浜美枝のいつかあなたと

毎週日曜日
 9時30分~10時00分
Mr Naomasa Terashima Today Picture Diary

寺島尚正 今日の絵日記

2014年6月30日 空のストマック

6月28日土曜日、人間ドックに行った。
これまで十数年受けていた施設を離れ
新しいセンターで受けることにした。
理由は、先輩との会話だ。
この3回ほど内視鏡カメラで胃などの検査を受けていた。
先輩「俺の受けているセンターにさ、正にバリウムのプロ!
が居るんだよ、感動するぞ!」
それまでの施設に不満はなかった。
しかし、「バリウムのプロ」という表現が耳に残り、
今回は、そちらで受けることにした。
胃の検査には現在2通りある。
一つが胃カメラ。
もう一つが、胃部レントゲン検査、いわゆるバリウム検査。
それぞれ一長一短あるという。
小雨が降る中初めての施設に到着。
一番乗りだ。
身長体重から始まり、胸部レントゲンに続き血圧測定。
普段は決して高くないのだが、検診になると急上昇。
看護師さんに呆れられる。
しかし動じない。いつものことだ。
そして、いよいよバリウム検査がやって来た。
「寺島さ?ん」
ハイトーンボイスの男性だ。
ドアを開けると、小柄で特徴的な技師がいた。
年齢は50?60歳。
銀縁眼鏡の「松鶴家千とせ」がにこにこ。
いきなり白い液体の説明から入った。
「はい!ここにあるのがバリウムです。ご存知ですよね。
元素記号は56.エックス線を通しません。
筋肉はエックス線を通してしまうから、真っ黒に映る。
バリウムは通さないから、白く見えるのです。
あとね、自分の手、見てください。指紋がありますね。
細か?い皺。バリウムは白ですが、この色が青だと思ってください。
その青が手の平につく。すると皺の一本一本がくっきり見える。
胃もね、細かい襞が沢山あります。それを浮かび上がらせる。
あと、バリウムを飲む前に発泡剤を口に含んでゴクリとしてもらいます。
これはね、寺島さん、朝食抜いて来られたから、
胃が「くしゅ?ん」と縮んでる。
それを「ポッコリ」にしたいのです。
さあて、始めましょうか!
説明が的確で、こちらもやる気になってきた。
過去のバリウム検査は機械を隔てたガラスの向こうから
技師の指示が聴こえてきた記憶がある。
今回はすぐ脇にモニターを置き、千とせさん(仮名)がいる。
「では、まず発泡剤から・・・」
「はい、台を傾けます。先ず、ぐるぐる体を回転させま?す」
「お!上手いですね!はい、そして私のほうを向いて・・・」
「そこ!動かないでっ!」
「いいのが撮れた?。見てください!この角度いい?!」
彼がカメラマンなら、私はグラビアアイドルか?
段々と千とせさんの喋り方が「尾木ママ」に近くなってきた。
「あれ?これポリープね。小っちゃいの。うん、大丈夫ね」
「もう一回撮らせてくださいね。はい!そこで息止めて!」
「やった!いい角度。」
千とせさんのエックス線撮影への情熱がこちらにも伝わる。
何より彼の頑張りは私の健康チェックに直結しているのだ。
20分はかけただろう。
「はい、寺島さん済みました。お疲れ様でした?」
「先生、ありがとうございました!おかげで頑張れました」
千とせさんの笑顔が素敵だった。

初めて、検査というのは共同作業であり、
自分の健康は、皆の力を借りて維持しているのだと感じた。

空のストマック
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