番組内容
放送時間
番組概要
  「みんなの寅さん」第13回 2016年6月25日放送分 「寅次郎音楽旅・ベスト・オブ・マドンナのテーマ」

文化放送「みんなの寅さん」 
・放送時間:文化放送 毎週土曜日6時40分~6時50分 

▪️山梨放送 土曜朝9時~
▪️北海道放送 日曜朝5時25分~

「みんなの寅さん」第13回 2016年6月25日放送分 「寅次郎音楽旅・ベスト・オブ・マドンナのテーマ」

プロデューサー 岩田清(文化放送)
ディレクター 永野英二
構成・パーソナリティ 佐藤利明

「ラジオで楽しむ"男はつらいよ"の世界『みんなの寅さん』」
主題歌第13作『男はつらいよ 寅次郎恋やつれ』ヴァージョン(6/25のみ)

タイトルコール「寅さん名場面!」
寅さん名場面!第13作『男はつらいよ 寅次郎恋やつれ』浴衣、きれいだね

寅「浴衣、きれいだね」
歌子「え、何?」
寅「いや、なんでもない」
歌子「なんて言ったの?」
寅「ううん、何にもいわねえよ。あ、先生は遅いねえ」
歌子「そうそう」
寅「え?」
歌子「父がね、寅さんの事ほめてたわよ」
寅「何だって?」
歌子「とっても厳しい批評をされたって。何ていったの?」
寅「何だかわかんねえな 俺、口から出まかせだから」
歌子「だから出まかせに何ていったの? 教えて」
寅「忘れちゃったよ、ほら俺、あのワシントンごちそうになって酔っ払ってたから」
歌子「ワシントン?」
寅「ああ!いや、あの、ナポレオンだ」
歌子「あはは」
寅「間違えちゃった」
歌子「あっ、いけない何か冷たい物もって来るわね」

 娯楽映画研究家・佐藤利明です。「みんなの寅さん」今週も始まりました。
 本日の"寅さん名場面"は、第13作『男はつらいよ 寅次郎恋やつれ』です。二年ぶりに再会した、吉永小百合さん演じる歌子は、夫と死別して、夫の実家の津和野で心細い気持ちで暮らしていました。そんな歌子が寅さんを頼って上京。楽しい日々が続きますが、自分の人生の目標を見つけた歌子との別れが近づいています。縁側で歌子に「浴衣、綺麗だね」と声をかける寅さん。これは愛の告白なのですが、歌子の幸せを第一に考える寅さんは、それ以上の気持ちを胸に秘めて、この後、そっと去ってゆくのです。まさに「男はつらいよ」なのです。

それでは「みんなの寅さん」すすめてまいりましょう!」 

タイトルコール「寅さん四方山話」
「男はつらいよ」シリーズの名場面とともに、寅さん博士の佐藤利明さんの、寅さんトリビア、名づけて「寅ビア」をお送りします。

 山本直純さんがシリーズのために作曲した、様々な音楽を紹介する、月末恒例、「寅次郎音楽旅」。今月のテーマは、久しぶりのマドンナのテーマ特集です。初期の作品から、選りすぐっての「ベスト・オブ・マドンナのテーマ」。まずはこの方、第1作で記念すべきファースト・マドンナとなったのが、光本幸子さん演じる、御前様のお嬢さん「冬子のテーマ」です。

M1 冬子のテーマ 第1作『男はつらいよ』より

のちに「さくらのテーマ」としても随所に流れる、この「冬子のテーマ」は、いつも着物姿の清楚なイメージの冬子さんにぴったりです。

初期の寅さんのマドンナで思い出深いのは、第7作『奮闘篇』で、榊原るみさんが演じた花子ちゃんです。「花子のテーマ」お聞きください。

M2 花子のテーマ 第7作『奮闘篇』より

それまで寅さんが恋をする相手は、大人の女性、高嶺の花ばかり。この頃、アイドルとしても人気のあった榊原るみさんが演じた花子は、史上最年少のマドンナとしても話題となりました。

第9作『柴又慕情』で、吉永小百合さんが演じた歌子は、まさに吉永さんのイメージそのままの女性でした。「歌子のテーマ」です。

M3 歌子のテーマ 第9作『柴又慕情』より

リリカルな「歌子のテーマ」は、第13作『寅次郎恋やつれ』でも再び登場します。山本直純さんの「マドンナのテーマ」は、マドンナの美しさを際立たせるだけでなく、彼女たちの持つ魅力を音楽で見事に引き出しています。

