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過去の放送分 過去の放送分 2008 6月14日 放送分
「泳ぐことの科学」(1)
コーチャー/吉村豊さん(中央大学教授)
大村正樹&吉村豊
大村正樹
学校によってまちまちだと思うんだけど、そろそろ小学校でも水泳の授業が始まるでしょう。もう始まってるかなぁ? みんな、泳ぎって得意? 今日は、「泳ぎ得意じゃないな」っていうキッズも「得意だ」というキッズも含めて、すごく興味深い話を聞いていきます。テーマは泳ぐことの科学。水泳が科学になるのかどうなのかというあたり、サイコーにじっくり聞いていこう! 今回のサイエンスコーチャー略してサイコーは、中央大学教授の吉村豊先生です。こんにちは。
こんにちは。よろしくお願いします。
大村正樹
吉村先生は、NHKブックスから『泳ぐことの科学』という本を出されていらっしゃいます。水泳と科学というのは直結するんですね?
  そうありたいといつも思っています。
大村正樹
この番組は科学番組ですが、スポーツを科学するのは実は番組初めてのことですけどねぇ。どのように科学していただけるでしょうか。プロフィールによると先生は1986年、22年前から2002年まで中央大学の水泳部の監督さんだったということで、その間、日本学生選手権の水泳競技大会で8連覇されている名監督だったわけですね。オリンピックの選手もいっぱい知ってらっしゃるんですか?
そうですね、自分が育てたのはアトランタで男性が2人、シドニーオリンピックで男性が1人、女性が4人です。
大村正樹
オリンピックに出られた方を指導されてらしたわけですか。水泳選手ってすごい肩幅じゃないですか。テレビで、ものすごい肩をしているなと思って観ているんですけれど、先生も直にご覧になって、水泳選手の体型がここ数年変わったと思いませんか?
もともと男子のチームだったんですが、やはり大学生でパワーをつけないといけないというので相当筋力トレーニングを重視していた。そこで、女子選手もアトランタの後に受け入れて、その連中も速くなりたいですから、男性同様に鍛えた結果だと思います。
大村正樹
4年前のアテネでは日本競泳界はメダルラッシュに沸きましたけれど、いよいよ北京。その前にちょっと話題になったのが水着の問題ですよね。たかだか布の部分でやっぱり影響してくるんですかねぇ?
今回は特に浮力があるのではないかと。
大村正樹
水着に浮く力が?
  はい。浮力があった上で推進力が関係してきますけれども、水着が抵抗だけという問題で従来は考えられていた。今回はどうもそれに浮力という問題が加わったので、すごく話題になっている。いい記録が、世界からも世界新記録を更新したということが、この春からどんどん出てきてますよね。
水泳
 
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大村正樹
もともと、たぶん水着の発想というのは、大事なところを隠すためにあったと思うんですよね。それが今やその機能そのものも重要な要素になってきているわけですね。
そうですね。経験からしても、何も着ないで泳いでいた時代――もちろん重要なところは隠すんですが、そういう時はせいぜい男性ですと太ももの毛をシェイブダウンするとか全身のシェイブダウンはしてたんですけれど。
大村正樹
毛を剃(そ)っちゃう。
  はい。そういうことよりも、水着がこの10年程で相当進化して来ましたので、毛を剃るよりもいい水着を、泳ぎやすいという条件でできるだけ全身を覆う。そういった方向にきましたよね。
大村正樹
ひと昔前の水泳の選手は、腕や足のお毛々を剃って競技に出てたんですか?
  ええ、女性の選手も、僕の聞いた範囲では何人も剃ってましたよ。
大村正樹
ええっ! だけど今は水着でカバーできてて、水着の繊維(せんい)によっていい記録が出るという時代に変わったんですか?
  とりあえずは表面の、何て言うんですか、なめらかに水流が流れるようにといったところが水着の課題として克服されてきた。抵抗が減ったということですね。
大村正樹
水流や抵抗、このあたりに科学が入ってくるわけですか?
  そうなんですね。
大村正樹
ずばりうかがいますけれど、速く泳ぐためのポイントはどういうものがあるでしょう?
  速く泳ぐという時に、やはり一つは抵抗を減らさないといけない。水の中では速度の二乗に比例して抵抗が増えるという公式がありますので。
大村正樹
抵抗を減らす。――あぁ、常に抵抗ありますよねぇ。速度の二乗ということは、速度×速度に比例して水流の抵抗が増えてくる。速く泳げば泳ぐほど抵抗が増えるということですか?
秒速2メーター以上のスピードぐらいになると、急激に抵抗が増えるということが言われてますので、1メーター以下である程度ゆっくり泳ぐ分にはあまり気にしなくていいと思います。
水泳
 
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大村正樹
抵抗を減らすにはどうすればいいんですか?
  そういった条件の下である程度ゆっくり、ないしは抵抗の少ない体であるという条件にすれば、一般的にいう流線型、ストリームライン、体を水平姿勢にすることが一般的に言われています。
大村正樹
流線型、抵抗をなくすためには泳ぐ時に真っ直ぐということですか?
  真っ直ぐというか、例えれば魚のような形とか、船や飛行機のような空気が流れるような、水流が流れるような形が一応流線型と言われてますので、そういった形に近づけたほうが抵抗は少ない。
大村正樹
意識をして。じゃあ、『ゲゲゲの鬼太郎』のねずみ男は速いんですかねぇ?
  いやぁ、それはちょっと飛躍しましたけれども。速い可能性はありますね(笑)。
大村正樹
頭がとんがってて、先っぽがとんがってたほうが速いわけですね。
  まぁそうですね。大きくてデコボコしているよりも、とんがってたほうがいい。それは言えると思います。
大村正樹
でも絶対無理じゃないですか。人間の体はデコボコだらけですよね。鼻はあるし、耳はあるし。
  スキーのジャンプやスケートなどでもキャップみたいなものがあり流線型を意図的につくりますけれど、水泳の場合はそんなことをしてはいけないので、せいぜいメッシュの今流のビシッとした帽子をかぶることで抵抗は減るのかなと。
大村正樹
髪の毛の部分をピタッとするようにやれば抵抗が減る。ツルッパゲの人は抵抗がないから帽子は必要ないんですか?
  ただ1日2日すると少し成長するんですよね、髪の毛は。さっき言ったシェイブダウン、毛を剃るのでもその日の、ないしは前の日の夜シェイブダウンして朝のレースに備える。だから、24時間経てば毛が少し出てくるので、泳ぐ皮膚感覚はちょっと落ちるんですね。ですから、24時間ぐらいと考えてたほうが僕はいいと思います。
大村正樹
剃って24時間以内でないといい記録は出ないんですね。
  いや〜、極論を言えば。
大村正樹
そこまで細かいんですかぁ! 分かりました。先生、この番組は時間が短いんでもう時間になってしまったんですが、選手たちがどうやって速くタイムを出すように努力しているかという話を来週ぜひまたお話していただいてよろしいですか?
分かりました。
水泳
 
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