7月22日に行われた第520回文化放送番組審議会についてご報告いたします。
議題は、3月31日に文化放送開局記念 昭和100年スペシャル 特別番組として放送された、「ドンとモーグリとライオンと ~やなせたかし名作前夜」です。1年ほど前、文化放送の保管資料の中から「1960年頃のやなせたかし脚本の貴重なラジオドラマ台本」が発見されました。そこには、のちのやなせ氏の代表作に繋がるモチーフがいくつも散りばめられていました。この番組は、生前のやなせ氏を知る関係者の証言を交えながら貴重な資料を紹介し、名作が生まれる「前夜」の息づかいを1時間にまとめて放送したものです。
審議委員の意見の概要
国民的キャラクター「アンパンマン」で知られる、やなせたかし氏の人生を、新たな資料をまじえて振り返る番組で、終始、楽しく聴くことができました。「生きている」ことのよろこび、すばらしさを描き、また詩に書きつづけたやなせ氏の心の世界を、番組を聴くことで知ることができました。
歴史的に断片として散りばめられた、のちに作品となるものの原型を、上手く繋いで辿っていくという企画が、番組として成功していました。一つにまとめるのは大変な作業だったと思いますが、こういう企画は文化放送で働かれている、特に若い方にとってはとても勉強になったのではないかと思います。戦後80年というタイミングにおいても非常に貴重で、多くの人に聴いていただきたい番組です。
とても中身の濃い、情報量の多い番組なので、もう少し時代の流れや、やなせさんの流れを整理して説明してもらった方が、自然に入れたと思います。やなせさんの原点である骨身にしみる戦争体験で、「逆転しない正義は、飢えを助けること」というのが一貫してゆるぎないこととなっていて、改めてこちらにも骨身にしみて伝わってきたなと思います。
私が一つ関心を持ったのは、今回は全くやなせさんを知らない若い方たちが、最初から最後まで制作に携わったということ。知っている人が作るのと、全然知らない人が自分たちの視線と考えで作っていくのはまた違ってくるので、それがすごく功を奏していたと思います。1回で終わらせるのではなく、より多くの方に何回でも聴いてもらいたい番組の一つです。
全体的に非常によくまとまっていて、構成が上手いと思いました。番組のエンディングは感動的ですらありました。ナビゲーターのやすこさんは、最初は違和感がありましたが、聴いている内に馴染んできて、この感じでいいのかなと思うようになりました。本当にいい作品でした。
文化放送番組審議委員は、委員長・弘兼憲史氏、副委員長・加藤タキ氏、そして松永真理氏、荒川洋治氏、福本容子氏の5名です。
2025年8月18日
文化放送番組審議会事務局