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過去の放送分 過去の放送分 2007 4月21日 放送分
「アストロバイオロジーについて」
コーチャー/松井孝典先生(東京大学大学院教授)
大村正樹&松井孝典
大村正樹
東大の先生。いや、東大の、大学よりももっと上の大学院の先生だから、日本で一番レベルの高い学校の先生という風に考えてよろしいですか?
松井孝典 別に東京大学だからというんじゃなくて、大学院というのは一応そういう位置づけですね。
大村正樹
そうですよね。今日はなんでも聞いちゃっていいですか?先生の専門はアストロバイオロジー、ということなんですけど、これなんですか?
松井孝典 これは21世紀の科学としてNASAが新しく、こういう学問作りましょう、といって提唱した学問なんですけど。生まれたての学問です。だから日本にまだ、そういう名前のついた学部だとか学科なんてないですね。
大村正樹
どういうことを研究するんですか?
  松井孝典 生命っていうのはね、我々は今地球上にしかその存在を知らないわけですよね。だけどこの生命っていうのは宇宙規模で存在するのかどうか、それを調べようという、そういう学問ですね。
大村正樹
えっ…。言葉が悪いですけど、大人になっても宇宙人を信じている学問という風に考えてよろしいですか。
  松井孝典 宇宙人っていうか、別に人である必要はないですね。生命だから。草とか微生物とか、そういう地球の生命っていうのは、植物だとか動物だとか細菌とかって、分類されてるけど、別にそれは地球上の生物がそうであって、宇宙っていう地球とは違う環境を考えた時にそうである必要はないわけです。
大村正樹
じゃあ、全く僕たちが想像していない生物が宇宙にいるかもしれないっていう?
  松井孝典 ていうか、我々の知ってる生物学っていうのは、物理学、化学と同じように生物学というけれども、これは地球生物学なんですよ。宇宙にこの生物学は適応できないわけ。地球の上の生物学なんですよ。だから宇宙の生物学を考えようと思ったら全然別のことを考えなきゃいけない。
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大村正樹
こういうお話って多分僕みたいな考えが固まってる人よりも、ラジオの前のキッズの方がわかりやすいかもしれませんね。イメージはいろいろ持ってますから、子供たちは。
松井孝典 そうそう。だから大人っていうのは、結構自分の知識って言うのが固まってるでしょ。で、その境界を越えられない。自分の知識の果てを。これがバカの壁なわけ。若い子っていうか子供たちっていうのは、そういうのはないわけ。無限に広げられるわけ。だからそういう人達は、そういう新しい学問に接すると、いくらでもイマジネーションがわいてくるわけね。
大村正樹
そうですよね。じゃあもう入っていきますけど、地球以外に生命のある可能性がある星とか天体とか、そういうのがあるっていうことですか?
松井孝典 それはもう無数にあるでしょうね。例えば太陽系をみたって、地球の上で生命がいる。どうして地球の上に生命があるのか。例えば、海があるから、っていうのが答えですね。地球の上に海があって、だから生命がいるんだと。そうすると他の太陽系の天体だって海があれば地球と同じような生命がいていいわけでしょ?あるいは誕生していいわけですよ。まあそういうわけで火星の探査をやっていると。
大村正樹
そうですよね。
  松井孝典 で、火星っていうのは昔、地球と同じように海があったと。証拠もいっぱい見つかっている。今でも水が流れたりしてる跡がいくらでもある。
大村正樹
それは、今も流れてるんですか?
  松井孝典 今でも。だから例えば今、探査機がだいたい2年ごとに飛んでるわけ。現在でも3つか4つ探査機がグルグル回ってるわけだ、火星で。例えば、10年前に同じ場所を撮影したとするでしょ?で、今日撮ったとする。10年間で地形が変わってたりするわけですよ。要するに水が流れたり、そういう跡が新たにできたりする。最近でも、水が流れたりいろいろ活動が起こってるわけね。そういう地質活動が。
大村正樹
太陽系では、火星がやっぱり一番可能性が高いですか?