そして、第12作『私の寅さん』で、岸恵子さんが演じたのは、寅さんの幼馴染の妹で画家のりつ子です。「りつ子のテーマ」お聞きください、

M4 りつ子のテーマ 第12作『私の寅さん』より

山本直純さんのマドンナのテーマは、音楽を聴いているだけで、岸恵子さんの笑っている姿、寅さんの幸せそうな顔が浮かんできます。

山本直純さんが作曲した「男はつらいよ」の様々な音楽を集大成したCD「寅次郎音楽旅」。現在、4タイトル発売中です。ネットで「寅次郎音楽旅」と検索してみてください。

エンディング

次回、「みんなの寅さん」は、第14作『寅次郎子守唄』の名場面と「寅さんと柴又・寅さん記念館その1」をお送りします。お楽しみに!

2016.06.26
  「みんなの寅さん」第12回 2016年6月18日放送分 「寅さんの"母と暮らせば"」

■文化放送「みんなの寅さん」 
・放送時間:文化放送 毎週土曜日6時40分~6時50分 

■山梨放送 土曜朝9時~
北海道放送 日曜朝5時25分~

「みんなの寅さん」第12回 2016年6月18日放送分 「寅さんの"母と暮らせば"」

プロデューサー 岩田清(文化放送)
ディレクター 永野英二
構成・パーソナリティ 佐藤利明

「ラジオで楽しむ"男はつらいよ"の世界『みんなの寅さん』」
主題歌第12作『男はつらいよ 私の寅さん』ヴァージョン(6/18のみ)


タイトルコール「寅さん名場面!」
寅さん名場面!第12作『男はつらいよ 私の寅さん』長旅から帰った人には優しくしなくっちゃなぁ

寅「おいちゃん、おばちゃん、さくらがよ、こんな大きな荷物を抱えて、あーあ、くたびれたくたびれた、家が一番いいよ、なんて言って帰ってくるんだよね。そのときの、この迎える言葉ってのが大切だな。お帰り疲れたろう?さあ、上がって上がって、ね。熱い番茶に、ちょっと厚めに切った羊羹のひとつも添えて出す。ほっと一息いれたところで、風呂が沸いてますよ、っと手を差し出す。長旅の疲れを、すっと落とす。出てくる。心のこもった昼飯が待っている。ね、温かいご飯、しゃけの切り身、山盛りのお新香。どうだい、旅は楽しかったかい、たとえこれがつまらない話でも、面白いねって、聞いてやらなきゃいけない。長旅をしてきた人は、優しくむかえてやらなきゃなぁ」

 娯楽映画研究家・佐藤利明です。「みんなの寅さん」今週も始まりました。
 本日の"寅さん名場面"は、第12作『男はつらいよ 私の寅さん』です。さくら夫婦が、おいちゃん・おばちゃん孝行で、九州旅行に出かける前日、折悪しく、寅さんが帰ってきてしまいます。すったもんだの挙句、寅さんが留守番をして、家族を待つ側になるという笑いとなるのですが、いよいよ家族が帰ってくるという日に、寅さんは、源ちゃんやタコ社長に協力してもらって、心尽しのお昼ご飯を用意します。「長旅をしてきた人は、優しく迎えてやらなきゃなぁ」の言葉に、旅人である寅さんの思いが込められています。

それでは「みんなの寅さん」すすめてまいりましょう!」 

タイトルコール「寅さん四方山話」
「男はつらいよ」シリーズの名場面とともに、寅さん博士の佐藤利明さんの、寅さんトリビア、名づけて「寅ビア」をお送りします。

 昨年、戦後70年を記念して、山田洋次監督が、吉永小百合さん主演で撮った『母と暮らせば』は、長崎に投下された原爆で、二宮和也(かずなり)さん演じる息子を亡くしてしまった母親の前に、息子が現れるというファンタジーでした。母を思う子と、子を思う母、それぞれの気持ちが、感動的なドラマの中で描かれています。
 『男はつらいよ』でも、様々な母と子のエピソードがあります。例えば、第39作『寅次郎物語』は、寅さんを慕う秀吉少年の母親を探す旅の物語でした。しかし、なんといっても、寅さんと二人の母親をめぐるエピソードが僕たちの胸に残っています。
 寅さんの産みの母は、柴又で芸者をしていたお菊さん。第2作『続・男はつらいよ』では、ミヤコ蝶々さん演じるお菊さんと寅さんの再会が、長谷川伸の「瞼の母」よろしく展開されます。

