過去の放送分
過去の放送分 過去の放送分 2008 5月17日 放送分
「五感の話」(1)
コーチャー/森田由子(ゆうこ)さん
(日本科学未来館サイエンスコミュニケーター)
大村正樹&森田由子
大村正樹
みんな、ちょっと難しい言葉だけど知ってるかなぁ。「五感」、知ってる? 見る感覚、聞く感覚、味わう感覚、匂いをかぎわける感覚、触る感覚の5つを五感と言います。今日はその感覚の話を聞いていきます。僕たち生き物の感覚は、実はものすごく不思議なんだって。人間以外の動物の感覚ってどんなのかなぁ? 今週のサイエンスコーチャー略してサイコーは、日本科学未来館サイエンスコミュニケーターの森田由子さんです。森田さんは、ソフトバンククリエイティブから本を出してらして『生き物たちのふしぎな超・感覚』、これ超面白かったです。分かりやすくて、イラストもたっぷりで。
ありがとうございます。イラストがたくさん入っているのがポイントなんです。
大村正樹
この本のターゲットは、どれぐらいの世代の人に読んでもらいたいですか?
  そうですねぇ。ちょっと字が難しいので中学生ぐらいからになってしまうんですけれど、中に書いてあることは本当に身の回りで起こっていることなので、漢字に強い小学生にも読んでいただけると思います。
大村正樹
難しい漢字はちゃんとカナをふってますから大丈夫です。本の帯(おび)を見てみると、「生きることは感じること」だと。そう、僕たちは感じながら生きているわけですよ。これ、僕の大嫌いな生き物が最初に出てくる。「ヘビは熱で獲物を見つけ、舌で匂いをかぐ」。というのは、人間が手のひらでテレビを観て、舌で音を聴くようなものですか?
音はちょっと無理ですけど(笑)。ペロペロ舌で空気を味わうのができるということです。
大村正樹
ヘビが? だから、いつも舌を出しているんですか?
  そうです。よく口を閉じた状態で、すき間からチロチロと舌を出している場面をテレビなどでご覧になった方が多いと思います。実はあれはただ何となくベロを出している癖があるわけではなくて、空気中にある匂いの分子を舌の先にペッとくっつけて口の中にある匂いを感じるところに戻すためにペロペロやっているんです。
大村正樹
空気中の匂いの分子を瞬時に口の中に取り入れているんですか? それは勝手に人間の解釈で、ヘビ的には「関係ない」と言ってるかも知れませんよ。
いえいえ、そうではないんです。人間の場合は、鼻の穴があって空気が入ってきて、鼻の中の粘膜でその分子がキャッチされるんですが、ヘビの場合には口の、ちょうど人間で言うと上あごの裏側のところにすき間があって、そこにそういう神経が来てるんです。それが鼻代わりです。
大村正樹
でも、ヘビって鼻の穴がありませんか?
  それはあるんですけれど、匂いを感じるところは鼻の粘膜だけではなくて、人間もヘビが持っているのと同じような場所はあるんですね。ただ役割がどちらをメインで使うかとか、どういう使い方をするかというところがちょっと違っている。
大村正樹
じゃあ、ヘビの鼻の穴は何のためにあるんですか? 飾り?
  そんなことはないです。それはそれでちゃんと使えるんですけれど。そこから呼吸もします。やっぱり入ってくるものを感じるのはできるんですけれど、ヘビの場合にはそれ以上に口のほうから舌を入れる、そっちの穴のほうを匂いのためにメインで使っているということです。
大村正樹
なるほど。もうひとつ帯に書いてあるのは、すごい! 行くよ、みんなイメージしてね。「チョウは前足で味見をして、ハエはジャイロスコープで飛ぶ」。チョウチョは前足で味見ということは、前足が口代わりということですか?
口というのともちょっと違うんですね。舌、ベロに近いかも知れないですね。口だと物を食べなきゃいけないので、食べる場所はやっぱりアゲハもストローみたいな口を持ってはいる。そうじゃなく、手で触ると味が分かっちゃう。
大村正樹
ベロですね。舌。へぇ〜。そこで美味しいかまずいかを感じて、口の中に入れるんですか?
