過去の放送分
過去の放送分 過去の放送分 2007 7月28日 放送分
「生物多様性」
コーチャー/寺門和夫さん(サイエンスウェブ編集長)
大村正樹&寺門和夫
大村正樹
さて、今日のサイエンスコーチャー略してサイコーは、この番組ではおなじみだね、科学雑誌『サイエンスウェブ』編集長の寺門和夫さんです。今日のテーマが生物多様性という、ちょっと言葉だけ聞くと難しいんですけれど、どういうことですか?
そうですね、簡単に言ってしまうと、生物にいろんな種類があるということですね。多様だということですかね。まず、たくさんの種類がある。今、地球上で生きている生物、動物と植物いろいろ合わせて大体200万種ぐらいの生物がいると言われています。
大村正樹
そう言えば春先に公開授業があって、科学博士の中原英臣先生がこういった200万種類の生物も、元をたどればひとつだというお話をされ非常に興味深かったのですが、今200万種類ぐらいいるということですか?
そうです。地球の生命の歴史は約40億年あります。ですから、その間に非常に原始的なひとつの細胞しかないものからどんどんどんどん進化して、枝分かれをして、そして今の動物、植物いろいろな仲間ができているわけですね。動物の中にも例えば、ほにゅう類もいれば、はちゅう類もいる。それから、鳥もいるしお魚もいる。いろいろですよね。どんどんどんどん、そういうふうに分かれて、発展してきたわけですね。
大村正樹
人間もその200万分の1ですか?
  そうです、そういうことになります。男と女で2ということではなく、人類として1種類ですね。
大村正樹
なるほど。地球上で200万種類の中で、例えば植物が何割とか、動物が何割とか、そういうものもあるんですか?
  あります。ただ、実際には200万が正しいとはわかってないわけですね。本当はもっとたくさんいるんじゃないかと言われています。実際に今、一番この生物の中で多い仲間は昆虫の仲間です。
大村正樹
昆虫ですか。何種類ぐらいいるんですか?
  80万種ぐらいいます。ですから、地球上の生物の中では最大の仲間のグループなんです。
大村正樹
大体40パーセントぐらいですか?
  そうです。ただ、それは見つかっている生物だけなんですね。実際、地球上には熱帯雨林とか深海とかいろいろなところに、まだ全然未発見の生物がたくさんいると言われてまして、これは推測でしかないですけれど、おそらくその10倍ぐらいはいろいろな生物が住んでいて、われわれが知らないだけだという。
カブトムシ
 
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大村正樹
2000万種類!ということは、僕ら人間は2000万のうち200万、10のうち1ぐらいしか生物を確認してないということですか?
  そうです。それは今でも、例えば熱帯雨林の調査に入りますと、新しい種(しゅ)がいろいろ見つかるんですよ。種というのは種類ですね。今の200万種類と言っている、その種です。どんどん新しいものが見つかりますから、探せば探すほどいろいろなものが見つかってくる可能性があるわけです。
大村正樹
じゃあ、例えば今年になって見つかった種もいるわけですか?
  調べてみるといると思いますよ。去年もそういったプレスリリースがずい分流れていますからね。
大村正樹
どこに出てくるんですか?
  多くは、やはり今まで人間があまり入っていないところ。ですから大体、熱帯の森林地帯、ジャングルですね。こういったところには、たくさんの昆虫や植物、まだ知らないものがいるんですよ。
大村正樹
でも、なかには絶滅しちゃったものもいるんですよね?
  そうなんです。全然われわれが知らないうちに絶滅してしまう生物もたくさんいるんじゃないかと言われてるんですね。ですから、生物の多様性という、たくさんいるという環境を守っていこうということが世界的に非常に盛んになっています。実はそういったわれわれが知らない間に絶滅してしまう生物、例えば植物とか。そのなかには、もしかしたら役に立つ植物、例えば薬とかが採れる。そういった生物もいるのではないかと言われているんですね。
大村正樹
ふ〜ん。
  そうすると、せっかくそういったものもありながら、われわれは全然知らずに、しかもそれを保護することもなく絶滅に追いやってしまうということがあるかも知れない。それが心配されているんですね。
大村正樹
気づかれないで絶滅しちゃう。それは、人が気づかないからいけないわけですよね。200万分の1の種類ぐらいの僕ら人間なんだけれど、その人間が何らかの植物に気づいてあげなかったら、絶滅しちゃうかも知れない。
そうですね。絶滅には非常に難しい問題がありまして、例えば自然が、環境が変わっていくなかで、自然に絶滅していくものもあります。ただ、今一番問題になっているのは、皆さんも聞いたことがあると思いますが地球温暖化という現象ですね。今、地球の温度がだんだん上昇しているという現象ですけれど、この原因は、実は200万分の1である人間という1種類の生物が、地球上に引き起こしている現象なわけですね。
タンポポ
 
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大村正樹
そういうことですよね。人間が便利さを追求するあまり、今、地球が温かくなってきているわけで、200万種類の生物からすると大迷惑な話ですよね!
そうなんです。実はそういうことなんです。ですから、逆にわれわれは責任があるわけですね。ちゃんとそういった地球の環境を守って、生物をそのまま絶滅に追いやることなく、今の生態系を引き継いでいくという責任が人間という種にはあるわけですね。
大村正樹
200万の残りの人間を抜いて、199万9999種類の生き物たちの今後というのは、僕ら人間にかかっている!
  そうですね。実際に今そういった現象がいろいろ明らかになっています。みなさん、例えばシロクマ、ホッキョクグマがいますよね。実はつい最近、絶滅の恐れのある動物になったんです。
大村正樹
えっ!? シロクマが?
  そうです。どこの動物園にもいるし非常にポピュラーですから、たくさんいると思われているんですけれど、ここのところ、どんどん数が少なくなっているんです。それはなぜかと言いますと、今申し上げた地球温暖化という現象によって、彼らが生活している北極の氷、これがどんどんどんどん面積が少なくなってきているわけです。気温が上昇していますから。そのために、氷の上で暮らしてエサを取っている彼らの生活がだんだん狂ってきてしまって、エサを取れなくなってきてます。だから、そのためにホッキョクグマの生息数は減ってきているんです。
大村正樹
なるほど。ホッキョクグマからすると、自分たちの暮らす氷がだんだん減ってくることによって絶滅する可能性があって、氷が減るのは地球温暖化の影響だから、やっぱりホッキョクグマの将来も人間が握っているということなんですね。
実はそういうことなんです。
大村正樹
先週も夏休みの理科の自由研究のテーマで、何かヒントになればいいなということでお伝えしたんですが、今日のこの話から何かキッズたちに自由研究のヒントをいただけますか?
そうですね。今申し上げたように、人間という生物は200万分の1ですね。でも、地球に対しては非常に大きな責任を持っているので、そういった観点から、いま私たちが住んでいる日本の中に、例えばどんな生物がいて、その生物の中で絶滅の恐れのある生物がどれぐらいいるんだろうかという。例えば昆虫だったらこんなものだとか、そういったことをちょっと調べてみるというのはどうでしょう。
大村正樹
なるほど。例えば、新潟のトキとか。
  そうですね。一番有名なのはトキですけど、それ以外にもたくさん――いま環境省が調べているデータの中には危ないと言われている生物がたくさんいるんですね。意外と知られてないですけれど、こういったものも環境省のホームページとかいろいろなところで調べると出てきます。
大村正樹
分かるんですか、そういうものが?
  はい、一覧表とかありますので、そういったものを調べてみて、地球上の生物を守ってあげる、愛していくということを少し考えていただきたいと思います。
シロクマ
 
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