯楽映画研究家・佐藤利明です。「みんなの寅さん」今週も始まりました。
 本日の"寅さん名場面"は、第20作『男はつらいよ 寅次郎頑張れ!』です。長崎県は平戸島で、中村雅俊さん演じる良介のお姉さんで、藤村志保さん演じる藤子(ふじこ)に恋している寅さん。彼女と二人きりになれると思って、妄想の翼が広がります。いつもは茶の間で家族に語る「寅さんのアリア」ですが、この時は独り言。果てしなく広がる妄想に、僕たちも「たまんねえなぁ」です

それでは「みんなの寅さん」すすめてまいりましょう!」 

タイトルコール「寅さん四方山話」
「男はつらいよ」シリーズの名場面とともに、寅さん博士の佐藤利明さんの、寅さんトリビア、名づけて「寅ビア」をお送りします。
 
「男はつらいよ」シリーズは、渥美清さんとレギュラー陣が奏でるオーケストラだと、「みんなの寅さん」で倍賞千恵子さんがおっしゃっていました。マドンナはもちろん、日本映画、演劇界を代表するゲスト俳優たちが演じる、様々なキャラクターも、このシリーズの魅力です。というわけで、今週と来週は「名脇役列伝」特集をお届けします。

寅さんの葛飾商業時代の英語教師、恩師・坪内散歩先生を演じたのは、劇団・俳優座の創設メンバーでもある名優・東野英治郎さんです。第2作『続・男はつらいよ』から、酒を酌み交わす、師弟の会話をお聞きください。

名脇役列伝1 その1 東野英治郎 第2作『続・男はつらいよ』

寅「さ、先生、もっと叱ってくださいよ」
散歩先生「ようし、おまえのようなバカは、いくら叱っても叱り足りん」
寅「へ、その通りです」
散歩先生「ただ、しかしだ!俺が我慢ならんのは、おまえなんかより少し頭がいいばっかりに、おまえなんかの何倍もの悪いことをしとるやつが、うじゃうじゃいることだ。こいつは許せん、実に許せんバカモノどもだ、寅」
寅「私よりバカがおりますか?」
散歩先生「おるおる、無数におる」
寅「どこのどいつでございます?」

出来の悪い生徒ほど可愛い、とは良く言いますが、手のつけられない不良だった寅さんを何かにつけて心配してきた散歩先生の言葉、いいですね。

東野英治郎さんは、明治40年、群馬県富岡市に生まれ、築地小劇場のプロレタリア演劇研究所を皮切りに新劇俳優として、戦前から数多くの舞台、映画に出演。山田洋次監督の『下町の太陽』や『馬鹿が戦車でやって来る』にも出演されています。昭和43年10月にスタートしたテレビ「男はつらいよ」でも、東野英治郎さんが散歩先生を演じていましたが、当たり役の「水戸黄門」がスタートしたのは、『男はつらいよ』第1作が公開されたのと同じ、昭和44年8月のことでした。

日本映画のスターを支えたのは、脇を固める新劇俳優さんたちでした。第10作『寅次郎夢枕』で、寅さんの恋のライバルで、東大助教授の岡倉金之助を演じた、米倉斉加年さんも、劇団民芸のベテラン俳優でした。

名脇役列伝1 その2米倉斉加年 第10作『寅次郎夢枕』

岡倉「恋をする男の気持ちというのはですよ、寅さん」
寅「はい?」
岡倉「そんなもんじゃない」
岡倉「頭の中にはその人のことばかし、何を見てもお千代さんの顔に見えてくる。君の顔だってこうして見ているうちにだんだん角がとれてきて、瞳がつぶらになってきて...」
寅「ラッキョみたいになっちゃうの?」
岡倉「ラッキョ?ラッキョとはなんのことです?」
寅「お千代坊だよ、そっくりだろ?」
岡倉「よくもあんな美しい人のことをラッキョだなんて!そういう君はいったいなんだい、え!三角フラスコみたいなツラしやがって!」
寅「な、なんか言ったな?」

