鷲崎健インタビュー「ヒマといっしょに歩く日曜日。」

鷲崎健インタビュー「ヒマといっしょに歩く日曜日。」

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4月10日にスタートする日曜午後の新ワイド『鷲崎健のヒマからぼたもち』
今回は、パーソナリティを務める鷲崎健さんに、新番組スタートにあたっての思いや、ラジオの魅力などについてお話をうかがいました。

※こちらは文化放送の月刊フリーマガジン「フクミミ」2022年4月号に掲載されたインタビューです。

目次

  1. 「敵」として向き合った11 年間
  2. 「ヒマ」との正しい付き合い方を求めて
  3. できるだけ「嘘」のないものにしたい
  4. ラジオの「乱暴さ」に宿るもの
  5. この記事の番組情報

「敵」として向き合った11 年間

─ 鷲崎さんといえば、文化放送で11 年間続いた人気番組『A&G 超RADIO SHOW ~アニスパ! ~ 』(2004年4月~ 2015 年3月)を思い出す人も多いと思います。
昨年9月に一夜限りの特番として復活したオンエアでは、鷲崎さんが浅野真澄さんのことを「ベテランボクサーのようだ」と評し、浅野さんから繰り出される鋭い発言を受け続けるトークスタイルが印象的でした。

鷲崎 『アニスパ』の話になると気恥ずかしい部分もあるのですが、やっぱり浅野さんのああいう「パンチ」があってこその『アニスパ』なんですよね。浅野さんはただ暴言を吐いているわけではなくて、面白がらせようという気持ちがちゃんとありますから。
僕は今までたくさんのラジオ番組を担当させてもらいましたが、浅野さんとは唯一「対立関係」でいられたというか。ラジオの共演者ってだいたい「仲間」や「味方」として過ごしますけど、僕は浅野さんと終始「敵」でいられたんです。「違う。お前が間違ってる」「いやいや、私のほうが絶対正しい」って言い合いながら過ごした11 年間だったなと感じています。
いま「敵」と言いましたけど、後半になると敵というわけでもなくなってきて。『アニスパ』がスタートしたときのインタビューで「どんな番組ですか」という質問に、「ルパンと銭形は敵同士なんだけど、たまたま手錠に繋がれてる回があるじゃないですか。あんな番組だと思います」って答えてるんです。そのときはただウケようとして言ったんですけど、奇しくも11 年かけて、敵同士でいたり、味方同士でいたり、本当に言ったとおりになったなと。予言のようでした。

「ヒマ」との正しい付き合い方を求めて

─ 新番組『鷲崎健のヒマからぼたもち』。この「暇」というキーワードから、鷲崎さんが番組でやってみたいことはあったりするのでしょうか?

鷲崎 考えていいのかどうかもわからないんですよね。スタッフからも「鷲崎さん、何かやりたいことありますか?」ってまだ聞かれてないので。

─ 聞かれてないんですね(笑)

鷲崎 聞かれてないんですよこれが( 笑)。
ただ、「暇つぶし」という言葉がありますけど、つぶされるほうの「暇」の身になってみたら、ちょっとおっかないですよね(笑)。
暇って、つぶさなきゃいけないほど悪いことでもないというか。だから、暇のまま、暇と一緒に歩いているような感じの番組になればいいなと思っています。
僕自身、暇が長じてこの仕事をするようになったようなものですから。ラジオ出演も音楽活動も(盟友である)伊福部(崇)くんから「付き合ってよ」って言われて、そこから始まったことですし。
僕、二十歳のときに「三十までフラフラして過ごすぞ」って決めて、実際三十までフラフラできたんです。それは、フラフラできるだけの暇と、「ここでちょっと何かやってよ」と言ってくれる人がいてくれたからなんだなと。バーのマスターをやっていたときも、ぼーっとしてたら、いろんな人が来てくれたので。「隙間の時間があるから、なんとかして潰さなきゃいけない」と考えたりしないのが、暇との正しい付き合い方なのではないかと思うわけです。

できるだけ「嘘」のないものにしたい

─ 鷲崎さんがラジオパーソナリティとして心がけていることは何かあるのでしょうか?

鷲崎 僕の今までの仕事って全部、『アニスパ』もそうだし、文化放送で初めて出演させてもらった小野坂(昌也)さんの番組(『小野坂・伊福部のUNHAPPY』)もそうなんですけど、「こういう状況があります。とりあえず鷲崎さんのツッコミなり、ギターなりで番組を成立させてください」という形なんです。「成立させ屋さん」というか。
だから、自分から何かをやろうとしたことはほとんどありません。あと、一人で喋るのが好きじゃなくて、とにかく誰かと喋りたいんです。一人で喋る能力のある人って、自分にちゃんと興味が持てる人だと思うんですね。
僕は自分にそんなに興味が持てないというか、人と喋っているほうが自分の輪郭がはっきりするという感覚があります。そんな中で心がけてきたことがあるかといえば、どうしても大仰な言い方になってしまうのですが、「できるだけ嘘のないものにしたい」ということでしょうか。
僕が一番面白いと思うのは、その場で0から1が生まれる瞬間です。ラジオで喋るときも、その瞬間に相手の心に何かが生まれて、それを言葉にしてもらう。それが大事だと思っていて。やっぱり僕はゲストと喋ることが自分の仕事のメインだと思っているので、「相手が嘘をつかないためだったら僕がたまに嘘をつくこともやぶさかではない」という考えでやってきたような気がします。

ラジオの「乱暴さ」に宿るもの

─ 最後に、鷲崎さんが感じる、ラジオの好きなところを教えてください。

鷲崎 ラジオはやっぱり「ちゃんと、しょうもない」というか。ラジオって乱暴なところがあって、「この虫とこの虫を同じケージに入れたらどうなるか」という発想が未だにあると思うんです(笑)。頭で考えた企画よりも、「人と人」がここで喋ってみたらどんな面白さが生まれるのかという、すごくプリミティブなワンダーを、ラジオはまだちゃんと信じていると思います。
さっきのパーソナリティの話にもつながりますけど、僕は昔、いいパーソナリティというのは、例えば1 時間あったらその時間内でハリウッド映画みたいに盛り上がるポイントを作って、ゲストの話を綺麗に聞いてエンディングを迎える、という能力のある人だと思っていました。
そのためには、「本当みたいな嘘」というか、「嘘が上手になること」が必要だと思ってたんです。でも、やってるうちに「これ、違うな」と。「本当に会話するということは、そういうことじゃないよな。ラジオパーソナリティって、心の中に『本当』を増やしていくものなんだな」と。
もちろん「この人はこの話をするために来たんだからうまく促そう」というプロとしての自分もいるわけですけど。でも、目の前にいる人に対して、いま僕が興味を持ったものは絶対聞くべきだし。
やっぱり僕、ゲストトークの話しかしてないですね(笑)。
18 年ラジオをやってきて、ここ数年で、なんとなくそんなことをムニャムニャ考えたりしてますね。

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