過去の放送分
 
過去の放送分 過去の放送分 2007 1月20日 放送分
「2007年に進められている科学、期待されている科学」
コーチャー/寺門和夫さん
大村正樹&寺門和夫
大村正樹
今年の12月、「土井隆雄宇宙飛行士が再び宇宙へ」ということで、まず宇宙飛行士について聞きましょう。
  宇宙飛行士でスペースシャトルに乗った方というと毛利衛さんですよね。それからおととしの野口聡一さん。女性では向井千秋さん。あと若田さんがいますね。土井さんって、最初に日本人宇宙飛行士として選ばれた3人の宇宙飛行士の中の一人なんです。前回最初のフライトでしたけれども、宇宙遊泳、船外活動を日本人で最初にやりました。今回(国際宇宙ステーションの日本実験棟「きぼう」の打ち上げ第1便となるスペースシャトル・エンデバーに12月搭乗予定)はまだミッションの内容が詳しくわかっていませんので、船外活動するかどうかはまだ決定はしておりません。
大村正樹
今回何をしに行くんですか?
  国際宇宙ステーションってご存知ですか?アメリカ人の方とロシア人の方が生活をしているところ。今3人体制で生活をしてまして、その国際宇宙ステーションが、まだ完成してないんですね。建築中なんです。それでだいぶできあがってきたんですけど、まだ残ってまして。コロンビアの事故でちょっと建築工事が中断してたんですが、今再開してるわけです。それでだいたいできてきたんですけど、最後に日本の実験室を打ち上げるというのが残ってるんですね。これは「きぼう」という名前がついてるんですけども、宇宙の実験室ですね。日本が作った宇宙の実験室をこれから打ち上げるわけです。
大村正樹
ちょっと待ってください。国際宇宙ステーション。なんかこう宇宙にぷっかりと浮いてる、ありますよね?あれは日本とかアメリカとかロシアとか、いわゆる切り張りして作られてるんですか?
そうですね。参加してるのは、アメリカ、日本、ヨーロッパ、ロシア、それからカナダなんですね。このうちですね、自分の実験室、あるいはその生活する場所を持っているのはアメリカとロシアなんです。だからアメリカ人とロシア人しか滞在できない。そこで、ヨーロッパと日本の実験室も作るんです。「きぼう」をドッキングさせて。それでいわゆる本当の国際宇宙ステーションが完成するんですけれども、日本の「きぼう」という実験室はですね、宇宙ステーションの中で作る実験室の中で今までで最大の大きさなんです。それを2007年の末から2008年の末にかけて、3回にわけてスペースシャトルで打ち上げるんですね。土井さんのフライトというのは、その第1弾になるわけです。
スペースシャトル
 
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大村正樹
それは「きぼう」の部品をシャトルにつんで行って、「きぼう」をくっつけに行くっていう作業なんですか?
  そうです。「きぼう」というのは円筒形の施設なんですけど、これを3つくっつけるんですね。「きぼう」の本体は円筒形で、缶ジュースのような形ですね。まず、物置みたいなものをくっつけるんですね。それから外に出られるベランダみたいなのをつける。これを分けて3つで打ち上げるんですけども、一番最初に、物置のようなものを打ち上げることになってまして、このときに土井さんが一緒に行くということなんですね。ですから、今年の暮れのスペースシャトルの打ち上げは主に、日本の施設のために宇宙に行くということなんです。だからスペースシャトルのフライトの中で、日本のためのフライトが3つすでに設定されてるわけですね。
大村正樹
さぁ、次は、「地球深部探査船ちきゅう本格稼動開始」。地球の深い部分を調べる船の名前が「ちきゅう」っていう船で、それが本格稼動するんですか?
そうです。「ちきゅう」という船はですね、世界に1隻しかありません。1万メートルまで穴を掘ることができるんですね。1万メートルといいますと、だいたい海の深さは平均3000メートルぐらいあって、そこから海底を掘ってさらに7000メートルぐらいまで掘ることができるんですね。これはいまだに、人類が到達したことのない深さなんですね。
大村正樹
地球をスパンと割った図を見ると真ん中に核、その外側にマントルがあって、表面に地殻がありますよね?
  まあ地殻っていうのは地球全体から見れば薄皮みたいなもので、ここの上でわれわれは生活しているわけですね。その下にマントルというのがありまして、ここが動いているのでプレートとかがおこって地震が起こったりするわけですね。ですから地球のしくみを調べるためにはマントルまで行って調べることが非常に大事なんです。まだ人類はマントルに行けてないんですね。初めてこの「チキュウ」が行ける船なんですね。これ、世界に1隻しかない日本の船なんです。
大村正樹
うわっ!スゴイですね!!それはなんかイメージとしてみると、潜水艦みたいな感じなんですか?
  そうではなくてですね、石油の井戸を掘る船と考えたらいいですね。穴を掘る。潜水艦じゃなくて、海の上に浮かんでる船をイメージしてください。海の上に浮かんでいて、そこからドリルをおろしてどんどんどんどん下の方に堀り進んで行くんですね。ちなみに、地殻と呼ばれる一番外の部分っていうのはいろいろあるんですが、だいたい数千メートルあるんですね。で、7000メートルまで掘れるとマントルに到達するんです。
宇宙
宇宙
 
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大村正樹
へぇ〜。マントルっていうのは熱くなってるんですか?
  そんなに熱くなってないんですけど、ただ動いてるんですね。で、それがどういう物質なのか、どういう状況にあるのか、それからそこにどういう成分が含まれているか、これは当然のことながらわかってないんです。推測はされているんですね。いろんなその実験をしてマントルというのはこんな状態になってるんじゃないかとか、そういうことは推定はされてるんですけど、実際にはそこから物質を持ってきたことがないのでわかってないんですね。それを調べることによって地球の仕組みがわかってきます。
大村正樹
じゃあ世界中のどこの国もマントルっていう物質を取り出したり、見たりとかしてないんだけど、日本が近々それをやろうとしているということですか。
そうですね。まあ日本がと今おっしゃいましたけど、実は今のこの大きな科学的なプロジェクトというのは、国際宇宙ステーションもそうですけど、だいたい国際協力でやることになってるんですね。ですから船は日本が作りましたけれど、研究は国際的にいろんな人たちが参加してやることになるんです。地球でいろいろ掘って研究することも日本人科学者だけが優先されるわけじゃなくて、いい研究をしたいという人の審査がありまして、誰でも応募できるんです。ですから、「ちきゅう」っていう船にはいろんな国の人たちが乗って研究しています。
大村正樹
寺門さんは、どんなことに期待していますか?
  そうですね。日本の地球科学は進んでますから、非常にいい研究成果が出ると思ってるんです。僕が何を期待しているかというと、いろんなことがわかるんですね。例えば地震の仕組みがわかったり、それから過去の地球の環境が暖かかったかとか寒かったかとか、そういったことがわかります。昔の地球がわかるんです。もう一つあるんですが、今まで達したことのない深さまで行きますから、もしかしたらそこに我々がまだ見たこともない、出会ったこともない生物がいるかもしれないんです。地球の芯の方に生き物がいるかもしれない。まあバクテリアの種類で、微生物ですが。我々は地球の表面しか知らないんですね。ところが地球の地下深くに、別の生物圏があるかもしれない。そこにはロマンがありますね。
ルーペくん
 
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