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過去の放送分 過去の放送分 2007 12月8日 放送分
「算数が得意になる話」(2)
コーチャー/芳沢光雄さん(桜美林大学教授)
大村正樹&芳沢光雄
大村正樹
今回も算数が得意になる話です。算数って1回ついていけなくなっちゃうと、「あぁ〜あきらめちゃおう」というキッズもいるかも分かりませんが、そうならないために今日はぜひ聴いてください。先週は本当にいろいろ勉強させてもらいました。本当に先生、勉強になりましたよ。
ありがとうございます。
大村正樹
“目からウロコ”とはこのことです。さて、算数、数学というのは何か1回つまずいちゃうと、なかなか取り返すのが難しくありませんか?
そうですね。ほかの教科とは違う特殊な面を持ってまして、算数は分からなくなるとその後がずっと分からなくなる。ところが地理に関しては、世界地理は分からなくても日本の地理は得意だとか、歴史に関して古代ギリシャの歴史は苦手だったけれど日本史は得意とか、いろいろあるわけです。だけど、算数と算数の発展した数学は、1歩1歩積み重ねていく勉強なんです。
大村正樹
乗り遅れちゃいけないわけですね。
  したがって、つまずいた箇所をしっかりと克服して、それをマスターして先に進むということを忘れてはダメです。
大村正樹
はい。先週お話を聞いた分数の掛け算・割り算も、結構つまずいちゃうキッズが多いみたいですけれど、主につまずきの原因となるのはどういうポイントですかね?
最近顕著なのは、文章題の問題から式を立てられないということがあります。
大村正樹
へぇ〜。例えば、「太郎君の家から9メートル行った所に次郎君の家があって、そこから花子ちゃんの家まで15メートルあって全部で何メートルでしょうか?」というような問題ですか?
そういう文章題の問題が、いま日本の子供たちはものすごく弱いという特徴が出てきてます。
算数
 
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大村正樹
それじゃ国語力もないということですか?
  国語力はそれなりに持ってます。だけど算数の文章題ができない。これは、実は勉強の仕方に大きな間違いがありまして、掛け算の文章題の問題が並んでいる時には、みんなは文章を読まないで、そこにある数字だけを掛けるクセをつけてしまい勉強してます。
大村正樹
例えば、ちょっと1つ問題を出してください。
  「ここに旅館があって部屋が9つある。1つの部屋に6人ずつ収容できる。それで現在いっぱいだった。満室で、しかも各部屋が定員いっぱいの人が入っている」。
大村正樹
はい。
  そうすると、何人のお客さんが入っているかと考えると、それは9×6あるいは6×9で54という答が出てきます。そういう問題を考える時に、みんな文章をしっかり読むクセがついてないんです。掛け算だと想像して勝手に掛けちゃう。だけど問題によっては、例えば「ここに9つの部屋がある旅館がある。その内6つの部屋がふさがっていた。だからふさがってない、余っている部屋はいくつかな?」という場合には、9−6で答は3になるわけです。ところがきちんと文章を読まないために、人によっては9×6をやったり、人によっては9−6を勝手に計算したり…。まず文章をしっかり読むということを忘れてはいけません。
大村正樹
じゃあ、計算式は立てられて答も出せるんだけど、元々その文章をしっかり読んでないから答がバツついちゃうということですね。
まず、そういうあわててやる人と、本当に文章を読んで何を言っているかということを――文章は、大人でも1回読んでなかなか分からないものがあります。ところが、みんなはちょっと読んだだけで自分は全部分かる。ちょっと読んで分からなければ、もう2度3度と読まない。そういう困ったクセがついている生徒がたくさんいます。文章が分からなければ、何度も繰り返して読むと言っている意味が分かります。時間をかけて、文章の言っている意味を理解することが大切です。
大村正樹
でも、これは自分で勝手に間違えちゃってるわけですよね。せっかちにやっちゃって、よく読まないからいけないんですよね。よく読めば解ける問題であるわけですよね。
ただ、今度よく読んでも、文章と式との関係をしっかりつなぐような意識をまた持ってないと、解けない問題もいくらでもあります。例えば6年生ぐらいになると、時間と距離と速さの問題があります。その時に、例えば「時速30キロで走っている自動車が2時間走った。そしたら何キロメートル走ったことになるか?」と言うと、1時間に30キロメートルずつ走ってそれが2時間だから、30×2で60キロメートル走ったという答が出てくる。
算数
 
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大村正樹
はい。
  ところが、なかにはそれを“はじき”――“はじき”の“は”は速さ、“じ”は時間、“き”は距離というもので暗記して“はじき”のやり方だけで答を出そうとするお友達もいます。正しくやり方を真似した時はできますけれど、“はじき”のやり方を忘れた場合には、意外とどういう式を書いたらいいか分からなくなる。だから文章問題をやる時には、文章の持っている意味を1歩1歩理解して、そして式にするというクセをつけないといけないと思います。
大村正樹
“はじき”というやり方は、子供たちの間で浸透しているんですか?
  学習塾や、ひと昔前のお父さまお母さま方が習った時代には、意外と多く使われていました。
大村正樹
忘れてたかな(笑)。ラボのみんなは知ってた? ラジオの前のキッズは知ってた?僕はそうやって考えなくて、いま先生がおっしゃった通り、車の2時間は30キロ×2で60キロというイメージが比較的できる子供だったんですけれど、そういうのができないキッズもちょっと多いということなんですね?
仮に“はじき”という言葉を使わなくても、速さ×時間=距離の公式だけ覚えて、公式にあてはめようとするんですね。そうすると公式を忘れてしまうと、何をやったらいいかが分からなくなってしまう。だけど、あまり公式を意識しないで時速30キロと言えば、1時間に30キロメートル進むんだな。それが2時間進めば、そしたら30を2倍して60キロ進むんだなと。あまり公式に頼らないで理解したほうが、ずっと忘れないで使えます。
大村正樹
確かに文章問題みたいなものは、その文章の世界に入っちゃうのも大事ですね。自分がその主人公になって計算するという手もありますよね。僕なんかその考え方として、実際その旅館にいるお客さんの気分になって6人部屋が9つあるんだなと計算するんだけど、今のキッズはどういうふうに計算しているんでしょうかねぇ。面白かったなぁ。先週よりまたさらにレベルが高いながら分かりやすいお話をありがとうございました。
ありがとうございました。
大村正樹
先週もお伝えしましたが、講談社現代新書から芳沢先生が本を出版されています。タイトルは『算数・数学が得意になる本』、「つまずいても大丈夫!」と大きな文字で書いてあります。つまずくことによって人間は成長していくということなんですよね。つまずいているキッズがもし聴いていたら、成功への第1歩と思ってよろしかったらどうぞ。
算数
 
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