寅さんのお母さん その1 第2作『続・男はつらいよ』お菊(ミヤコ蝶々)との再会.wav

寅「さっきから聞いてりゃ、言いたい放題の御託並べやがって、てめえなんて、どっかにとっとと消えてなくなりやがれ、このタヌキババア」
菊「なにぃ? よう、そんなことが言えるな、産みの親に向かって」
寅「てめえが産みの親?」
菊「じゃかしい」
寅「誰がおめえに産んでくれと頼んだ? 俺はてめえなんかに産んでもらいたくはなかったい。放りっ放しにしやがって、人のことほったらかしにして、雲隠れしやがって、てめえそれでも親か?」

お菊さんは、京都でラブホテルを経営して、女手ひとつで苦労してきた人。久しぶりに現れた息子に対して、金の無心か何かと思って、冷たくあしらいます。でも、寅さんにしてみたら「夢にまで見たお母さん」との再会が台無しになってしまい、売りことばに買いことば。二人の喜劇人の丁々発止のやり取りが見ものです。

そう言いながら、二人は、その後、親子の交流を続けています。第7作『奮闘篇』で、寅さんから「近々結婚する」との連絡をもらったお菊さんは、柴又にやってきて、さくらと初めて会います。

寅さんのお母さん その2 第7作『奮闘篇』寅の嫁さんは?

菊「へえ、寅の妹さん? あの、失礼いたしました」
さくら「いいえ、どういたしまして。あの、お兄ちゃんの妹のさくらです。はじめまして」
菊「あたし、あの寅の母親の菊でございます。あ、どうも、なんやけったいな具合でんな。なんや関係ありそうで、よく考えたら、全然他人でんな、この人」
竜造「変な具合ですな」
菊「ややこしなって」

お兄ちゃんにとってはお母さんですが、お菊にとってさくらは「関係がありそうでよく考えたら、全然他人」なのです。微笑ましい場面ですが、寅さんにとって本当の意味でのお母さんは、育ての親、つまりさくらのお母さんなのです。

第47作『拝啓車寅次郎様』で、寅さんが育ての母について語っています。

寅さんのお母さん その3 第47作『拝啓車寅次郎様』鉛筆のアリア

寅「俺、この鉛筆見るとな、おふくろのことを思い出してしょうがないんだ。」
つね「おや、どうして?」
寅「不器用だったからねぇ、俺は。鉛筆も満足に削れやしなかった。夜、おふくろが削ってくれたんだい。ちょうどこの辺に火鉢があってな。その前にきちんとおふくろが座ってさ。白い手でもって肥後の守を持ってスイスイスイスイ削ってくれるんだ。その削りカスが火鉢の中へ入って、プーンといい香りがしてな。奇麗に削ってくれたその鉛筆で、俺は、落書きばっかりして、勉強一つもしなかったもんだよ。でもこれぐらい短くなるとな、その分だけ頭が良くなったような気がしたもんだった。」

しみじみ母を語る寅さんのアリア。いいですね。

では、お菊さんについて、寅さんはどう思っていたのか? 第44作『寅次郎の告白』で、満男のガールフレンドで、後藤久美子さん演じる泉が、母親の再婚問題に悩んでいる時に、寅さんがお菊さんについて、いろいろ話した後、こんな一言を言います。

寅さんのお母さん その4 第44作『寅次郎の告白』あんなババアでも、一人の女性として

寅「あんなババアでも、一人の女性として見てやんなきゃいけねぇんだな。腰巻きでも買って送ってやろうか、あのクソババアに」

第7作『奮闘篇』以来、映画にはお菊さんは登場しません。でも、ミヤコ蝶々さんは健在で、いつかシリーズに出てくれたらな、とファンは思っていました。心細い気持ちの泉に、自分と母親のことを話す寅さん。泉は男性と恋をしている母親を「一人の女性として」見てあげたいと思いながらも、どこかでそれができない自分に悩んでいます。それを聞いた寅さんの言葉だったのです。

エンディング

山田洋次監督作品『母と暮らせば』が、6月15日、ブルーレイとDVDでリリースされました。初回限定生産の豪華版には、撮影風景を記録したメイキングなど特典映像が盛りだくさんです。

次回、「みんなの寅さん」は、第13作『寅次郎恋やつれ』の名場面と「寅次郎音楽旅・ベスト・オブ・マドンナのテーマ」をお送りします。お楽しみに!

