過去の放送分
過去の放送分 過去の放送分 2008 3月15日 放送分
「五感の話」(2)
コーチャー/森田由子(ゆうこ)さん
(日本科学未来館サイエンスコミュニケーター)
大村正樹&森田由子
大村正樹
森田さんは科学未来館でふだん何をやっていらっしゃるんですか?
  ふだんは展示をつくったり、例えば特別展はどんなものをやったら面白いかなというような企画を主に仕事としています。
大村正樹
じゃあ、エイリアン展もやったんですか?
  エイリアン展の翻訳などもやりました。翻訳は翻訳者の方がやったんですけど、翻訳の中に専門的な知識が出てくるので、そのチェックを私が担当しました。多岐にわたって生き物だけではなく、宇宙人の分野まで関わってるわけです。今回のエイリアンも守備範囲になりました。
大村正樹
先週ご紹介した森田さんの著書『生き物たちのふしぎな超・感覚』、この前は帯(おび)の部分で終わったので中を見ていくと目次があって、嗅覚(きゅうかく)、味覚それから触覚、聴覚とかあります。匂いの感覚で「サケの遡上(そじょう)は『母なるにおい』のなせるワザ」と。サケって魚ですよね? 遡上は川を上がってくることですよね。いったん海に出て。それは、「お母さんのにおい」のなせるワザ? サケの卵ってイクラですよね。そのイクラたちがお母さんの匂いを覚えているということですか?
イクラの時に覚えるのではなくて、イクラからかえった子どもがしばらく川で育つ。稚魚(ちぎょ)の時にかいだというか、その川の匂いをしっかり記憶して海に出て行くんです。
大村正樹
魚も匂いをかげるんですか?
  はい。実は水の中で匂いをかぐって、人間の場合は鼻から吸ったら溺れちゃいますからできないですけれど(笑)。
大村正樹
死んでしまいますよ。
  同じように魚にも鼻にあたる匂いをかぐための――そういう意味では空気を吸うわけではないですが、匂いをかぐための器官で鼻にあたる部分は持っているんですね。
大村正樹
魚はエラ呼吸ですね。だから、水の中にある酸素を抽出して呼吸しているから、鼻から全部水も吸い込んでいるわけですよね。それは、酸素も吸い込みながら匂いも一緒にかいでるということですか?
そこがちょっと違っていて、魚の場合には口からエラに抜けるのが酸素を取り込むための通路なんですね。鼻の部分は、人間のように出したり入れたりということではなく、サケだと大きいのでたぶん頭の先を見てもらえば分かりますが、穴があいているんです。入って抜けるだけの穴があって。
大村正樹
魚の鼻の穴は抜けるだけ? どこに抜けていくんですか?
  そのまま体の表面から入って抜けるだけになっています。入り口が鼻の穴と言えば鼻の穴で、出口も外にあいちゃっているので。人間だと鼻の穴から入った後、口の中につながっていきますよね。そうではなく、別の通路になっているんです。
魚
 
このページのトップへ
大村正樹
へぇ〜。出口はどの辺にあるんですか? 肉眼で見えるんですか?
  出口はそこからすぐ、そんなに離れていないところにあいちゃう。よーく見れば見えるかも知れないですけれど・・・。たぶん入り口のほうは分かっても、出口はまさかそこにあいていると皆さん思わないので。
大村正樹
新巻鮭(あらまきじゃけ)が来たら、よーく見てみようかなぁ。鼻の穴、分かります?
  分かるかも知れないですね(笑)。ちょっとスライスしてみたら分かるかも知れないですねぇ。
大村正樹
そうですか。ごめんなさい、話の腰を折って。じゃあ、抜けてそこで匂いを瞬時に感じているんですか? それは魚だけの器官ですか、その嗅覚は?
そうです。嗅覚ということで言うと、魚以外にももちろん私たちみたいに哺乳類も持ってますし、鳥類も持ってます。感じ方が鼻という場所ではないかも知れないですが、ほかの生き物たちも持ってはいるんです。
大村正樹
でも、抜けちゃうのは水の中の生き物だけ?
  魚はそういう形の鼻、ちょっと私たちとは違った鼻で匂いとしてそれを感じているということになります。
大村正樹
生まれた川の匂いをしっかり覚えているんですか?
  はい。ずっと経っているとダメですけれど、生まれて数日の間に自分の周りにある川の水に溶け込んだ物質、主にアミノ酸といわれる物質ですけれど。
大村正樹
アミノ酸って力の源の?
  そうですね。体をつくる、タンパク質をつくる基になるのがアミノ酸という物質で、それが川の中に溶け込んでいるんですが、それを感じて記憶して海に下りていく。
大村正樹
へぇ〜。例えばサケだったら、北海道の石狩川の稚魚で1ヶ月ぐらいその川にいたものを突然、変な話ですが誘拐して秋田県の川に流しちゃう。そしたら、北海道まで帰れるんですか?
たぶん帰っちゃうと思います。
大村正樹
すごい! じゃあ、秋田から下って新潟県だったらどうするんですか?
  生まれてすぐいた川のみを記憶するので、もう1ヶ月とか何ヶ月も経ってしまうとそれは海に出た時と同じことが起こっているわけで、川を移したからといって引っ越した先の匂いをまた覚え直すことはしないんです。
大村正樹
じゃあ、絶対石狩川に戻れるようになっているんですか? 沖縄とかに放しても?
  戻れると思いますね。そういう実験をやったかどうか分からないですが。仕組みとしては、石狩川に戻っていくことになると思います。
魚
 
