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過去の放送分 過去の放送分 2007 10月13日 放送分
「北極の話」
コーチャー/寺門和夫さん(サイエンスウェブ編集長)
大村正樹&寺門和夫
大村正樹
先週は星の話で、今日はまた地球に戻ってきて北極の話をしていただきます。南極と北極、地球儀では上と下にありますけれど、分かりやすく言うと違いは何ですか?
寺門和夫 簡単に言ってしまうと、南極というのは大陸なんですね。下に大陸がありまして、その上にものすごい巨大な氷が乗っかっているわけです。ですから、言ってみれば氷のかたまりみたいな感じです。北極というのは実は海です。北極には大陸はないし、山もない。海があって、その表面が厚さ数メートルの氷で覆われているというのが北極です。これが一番大きな違いですね。
大村正樹
この辺りまでキッズはみんな分かっていると思うんだけれど、ここからがみんなの知らない北極の世界です。まず、地球温暖化で何年か後、早ければ30数年後には北極の氷がなくなっちゃうっていう話を聞いたことある? 僕はすごくそれを心配しているんですけれど、寺門さん、実際に北極の氷って少なくなりつつあるんですよねぇ。
寺門和夫 そうですね。北極海は基本的には夏も冬も氷で覆われています。ですから夏でも氷が消えることはないです。船も自由に行き来できませんので、通るためには潜水艦で行くしかない。
大村正樹
そうか。北極海を通るためには潜水艦でもぐって行くしかない。北極の一番北側の氷の厚さってどれぐらいなんですか?
  寺門和夫 基本的には数メートルか10メートルの間ぐらいだと思います。
大村正樹
えーっ! そんなに薄っぺらいんですか! 驚いたなぁ! だって、よく氷山の一角という言葉があって、水に浮かべた氷があって、ほんのちょっと頭が出ているだけで下のほうはずっと水につかってますよね。だから、ずっと下のほうまで氷があるかと思いきや、そうじゃない。
寺門和夫 基本的には、氷山は南極などの大陸から流れてきた氷河が崩れてできるものですね。氷河自体が厚みを持っているわけです。ですから、北極の場合は氷が割れると、いわゆる流氷みたいな形になります。だから、別に高さがあるわけではない。
大村正樹
いや、驚いた。じゃあ今、温暖化の影響で北極の氷が解け出しているから、「わぁい!北極だ〜」なんて言ってうっかり船から飛び降りたら、氷が割れちゃう可能性もあるということですか?
寺門和夫 えーと、まだそこまで薄くはなっていません。冬はもちろんそれなりの厚さがありますし、夏でも数メートルありますので、砕氷船があれば通れますけれど、なかなかそうはいかないんですね。実は地球温暖化という問題で、この前もお話したことがあると思いますが、地球全体が温かくなって特にその影響を受けるのが北極地域なんですね。
北極
 
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大村正樹
北極地域。
  寺門和夫 一番温暖化が進むのが北極なんです。そのために北極海を覆っている氷が、ここ数十年どんどんどんどん解け始めています。それはどういう現象として表れるかというと、夏の氷が覆っている面積がどんどん少なくなっていくんですね。ですから最終的には今世紀の半ば、2050年ぐらいになると夏には全く氷が解けちゃうだろうと言われているわけですね。もちろん冬になると、当然その氷が戻ってきて発達するんですが、また温かくなると解けてしまうという状態になるのではないかと心配されてます。
大村正樹
じゃあ今のキッズたちがおじいちゃんぐらいになって夏の北極へ行ったら、象徴的な氷がなくて青々とした大海原が広がっているという可能性があるということですね。
寺門和夫 おじいちゃんまで行かなくても、大人になった頃にそうなっている可能性がありますね。
大村正樹
そうかぁ。北極の氷は、気温としては何度が基準とかあるんですか?
  寺門和夫 北極の氷は海水なんですね。真水の氷ではないので、マイナス1.8℃になると凍ります。
大村正樹
真水より低くなければ凍らない。
  寺門和夫 そうですね。まぁいずれにしても寒くなりますから当然、雪が降ってそれが固まって氷になって冬の間はずっと続くわけです。ところが夏になりますと、どんどん気温が上がるので解けていく。それから一番こわいのは、氷が解けていくと、白いものは太陽の光に反射するというのはご存じですよね。
大村正樹
はい。
  寺門和夫 黒いものは吸収するわけです。夏の間、氷が覆っている面積がどんどん少なくなってくると海の部分が現われますが、ここの部分は黒っぽいですから太陽の熱を吸収しちゃうんですね。そうすると余計、北極の温暖化が進むわけです。ですから、いま申し上げた2050年頃という予測があるんですけれど、おそらくもっと早く夏の氷がなくなってしまうだろうと言われています。
大村正樹
あら〜心配。僕らの暮らしで考えると遠い世界の出来事と思いがちだけど、やっぱり北極の氷が解けてしまうと、例えば海面の高さが上がっちゃうとか、陸がなくなるんじゃないかとか、そういう影響があるわけですよね?
寺門和夫 ええと、ここも面白いところで北極の氷が解けても、実は海水面の上昇には関係ないです。というのは、もともと海水に浮いている氷だから。例えば、コップに氷を入れて水をいっぱい入れておきますね。氷が解けてきます。でも氷が解けても水はこぼれないでしょ。
クジラ
 
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大村正樹
あふれない、あふれない。
  寺門和夫 北極の氷はあれと同じなんです。ただ心配なのは、その隣にグリーンランドがあるんですね。グリーンランドの上にある氷は、南極の次に大きな氷のかたまりなんです。ですから、これが解けてしまうと当然、水面は上昇します。ですからグリーンランドの氷河が全部解けてしまうと、世界の海水面の大体5メートルぐらい上昇すると言われています。
大村正樹
そうなんですか。もし地図があったら見てもらいたいんだけど、グリーンランドは最も北極に近い陸地になりますよね?
  寺門和夫 はい、そうです。カナダの隣にあります。
大村正樹
ここの氷も解け始めているわけですよね。海面の高さは上昇しつつあるということですか?
  寺門和夫 上昇しつつあります。これもすでにデータでわかっているんですけれど、少しずつ世界の海水面の上昇があります。ところが、いま観測されている海面上昇は、主に海の水が温められ膨張することによってできる海面上昇なんですね。
大村正樹
温かいと水の量が?
  寺門和夫 膨張しますね。地球の表面の70パーセントは海ですから、特に熱帯地方を中心に温まるとどんどん膨張していくので、それによって水位が上昇する。これが大体8割ぐらいを占めていますね。
大村正樹
そうなんですか。
  寺門和夫 残りのところは、陸地の氷河だとかグリーンランドの氷河、一部南極の氷が解ける。そういったことによって、さらに上昇していく部分があるわけですね。
大村正樹
なるほど。そういうメカニズムで水位が上がってくるという現象が起きるわけですか。
  寺門和夫 はい。ですからグリーンランドの氷が今世紀中に解けてしまうことはまずないので、今世紀中に何メートルも上昇することはもちろんありませんけれど、長い時間、何百年もかかると、5メートルぐらいグリーンランドにきます。それから、南極の氷も解けていきますから、もっと上昇する可能性がありますね。
大村正樹
寺門さん、北極とかあのエリアは行ったことがあるんですか?
  寺門和夫 ないですね。上を飛んだことはもちろんありますけれど。
大村正樹
飛行機で飛べるんですか!
  寺門和夫 北極の近くを飛びます。真上ではないです。ですから飛行機で北回りで行く時には、真上じゃないですけど飛びますから、よくオーロラも見えますよ。
オーロラ
 
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