過去の放送分
過去の放送分 過去の放送分 2007 9月8日 放送分
「夏のサイエンスイベント」(2)
コーチャー/外村(トノムラ)彰さん(日立製作所フェロー)
大村正樹&外村(トノムラ)彰
大村正樹
外村さん、このナノという世界が大きくクローズアップされてますけれど、ナノというものは、僕たちの暮らしでは何か役に立っているんですか?
外村(トノムラ)彰 それはもうずいぶん役立ってますよ。小さいもので言えば、例えば携帯電話でもどんどん小さくなってるでしょう。電話なんて昔はこんなに大きいものが手に持てるようになってきたし、それには回路がすごく小さくなくてはいけないので、こういう原子とか分子をコントロール、制御するものを使うんですね。だから、すごい役立ってるんです。携帯電話とかパソコンとか、こういうものを使う世界、あるいはどこでも原子、分子の話が僕たちの生活に結びついている。
大村正樹
例えば今、健康で安心な社会のために貢献しているとスクリーンに出ているんですが、ナノの研究がどうして健康で安心な社会につながってくるんですか?
外村(トノムラ)彰 例えば、さっきDNAと書いてありましたよね。
大村正樹
はいDNA。DNA、遺伝子ですよね。お父さんとお母さんのどこか似ている部分があるでしょ、みんなの顔に。あれは遺伝子。
  外村(トノムラ)彰 あれが例えば故障しちゃったり、何かすると病気になったりするんですけれど、ああいうものをきちっと見られると、薬もできるし防ぐこともできる。だから、健康と関係があるんですね。
大村正樹
薬の開発にナノテクノロジー、ナノまで見える世界は重要な関わりを?
  外村(トノムラ)彰 そうですね。そっちはナノテクノロジーではなくバイオテクノロジーと言いますが。
大村正樹
それはバイオテクノロジー。
  外村(トノムラ)彰 みんな世の中のことは、さっきも言ったけれど、こういうものはこんな色をしているとか、すべて原子とか分子のふるまいで決まっているんですね。自然で木がこういうふうに生えるとか、つきつめるとみんな。だから、そこが見えないとね。
大村正樹
ナノの世界を研究していくと、そういったものもだんだん分かってくるということですね。へぇ〜。こういう博士になっていくことは、何かきっかけがあったんですか?
外村(トノムラ)彰 やっぱり、一番最初に見せたチョウチョの目玉とか、植物とかいろいろ面白かったですね。関心がありました。自然に、興味を持ったということですね。
大村正樹
それは小学生ぐらいの時ですか?
  外村(トノムラ)彰 小学生でも、ずーっと今でも。
大村正樹
今でも? 65才になって今でも! すばらしいですねぇ!
  外村(トノムラ)彰 チョウチョを見るとおもしろい(笑)。いやぁ、子どものまんまで(笑)。
モンシロチョウ
 
このページのトップへ
大村正樹
あっそうなんですか。じゃあ家へ帰ると、任天堂のWiiとかDSをやっちゃってる、そういう子どもとはまた違う?
  外村(トノムラ)彰 いやぁ、そういうのじゃない。昔はそういうゲームはなかったから、みんなアリンコを見たり、植物を見たり、池の水を見て波紋が広がっていくのをキレイだなぁと思ったり、そんなことをしていた。
大村正樹
波紋。波紋という言葉を知っている人?
 
