過去の放送分
過去の放送分 過去の放送分 2008 3月15日 放送分
「野菜の話」(1)
コーチャー/藤田智(さとし)さん
(恵泉女学園大学園芸文化研究所准[じゅん]教授)
大村正樹&藤田智
大村正樹
今週はお野菜の話を聞いていきますが、今日はぜひ夕食の仕度をしているお母さんにも聴いていただきたいなぁ! 今回のサイエンスコーチャー略してサイコーは、恵泉女学園大学園芸文化研究所准教授の藤田智(さとし)先生です。こんばんは。女子大の先生ですね!
アハハ、一応そうですね。そう見えないでしょ?
大村正樹
見えないです(笑)。何か丸顔のおじさまが私の目の前にいるんですけれど、普段は女の人たちを相手に教壇に立っているんですねぇ。
そうですね。実はうちの大学は変わっていまして、1年生の時、18、19才の女子大生が全員畑に行って、私と一緒に野菜をつくるんです。畑へ行って、今は白菜や大根とか、春になるとジャガイモとか。そういったものを学生につくらせるんですよ。
大村正樹
先生、見た目は畑ぴったりですね! ホッカムリとかやっちゃうわけですか?
  ええ、この辺に土をつけて(笑)。
大村正樹
“カールおじさん”みたいな方だ(笑)。先生は野菜のことなら何でも知ってらっしゃるということですけれど。
  すべてとは限りませんが、かなり勉強してますから、ある程度は知っていると思います。
大村正樹
やっぱり野菜は好きですか? 肉と野菜があったらどっち?
  肉と野菜は、野菜も大好きですけれど、肉のほうがより好きですね。申し訳ないですけれど(笑)。
大村正樹
サラダバーに行くと結構厳しいチェックをしちゃいますか?
  そうですね、サラダバーへ行くとまず野菜の新鮮さ、それからみずみずしさ、きれいにちゃんと調整しているとか、そういうところを見ちゃいますね。
大村正樹
見ちゃうんですか(笑)。職業病ですねぇ。僕はけっこうベジタリアンというか、やっぱり栄養があるのと体にいいので。バランスよくいただいているんですけれど、野菜の種類はどれぐらいあるんですか?
日本では、主にスーパーで売られているのは50から60種類。もうちょっと範囲を広げると100種類ぐらい。またキノコとか山菜類を入れると大体190ぐらいになります。
大村正樹
190種類ぐらいが野菜として流通している。
  世界だと890ぐらいあるんですよ。800種以上ありますから、日本にはそのおよそ4分の1ということになります。まだまだ見ない野菜がいっぱいあります。
大村正樹
ただ野菜というのはやっぱり新鮮さが売りですから、日本でつくられているものがほとんどなんですよね、お肉と違って。
  肉も輸入しますが、野菜も端境期があって、旬の時はいっぱい獲れますけれど、それ以外の冬の時期は野菜が少なくなるので外国から輸入されている野菜もなくはないです。
大村正樹
ちなみに純国産の野菜と言ったら何種類ぐらいあるんですか?
  実は、日本原産の野菜は20から25種類ぐらいしかないんです。しかも、本当に地味な野菜ばかりなんです。例えばウドや茗荷(みょうが)、三つ葉、セリ。
大村正樹
知らないでしょう。セリは春の七草。茗荷やウドは子どもたちは食べないですもの。
  今は小さなお子さん、小学生中学生の方も、日本原産の野菜、ワサビもそうですけれど、そんなにいっぱい食べませんよね。子ども受けしない野菜が日本原産なんです。キュウリやトマトは、外国から昔入ってきたものなんですよ。
大村正樹
えっ、サツマイモは?
  サツマイモも中央アメリカ、メキシコ原産です。
大村正樹
どうしてサツマイモと言うんですか?
  それは日本に入ってきた時、今は沖縄は日本ですけれど、昔は琉球王国と言って日本と違ってたんですね。最初に今で言う日本に入ってきたのは沖縄が一番ですが、江戸時代に沖縄に入ってきた後に、種子島についたわけです。
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大村正樹
鉄砲と同じですね。
  そうです。種子島は何藩と言います?
大村正樹
旧薩摩藩。
  すなわち、薩摩に入ってきたイモなのでサツマイモという名前になった。元々は中米メキシコです。メキシコからポリネシア、インドネシアの辺でもつくられていますし、南のほうから上にあがって来て、日本に入ってきたことになります。
大村正樹
メキシコと言うとサボテンは野菜ですか?