  松井孝典 いやいやいや、いっぱい他にもありますよ。例えば今、探査機が一生懸命調べてる、非常に遠くなんだけど、土星の衛星でタイタンっていうのがあるんですよ。
大村正樹
ものすごく遠いじゃないですか。
  松井孝典 ものすごく遠いからすごく冷たいわけ。寒いのね。タイタンってね、衛星の中で唯一濃い大気を持ってる衛星なんですよ。
火星
地表
 
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大村正樹
へぇ〜。
  松井孝典 太陽系の中で衛星っていっぱいあるけど、タイタンはね、大気を持っている。大気もね、実は地球と同じ大気。窒素。地球の大気は80%が窒素という物質でできている。タイタンの大気も窒素。そして有機物がいっぱいある。なぜ有機物がいっぱいあるかというと、炭素と窒素と水素と酸素があると、生命に必要な材料、物質なんでもできちゃうんですよ。これが豊富にある。地球にも豊富にある。タイタンにも豊富にある。だからタイタンにはいっぱい有機物がある。有機物はこれは物質だからすぐに見つけられるんだけど、生命っていうのはさ、そう遠くから見てたんじゃ、なかなか見れないんだよね。降りなきゃいけない。
大村正樹
そうですよね。でも先生そういう研究されてると、ご自身でその星に行ってみていろんなものをとってきて研究したいっていう気持ちになりますよね。
松井孝典 とってこなくてもね、実験室で作ってるわけよ。
大村正樹
できるんですか?
  松井孝典 僕は今東大にいるけど、アメリカのNASAにある研究所と共同で、タイタン上の物質を作ってるわけ。タイタンの上で見つかる物質と同じものを実験室で作ることができる。
大村正樹
だけど、タイタンの星に過去に何かいたかっていうことは実際は行ってみないと…。
  松井孝典 生命になると実際に行かなきゃならない。いずれは、タイタンの地表で生命探しをするというようなプロジェクトが始まるけれども、それは私があと何十年も生き延びてないとなかなかやれないから、私はやらないですよ。
大村正樹
じゃあ、これからの子供たちにその夢をたくすという。
  松井孝典 そうそうそうそう。だから今これ聞いてるような子供さんたちはね、その人達が大学院にくるときにタイタンで生命探しをしてると、自分はその下の研究者だ、ということがいくらでもできますね。
大村正樹
僕があと30歳ぐらい若ければ志したかもわからないですね。
  松井孝典 だから今若い人、有能な人が、やりたいといっぱいきてますね。だって、これもし生命体を発見したりしたらノーベル賞が50個ぐらいもらえるんじゃない?だって、最初に地球上じゃないどこか別の生命が見つかりましたっていう、この価値って21世紀の科学の究極のゴールみたいなものですよ。だってそれは宇宙の始まり、地球の始まり、太陽系の始まりみたいなものだって初めはわからなくて、それを20世紀にといたわけですよ。唯一残されたものが生命。これの第一歩が切り開かれていくわけだから。
大村正樹
いやー。なんか第一人者の先生を目の前にしてそういう話を聞くと是非ね、ラジオの前のキッズ達にもこの夢を挑戦してもらいたいなっていうか。なんかこう研究してみつけてくれたら、何十年後かに「文化放送のこの番組がきっかけで科学者になりました」とか言ってくれたらね、うれしいですよね。
松井孝典 それ、重要ですよ。ていうのはね、夢を描かない限り、絶対実現しない。夢を描くと、必ずその人生で実現するんですよ。僕なんかね、子供の頃に思い描いた通りの人生を送っているわけ。今現在ね。それはね、夢を描いたから実現してる。描かない人には絶対実現しない。
大村正樹
いい話ですね。
  松井孝典 絶対夢を持たなきゃ。
土星
 
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