八千草薫さん演じるマドンナで、寅さんの幼馴染・お千代坊に恋をして寝込んでしまった岡倉先生と寅さんのやりとり、おかしいですね。米倉斉加年さんは、昭和9年福岡県福岡市に生まれ、昭和32年に劇団民芸の演劇研究所に入所し、宇野重吉さんに師事して、劇団民芸の宇野重吉さん演出作品に数多く出演。「男はつらいよ」シリーズでは、帝釈天参道の交番に勤務する巡査役や、夢のシーンにたびたび登場されました。「みんなの寅さん」にゲスト出演された時の米倉さんによれば、第10作の岡倉先生がアメリカ留学から戻ってきて、またまた寅さんと再会するというエピソードが作られる予定だったそうです。山田洋次監督作品では、2014年の『小さいおうち』での名演も忘れられません。

やはり、劇団民芸のベテラン俳優・大滝秀治さんも、第16作『葛飾立志篇』で、寅さんに「何のために勉強をするのか?」を説いた、山形県寒河江市の住職役でシリーズ初登場。印象的なのは、何といっても第17作『寅次郎夕焼け小焼け』で演じた、神田の古書店・大雅堂のご主人役です。

名脇役列伝1 その3大滝秀治 第17作『寅次郎夕焼け小焼け』

店主「あんたこれ売るんだね?いくら?え?いくら?」
寅「そうねえ、いくらって...」
店主「断っておくけどそんな高い金は出せないよ、落書きのようなもんなんだから。いくら?早く言いなさい」
寅「それじゃあ電車賃使ってきたことだし...」
店主「そりゃ高い。いくらなんでもそんな高い金出せないよ」
寅「負けるよオ、オレもちょっと高いんじゃなえかなと思ったんだ」
店主「これでどうだ?これなら買う」
寅「半分か...?」
店主「じゃ、もう一本色つけようこれだな、これ、これで決まったな、いういだろう」
寅「まー、まーしょうがねえな」
店主「吉田、6万円の領収書いて!」
吉田「はい」
寅「おじさん、今何て言った?6万円!?」
店主「気に入らないか?えっ?よし、じゃあもう一本色つけよう」
店主「これで決まり、吉田7万円だ、7万円!」

寅さんが持ってきたのは、宇野重吉さん演じる、日本画の大家・池内青観が、満男の画用紙にチョロチョロっと描いた「宝珠の絵」。その絵を見たときのまさか、の表情が、次第に欲に変わっていく感じは、さすがです。慌てているうちに、自分でどんどん値段を吊り上げてしまうあたりの呼吸は、さすが大滝さんです。

大滝秀治さんは、新潟県上越市の生まれで、昭和23年に東京民衆芸術劇場俳優養成所の一期生で入所。以来、宇野重吉さんに師事。裏方を経て俳優となり、舞台、映画テレビで活躍されました。山田洋次監督の『母べえ』でのお医者さん役など、バイプレイヤーとして、数多くの映画を支えた名優の一人です。

エンディング

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次回、「みんなの寅さん」は、第21作『寅次郎わが道をゆく』の名場面と「名脇役列伝 その2」をお送りします。お楽しみに!

2016.08.14
  「みんなの寅さん」第19回 2016年8月6日放送分 「渥美清メモリアル・寅さんと渥美さん その2」

文化放送「みんなの寅さん」 
・放送時間:文化放送 毎週土曜日6時40分~6時50分 

▪️山梨放送 土曜朝9時~
▪️北海道放送 日曜朝5時25分~

「みんなの寅さん」第19回 2016年8月6日放送分 「渥美清メモリアル・寅さんと渥美さん その2」

プロデューサー 岩田清(文化放送)
ディレクター 永野英二
構成・パーソナリティ 佐藤利明

「ラジオで楽しむ"男はつらいよ"の世界『みんなの寅さん』」
主題歌第19作『男はつらいよ 寅次郎と殿様』ヴァージョン(86のみ)

