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過去の放送分 過去の放送分 2008 2月9日 放送分
「海の生き物の話」(3)
コーチャー/佐藤克文さん
(東京大学海洋研究所国際沿岸海洋研究センター准[じゅん]教授)
大村正樹&佐藤克文
大村正樹
いやぁ、佐藤先生、先週も非常に興味深いお話だったんですが、今日はどんなお話を?
  今日はまた音を聴いていただきたいと思います。
大村正樹
いいですねぇ!先週のアザラシの鳴き声驚きましたが、今日もまた音がラボに来ている。お願いします。(鳴き声の音)ウミネコ? ウミネコとかじゃないの? これは鳥でしょ?
いい線いってますね。鳥の声です。
大村正樹
う〜ん、何だろう? 有名な鳥ですか? 飛ぶ鳥ですか?
  飛ばないです。
大村正樹
分かりました。ペンギン!
  そうです。アデリーペンギンというペンギンの鳴き声です。アデリーペンギンは南極にいます。
大村正樹
アデリーペンギンはどんなペンギンですか?
  皆さんがペンギンと言って最初に思い浮かべる顔が真っ黒い、白黒のちっちゃいペンギンですね。いわゆるごく一般的な、皆さんが最初に思い浮かべるあのペンギンがアデリーペンギンです。
大村正樹
今の鳴き声は何を言っているんですか?
  これは、片方の鳥が「いってきます」と言って、もう片方が「いってらっしゃい」と言っているような夫婦の会話です。
大村正樹
そうなんですか。先週のアザラシの会話は分からなかったけれど、ペンギンの会話は分かる。
  これは陸の上で、私たちの目の前でやっていることです。だから何となく解釈できるんですね。ペンギンの夫婦が二人で協力しながら子育てするんですが、代わる代わるに海へエサを獲りに行きます。その時、片方が出かける時に巣でやる挨拶ですね。
大村正樹
さすがペンギンだから、「ハンカチ持った?」とか「携帯忘れてない?」とか、そういう話はしない。
  そこまで話しているかどうかは分からないですねぇ(笑)。してるかも知れませんねぇ。
アザラシ
 
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大村正樹
これはデータロガーとやっぱり関係があるんですか?
  この今の音に関してだけは関係ないですけれど、この後ペンギンたちは、代わる代わる海に出かけていってしまいます。そこから先、私たちの視界から消えてしまう。
大村正樹
ちょっと待ってください。僕の認識が違っていたらいけないかも知れないけど、ペンギンは集団で行動するんじゃないですか?
  ある程度のところまではそうですね。巣を出て氷の上をトットコ、トットコ歩いていきます。この間は集団です。夫婦が別れるのは巣です。巣で別れた後、片親だけが出て行くんですが、その時なぜかご近所が連れ立って出かけていく節があります。
大村正樹
じゃあ、お母さんに「いってらっしゃい」とされたキッズたちが集団登校するようなものですかねぇ?
  イメージとしてはちょっと近いですね。本当に集団登校をしている子どものように並んで海に向かって出かけていきます。歩いていくところまでは見えるんですけれど、海の中へ入ってからは分からない。これを調べるのがデータロガーという記録計になります。
大村正樹
ペンギンにも取りつけて?
  つけてます。まずカメラ、ちっちゃなペンギンにも乗せられるぐらい小さなカメラをつくったんです。ちょうど太めのマジックペンぐらいの大きさで、これをペンギンの背中につけてみました。背中から頭のほうに向かって前向きに、ランドセルを背負うような感じでつけてますね。
大村正樹
ハハハ、そうですか。じゃあ、お辞儀をしたら中身が全部出ちゃうとか?
  ちゃんとフタがあって。ペンギンの視線で海の中を覗いているのと同じになります。頭のほうに向かって進んでいきますから、ペンギンが何を見ながら水の中を泳いでいるかが分かるんです。
大村正樹
えっ、何を見てたんですか?
  まず、エサがいっぱい写ってましたね。オキアミとかエサが写っている中にペンギンが突っ込んでいくような画が撮れました。
大村正樹
オキアミは人間が置いたエサですか? オキアミって何ですか?
  オキというのは、岸、沖の「オキ」です。海の沖のほうにある。「アミ」というのは甲殻類ですが、ちっちゃなエビのような生物をペンギンたちは食べているんですね。オキアミは、南極にいっぱいいるんですね。南極で人間がエサをしかけているわけではないです。
大村正樹
そのオキアミというエサめがけて、ペンギンが泳いでいく。
  もういっぱい、雲のようにある中へ突っ込んでいく。パクパクパクパク食べるんです。これは予想通りでよかったんですけれど、ペンギンが深い所から水面に向かって上がってくる時に一緒になって泳いでいる様子が見えたんです。
ペンギン
 
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大村正樹
えっ、エサも一緒に泳いでいるんですか?
  エサを獲るのは深い所ですけど、そこから戻ってくる時の話ですね。戻ってくる時にあるペンギンにつけたカメラに8羽ぐらい、他のペンギンが何羽も写っているんです。
大村正樹
エサ場までエサを獲りに行くのは、いっぱいいるペンギンの群れの1羽だけで、上のほうでみんな待っているんですか?
  いや、違うんです。一緒に入っていくんです。水の中に一緒に入っていって、一緒に出てくるのは上で観察していて分かったんですね。肝心のエサを獲っているところはバラバラだったんですけれど、入る瞬間と上がってくる瞬間は揃って一緒だったんです。特に面白かったのは、上に上がってくる時にみんな同じ方向を向いたペンギン、要するにペンギンのお尻が写っているんですね。それで、水面へ向かってサーッと一緒に戻ってくるような画が撮れたんです。
大村正樹
ということは、佐藤さんは南極へ行かれて、氷の上にいるペンギンの群れがソレッと飛び込んで、また戻ってくる時は同じように戻ってくるわけだから。
それは見てたんですね。
大村正樹
海の中でいったんみんなバラバラに仕事をして、また浮き上がる直前に仲間が集まって上がってきたことがデータロガーで分かった。
  そういうことです。分かったんです。
大村正樹
人間は普通に陸で見ている限り分からなかったわけですね。
  はい。一緒に潜って一緒に戻ってきてますから、中でも一緒にエサを食べてとか想っていたんですけれど、肝心のエサを食べるところはバラバラ。ただ潜る瞬間と戻ってくるところだけは足並みを揃えていたんですね。
大村正樹
佐藤先生の研究は、たぶんキッズたちは非常に分かりやすくて、しかも知りたかった話だと思うんですよ。そういうキッズたちにヒントと言うか、いわゆる科学に興味を持ってもらうヒントを何か教えてもらえますか?
そうですね。ぜひ自分の目で見て「不思議だな?」と思う気持ちを大事にしてもらいたい。そういうことをよく考える、考え続けることをやってほしいなと思いますね。そういう子が大きくなった時に、何か技術が進んで今まで調べられなかったことが調べられるようになる状況が簡単に起こりうると思うので、その時に「不思議だな?」と思う気持ちが発見につながるんじゃないかと思います。
大村正樹
何か「サイエンスキッズ」の番組の一番重要な部分を今お話いただいたような気がしました。そういう思いを持つことをこれからのキッズにぜひ!という感じですよねぇ。
そうですね。
ペンギン
 
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