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過去の放送分 過去の放送分 2007 5月19日 放送分
「数について」
コーチャー/畑村洋太郎さん(畑村創造工学研究所代表)
大村正樹&畑村洋太郎
大村正樹
上品そうなおじさまが僕の前に座ってらっしゃいますけど、この畑村さんは「数に強くなる」という、岩波新書から本を出されてらっしゃる。今日はラジオを聞いてるキッズ達が聞くだけで数に強くなるということでおこしいただきました。短い時間ですけど、強くなりますか?
きっとなると思います。
大村正樹
その前にね、今日のコーチャー、畑村先生の経歴をご紹介します。お茶の水大学の付属小学校、中学校から都立戸山高校へ、そして東京大学にすすまれた。で、東大の教授をされていた。これはキッズ達よりも、お母さんとかお父さんが聞いてる方がすごいと思うかもしれませんけどね。先生はやっぱり数学とか算数は得意だったわけですか?
とても得意でした。それよりも好きでした。
大村正樹
でも算数って、国語はなんとなくあってる答とか、△とかありますけど、算数って答はひとつだけじゃないですか。カチッと。
  という問題ばかりをいつも算数の先生が出すから、だからカチッとした答1個しかないような風に思っちゃうんですよ。もともと答はないかもしれないしね。それから、だいたいこれくらいならいいじゃない、っていう答で十分な時もあるし。それなのに「数を数字で表して正確な答を出さなきゃいけないんだ」って。なんか世の中全員が銀行員の金勘定するようなやり方にみんなを教え込もうとするから、だから僕はみんなが数学が嫌いになるんだと思ってる。だいたいでいいじゃないかって。僕はそう思います。
大村正樹
これは非常にわかりやすい話であるけども、先生が聞いていたら難しいかなって思うかもしれませんけどね。
  教える方の先生からみたら、許しがたい話だと思います。
大村正樹
(笑)許しがたい。そうですよね。「なんなんだろう、今日のサイコーは」と思われてるかもしれませんけど、でもそういう物の考え方というのもあるっていうことですよね。例えば今勉強中の、算数を習っている子供達にはどんな考え方をしてもらったらいいですかね?
「とにかく自分で考えなさい」です。
大村正樹
例えば?
  「教わった通り正確な答を出そう」と。それは正確にね、計算が必要な場合もありますよ。でも、とにかく何かの課題を与えられたら、「課題」が「問題」かもしれないけど、「問題」を作り出すことが「課題」かもしれないんですよ。決まりきった式の計算を早くすることだけが数学だとか算数だとか思わないで、自分の目の前に起こっている現象の中から数で表現するのが適当なものってどんなものなのか、それを数で表現したとするとどんなことがあって、最後にはその数で表現した何がほしいかまでを自分で考えて、本当に自分が生活している時に目の前に出てくるようなことに当てはめるとこまで、自分ひとりの力できちんと持っていきなさい、っていうのが、僕は数学の正しい教え方だと思います。しかし学校教育でやってるのは、「数の操作を正確にやる」ということ以外は何も教えてくれてない。だから、僕は小学生から大学生になるまでずっと数学の授業がわからなかった。それぞれの試験を通る時には、ちゃんと試験は通ってるんですよ。でもそれは先生が教えたものとか、教科書を暗記したからできたんじゃなくて、そこの問題になるくらいのことは自分で全部考えつくしてやっていたから、解けるんですよ。
算数
 
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大村正樹
具体的に何をすればいいんですか?
  例えば、みんながわかんなくなっちゃうのはね、3分の2っていう数字が書いてあるとしますね。そうすると学校の先生は「3分の2っていうのは2を3でわることだよ」って。「われるわけないじゃないか」って僕なんか考えちゃうんですね。もともと2の中に3がないんだから。そうすると、そんなのなんか変だなって思うんだけど、「それじゃ、2の中に0.3がいくつあるかなって考えなさい」とかね、言われる。2っていうのを、3等分したらどうなるんだろうって。例えば羊羹が2センチだったら、ケンカにならないように3つに分けるのにどうするかとかね。そういう風にやって、結局1より小さい数で、3分の2っていう数が頭の中にようやく浮かんでくるんですよね。3分の2っていうのを、ただ3の上に棒があって2があるって表記されてるものを考えるんじゃなくて、ある何かの実態を3つにわけて、3つにわけちゃった物が2つ集まったものだな、っていうのが最後に頭の中にあると、もうこれは「2を3でわることです」っていう説明もひとつだけど、それよりはもっと、あるひとつのものを3つにわけて、そのかけらが2つあるものだっていう風に頭にあると、もうそうするとすぐにできるんですよ。3分の2÷3分の1っていうのをやらしてごらんなさい。小学生みんな混乱してわかんなくなるんだよね。しかし「わる」っていう言葉は、「その数の中に今わろうとしてる数が何個あるんですかというのが数式の意味だよ」っていう風に先生が教えてくれてるんです。そういう風になってるんだとしたら、自分ではもう理解してるから、「1個を3個にわけた物が2個あるんだぞ」とね。こっちのわる方の3分の1っていうのがあったならば、その3分の1っていうのが何個あるのか。3分の1が2個あるんだから、その中に3分の1が2個あるに決まってるから、答は2だって。そんなの当たり前なのに、って僕は思うのね。ところが学校の先生が教えたら違うんだよね。わる分数っていうのは、分母と分子を入れ替えて掛け算にしてやるんですって教えるんだから。かわいそうなんだ、もう。
大村正樹
(笑)
  「3分の2÷3分の1=って式書いて、3分の2×3、それで3と3で消せますね」、「2とこれが残りますね」ってななめに線引いて。それでようやく2ってなって、「はい、2ですね。2ってできた人、手あげて!」。みんな手あげて、「はい、よくできました」って、何もできてないよね。その人の頭はただ筆算をやる道具として頭が動いただけで、本質的に考えなきゃいけない中身を全く考えてない。だから算数の先生は操作を教えてるだけで、頭の中で起こらなきゃいけない、数の本当の概念のやりとりというのを教えていない。だからみんな算数や数学が嫌いになるんですよ。僕もだから、学校の先生が教えてくれる数学はいつもわからなかった。
大村正樹
そうですか。だけど数学が得意だったんですか。
  大得意ですよ。
大村正樹
そうですか。じゃあ、先生を時々困らせたりとかもしたんですか。
  そんなの、いつも困らせちゃうんだけど。わかんないから聞くんだけど、何聞いてるのかが先生がわからないんですよ。だから一生懸命、型どおりに教えるんだけど、「いや、先生そうじゃなくて僕がわからないのはもっと違うことだ」って一生懸命説明してるんだけど、「お前に説明してるのはもう時間の無駄だからだまってろ」っていうから、「じゃあだまってます」って僕は算数の時間には何も聞いてなかった。
大村正樹
それは小学校時代に?だけど、そういう先生だからこそ今があるってことですね。
  小学校の高学年ぐらいかな。まあ、そうかもしれないね。だけど人を困らせれば、数学できるようになるってわけじゃないよ。
大村正樹
でも、ちょっと疑問に思ったことをとことん先生に追究するっていう。
  とことん追究したことなんかないよ。先生を困らせるのかわいそうだから黙ってようと思って、自分で勉強するんですよ。先生を困らせるのが目的じゃないから。わかるのが目的だから。聞きにいくと、先生困ったような顔するんだもん。だから気の毒だからもう聞かない。
算数
 
数学
 
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