浜美枝のいつかあなたと

毎週日曜日
 9時30分~10時00分
Mr Naomasa Terashima Today Picture Diary

寺島尚正 今日の絵日記

2020年3月2日 いつもより白い

弥生を迎えても、新型コロナウイルスによる感染は
その勢いを緩めない。
一方で、品薄が「マスク」に加えて
「トイレットペーパー」「ティッシュペーパー」に及んできた。
確かに「マスク」は、これまで日本で流通していた70%が
中国で生産していることから品不足は理解できる。
一方の「トイレットペーパー」はどうなのか。
こちらは「デマ」による買いだめが増えてきているのだ。
日本家庭紙工業会は、
「SNS上には『マスクとトイレットペーパーが
同じ原料で作られていて品切れになる』という情報が出ているが、
トイレットペーパーとマスクの原料は全く異なり誤った情報。
また、『日本で売られているもののほとんどが
中国製で輸入できず品切れになる』という情報も出ているが、
日本の市場に流通しているおよそ97%は国内産で
これも誤った情報だ」と指摘。
そのうえで「現在、在庫は十分にあり、
生産体制も問題ないので新型コロナウイルスの影響で品切れになる心配は全くない。
仮に一時的に店舗からなくなってもすぐに供給されるので、
消費者には安心して通常どおりの購入をしてもらいたい」としている。
日本チェーンストア協会は「ふだん1つ2つ買っている商品を、
急に10個も20個も買いだめをすると、
その光景を見ていた隣の人が、
これは大変なんだということでまた買いだめをする。
それがパニック的な行動になり、
商品不足を作り出してしまう。
冷静にふだん通りの買い物をして頂きたい」と指摘した。
トイレットペーパーで思い出すのは、
1973年のオイルショックのときに発生した「トイレットペーパー騒動」だ。
日本中で品不足が起きた。
この時実は、トイレットペーパーは不足していなかった。
石油輸入の不安から、「紙が不足するのではないか」という噂(デマ)が流れ、
ある店で、トイレットペーパーの安売りをして行列ができ、
あっと言う間に売り切れた。
それをマスコミが報道した。
そして日本中で、トイレットペーパーの買い占め、
買いだめ行動が置き、在庫切れ、品不足となった。
このトイレットペーパー騒動が発生した後、
政府は冷静な行動を呼びかけたが、あまり効果はなかった。
そこで、政府は国民生活安定緊急措置法の指定品目にトイレットペーパーを追加し、
店頭に大量のトイレットペーパーを並べ、国民を安心させた。
こうして、騒動は収まったという。
思い返せば、東日本大震災の際、
東京で店からペットボトルの水が消え、コンビニなどから電池が消えた。
なぜ緊急時に買いだめ、品不足が起きるのか研究によれば、
一部の人の買いだめ行動が、マスコミによって広く知られるようになる。
そうなると、一般の人々にも不安が広がるのだ。
例えば、店に行ってみると、いつもより並んでいる量が少ない。
ここで新たな買いだめ行動が起きれば、
店では売り切れが発生する。
いつもなら商品が溢れるほど並んでいる店で売り切れ。
これは異常事態発生と後の人は感じる。
この状況で、自分や家族を守らなければならない。
こうして、みんなが大量買いに走るというのだ。
当初は、一部の人の過剰反応だったのに、
後半では生活防衛としての買い物になり、不足が広がる。
店舗に商品が並ぶとすぐに売り切れる。
後から来た人は、空の棚と「売り切れ」「入荷時期未定」の張り紙を見る。
不安はさらに高まる。
この消費者の「異常購買行動」が直らない限り、
品不足状態がいつ解消するか分からないと言うことだ。
新型ウイルスの報道が続く中、マスクを買う行動は正しい行動だ。
ある程度の買い置きも必要。
しかし、みんながいつもの10倍のマスクを買ってしまえば、売り切れ続出になる。
個人、家族としては、正しい行動であっても、
皆が同じことをすると、社会全体では困ったことが起きる。
これを、「社会的ジレンマ」と呼ぶ。
マスクが家に多くあれば、個人のリスクは下がる。
しかしその結果、社会全体のリスクが上がってしまう。
そうなれば、結局一人一人にとっても、危険は高まってしまうのだ。
では、どうすれば緊急時の異常な購入行動を防ぐことができるのか。
専門家は、まず初期の買いだめを防ぐことと指摘する。
普段からいろいろなものを買い置きしておくのだ。
地震対策は喫緊の課題。
2週間分の食料や生活用品があると安心だ。
また買いだめ行動の研究によれば、
いったん買い占め買いだめ行動を取ってしまうと、
その行動を止められなくなるという。
一度買いだめ行動をすると、店でその品を見るたびに、必要以上に大量の買い物をする。
その結果、家には大量の品があり、店は在庫切れとなる。
騒動がおさまった頃には、家に使い切れないほどの大量の品が残るのだ。
トイレットペーパーの買い占め騒ぎ、さらにティッシュ、生理用品、オムツまで。
しかし、これらは不足していない。商品は、在庫管理をしながら店頭に置かれている。
デマに流され、買い占めをする人が突然増えてしまえば、
その結果として店頭の商品がなくなる。
デマとは知っても買う人がいる。
理由は、みんな買い占めていて無くなったら実際に家で使うのに困る。
人間の心理は厄介だ。
「残り1ロールの方などは不安だろうがもうしばらくの辛抱のはずで
爆買いしなくてもいずれちゃんと手元に紙は来ますので、
安心してお買い求めください」教会関係者は呼び掛けている。
要は「冷静にふだん通りの買い物をすること」の様である。
これまでは「カラカラ」と勢いよく回していたロール、
今は、優しい「コロコロ」という音に変わった我がトイレである。
いつもより白い
いつもより白い

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