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過去の放送分 過去の放送分 2006 10月14日 放送分
「算数は何の役に立つか」
コーチャー/秋山仁さん(数学者)
大村正樹
さあ先生、今回は数学の専門家として聞きたいです。子供の頃に一生懸命覚えた、分数のかけ算とか分数のわり算っていうのは、大人になって考えるとちっとも役にたってないんですけどね、なんであんなこと一生懸命覚えたのかなって…僕は思ったんですけど。
ええ、そのようなご質問をよく受けます。算数や数学は、学校の時には主要科目のひとつで結構時間数も比較的多い。一生懸命勉強しました。そしてまあ、それなりに頑張ったんだけれども、学校卒業したあと大人になってみてちっとも使わないじゃないか。あんなものはあまり役にたたないんじゃないか、という巷の声を残念ながら耳にする事が多いんですけど、実はそれは間違いなんですね。今日はそのご質問に対して3つぐらいの回答をしたいと思います。
大村正樹
じゃあ、まず一つ目から教えてください。
  一つは、公式です。例えば、小学校で習う三角形の面積ですね。「底辺×高さ÷2」と。三角形の面積は底辺の長さをものさしで測って、高さを測って、かけ算をして2でわる。そうすると三角形の面積です。6年生になると、円の面積は、半径×半径×3.14って習うよね。みんな全国津々浦々の少年少女達がそのことに習熟しています。先ほど大村さんがおっしゃった、分数と分数のたし算、かけ算、わり算、こんなもの世の中でちっとも使わないじゃないかと。そういうことをいうかもしれないけれども、例えば、かけ算、わり算、それよりももっと本質的で基本的なたし算。2分の1と3分の2を足したら何になるだろうか。分母は2と3だよな。2分の1と3分の2だからね。分母同士を足して2と3で5になってね、分子同士を1と2足して3になって、「5分の3!」なんていうとね、先生に「違います!」なんていって二重×つけられたりする事があって悲しい思いをするけど、これは通分っていうのをしなければなりません。2分の1と3分の2を足すときには、分母が違うときには、分母をそろえなければいけない。だから2分の1っていうのは6分の1が3つ分だよ。それに3分の1っていうのは6分の1が4つ分だよ。6分の1を3つと4つ足すと6分の7になる、ということになります。今ちょっと通分と言って、小学校の上級学年でやることを話してしまいましたけれども。今私は3つ例にとりました。 三角形の面積、それから円の面積、それから分数の足し算の通分っていうのを例にとりましたけど、これらが本当に世の中のために役にたっているだろうか、それとも役にたっていないだろうか、ということに対して、「役にたっている」ということをこれからみなさんにわかるように説明します。
大村正樹
ぜひ、教えてください。
  たとえば大村さん、あなたのズボンのポケットですが、左側のポケットに1ドル入っている。右側のポケットにはヨーロッパの貨幣単位の1ユーロ入っている。さて、あなたは今1ドルと1ユーロ持っている。全部でいくら持っているでしょうか、とたずねられた時。1と1だから足して「2ドル」って答えたらブーってなりますね。「2ユーロ」っていっても違いますね。だからこの時にただ足しちゃいけないんだ。何がいけないかというと、単位が違うものを足し合わせることはできない。今日は為替相場を調べてきませんでしたけど、例えば簡単に、1ドルが115円だとしましょう。そして1ユーロが150円だとしましょう。そうすると同じ「円」に単位がそろいました。だから115円と150円を足せば同じ単位にそろっているので、「265円」、となるとピンポンポン!となるわけ。すなわち、単位をそろえるということは、お金の計算をするときに、1ドルと1ユーロ持ってた時にいくらになるのかな、って考えて結論を出すときに大切なことなの。 ということは、小学校5年生か6年生で習う通分だけど、2分の1と3分の2を足すときに、単位が違う。だから単位をそろえる。2分の1というのは6分の1が3つ分、3分の2というのは6分の1が4つ分。そうやって両方とも「6分の1が」という比較の対象が同じものになるから、たし算ができる。これが「通分の心」というもの。要するにこの「そろえること」というのが、数学、算数でよくやる重要なことです。
三角定規
分度器
 
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大村正樹
それでは、二つ目を教えてください。
  それから次に、円の面積や三角形の面積を習うけど、三角形の面積=底辺×高さ÷2 っていうのをなぜやるかというと、勝手な形の四角形とか五角形とか六角形とか七角形とか、118角形とかね、何角形の面積も三角形に分割できる。対角線をひけば必ずできるから、全部もとめられるんです。百何十角形の面積でも、三角形の面積のもとめ方をわかっていれば全部もとまります。
大村正樹
確かにそうですね。例えば五角形だと?
  今あたまの中で五角形のイメージをしてみて、五角形の中で正方形なり長方形を1つ作って、残った三角形の面積、あるいは三角形を3つ作って…。対角線を2本ひいて三角形を3つ作ってもいいね。要するに三角形が基本だと。基本を習うわけ。そして今いいたいのは、今日は算数の授業をここでやるつもりじゃなくて、大村さんのその質問に答えることなの。要するに「算数は役にたっている」と。それはなにかというと、算数は考え方を学ぶ教科なの。
大村正樹
考え方を学ぶ?
  人間はこれから日常で色んな問題に直面する。そのときに考え方、例えば単位をそろえて考えなくちゃいけないとか、または、易しい問題にすりかえたいときとか。例えば、五角形の面積をもとめる時には、対角線を2本ひいて三角形を3つにしておいて、三角形は易しいからもとまるから、そうすると、結果、3つに分けた各々がもとめられるから、3つ足せばいい。易しい問題に帰着させればいいわけ。円の面積なんてすごく難しいけどね、例えば、みんなやってごらん。トイレットペーパーでやってみるといいんだけど、芯までつまっているトイレットペーパーがあるとしよう。普通のトイレットペーパーは中にボール紙があるけどね。芯までつまってるとすると、この円の面積をどうやってもとめるか。中心のところから半径に沿ってスパッとそのトイレットペーパーをナイフで切って、この切ったところをヒューっと左右に広げるとね、二等辺三角形ができるんだ。そしたら二等辺三角形の面積ね、底辺×高さ÷2だから、とりもなおさず円の面積がわかるっていうことなんだけどね。
大村正樹
トイレットペーパーを真ん中でスパッと切ると二等辺三角形ができて、底辺×高さ÷2でトイレットペーパーの面積が、横から見た面積がわかるっていうことですか!?
そうだよ。そのトイレットペーパーを切ったときにできる二等辺三角形の底辺の長さは何か、っていうと、円周率っていうのを小学校5年生で習うよね、直径×3.14。これが周の長さなの。それが三角形の底辺になるんだから、三角形の面積をもとめるときの底辺の長さは、直径×3.14になるんだ。それに高さは元の円の半径じゃないか!だから、三角形の面積の公式習ってるんだから、直径×3.14×半径÷2だ。ていうことはすなわち、半径×半径×3.14じゃないか!バンザイ!!同じになるということですね。
子供
 
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