  え〜と、美味しいかまずいかもちょっと違う。例えば、アゲハチョウの場合はミカンの木に卵を産んで、幼虫がミカンの葉っぱを食べて育つんです。他の植物の葉っぱではダメなんです。だから、これがミカンの葉っぱだというのを前足で飛びながらたたいて、「大丈夫、これはミカンだ。ここなら卵を産んでもちゃんと子どもが育ってくれる」というのを見分けるための味見をするんです。もちろん口のほうもちゃんと味覚を感じることができるようになっているんですが、足で感じるというのは口の中に入れてはき出せるかどうか、はき出す時には手遅れになることもないわけではないので、いろいろな感覚を持ってると便利だなぁというひとつの例ですね。
大村正樹
チョウチョは6本足で上の触角がありますよね。その下の前足2本が味見をする足?その足は形が明らかに違うんですか?
  形は特に、例えば丸くなってるというようなことではなく、形はほかの足と違うわけではないですが、その先に神経が――ちょっと顕微鏡を使わないと見えないんですが細かい毛というかトゲみたいになっていて、そこのところに味見のための神経が来てるんです。
ヘビ
アゲハチョウ
 
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大村正樹
日立ハイテクのスコープで観てもらいましょう。
  ぜひ観ていただきたいです。
大村正樹
あと、「ハエはジャイロスコープで飛ぶ」。ジャイロスコープって何ですか?
  ジャイロスコープとは、平衡感覚(へいこうかんかく)をとったりするためで、飛行機の操縦室(そうじゅうしつ)に入る時にあると思うんですが。ハエはそれと同じ仕組みを持っているんです。
大村正樹
飛行機ではジャイロスコープ見えないですが、ヘリコプターにありますよね。だから最近ヘリコプターの後ろの羽根というのがなくて、それがジャイロスコープになっている。
それに近い感じですね。
大村正樹
みんな、ちょっとヘリコプター図鑑も用意して。そうするとヘリコプターって前に羽根がついてて、後ろの羽根もクルクル回る小さいのがあるけれど、最近のヘリコプターはそれが見えないのがあるの。それがジャイロスコープ。イメージできた? すぐには図鑑ないですよねぇ。
ちょっと難しいですね。
大村正樹
で、「ハエはジャイロスコープで飛ぶ」。
  はい。人間の場合には平衡感覚、どっちにグルッと回ったという向きを感じるのに、耳の中にある内耳に三半規管(さんはんきかん)と呼ばれるものであったりとか平衡器官があるんです。でもハエはそういうものを持っていない。ハエだけじゃなく昆虫はみんなそうですが、そういうのを持ってない。ではどうやって平衡を取っているんだろうということになりますが、空を飛んでいるのにどっち向いているか分かんないと落っこっちゃいますから。その時にジャイロスコープという仕組みを使っている。
大村正樹
ハエのどの部分ですか?
  ハエは羽が2枚と思っている方が多いんですが、実はよく見ると前羽2枚の後ろに糸みたいな、糸の先にちょっと丸くポチッとくっついているような小さい羽があるんです。
大村正樹
ハエは基本的には2枚ですよ。そこの先っぽに?
  後ろに糸みたいなものがちょっと生えているんです。例えばガガンボ、2、3センチぐらいの大きさで蚊みたいなフラフラ飛ぶのがいます。
大村正樹
あれ、ガガンボと言うんですか? 俗称ではなく正式名称?
  そうです。その仲間もハエと近いのでよく見ると、――ハエより大きいので見やすいですが、前にある大きい羽の後ろにちょっと太い糸みたいなのが生えて、それが同じ仕組みです。
大村正樹
ワーッ。みんなも、人間は五感というけれど、さらにプラスアルファで今日は平衡感覚という言葉を覚えてもらうとありがたいな。ちょっと調べてみて「平衡感覚」、難しい字を書くから。ちょっとこの番組、時間が短いんです。来週もっと興味深いお話を。だって今週まだオビの部分しか聞いていませんから。来週いよいよ本の中身のほうを伺っていきたいと思います。
そうだよなぁ、ヘビは舌で匂いをかぐって、僕ら人間からしてみると「えっ〜!?」って思うけど、ヘビからしてみたら人間が鼻で匂いをかいでいること自体が「なんだ、人間は!?」と思ってるかも知れないしね。当たり前のことを当たり前の器官と思っていたら、実は同じ生き物でも違う使われ方をしているのって結構多いんじゃないかなぁと思ったりして・・・。
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