  外村(トノムラ)彰 そうか、知らないか。
大村正樹
あのね、池の水に石を投げたことがある人?――みんな、投げたことあるよね。そうしたら水がどうなった?
  輪ができた。
大村正樹
そう。その輪が何重になった?
  2重ぐらい。
大村正樹
2重、3重、4重ってどんどん広がっていくでしょ。それを波紋。波って書いて、そのあと糸へんに文と書きます。波紋を見て、外村博士は興味を持った。不思議だなと思った。そこから、どういうふうな研究につながっていくわけですか?
外村(トノムラ)彰 ずーっと輪が広がっていくでしょ。キレイで、電子顕微鏡の電子もあれと同じで波ということを大学で習ったんです。電子は波なんです。
大村正樹
何でですか?
  外村(トノムラ)彰 それは電子に聞いてくんなくちゃ分からない(笑)。水と一緒で波なんですよ。動くんです。
大村正樹
電子は動いてるんですか。波打って。それは顕微鏡で見ないと分からない世界ですか?
  外村(トノムラ)彰 波紋の姿は写真で撮れるんです。電子顕微鏡で。だけど、動いているヤツは見えない。
大村正樹
写真で動く波をとらえることはできるんですね。
  外村(トノムラ)彰 できない。けれど、波紋は見える。今日のこの電子顕微鏡で見ることはできませんが、もっと大きいもので見ることができます。
大村正樹
大きいヤツで。ということは、小学校の頃にふと思いついた疑問が、60代になってまだ疑問となって、あの電子顕微鏡が開発されるまで答えが出せなかったぐらいですか。
外村(トノムラ)彰 小学校の時は疑問ではないんですよね。ただ見てキレイだなぁと単に思っただけで。今でもそうなんです。それが、こういう電子もやっぱり波だというから、何で波だろうというので、そういう電子顕微鏡をずーっとつくってきたんです。僕のは普通の電子顕微鏡ではないです。波の性質を見られるような。普通の電子顕微鏡にないような別のものも見られるようになってきた。
波紋
 
このページのトップへ
大村正樹
例えばどんなものが見られるんですか?
  外村(トノムラ)彰 磁石から出てくる磁力線なんて知ってますか?
大村正樹
へぇ〜。磁石って鉄がくっつきますよね。そこから線が出ているんですか?
  外村(トノムラ)彰 磁力線というのが出ているんです。電子の波をあてると見えるようになったんです。電子顕微鏡で磁石の周辺を拡大すると線が現れるんですよ。
大村正樹
えぇ〜! それはすごいですね。じゃあ、例えば僕らがいま使っているマイクは、ワイヤレスマイクと言ってコードがないんですが、ここからは電波が出ているわけですよね。この電波も電子顕微鏡で見たら、線が見えるんですか?
外村(トノムラ)彰 将来なるかも知れませんね。はい。僕たちは小さいところのそういうのを見ているんです。電子顕微鏡は小さいところしか見ないから、もうドデカい電子顕微鏡を作らなくてはいけない。
大村正樹
そうか、こういう電波を見るのは、顕微鏡が大きくなくてはいけない。じゃあ、まだそれは見られない。
  外村(トノムラ)彰 ええ。磁力線は見えるということです。小さい磁力線は、例えばメモリーとか磁気テープで重要なんです。音声とか映像は磁力線で記録、録音しているんです。だから、それがすごく重要なんです。
大村正樹
へぇ〜。今日ここに、まだ小学生、これからの子ども達に来てもらいました。こういう研究をした博士から、将来のために何かヒントというか、ひと言をぜひお聞かせ下さい。
外村(トノムラ)彰 何が役に立つかではなく、みんなが面白いなぁと思ったことをやると、関心がありすごく興味が出る。面白〜いと思ったことをやれば、きっと役に立つんですね。だから、やりたいことをやるといいですね。そういうことが今はあるんですが、だんだんだんだん年をとるとなくなっちゃうことが多いんです。勉強ばかりしててね。だけど、今の好奇心を持っていると、ずーっと持っていると面白い一生がおくれると思います。
大村正樹
こうやって、大人でも応援してくれている人が世の中にいっぱいいます。だから、みんなが好奇心をたくさん持っていろいろなことに挑戦すれば、それを手伝ってくれる社会も必ずあるから、大きくなっても好奇心を忘れないように。いつまでも応援してくれている大人もいることを忘れないでもらいたいと思います。さぁ、いったんここで外村さんにはありがとうございましたということで。
外村(トノムラ)彰 ありがとう。
大村正樹
今日のサイコーは日立製作所・フェローの外村彰博士でした。ありがとうございました(拍手)。
  バイバ〜イ!
磁石
 
このページのトップへ