2016.06.19
  「みんなの寅さん」第11回 2016年6月11日放送分 「もう一つの寅さん」

■文化放送「みんなの寅さん」 
・放送時間:文化放送 毎週土曜日6時40分~6時50分 

■山梨放送 土曜朝9時~
北海道放送 日曜朝5時25分~

「みんなの寅さん」第11回 2016年6月11日放送分 「もう一つの寅さん」

プロデューサー 岩田清(文化放送)
ディレクター 永野英二
構成・パーソナリティ 佐藤利明

「ラジオで楽しむ"男はつらいよ"の世界『みんなの寅さん』」
主題歌第11作『男はつらいよ 寅次郎忘れな草』ヴァージョン(6/11のみ)

タイトルコール「寅さん名場面!」
寅さん名場面!第11作『男はつらいよ 寅次郎忘れな草』リリーとの出会い
リリー「ねえ」
寅「うん?」
リリー「私達みたいみたいな生活ってさ、普通の人とは違うのよね。それもいいほうに違うんじゃなくて、なんてのかな...、あってもなくてもどうでもいいみたいな...つまりさ...アブクみたいなもんだね...」
寅「うん、アブクだよ。それも上等なアブクじゃねえやな。風呂の中でこいた屁じゃないけども背中の方へ回ってパチン!だい」
寅「え?可笑しいか!?」
リリー「面白いね、お兄さん」
寅「へへへ!!」
リリー「今何時?」
寅「ん?」
リリー「そろそろ商売にかかんなくちゃ...」

 娯楽映画研究家・佐藤利明です。「みんなの寅さん」今週も始まりました。
 本日の"寅さん名場面"は、第11作『男はつらいよ 寅次郎忘れな草』です。北海道は、網走に向かう夜汽車の車窓を眺めながら、涙を流していた女性。浅丘ルリ子さん演じるリリーと寅さんが、初めて言葉を交わしたのが、網走橋のたもと。その橋の下で、旅の二人が語り合うのは、自分たちの暮らしについて。シリーズ屈指の名場面です。放浪者の孤独を、共感し合う二人は、この後、最高のパートナーとなっていくのです。

それでは「みんなの寅さん」すすめてまいりましょう!」 

タイトルコール「寅さん四方山話」
「男はつらいよ」シリーズの名場面とともに、寅さん博士の佐藤利明さんの、寅さんトリビア、名づけて「寅ビア」をお送りします。

 今年は、天才俳優・渥美清さんが亡くなって20年。東京・東銀座の劇場・東劇では「俳優・渥美清の軌跡」と題して「没後20年特集上映」が、6月24日まで開催中です。
 上映されるのは「寅さん」を演じる前、初めて喜劇に主演した『あいつばかりが何故もてる』。相手役は倍賞千恵子さん。そして寅さんの遥かなるルーツともいうべき、野村芳太郎監督の『拝啓天皇陛下様』、渥美さんと倍賞さんが夫婦を演じる泥棒喜劇『白昼堂々』など、寅さんではない、"天才俳優・渥美清さん"のもう一つの顔が、大きなスクリーンで堪能できます。
 もちろん『男はつらいよ』シリーズでも、寅さんは"もう一つの顔"を見せてくれます。それは「夢」のシーンです。というわけで、今日は、喜劇俳優・渥美清さんの達者な演技が味わえる場面を集めました。題しまして「もう一つの寅さん」

 映画の巻頭で寅さんが観る夢は、寅さんの脳内シアターでもあります。子供の頃から親しんできた、芝居や映画、物語の世界を自在に見せてくれます。もちろんキャスティング・ディレクターも寅さん。だから登場人物は全て、おなじみの面々なのです。
 第11作『寅次郎忘れな草』から、股旅ヒーロー・寅次郎です。

もうひとつの寅さん その1 第11作『寅次郎忘れな草』夢・股旅寅次郎

寅「おさくさんとやら、いずれ御政道が改まりゃ、晴れてあんちゃんと笑顔で会える日がきっとまいりますよ」
おさく「はい」
父親「私どももきっとそれを信じております」
寅「それじゃ、ごめんなすって」とさんど笠をかぶり、ささっと走り去る。
父親「寅!!」
寅「お天道様はお見通しだぜ!」

御政道、すなわち政治が悪いばかりに、苦労するのはいつも庶民。強欲な借金取りに泣かされている、おさく一家の窮状を救ったのは、行くがた知れずのこの家(や)の息子・寅次郎。旅から旅への股旅ヒーローの最後のセリフが決まっています。「お天道様はお見通しだぜ!」