このページのトップへ
大村正樹
ちょっとこれ、実験ちゃんと成功させてください。そしたら、特許取ってその研究結果が賞を取るかも知れません。その本を出したら、印税を分け合いましょう。
いいですね(笑)。ちょっといいアイデアですね。ぜひやってみたい実験です。
大村正樹
森田由子さんの次回の著書は、『石狩川のサケは何キロ先まで放流して戻ってくるか』。
  どこまで遠くで大丈夫か。だんだんとそれを遠くにしていって、果てはフィリピンもOKだったとか、そんな感じで。誘拐されてもちゃんと帰れるんだみたいな(笑)。
大村正樹
あと、『生き物たちのふしぎな超・感覚』は項目がすごく細かくて、もっともっと・・・。例えば「ネコの目の奥にある秘密の鏡」も知りたいし、目つながりで、さっき雑談でCMの時にお話された、人間の目の色で何が違うんですか?
例えば、目の色が薄い人や青い色の人、日本人の場合は黒い人が多いけれど、同じものを見ているんだろうかと不思議に感じたことが、たぶん皆さん1回はあるんじゃないかと思うんです。
大村正樹
1回も思ったことはない。
  そうですか。青い人って青く見えるんじゃないかとか、緑の人は緑に見えてたりしないのかなぁとか。
大村正樹
そう思った人、ラボ内にいます? わっ! 一人いるんだ。森田さんもそう思ってた。へぇ〜。
  何でちゃんと見えるんだろうと思ったことがあるんです。実際には緑に見えたり、青に見えたりはないんですが、目の色が薄いと光がいっぱい入ってくるので目の中がまぶしくなるんです。そうすると、例えば映画館で暗幕、周りを黒くしていますよね。この暗幕が薄いと、映像の見え方がちょっと変わったりします。暗さが変わると、薄明かりのところで見るのと、真っ暗の中で見るのと同じ映画の場面を見ても見え方が違います。
大村正樹
同じ黒とか同じシーンを見ても、瞳の色によって違うんですか。
  青い目の人が青いサングラスをかけた時のように見えるわけではないですが、光の強弱による見え方の違いは、たぶんあるんじゃないかと。
大村正樹
じゃあ、日本人はどちらかというと目が真っ黒だから、非常に日差しが強い時のほうが得意ということですね?
  そういう意味ではそうですね。逆に言うと、外国人の方でよくサングラスをかけている。よく似合ってカッコいいなというのもあるんですが、あれは単純にカッコいいからかけているわけではなく、目の保護のためという大きな理由があるんです。切実なんです。
大村正樹
日本人メジャーリーガーも、デイゲームで試合をやったほうが有利ですよね。
  そうですね(笑)。デイゲームのほうが得意じゃないでしょうか。
大村正樹
勉強になりました。2週にわたって森田さん、ありがとうございました。今日のサイコーは、日本科学未来館サイエンスコミュニケーターの森田由子さんでした。ありがとうございました。なるほど、そうか。だから外国人はサングラスをしているのね。でもまたカッコいいからね、外国人は。じゃあ、日本の人は昼間に強いのね。そういう特性を生かして、ラジオを聴いたキッズもヒントを得て、大人になってから何かに役立ててもらえたらいいなぁと思いました。
魚
 
このページのトップへ