タイトルコール「寅さん名場面!」
寅さん名場面! 第19作『寅次郎と殿様』殿様の来訪

殿様「三日もすれば、見つかると君は言うた。あれからもう10日経ちますよ。」
寅「うーん。鞠子さんねぇ、一生懸命探してるんだよ、もう見つかる。意外と手間がかかっちゃって。うん、見つかるんじゃないかな? もうこうなったら、うん」
殿様「しかと、左様か?」
寅「しかと、左様、しかと、左様」
さくら「お兄ちゃん」
寅「え?」
さくら「どなた?このおじいさん」
寅「あ、このおじいちゃんなぁ・・・下がれ!おじいちゃんとは何事だ!無礼者!畏れ多くもこの方をなんと心得る? 伊予は大洲五万石の城主・藤堂久宗様であらせられるぞ!頭が高い、団子商人、頭が高い!コラぁ、たぁ・・・」
殿様「もう良い」
竜造「よぉ」
社長「寅さん・・・」
寅「社長、頭が高い!」

 娯楽映画研究家・佐藤利明です。「みんなの寅さん」今週も始まりました。
 本日の"寅さん名場面"は、第19作『男はつらいよ 寅次郎と殿様』です。寅さんが伊予大洲で出会った、嵐寛寿郎さん演じる"殿様"が柴又へとやってきます。亡くなった息子の嫁・鞠子に一目会いたい、との願いを安請け合いしてしまった寅さん、まさか殿様がやってくるとは思いもよらず・・・ 嵐寛寿郎さんは、昭和初期からご存知「鞍馬天狗」を演じてきた、渥美清さんにとってもヒーロー。「団子商人(だんごあきんど)頭が高い」のセリフ、まるで時代劇みたいでイイですね。

それでは「みんなの寅さん」すすめてまいりましょう!」 

タイトルコール「寅さん四方山話」
「男はつらいよ」シリーズの名場面とともに、寅さん博士の佐藤利明さんの、寅さんトリビア、名づけて「寅ビア」をお送りします。
 
 渥美清さんが亡くなって今年で20年。今でもあの暑い夏のことは忘れられません。寅さんはいつまでも僕たちの中で「永遠の旅人」として生き続けています。
 本日は、先週に引き続き「渥美清メモリアル・寅さんと渥美さん その2」と題してお送りします。

8月6日は、60日に一度の庚申です。帝釈天参道も賑わいます。昭和44年8月27日に公開された第1作『男はつらいよ』で、寅さんが20年ぶりに帰ってきたのは、庚申の前夜、宵庚申の日でした。おいちゃん、おばちゃんに挨拶をして、寅さんが、おもむろにトランクから取り出すのが、手土産代りのバイネタでした。

渥美清メモリアル2 その1 第1作『男はつらいよ』寅さんの手土産・電子応用ヘルスバンド

寅「電子応用のヘルスバンド、ってやつだよ。ね、こりゃ電子の力でもってね、体中の毒素と言う毒素が全部追い出されて持って、新陳代謝がすーっとよくなちゃうんだ。さ、おいちゃん手にとってよく見てやって」
つね「いいのかい?こんな立派なもんを」
寅「ああ、いいよ」
おいちゃん「これ金だろ?」
寅「冗談言っちゃいけねえ。こちらさんがもし金だったら十万や二十万でお買い求めになれる品物じゃない。断っとくけど、これはただしガセネタじゃないよ。論より証拠、はめてみりゃわかる、つまり、電子のつぶつぶみたいなものが、手首の血管からずうっと体内に入って五臓六腑とかけめぐるんだ。つまり血行をよくするわけだ。おばちゃん、どうだい?なんだか、体が楽になっただろ?」
竜造「来たか、来たか」
つね「うんうん」

