過去の放送分
過去の放送分 過去の放送分 2006 10月7日 放送分
「僕も昔は算数が苦手だった」
コーチャー/秋山仁さん(数学者)
大村正樹
例えば、102×99を簡単に計算するには?
  102×99はね、ちょっと難しいんだけどね、こう考えればいいかな。102×99っていうのはもうちょっと易しくすると何かなって考えるとね、102かける100。かなり近いよね。99と100ね。102に100かけると102のあとに0が2つつくんだから10200になるよね。 ところが、今100かけちゃったんだけど、本当は102に100かけるんじゃなくて99かけるんだから、1個分102を多くかけちゃってるから、10200から102を引かなきゃいけないと。そうすると5ケタと3ケタの引き算だからちょっと難しいんだけどね。これをまた易しくする。10200から102をひくのは大変だから。10200から100をひくと10100だ。それからさらに2をひくと考える。10000をおいといて、100から2をひくから98になる。すなわち10098だ。 電卓を使わなくてもこういう考え方でわかっちゃうんだ。でも、これは難しかったね。算数の考え方っていうのは、難しいものを難しいままで解こうとすると解けない。なぜなら難しいから。難しいものをなんとかして易しいものに変えられないか、そこだけいつも考えてやるんだよ。
大村正樹
そうか、難しく考えちゃいけないんですね?
  難しいものを易しいものにすりかえられないかな、というところに神経を集中させるんだね。難しいものを一生懸命やって体当たりして歯を食いしばってうーん・・・、ってやっても挫折してしまうことはありますから。なんとかこのハードル以外にどこかに低いハードルはないかなと、こういう風に探してね。キョロキョロしてると大体あるんだよ。
大村正樹
キッズは知らないかもしれないけど、大人には理系の人と文系の人がいるんですよ。理科とか算数が得意な人と、英語とか国語、社会が得意な人。よくこれ分かれるんだけど、先生は数学が得意っていうことは、理科も得意なんですか?
正確にいうと私の場合にはどちらもあまり得意ではなかった。お勉強の方の成績はあまりかんばしくなかったんですよ。小学校、中学校、高校通して、算数、数学、理科、 高校になったら物理、化学、生物学、地学ってあるんだけれども、学校の成績ではこういうのはあんまり得意じゃなかった。
けれども、考えたり、不思議なことを考えたり、ものを作ったり、実験したり、観察したり・・・こういうのは好きだった。要するに学校の勉強はあんまり得意では・・・うん、好きじゃなかった。
大村さんだって、「私は文系だ」と、こうおっしゃりたいんだと思うんだけれども、小学校の時勉強がお好きでしたか?
大村正樹
好きでした(笑)。いや、一応そういう立場上言った方がいいかなと思ったんですよ。だって最初の番組で、このおじさんに「勉強嫌いだった」って言われたら、なんかキッズが聞かなくなっちゃったらイヤじゃないですか。勉強嫌いだったけど、頑張って今日にいたっているんだと(笑)。
電卓機
そろばん
 
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大村正樹
秋山さんはどうなんですか?
  私もそうですよ。小学校の時あまり学校のお勉強は熱心に聞いてなかったから、その後苦労しました。やっぱりね。だけどその後、好きだったからね・・・一生懸命頑張った。そしてまあ、少しできるようになった。だから何でも聞いてください!
大村正樹
算数が得意になるっていうのは何かコツがあったんですか?
  算数はだからね、何でもいいの。不思議なこと考えればね。不思議なことを考えてそれに気づくことが、まず科学、サイエンスの第一歩。不思議に気付く、ということ。あの、かの有名なノーベル物理学賞を受賞した朝永振一郎先生がなんとおっしゃっているかというとね、こういう不思議に気付くことが科学の、植物でいうと「芽」なんだ。それで科学の「茎」っていうのはね、要するに「幹」、「茎」。それは、その不思議を試行錯誤して、あの手この手で、「どうしてこんな不思議なことが起こるのか」ってウンウン唸って考える。 これが科学の「幹」だ。そして、「うん、わかった!なるほど」と納得して、眼からウロコがポロポロポロって落ちてひざを叩いてわかる。これが「科学の花である」、とこういう風にね、朝永先生はおっしゃってたけども。
大村正樹
具体的にはどうすればいいんでしょう?
  要するに一番大切なことは、みなさんのまわりに何か不思議なことがありませんか?何でもいいの。ここにペットボトルがある。「この中に水がどの位入っているんだろう」とかね。ここに紙がある。「これは長方形の紙だけど、どうやって折ったら正三角形になるんだろう」とかね。「この紙をちょうど五等分するにはどうやって折ったらいいんだろう」とかね。何でもいいんだ。そこにあるものをみんな問題にして、「不思議だな、よし、解いてみよう」って、ウンウン唸って、いろいろ本を見たり、お父さんやお母さんに聞いたり、先生に聞くこともあるかもしれないけど、できれば自分で考えて、そしていつか必ずその謎が解ける。そういう体験を小学校の時に5、6回やるとね、もうあなたは立派なサイエンティスト、科学者であると思います。
大村正樹
日常みんなが生きてる中で不思議に思ったこと、それを考えていけばサイエンティストなんですね?
  そうですね。そういう風に不思議を探せる人っていうのはもうすごい。本当にすごい。だってあの、かの有名なニュートンは、「リンゴはなぜ、あのリンゴの木から落ちてくるのだろうか」と不思議に思ったんだよね。確かに言われてみればね。ものが下に落ちてね。リンゴの木になっている実がプカーっと浮いてどっか空に飛んでちゃったと。そんなことありっこないんだ。それであの万有引力を発見した。そういうのいっぱいあるでしょ。
「お風呂の中に入ると体はなぜ軽く感じるのだろうか」とかね。そういうようなことがもう何千、何万とあるわけ。身のまわりに。自然の中にも。花びらを数えてみるとね、花びらの枚数っていうのは、だいたい、3枚、5枚、8枚、13枚、なんて事が多いんだけど、どうしてなんだろうか。ハチの巣はどうしてあの六角形をしてるんだろうか。あんまり四角形のハチの巣って、そんなのは見たことないしね。おもてに出てみるとマンホールがあるよね。あのマンホール、四角いのはあまりない。三角形もないよ。台形もないし、平行四辺形もないよ。どうして丸いんだろうか、って考えるともう!何十っていうすごい発見があるんですね。
大村正樹
すごいですね。科学って。
  すごいの。算数や理科やってみると。理科、算数っていうのは、そういう興味を持っている子供たちはね、もうワクワクしちゃう。「千と千尋」とか「トトロ」とか「ドラえもん」とかみんな面白いけども、私から言わせていただければ、それよりも全然面白い。一番すばらしいものっていうのは、「不思議を感じる」そしてそれを解き明かすことが、人生最大の喜びである、ということですね。
コンパス
 
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