第10作『寅次郎夢枕』での、夢の寅さんは、昭和初期のカフェーを舞台に悪漢どもをやっつける、マドロス姿のヒーロー「マカオの寅」。吉田義夫さん演じる悪の親玉から、カフェーの女給・さくらと恋人の書生・博の身を守ります。

もうひとつの寅さん その2 第10作『寅次郎夢枕』夢・マカオの寅

さくら「もしや、あなた様は? いいえ、あなた様のおかげで、私たちは幸せになることができました。せめて、お名前だけでも聞かせて下さい」
寅「江戸川は葛飾柴又の川っぷち、題経寺にあるお父っつぁんの墓だけは参ってくれよ...」

 16歳で家出した頃からずっと、寅さんが夢にまで見続けていたのは、柴又に残してきた妹・さくらとの再会だった筈です。それを果たした後も、ずっと夢の中で見続けているのが「さくらとの再会」なのです。

そして、寅さんの「夢」は、何もスーパー・ヒーローになるだけではありません。美しいお嫁さんを連れて、故郷(こきょう)に錦を飾りたい。おいちゃん、おばちゃん、さくらに喜んでもらいたい。その思いが夢となったのが、第13作『寅次郎恋やつれ』です。

もうひとつの寅さん その3 第11作『寅次郎恋やつれ』夢・金襴緞子の寅次郎

寅「さくら、兄ちゃんとうとう嫁さんもらったぞ、ほら、この人だ」
花嫁「お姉さま はじめまして」
寅「どうした、おいちゃん、おばちゃん、何かあったのか?」
博「兄さん、遅かった」
寅「ええ」
寅「それじゃあ、おいちゃん達は」
博「去年の秋、ふとしたはやり病で」

寅さんの「夢」としては珍しくロケーションで、桜吹雪の舞い散る階段を花嫁を連れた紋付袴の寅さんがにこやかに上がってきます。
撮影は横須賀市長井にある熊野神社だそうです。
細かいなぁと思うのは、媒酌人のタコ社長の奥さん役が、第1作からずっと演じている水木涼子さんなのです。せっかく結婚した寅さんですが、時すでに遅く、おいちゃんとおばちゃんは、亡くなってしまった、という悲劇的な展開となります。

ショッキングといえば、観客の度肝を抜いたのが、空前のSFブームの最中に作られた第21作『寅次郎わが道をゆく』の夢で明らかになった、寅さんの正体です。

もうひとつの寅さん その4 第21作『寅次郎わが道をゆく』夢・宇宙人寅次郎

寅「みなさん、実は、私は、寅次郎さんではありません」
おいちゃん「えー!」
寅「さくらさん、あなたの兄さんは、今から三十年前、旅先で妹のことを心配したならこの世を去りました。その気持を哀れんで、第3惑星の女王様が、私を身代わりにこの地球に差し向けたのです」
寅「出来れば、私はずうっと車寅次郎として、この地球にとどまりたいのですが、そうはいきません。まもなく迎えがくるでしょう」

銀のラメの背広にジュラルミンのトランク。地球にやってきた宇宙人が、寅さんになりすましていた、というウルトラマンもびっくりの展開に、劇場は爆笑の渦でした。

というわけで、ペーソスあふれる人間喜劇が「男はつらいよ」の本編だとすれば、主題歌が流れるタイトルバックで寅さんが繰り広げるのは、サイレント喜劇の味わい。そして、寅さん一家総出演による「夢」は渥美清さんが育った軽演劇の匂いのするアチャラカ喜劇の楽しさに溢れています。

エンディング

東京・東銀座の劇場・東劇で「俳優・渥美清の軌跡」と題して「没後20年特集上映」が24日まで開催中です。渥美清さんが自らプロデューサーをつとめた、名匠、今井正監督の『あゝ声なき友』、渥美さんが名探偵金田一耕助を演じた『八つ墓村』、瀬川昌治監督の傑作コメディ『喜劇・急行列車』など8作品が上映中です。

次回、「みんなの寅さん」は、第12作『私の寅さん』の名場面と「寅さんの"母と暮らせば"」をお送りします。お楽しみに!