電子応用ヘルスバンド。怪しいですねぇ。寅さんがネタ元で借りてきて、大道(だいどう)や縁日でバイをするネタ。後年は、台本に指定がない時は、装飾・小道具の露木幸次(つゆきゆきつぐ)さんたちが苦心されたそうですが、シリーズの初期は、渥美清さんが見聞きしてきた話を元に、山田洋次監督が台本にしていたそうです。その話術に魅了されて、つい欲しくなってしまいます。

その下町生まれの寅さんと、渥美清さんには共通点が多いです。第1作で、さくらをめぐって、寅さんと博さんが一触即発、という時の寅さんの言葉、お聞きください。

渥美清メモリアル2 その2 第1作『男はつらいよ』俺が芋食って・・・

博「もし、仮にあんたに好きな人がいて、その人の兄さんが、お前は大学出じゃないから、妹はやれないと言ったら、あんたどうする?」
寅「なに、なに? 俺に好きな人がいて、その人に兄さんが?馬鹿野郎、いるわけねえじゃねぇか、冗談言うねぇ。」
博「仮にそうだとしたら、今の同じ気持ちになるはずだと」
寅「冗談言うなよ。俺がお前と同じ気持ちになってたまるかい! バカにすんな、この野郎」
博「なぜだ」
寅「なぜだ? お前、頭悪いな、おい、お前と俺とは別な人間なんだぞ、早ええ話がだ、俺が芋食って、お前の尻からプッと屁が出るか? どうだ!」

俺は俺、お前はお前。いくら親しくても、別な人間だというのは、長い渡世の中で寅さんが身につけてきた感覚だと思います。この後「人間理屈じゃ動かないんだよ」と続きますが、これは全てにおける寅さんのセオリーです。あまり人とはベタベタしない、適度な距離感を持って付き合う。渥美清さんの話を聞くたびに、僕はこのセリフを思い出します。

さて、シリーズの中で、寅さんは数多くの人に「ご苦労さん」と労をねぎらいます。時には調子づいて、時には真面目に、と様々なケースがあります。第9作『柴又慕情』では、朝日印刷株式会社に勤務する若者たちに、こんな風に声をかけます。

渥美清メモリアル2 その3 第9作『柴又慕情』ご苦労さん

寅「労働者諸君!今日も1日、ご苦労さまでした。だが、明日はきっとカラッと晴れたいい日曜日だぞ」

寅さんの「労働者諸君!」には、粋でいなせな渡世人が生真面目な労働者に対してからかっているように聞こえますが、額に汗して油まみれになって働く人たちへの尊敬の念も込められています。「今日も1日、ご苦労様でした」は、寅さんの働く人への労(ねぎら)いの言葉なのです。

第1作で、20年ぶりに再会した妹・さくらにかけたのは、こんな言葉でした。

渥美清メモリアル2 その4 第1作『男はつらいよ』さくらとの再会・ご苦労さん

さくら「お兄ちゃん?」
寅「そうよ、お兄ちゃんよ」
さくら「生きてたの...」
寅「んん」
さくら「お兄ちゃん」
寅「苦労かけたなぁ。ご苦労さん。ションベンしてくらぁ...」

さくらの「生きてたの?」には、この20年間、どれだけ寅さんのことを心配していたかの気持ちが込められています。立派な女性となった妹の姿に、寅さんは、彼女が苦労をしてきた歳月を思ったのか、「苦労かけたなぁ、ご苦労さん」としか言えません。ともあれ、ここから寅さんとさくらの26年間、48作に及ぶ長い物語が始まりました。

エンディング

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次回、「みんなの寅さん」は、第20作『寅次郎頑張れ!』の名場面と「名脇役列伝 その1」をお送りします。お楽しみに!

