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過去の放送分 過去の放送分 2007 2月17日 放送分
「プロの自然案内人」(2)
コーチャー/佐々木洋さん(プロナチュラリスト)
大村正樹&佐々木洋
大村正樹
佐々木さん、何でも本を書いていらっしゃるとか?
  佐々木洋 そうなんです。「僕らはみんな生きている」っていう本がなんですが、課題図書ということで学校の図書館にもみんなあるんですよね。「都市動物観察記」っていうタイトルの黄色い本で、都会に住む動物のことが書いてあるんです。
  大村正樹
この本によると、都会には様々な動物が実際いるんですってね?
  佐々木洋 そうです。いっぱいいるんですよ。だからもう大都会でも「えっ!?」と驚くほど種類も数も本当にすごいんですね。

なんでちゃん
  大村正樹
例えば、珍しい動物でいうと、どんな動物がいるんですか?
  佐々木洋 そうですね、数からいうと実は都会でも全然珍しくないんですけど、一般的にビックリするのはタヌキです。タヌキはですね、東京は23区に分かれてますけど、全部にいるんですよ。このスタジオのある浜松町、ここにもいますよ。駅前に出たりね。近くの公園にいます。お台場にもいますし、東京タワーの近くにもいるし、新宿、渋谷でも見つかってるんですよ。
  大村正樹
タヌキって、どこにいるんですか?
見かけることができる時間帯は?
  佐々木洋 夜なんですけれども、例えば、駅の近くっていうのは、結構隙間があるじゃないですか。例えば、水が流れる所とか。そういう隙間をうまく使って隠れてるんですよ。 少し前まではね、日本でも有数の大きな駅で新宿駅ってありますよね、東京に。そのホームの下で子育てしてるタヌキもいたんですよ。残念ながら、それは去年までですが。だからもうどこにでもいるんですよね。
  大村正樹
タヌキって巣を作るわけじゃなくて、人間の作ったスペースを
うまく利用して、そこをすみかにしてるってことですか?
  佐々木洋 そうですね、都会ではね。山なんかだと穴掘ってるんですけど。
  大村正樹
でもタヌキって僕ら見たことないですけど、
人間の目にふれてるんですか?
  佐々木洋 と思いますね。まあ猫よりちょっと大きいくらい。まあ中型犬ぐらいありますから、いくら夜といってもね、それが歩いてればわかるんですよ。ただね、やっぱり「こんなとこにタヌキがいるはずない」と思ってる気持ちがみんなあるじゃないですか。その気持ちがタヌキを見えなくしてるんですよ。だからみんなも、例えば「あっ!猫が通った!」と思ったらもう一回見てほしいんですよ。タヌキかもしれない。
タヌキ
大村正樹
「猫を見たらタヌキと思え!」っていうのを
ちょっと標語にしたいくらいですね(笑)?
佐々木洋 そうです。疑って見るのが大事です。ひょっとしたらタヌキである可能性もありますから。タヌキでなかったとしてもね、犬、猫とは限らないんですよ。ハクビシンという動物がいますね。顔の真ん中に白い線が入っていて。これもタヌキと同じぐらい大都会にいっぱいいるんですよ。
大村正樹
ハクビシンって、何科の動物ですか?
  佐々木洋 これはね、ジャコウネコ科っていうんですけども、マングースに近い仲間なんです。このハクビシンのすごい所は、電線をつたって歩くんですよ。だから「綱渡りしてるような猫がいるな」と思ったらハクビシンかもしれないですね。
  大村正樹
「僕らはみんな生きている」というこの本の中に書いてある
都市の中の動物で、具体的な例でいうと、
どんな所で何が見られるんですか?
  佐々木洋 そうですね、まず、昔からある神社とか、それからお寺。そういうとこに行くとね、タヌキだとかフクロウなんかがいるんですよ。やっぱり隠れる所がありますから。それから河川敷とか水辺に行きますとカモの仲間とか、美しい「水辺の宝石」なんて言われてるカワセミなんていう鳥がいます。これも結構都会では多いですよね。あとはですね、意外な所では、知り合いのおうちに大きなおうちがあったら、そこのお庭を見せてもらうと、そういうお庭にまた結構動物が隠れてます。それもタヌキだったりするんですけど…。
  大村正樹
それは、よっぽど大きい家じゃないと厳しいんじゃないですか?