2016.06.12
  「みんなの寅さん」第10回 2016年6月4日放送分 「寅さんの恋」

■文化放送「みんなの寅さん」 
・放送時間:文化放送 毎週土曜日6時40分~6時50分 

■山梨放送 土曜朝9時~
北海道放送 日曜朝5時25分~

「みんなの寅さん」第10回 2016年6月4日放送分 「寅さんの恋」

プロデューサー 岩田清(文化放送)
ディレクター 永野英二
構成・パーソナリティ 佐藤利明

「ラジオで楽しむ"男はつらいよ"の世界『みんなの寅さん』」
主題歌第10作『男はつらいよ 寅次郎夢枕』ヴァージョン(6/4のみ)


タイトルコール「寅さん名場面!」
寅さん名場面!第10作『男はつらいよ 寅次郎夢枕』お千代坊との再会

寅「おい、ほら、覚えているだろ、俺と同級生の、なあ、呉服屋の娘のお千代坊だい」
さくら「一月ほど前からね、そこで美容院をね。」
寅「病院務めてんの、看護婦か」
さくら「違うわよ、病院じゃないの、美容院。そこにあるでしょう」
寅「ああ、パーマネント屋か、ああ、おいちゃんたち、覚えてた? ほら、おでこが出っ張ったラッキョみたいな、おかしなつらした娘だったよね。結構見られるようになったんじゃねえか」
さくら「お兄ちゃん、何言うの、こんなきれいな人つかまえてね」
寅「そうそうそうそう、おまえと二人でもってね、手握って歩いているとよ、デカラッキョにチビラッキョってよくおまえたちからかわれて泣いて、帰ってきたじゃねえか」
千代「そのたびに、寅ちゃん棒切れ持って飛び出してったんじゃない?」
寅「そうそう、よく覚えてたなぁ」

 娯楽映画研究家・佐藤利明です。「みんなの寅さん」今週も始まりました。
 本日の"寅さん名場面"は、第10作『男はつらいよ 寅次郎夢枕』です。寅さんが久しぶりに帰ってくると、米倉斉加年さん扮するインテリの岡倉先生が、二階の部屋に下宿をしていて、怒った寅さん、旅に出ようとします。そこに現れたのが、参道で美容室を始めたばかりの、寅さんの幼馴染・お千代の。八千草薫さんが演じていました。お千代坊との再会に喜び、子供の頃のように、からかっているうちに、怒りが収まるどころが、またまたフォーリン・ラブをしてしまいます。これだから「男はつらいよ」を見るのはやめられません!

それでは「みんなの寅さん」すすめてまいりましょう!」 

タイトルコール「寅さん四方山話」
「男はつらいよ」シリーズの名場面とともに、寅さん博士の佐藤利明さんの、寅さんトリビア、名づけて「寅ビア」をお送りします。

 今年は、天才俳優・渥美清さんが亡くなって20年。東京・東銀座の劇場・東劇では「俳優・渥美清の軌跡」と題して「没後20年特集上映」が6月11日から24日にかけて開催されます。
 松竹だけでなく、『喜劇・急行列車』など東映作品も上映されるのですが、私、佐藤利明のイチオシが、中村錦之助さんと池内淳子さんが主演した、長谷川伸原作の時代劇、加藤泰監督の『沓掛時次郎・遊侠一匹』という1966年、昭和41年の作品です。加藤泰監督といえば、山田洋次監督、ハナ肇さん主演『馬鹿まるだし』の脚本を手がけた方でもあります。
 『沓掛時次郎・遊侠一匹』で渥美清さんが演じているのは、錦之助さん演じる、股旅やくざの沓掛時次郎の子分、身延の朝吉。タイトルバックで、朝吉は鮮やかな仁義を切るのですが、時次郎を兄貴と慕う朝吉を見ていると、寅さんと舎弟・登の関係を思い出します。しかもヒロインは、池内淳子さん。
 のちに、第8作『男はつらいよ 寅次郎恋歌』で、帝釈天脇の喫茶店・ロークを女手ひとつで切り盛りしながら、小学生の息子・学くんを育てているシングル・マザーを演じます。
 今日は、この『沓掛時次郎・遊侠一匹』の時次郎と第8作『寅次郎恋歌』の寅さんの献身愛をテーマに、両作の不思議な繋がりについてお話をしてまいります。

寅さんの献身愛 その1 第8作『寅次郎恋歌』りんどうの花

寅「庭先にりんどうの花がこぼれるばかりに、咲き乱れている農家の茶の間。明かりがあかあかとついていて、父親と母親がいて子供がいてにぎやかに夕飯を食べる。これが、これが本当の人間の生活というもんじゃないかね。...君!」

『寅次郎恋歌』と言えば、やはり「りんどうの花」です。博の父・ひょう一郎(志村喬)から、旅暮らしのひとり身ではいけない、早く家庭を持ったほうがいいと、この「りんどうの花」の話を聞いた寅さん。父親と母親がいて、子供のいる暮らしに憧れます。