  サボテンも、トゲのないサボテンだったら野菜として食べられています。
大村正樹
サボテンは野菜なんだ。先生の著書が手元にあるんですが、タイトルが『キュウリのトゲはなぜ消えたのか』。今のキッズたちでキュウリにトゲがあることを知る子はいないでしょうねぇ。
学校農園などで先生と一緒にキュウリをつくった人は、収穫する時にトゲがあって「痛い」と思うかも知れませんが、スーパーや八百屋さんで売っているのは、収穫した後2、3日経っているのでトゲが取れてイボだけしか残ってないんですよ。
大村正樹
僕もそんなイメージで、トゲが痛いという記憶がないんですけど。
  キュウリはよくサンドイッチに入ってますよね。キュウリの新鮮さはトゲが痛々しいぐらいあることと花の跡がついていることです。黄色い花が咲くんですが、その花の跡が身についていると新鮮という証拠のひとつなんです。
大村正樹
そう言えば、キュウリって先っぽに黄色い花が咲くんですよね。
  そうです。あの黄色い花の枯れたのがついててトゲが痛々しいと新鮮だという証拠ですが、しかし、そのトゲ、イボのところがサンドイッチにはさむと、どうもそこから腐りやすいというのがサンドイッチ業者の見解のようですね。それで、「サカタのタネ」というところが新しく“フリーダム”というイボなし、トゲなしのキュウリをつくったんです。それにサンドイッチ業者が飛びついて実験したところ、従来のキュウリよりも腐りが遅かった。
大村正樹
いわゆる品種改良の結果、トゲのないキュウリができたという。へぇ〜。
  しかもサンドイッチの中に入れると、日持ちがよくなったということですね。
大村正樹
「サカタのタネ」から繁殖したキュウリだけが、トゲがないんですか?
  今のところはそういう感じですね。
大村正樹
例えば、小学校でキュウリの種を蒔いたら、「サカタのタネ」じゃない種から成長したキュウリはトゲがあるんですか?
  いっぱいありますね。中国系の四つの葉っぱと書いて“四葉”(スーヨー)というのがありますが、それはトゲだらけです(笑)。ですから、トゲがないものから、トゲがいっぱいあるものまでいろいろ幅があります。トゲのないキュウリが、カリッとした歯ごたえと甘さ、トゲがないため洗いやすい、痛くないので非常にいま人気が出ています。
大村正樹
八百屋さんとかスーパーに並んでいるのは、基本的には品種改良されたキュウリばかりということ?
  そうですね。それともうひとつ面白いことがあって、キュウリをより長く収穫するために、接ぎ木といってカボチャにキュウリをつないでしまうんですね。
大村正樹
合体させる。
  そうすると、カボチャのほうが根っこがいっぱい伸びるのでキュウリが長くいっぱい収穫できます。もうひとつ、今は金ぴかキュウリ、テカテカしたものが多いですね。あれはカボチャに接ぎ木したキュウリだけなんです。
キュウリ
 
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大村正樹
へぇ〜。
  もし自分の種でキュウリを育てると、キュウリの表面にトゲだけが、カビみたいなブルームと言うんですがいっぱい出てきます。ですから、自分で種を蒔いて「あれ〜? ちょっとカビみたいなのが出てきた」と思ったら、それは全然何でもないんですよ。
大村正樹
食べられるわけですね。
  もちろん食べられます。むしろ接ぎ木したキュウリよりも自分の種から育てたほうが美味しいぐらいですけどね。
大村正樹
先生がお好きな野菜は何ですか?
  私は好きなものを一つあげろと言えば、やっぱりメロンです。
大村正樹
えっ、野菜ではないじゃないですか!?
  スイカとメロンとイチゴはみんな果物と言いますけれど、私たち野菜を勉強している者は、あれは野菜なんです。
大村正樹
それは、勝手に先生が決めているんですか?
  いえ、日本の園芸の業界で決まっているんですよ。
大村正樹
じゃあ、ミカンは何ですか?
  ミカンは木になるので果物です。
大村正樹
地面になるものは野菜なんですか?
  ええ。木になる実が果物、地面から出ても草になるものは野菜というように私たちは分けているんです。なり方で。
大村正樹
じゃあ、ブドウは木ですから?
  あれは木だから果物。
大村正樹
メロンは。
  野菜、草ですから。スイカも草です。
大村正樹
イチゴも野菜?
  野菜です。
大村正樹
草なのか。
  ところが日本では変わっていて、私たち育てる側の人間は野菜として扱っていますが、収穫した後にお店に並ぶ時には、みなさん日本人全員が果物と(笑)。
大村正樹
もちろん、もちろん。じゃあ、メロンは“果物の王様”みたいな役割だけど。
  “デザートの女王”ですけど、しかし野菜です。私の中では“キング・オブ・ベジタブル”はメロン。
大村正樹
そんなことを月曜日に「先生、メロンは野菜です」と言ったら、3学期の理科の成績が悪くなったりしないですか?
  いえいえ、理科の成績を悪くする先生が問題かも知れません(笑)。
メロン
イチゴ
 
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