2016.08.07
  「みんなの寅さん」第18回 2016年7月30日放送分 「渥美清メモリアル・寅さんと渥美さん その1」

文化放送「みんなの寅さん」 
・放送時間:文化放送 毎週土曜日6時40分~6時50分 

▪️山梨放送 土曜朝9時~
▪️北海道放送 日曜朝5時25分~

「みんなの寅さん」第18回 2016年7月30日放送分 「渥美清メモリアル・寅さんと渥美さん その1」

プロデューサー 岩田清(文化放送)
ディレクター 永野英二
構成・パーソナリティ 佐藤利明

「ラジオで楽しむ"男はつらいよ"の世界『みんなの寅さん』」
主題歌第18作『男はつらいよ 寅次郎純情詩集』ヴァージョン(7/30のみ)

タイトルコール「寅さん名場面!」
さん 名場面!第18作『男はつらいよ 寅次郎純情詩集』
0730 名場面! 18「寅次郎純情詩集」寅のアリア「降るような星空だよ」.wav(50秒)
寅「それで食事が終わる。食後の果物。西洋音楽を聞いて、お茶の時間、やがて僕は帰らなきゃならない、立ちあがって挨拶する。『あら、寅さんもうお帰り?』『はい、家で、さくら達が案じておりますから』『そう、でも寅さんに来ていただいて、ほんとうに楽しいお夕食でしたわ。ねえ、雅子』『ほんとうね、お母さま』『それでは、おやすみなさい』『寅さん、また、きっと来てくださいね。娘がいない時の私はほんとうに、一人きりで寂しいんですもの』『分かっています』親子に送られて表に出る。降るような星空だよ」

 娯楽映画研究家・佐藤利明です。「みんなの寅さん」今週も始まりました。
 本日の"寅さん名場面"は、第18作『男はつらいよ 寅次郎純情詩集』です。寅さんが、満男くんの小学校の先生で、檀ふみさん演じる柳生雅子さんと、その母で、京マチ子さん演じる綾さんの御宅でご馳走になった時の「寅さんのアリア」です。映像では描かれていないのに、柳生家での寅さんたちの姿が手に取るようです。そのあとの会話も、多分に、脚色・車寅次郎、な感じですが、最後の「降るような星空だよ」の一言で、ヴィジュアルが広がります。寅さんのアリアは、寅さんの気持ちまで僕たちに伝えてくれるのです。

それでは「みんなの寅さん」すすめてまいりましょう!」 

タイトルコール「寅さん四方山話」
「男はつらいよ」シリーズの名場面とともに、寅さん博士の佐藤利明さんの、寅さんトリビア、名づけて「寅ビア」をお送りします。
 
 渥美清さんが亡くなって今年で20年。今でもあの暑い夏のことは忘れられません。あれから20年、寅さんはいつまでも僕たちの中で「永遠の旅人」として生き続けています。
 本日は「渥美清メモリアル・寅さんと渥美さん」と題してお送りします。

「男はつらいよ」といえば、やはり寅さんの名調子、啖呵売です。少年時代の渥美清さんは、縁日での歯切れの良いタンカ売に惹かれて、テキ屋に憧れたそうです。青年時代には、その啖呵売を大学ノートにびっしり転記して覚えていたそうです。
 では、第6作『純情篇』から、場所は成田山横浜別院・延命院。売り物は瀬戸物です。

美清メモリアルその1 第6作『純情篇』啖呵売(瀬戸物)

寅「結構毛だらけ猫灰だらけお尻のまわりはクソだらけ、ってね。タコはイボイボにわとりゃハタチ、いもむしゃ、ジュウクで嫁に行く、ときた! 黒い黒いはなに見てわかる、色が黒くてもらいてなけりゃ、山のカラスは後家ばかりっ!ね!色が黒くて食いつきたいが、あたしゃ入れ歯で歯が立たないよときやがった!、どう!まかった数字がこれだけ!どう!ひとこえ千円といきたいが、ダメか、八百!六百!よし!腹切ったつもりで五百両!!もってけ!オイ!」