それから程なくして、題経寺の境内で、学校を早退してひとりぼっちの小学生・学に、声をかけた寅さん。その母・貴子に出会います。

寅さんの献身愛 その2 第8作『寅次郎恋歌』学・貴子との出会い

寅「お子さんですか?」
貴子「ええ、転校したばかりなもんですから、学校に行くのを億劫がりましてね。学、先生が早引きしたって、お電話くだすったのよ。どうしたの?」
寅「何、そのうち慣れますよ」
貴子「そうでしょうか?」
寅「はい、最近来られました?」
貴子「ええ、静かないい街ですわね」
寅「ええ」

この三人の出会いが、やがて「父親がいて母親がいて、子供がいて」の「りんどうの花」の話にリンクしてくるのです。しかし、池内淳子さん演じる貴子の美しさに、これから起こるであろう悲劇を予想した、おいちゃんたちは、寅さんと貴子を会わせまいと、必死に工作をしていたわけですから、寅さんのフォーリン・ラブは、家族にとって晴天の霹靂なのです。

寅さんの献身愛 その3 会っちゃったのよ

さくら「気分でも悪いの?」
寅「え? うん、ちょっと横になろうかな? まくら、さくらを出してくれ」
つね「どうしたんだい?」
さくら「会っちゃったのよ」

出ました「まくら、さくら出してくれ」!寅さん、貴子に会って、夢見心地なので、この続きは夢で、なのでしょうが、さくらの「会っちゃったのよ」に家族はがっかり、観客は大爆笑となります。これから、寅さんは、父親のいない学くんと仲良くなり、貴子との「庭先にりんどうの花が咲き乱れる、本当の人間の暮らし」に憧れます。

さて『沓掛時次郎・遊侠一匹』でも、池内淳子さんは太郎吉(今の、歌舞伎俳優・二代目・中村錦之助さんが演じています)と母一人子一人。時次郎は、彼女たちと実の親子のように、旅を続けていきますが、実は渡世の義理で太郎吉の父を刺したのは時次郎だったという運命の皮肉。この母子との関係は、『寅次郎恋歌』の寅さんの恋が、僕には重なって見えます。しかも、どちらも池内淳子さんに恋心を抱きながらも、その思いを胸に秘め、捧げるは献身的な愛のみです。

寅さんの献身愛 その4 第8作『寅次郎恋歌』あの、何か困っていることは?

寅「あのう、何か困っていることはございませんか? どうぞ、あたくしに言ってください。どうせあたくしのことです。大したことはできませんが」

この後、縁側でしみじみ語る寅さんと貴子。このシーンは「男はつらいよ」のテーマでもある「放浪者と定住者」を明確に描いた素晴らしい名場面です。

渥美清さんが助演した、中村錦之助さん、池内淳子さんの『沓掛時次郎・遊侠一匹』をご覧になってから、DVDなどで第8作『寅次郎恋歌』を観ると、さらに深く味わうことができます。それが映画の素晴らしさであり、楽しさなのです。

エンディング

東京・東銀座の劇場・東劇で「俳優・渥美清の軌跡」と題して「没後20年特集上映」が6月11日から24日にかけて開催されます。今日ご紹介した『沓掛時次郎・遊侠一匹』は、6月18日から24日まで連日上映されます。

次回、「みんなの寅さん」は、第11作『寅次郎忘れな草』の名場面と「もう一つの寅さん」をお送りします。お楽しみに!

2016.06.05
  「みんなの寅さん」第9回 2016年5月28日放送分 「寅次郎音楽旅・寅さんは夢の中」

■文化放送「みんなの寅さん」 
・放送時間:文化放送 毎週土曜日6時40分~6時50分 

■山梨放送 土曜朝9時~
北海道放送 日曜朝5時25分~

「みんなの寅さん」第9回 2016年5月28日放送分 「寅次郎音楽旅・寅さんは夢の中」

プロデューサー 岩田清(文化放送)
ディレクター 永野英二
構成・パーソナリティ 佐藤利明

「ラジオで楽しむ"男はつらいよ"の世界『みんなの寅さん』」
主題歌第9作『男はつらいよ 柴又慕情』ヴァージョン(5/28のみ)