  佐々木洋 でもね、まあまあ大きい家で、ちょっと古い家だと床下なんかがあいてるじゃないですか?そういう所にタヌキのファミリーがいたりするんですよ。こないだ僕ちょっと取材で行ってきたんですけど、やっぱり4頭出てきましたね。それは、東京23区内の大きな家で、都庁が見える所でしたけど。
  大村正樹
そういうところに住み着いてるタヌキって、
餌付けはしてないんですか?
  佐々木洋 してないです。タヌキはタヌキで勝手にエサを探してます。タヌキはね、雑食なのでなんでも食べるんですね。人間の残飯とか柿を食べたり、虫を食べたり。ミミズも食べたりします。人間が捨てた物もさることながら、都会にあるいろんな物も食べてるってことなんですね。
  大村正樹
例えば、こういうとこに行ったら変わった動物がいる
というような情報を教えていただけますか?
  佐々木洋 そうですね、東京の方だったらよくわかると思うんですけど、例えば上野の不忍池とか、吉祥寺の井の頭公園ですね。そういう所の池に行きますとね、カモがちょうど今の時期いっぱいいるんですけど、その中にどこの図鑑にも載っていないカモがいるんですよ。新種なのかな、と思うんですけど、ところがそれはカルガモというカモとマガモというカモが結婚してできた、両方の特徴をもったカモなんですね。犬でいうと雑種みたいなもので、正式には「ハイブリットガモ」と言うんですけどね。
  大村正樹
ハイブリットって雑種っていう意味なんですか?
  佐々木洋 ええ、「交雑した」とか「雑種の」っていう意味なんですけど、ただ、そういうものっていうのはカモの世界では本来はいてはいけないものなんですね。だってもともといなかったものなんですから。どうしてそういうものができてしまったかというと、まず、野生動物にエサをあげるっていうことはいいことじゃないんですよね。それは野生の本能を失ってしまうとか色んな理由があるんですけど…。そうした結果、今までは別の所にいたマガモとカルガモが同じ場所にずっと沢山いることになるんですよ。そうすると、そこで結婚してしまうカップルが出てくるわけですよね。
カモ
大村正樹
ちょっと待ってください! 犬だったら別の種類が許されて、
カモが許されないってどういうことなんですか?
佐々木洋 これはですね、犬は例えば他の種類と他の種類でも犬じゃないですか。あくまでも。ですけどカモの場合は、マガモとかカルガモってパッと見は似てますけど、別の種類なんですよ。だから人間とチンパンジーみたいなものなんですね。ですから、ちょっと結婚は無理ですよね。ですから、人間がエサをあげたことによって、そういうことが起こってしまうと。人間はカモがかわいいからエサをあげるんですね。ところが残念ながら、交雑したカモというのはもう子供が作れないんですよ。卵が産めないんですね。
大村正樹
かわいそう。そのハイブリットガモと
ハイブリットガモっていうのでは、できないんですか?
佐々木洋 できないんですよ。ということはカモたちは困ったことになってしまうんですね。ちょっとした愛情が、実はもっとカモを不幸にしてしまう。だから環境のこと全体を考えないと、カモの幸せには繋がらないっていうことですよね。 ハイブリットガモ、よく見るといますから。例えば、頭はカルガモで背中はマガモでおなかはカルガモで、また尾はマガモで。本当に合成写真のようなカモが結構いるんですね。上野の不忍池と井の頭公園。あとは練馬区の石神井公園の池にもいます。なにしろカモがいっぱい集まるところで、よく目をこらしてもらいたいです。マガモとカルガモの違いは家の図鑑で調べてみて、そして是非そのハイブリットガモを見てみると、また都会の動物に対する興味っていうのがわくんじゃないかと思います。