きつくネジを巻いた、ゼンマイのおもちゃのような、寅さんの啖呵売に、少年時代の僕は魅了されました。

少年時代から啖呵売に憧れていたという渥美さんは、昭和20年代、焼け跡の東京、上野や浅草で、実際に香具師の手伝いをして、啖呵売をしていたことがあったそうです。昭和29年、浅草で人気コメディアンとなった渥美さんでしたが、結核で入院、片肺を摘出する大手術をしました。そのリハビリは、啖呵売のフレーズを暗誦して、声を出す練習だったそうです。

渥美清メモリアルその3 第6作『純情篇』寅さんの仁義

寅「わたくし生まれも育ちも葛飾柴又です。帝釈天で産湯を使い根っからの江戸っ子、姓は車、名は寅次郎、人呼んでフーテンの寅と発します。まだ、続くんですよ。わたくし、不思議な縁もちまして、生まれ故郷に草鞋を脱ぎました。あんたさんと御同様、東京の空の下、ネオンきらめき、ジャンズ高鳴る花の都に仮の住居まかりあります。故あって、わたくし親分一家持ちません。」

お聞きいただいたのは、第6作『純情篇』で、若尾文子さん扮するマドンナ・夕子さんに聞かせる、寅さんの仁義です。寅さんの世界では、挨拶が何よりも大事です。お祭りで地方に行った時も、地元の同業者や、その元締めに挨拶は欠かせません。そこで、自分はどこそこの生まれで、どういう人間かを表明するのが仁義なのです。ジャズをジャンズと呼ぶのは、渥美さんの言い回しです。粋なおあにいさんの、ちょっと崩した感じが伺えます。

渥美清メモリアルその4 第1作『男はつらいよ』寅さんの挨拶

寅「弟(てい)の身持ちまして、いちいち高声(こうせい)に発します。あいさつ失礼さんです。ここに改めて厚く今までのご無沙汰のお詫びとお礼を申し申し上げる次第でございます。」
竜造「へ、へいへい、どうも」
寅「なお、たったひとり残りました愚かなる妹が無事に成長しましたのも、ただただひとえに、お二人の御訓育の賜物と誠に兄としてはお礼の言葉もございません。おいちゃん、ならびに、おばちゃん。本当にありがとうございました。」

第1作の寅さんのおいちゃん、おばちゃんへの挨拶です。寅さんは「挨拶のできる男」なのです。このシリーズは、こうした渥美さんの観察眼と、抜群の再現力あればこそ、そして山田監督の脚本と素晴らしい演出により、作られて行ったのです。

寅さんといえば、渥美清さんの歌う、星野哲郎さん作詞、山本直純さん作曲の主題歌です。渥美さんの歌のうまさは、聞いていて実に気持ちが良いです。この番組では毎週、作品の製作順で、様々な主題歌のバリエーションをお聞きいただいていますが、いつも一番なので、本日は、第17作から19作にかけて歌われた主題歌の2番をご紹介します。家族と喧嘩をして、柴又を後にする寅さんの心情を見事に歌い上げています。

渥美清メモリアルその4 第19作『寅次郎と殿様』主題歌2番

あても無いのにあるよな素振り 
それじゃあ行くぜと風の中
止めに来るかとあと振り返りゃ 
誰も来ないで汽車が来る

男の人生一人旅 泣くな嘆くな
泣くな嘆くな影法師 影法師

エンディング

次回、「みんなの寅さん」は、第19作『寅次郎と殿様』の名場面と「渥美清メモリアル・寅さんと渥美さん その2」をお送りします。お楽しみに!