タイトルコール「寅さん名場面!」
寅さん名場面!第9作『男はつらいよ 柴又慕情』歌子の来訪

歌子「あたしよ、歌子です」
寅「あー!!歌子ちゃん!!」
歌子「こんにちは、寅さん。懐かしいわ」
寅「あー!来たの!あー! どうぞ、おかけなさい」
歌子「ありがとう。マリちゃんやみどりさんから寅さんに会った話聞いてね、もう矢も楯もたまらずに来てしまったの。会いたかったわー」
歌子「それからあの時はお金まで頂いてなんて、お礼いったらいいか。どうもありがとう。」
寅「いいえ...そんなことあったかねぇ、おばちゃん、さくら!」

 娯楽映画研究家・佐藤利明です。「みんなの寅さん」今週も始まりました。
 本日の"寅さん名場面"は、第9作『男はつらいよ 柴又慕情』です。吉永小百合さん演じる歌子と、福井路で出会った寅さん。また、歌子に会いたいという気持ちがマックスに達している時に、なんと歌子が訪ねてきます。望んでいたのに、いざとなると、ドギマギしてしまう寅さん。まるで小学生が好きな女の子と二人きりになって、どうしていいかわからない、そんな感じです。そりゃ、誰だって吉永小百合さんと二人きりになったら、ドキドキしますよね。寅さんも「おばちゃ〜ん!さくら!」と声をあげますが、あいにく、みんな留守です。

それでは「みんなの寅さん」すすめてまいりましょう!」 

「寅さん四方山話」
「男はつらいよ」シリーズの名場面とともに、寅さん博士の佐藤利明さんの、寅さんトリビア、名づけて「寅ビア」をお送りします。

 月末恒例「寅次郎音楽旅」五月のテーマは、昨年に引き続き、シリーズのお楽しみの一つ、寅さんの夢のシーンに流れた、音楽のあれこれをご紹介します。題して「寅次郎音楽旅・寅さんは夢の中」

 寅さんの夢が最初に登場したのが第2作『続・男はつらいよ』「瞼の母」、続いて第5作『望郷篇』「おいちゃん危篤」と、いずれも本編の内容とリンクしたものでした。いわゆる「寅さんの夢」として定着したのが、第9作『柴又慕情』の巻頭「渡世人車寅次郎」でした。

M1 寅の夢〜浦の苫屋 第9作『柴又慕情』

福井県は越前海岸。病気の父を抱えた、さくらと博夫婦の住む、浦の苫屋に、借金取りがやってきて、狼藉三昧。そこへ現れた、長楊子をくわえた渡世人・車寅次郎! 山本直純さんの音楽も、随所に本編とは一味違う遊びをしています。

寅さんが見る夢は、あくまでも寅さんの脳内シアターです。第12作『私の寅さん』では、大正時代、飢饉にあえぐ柴又村に、革命の風を巻き起こすスーパーヒーロー・車寅次郎が登場。悪徳資本家と対決をします。

M2 寅の夢〜大正時代、飢饉にあえぐ柴又村 第12作『私の寅さん』

資本家と言っても、吉田義男さん演じる旅一座の座長が演じていて、タコ社長や源ちゃんはその取り巻きですから・・・仰々しい音楽が、いかにも、という感じで楽しいです。

そして、夢のシーンにしばしば流れるのが、ロベルト・シューマンが作曲した「トロイメライ」です。第13作『寅次郎恋やつれ』で、寅さんがついに、お嫁さんを連れて、とらやに帰ってくる、という夢です。

M3 寅の夢〜金襴緞子の寅次郎、トロイメライ 第13作『寅次郎恋やつれ』

「トロイメライ」とは、ドイツ語で「夢」という意味です。無声映画の伴奏の時代からしばしば演奏されてきた曲です。まさに「寅さんの夢」にピッタリのクラシックの名曲です。

続いては、シリーズ最後の「寅さんの夢」となった、第45作『寅次郎の青春』から、明治の文豪・車寅次郎博士が、甥の満男とその想い人の泉ちゃんを、悪漢たちから身を挺して守る、という「夢」の音楽です。

M4 寅の夢〜名人の文豪車博士 第45作『寅次郎の青春』

4拍子のリズムが、明治のハイカラな雰囲気を醸し出しています。なんたって、この車博士、シェイクスピアの翻訳家にして、柔道の達人という設定です。古き良き時代のムードに溢れてますね。

山本直純さんが作曲した「男はつらいよ」の様々な音楽を集大成したCD「寅次郎音楽旅」。現在、4タイトル発売中です。ネットで「寅次郎音楽旅」と検索してみてください。

エンディング

次回、「みんなの寅さん」は、第10作『寅次郎夢枕』の名場面と「寅さんの恋」をお送りします。お楽しみに!

2016.05.29