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過去の放送分 過去の放送分 2007 4月28日 放送分
「サラブレッド(競走馬)について」(2)
コーチャー/楠瀬良さん(JRA競走馬総合研究所)
大村正樹&楠瀬良
大村正樹
先週あの後、安田記念という競馬がありましてね、よく見ましたよ。興味深いですね。心臓が5キロもあるのか。そういう風に見てましたけど。習性なんですよね、走るのが。今日は楠瀬さんの専門分野で、馬を早く走らせるため、こういうこともやってらっしゃるんですよね。
はい。
大村正樹
本来サラブレッドというのは育て上げるようなものなんですよね、人間が。やっぱり工夫をしてるんですか。
  まず基本的に馬に人が乗れないとまずいんです。乗るためにはそういう教育をします。それと同時に、体にいろんなもの、ついてますよね。
大村正樹
ついてます。マスクとか鞍(くら=人が乗りやすいように、馬や牛などの背につける道具)とかゼッケンとか。
  そうです。まず人が乗るために一番重要なのは手綱とハミです。ハミというのは金属の棒で、お馬さんは金属の棒を口に噛んでるんです。
大村正樹
馬は金属を噛んでる?
  馬は前歯と奥歯の間に隙間があるんです。その隙間に金属の棒をかませる。その両端から手綱が出てるんですけど、馬の場合、唇の横が非常に敏感なんです。その金属の棒を手綱で左右に引っ張ったりすると、例えば右をひっぱると右の口が引っ張られる。そうすると右にまがる。これは今から5000年ぐらい前に人間が発明した道具なんです。
大村正樹
へぇ〜。唇の両脇が敏感なんですよね?じゃあ、ラジオを聞いてるキッズが両手の小指で口を両方に引っ張って、右に引っ張ると右に行くけど、馬はより敏感に反応するっていう。
そういうことですね。手綱とハミが大事なんですね。
馬
 
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大村正樹
じゃあ、ジョッキーはカーブの時、左に曲がりますよね?その時は左側の手綱を引っ張ってるんですか?
  軽く引っ張って、あとは体重移動ですよね。体重を左側にかけることによって、左に行くように命令してることになりますから。次に鞍がありますよね。鞍は腰掛けっていうか、イスですよね。鞍は重要なんですけど、その横に足を引っ掛ける、鐙(あぶみ)っていうんですけど、これがとても重要なんです。
大村正樹
ステップみたいなやつね、あれ、鐙っていうんですか。
  あれがあるからジョッキーが足だけちょこっと引っ掛けて走れるんです。だから鐙も人が乗るためには重要です。その他に、馬によってはメンコやマスクつけてますよね。実際あれは、顔をかくすためにやっているのではなく、耳をふさいでるんです。
大村正樹
馬耳がピンとたってますよね?折りたたんでるんですか?
  いえ、たったまま入っています。
大村正樹
そうだ。はい。
  それはなんでつけるのかというと、競馬場というのはお客さんの歓声とか、いろんな騒音があります。その騒音をカットして、馬に競馬に集中させるための道具なんです。
大村正樹
馬には聞こえないほうがいいんですか?
  そういう馬もいるし、むしろ聞こえた方がいい馬もいるんで、それは聞こえない方が実力が出しやすい馬は、厩舎で判断してつけたりしますね。
大村正樹
ディープインパクト(馬の名前)なんかはどうしてたんですか?
  あれはつけてないですね。
馬
 
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大村正樹
つけてない。じゃあディープインパクトはお客さんの喝采の声を聞きながらヨッシャー!って感じだったんですかね?
  (笑)そうかもしれないですね。
大村正樹
僕、先週、楠瀬さんに、馬はいやがってないのかとか聞いてしまったんですけど、実際こうやってプロの人から見ると、当然馬を愛してるからこの仕事をやってるわけで、馬を愛してるから研究もしてるんですけど、馬と人の関係っていうのはどうですか?お互いわかり合ってるんですか?
競馬っていうのは肉体だけの勝負っていうような感じしますが、実はそんなことなくてですね。僕が昔やった調査なんですけど、競馬走る前にいつも世話をしてくれる厩務員(きゅうむいん)さんが馬を引っ張るんです。厩務員さんと馬の関係がよければ馬は結構おとなしくしてるんです。厩務員さんがちょっといやがられてる場合は馬も落ち着きがないんですね。落ち着きがあるかないかを調べて点数をつけて、競馬の成績と比べると、落ち着いてる馬、厩務員さんと絆ができている馬の方が成績がいいんですよね。やはり気持ちよく生活してる方が、最終的には実力を出しやすいですよね。
大村正樹
そうですか。じゃあジョッキーとの相性とか意思の疎通も大事なんでしょうね。
  それも重要ですね。
大村正樹
武豊さんとかは、そこがやっぱり長けていたんですか?
  一流のジョッキーっていうのは頭がいいですよね。例えば、初めての馬に乗る場合もあるんです。その時に調教師や厩務員さんから馬の性格を聞いてるんですが、実際に乗ってみて、ウォーミングアップで走りますよね。その時に本当のその馬の性格を調べるんです。どんな風に調べるのかというと、例えばムチを見せてみます。そうすると馬が耳をしぼる。耳をしぼるっていうのは、馬がいやがってるそぶりでもあるんです。ムチを見せただけで馬の耳が動く、これはあまりムチを使わない方がいいとわかります。次に、他の馬のそばに寄せてみる。身を硬くして緊張してる。これは馬群(ばぐん)の中にいれたらまずいとか。あるいは、ちょっと足のかかとで体の横をけるんですね、「行け」っていう合図なんですけど、それがすぐに反応するかそうじゃないか、ちょっと蹴っただけでもサッと行った。するとこれは最後伸びるな、とか。それを10分ぐらいの間にチェックして競馬に臨むんです。一流のジョッキーっていうのは馬のことを考えてるし、それだけの判断力もあるんですよね。
大村正樹
そうですか。2週にわたって話を聞いて、馬って結構敏感な所もあるし、人と馬、人馬一体(じんばいったい)という言葉もありますけどね、お互いがわかりあってるのかな、と。でも、馬の耳に念仏という言葉もありまして、馬に何言ってもわからない。でも実は、馬は耳が敏感だったっていうこともわかりましたし、勉強になりました。ありがとうございました。
ありがとうございました。
馬
 
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