2016.07.31
  「みんなの寅さん」第17回 2016年7月23日放送分 「柴又と寅さん・花火大会の夜」

文化放送「みんなの寅さん」 
・放送時間:文化放送 毎週土曜日6時40分~6時50分 

▪️山梨放送 土曜朝9時~
▪️北海道放送 日曜朝5時25分~

「みんなの寅さん」第17回 2016年7月23日放送分 「柴又と寅さん・花火大会の夜」

プロデューサー 岩田清(文化放送)
ディレクター 永野英二
構成・パーソナリティ 佐藤利明

「ラジオで楽しむ"男はつらいよ"の世界『みんなの寅さん』」
主題歌第17作『男はつらいよ 寅次郎夕焼け小焼け』ヴァージョン(7/23のみ)
◆「寅さん名場面!」
寅さん名場面!第17作『男はつらいよ 寅次郎夕焼け小焼け』ぼたん来訪

寅「姐さんがポンポーンと手を打つ。襖がスッと開いて年のころなら二十七、八。綺麗な芸者。三つ指を突いて、ちょっとしゃがれっ声でね」
ぼたん「こんにちは」
寅「よお、ぼたん、お前なんかあったね。めっぽう綺麗...」
寅「いま、誰かがなんか言ったか?」
ぼたん「寅さん!」
寅「あははは!ぼたん!」
ぼたん「あーよかった!」
寅「うん!」
ぼたん「せっかく来ておらへんかったら、どないしようかと思ってたんよ」
寅「オラァちゃんといるよ、おまえ、へへへ...。そうか、ところでなんだ今日は」
ぼたん「あ、ご挨拶ややわあ、私と所帯持つって約束したやないの」
寅「あ!、そうか、オレそのこところっと忘れてたよ」
ぼたん「他に好きな人でも出来たんやろう!この薄情モン!!」
寅「いていていていて...」

 娯楽映画研究家・佐藤利明です。「みんなの寅さん」今週も始まりました。
 本日の"寅さん名場面"は、第17作『男はつらいよ 寅次郎夕焼け小焼け』といえばこのシーン、文字通りの名場面です。寅さんが、兵庫県は竜野で出会った、太地喜和子さん演じる、粋な芸者のぼたんと過ごした日々を忘れられず、柴又に戻ってからも、贅沢癖が抜けない。家族が呆れていても、寅さんはぼたんのことばかり。そこへなんと、本人が訪ねてきて・・・の展開は、これぞ喜劇、これぞ「男はつらいよ」ならではの味です。

それでは「みんなの寅さん」すすめてまいりましょう!」 

「寅さん四方山話」
「男はつらいよ」シリーズの名場面とともに、寅さん博士の佐藤利明さんの、寅さんトリビア、名づけて「寅ビア」をお送りします。」
 
 日本の夏、といえば「花火大会」です。全国各地で花火大会が行われますが、寅さんの故郷・葛飾納涼花火大会は、今年でなんと50回目、それを記念して来る7月26日に大々的に開催されます。

 ということで、本日は「花火大会の夜」と題して、「男はつらいよ」シリーズの中で、葛飾納涼花火大会が登場したエピソードを中心に、ご紹介してまいりましょう。
 江戸川河川敷での花火大会は、昔から、地元の人たちの楽しみでした。第5作『望郷篇』のクライマックスは、今から46年前ですから、第4回の花火大会の夜ということになります。江戸っ子のおいちゃんは、近くのアパートに住む、さくらたちが、早く花火見物に来ないかと、気を揉んでいます。

花火大会の夜 その1 第5作『望郷篇』江戸川花火大会の夜

竜造「いやぁ、遅いな、さくらたち何してやんだろうな、早くしないと終わっちまうせ」
つね「大丈夫だよ、落ち着かない人だね、今、始まったばかりじゃないか。さぁ、来た来た来た・・・」
さくら「ああ、ごめん、ごめん。遅くなっちゃって。途中が大変な人だったのよ」
竜造「早く、そうめん食べちまいなよ。遅くなると、仕掛けが見られないよ。早くしな」
博「おい、さくら、早く食べちゃおう」

花火大会の夜の、そわそわした感じが伝わってきますね。茶の間のテーブルには、おばちゃん心尽しのそうめん。それをせわしなく掻き込む感じも含めて、晴れの日感、満載です。

その頃、寅さんは、浦安の豆腐店・三七十屋に住み込みで、額に汗して油まみれになって働く日々。長山藍子さん扮する一人娘の節子にフォーリン・ラブしていましたから。しかし、まさか、それが残念なことになろうとは、お釈迦様でも・・・ですが、例によって失意の寅さんに、この人が余計な一言を言ってしまいます。

花火大会の夜 その2 第5作『望郷篇』無粋なタコ社長

社長「あ、寅さん。珍しいね。花火見物かい?」
寅「まぁな」
社長「なんだい、嬉しそうな顔しちゃってさ、連れてこなかったのかい?」
寅「誰を?」
社長「コレだよ。聞いてるよ、上手くやってるようじゃないかよ、浦安あたりでさ」
寅「そうかい」
社長「ひひひ、色男!、ハハハ・・・イタタタ!」

タコ社長、間が悪いというか、喜劇的には絶妙の間なんですが、二人の壮絶なバトルが切って落とされます。

そんな寅さんの傷ついた心を知っているのは、やはりさくらです。「振られたよ」と顔で笑って、寅さんは旅支度をして、花火大会の人混みに消えていきます。それを追いかけるさくら。いつもなら、柴又駅に向かう寅さんですが、この夜は、花火大会で賑わう江戸川方向に向かいます。題経寺の鐘楼前での、あにいもうとの名場面です。

花火大会の夜 その2 第5作『望郷篇』

寅「今度は、今度だけは、地道に暮らせると思っていたよ」
さくら「うん」
寅「本気でよ」
さくら「うん」
寅「やっぱり、ダメだよなぁ、お前、幸せに暮らせよ」
さくら「お兄ちゃん」

花火大会の夜、寅さんとさくら、二人の切なくもつらい気持ちに、花火の音が響き渡ります。『望郷篇』の予告編を見ると、おいちゃんが言っていた仕掛け花火が写っています。「男は黙ってサッポロビール」。当時、三船敏郎さんのCMで一世を風靡したキャッチフレーズがタイアップで登場するのですが、それが寅さんの「男はつらいよ」の心情とリンクしているのです。

花火大会といえば、先日ご紹介した第13作『寅次郎恋やつれ』のクライマックスは、多摩川の花火大会でした。次に葛飾納涼花火大会が登場するのは、第38作『知床慕情』です。北海道から竹下景子さん演じる、上野りん子さんが柴又を訪ねてきます。

花火大会の夜 その3『知床慕情』江戸川花火大会〜寅のハガキ

博「そうだ、今晩江戸川の花火大会だ」
さくら「そうそう、見物していかない?浴衣着て」
りん子「えー」
つね「そりゃいい」
りん子「わあー、楽しそう」
さくら「さあ、どうぞ」
さくら「おばちゃん、私の浴衣どこ?」
おばちゃん「2番目の引き出し」
さくら「あ、はい」
りん子「いいかしら、寅さんいないのに」
おばちゃん「そんな、ご遠慮なさらないで」
博「じゃあ、後ほど」
りん子「ごめんください。まあ、おいしそう」
寅「暑中 御見舞い申し上げます。私 反省の日々を過ごしつつ、とらやの御繁栄を心より祈っております。長良川のほとりにて。寅次郎拝」

第50回葛飾納涼花火大会は、7月26日(火曜日)に開催されます。詳しくは葛飾区のホームページでご確認ください。

エンディング

次回、「みんなの寅さん」は、第18作『寅次郎純情詩集』の名場面と「渥美清メモリアル・寅さんと渥美さん」をお送りします。お楽しみに!


2016.07.24