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過去の放送分 過去の放送分 2008 6月21日 放送分
「泳ぐことの科学」(2)
コーチャー/吉村豊さん(中央大学教授)
大村正樹&吉村豊
大村正樹
今回のテーマも水泳ですよ、水泳。みんな、ちょっと今日聴けば、間違いなく25メートルのタイムは2秒から3秒上がるね。泳ぐこと得意な人は耳の穴カッポジッて聴いて。得意じゃない人もちゃーんと聴くと必ず泳げるようになりますよ。先週もあっという間で、「こっからだ!」というところで時間が来てしまいました。水泳の選手たちは少しでもタイムを上げるために体の毛を剃(そ)ったり、水につける手の動きをすごく気をつけたり、抵抗をなくすために涙ぐましい努力をしているとお話をうかがいました。ラジオを聴いているキッズたちが、これから体育の水泳授業で、秋には教室でヒーローになるためにどうすればいいのか、ちょっとポイントを教えていただきたいんですが、どういうふうなことを心がければいいですか?
そうですねぇ。抵抗を減らすという話もあったんですが、やはりもう一つは効率よくというか、力を入れすぎないでうまく手をかく。キックもバタ足もそうですが、例えば手を入れる時にキャッチポイントがあって、手を入水してキャッチポイントまでは割と丁寧にゆっくり入れる、ということが大事です。
大村正樹
クロールの場合、水をかいて空中に手が出ますよね。そして、水にゆっくり手を入れるんですか?
  そうですね。上から水をグッと押さえると体がその反動で浮いてしまうんです。
大村正樹
手の平で水をパーンとやると体が浮いちゃうということですか?
  ええ。それで、体はできるだけストリームラインというか、しっかり平衡に置いておいて手を丁寧に入水しながら、キャッチポイントということで大体分かると思うんですが2,30センチ水中に入れる時、ここがゆっくり、手を下に水を押さないでゆっくり入れていく。これが意外と大事なんです。
大村正樹
重要。クロールで空中から水の中に手を入れる時に、意識してゆっくり手を入れることがポイントですか。一刻も早く水の中に手を入れてかき出したいんですけどダメですか?
早く入れるのはいいんですが、そこで力んだり、ガッと力を入れてすぐかかないということが大事です。
大村正樹
なるほど。じゃあ、ちょっと落ち着いて水の中に手を入れて、今度は下にグッとかくわけですね。これは思い切ってやっていいんですか?
そうなんですね。ゆっくり入れて水をキャッチしたら、今度は思い切ってかいていいんだけど、最初よりも最後のほうにだんだん早くしていくような形で思い切りかく。もう一つは、手の平が下を向いていると水をなでるので、手の平が後ろを向いている。
大村正樹
はい。水に対して直角で。
  正式に言えば直角にして後ろに、サッとかいてもいいんだけど少しS字になるように長く水をとらえるということも加えていくともっといいですね。
大村正樹
すごく重要な科学ですよ、これは。スポーツ科学ですねぇ。水に入れる時はゆっくりと入れて後半になるにしたがって早く、グゥーンという感じになる。真っすぐかき出さないで少しでも長く水をかけるようにS字にかくんですか?
このS字は誤解されると困りますが、体に対して固定してS字だとS字を描くんですが、体がある程度ローリングしますので、S字は外にかいて内にかくのではなくて、基本的には真っ直ぐで、体のローリングをすると手の動きだけは結果的にはS字になる。そういう意味です。
水泳
 
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大村正樹
知らず知らずのうちに僕たちもクロールの時はS字でかいている可能性があるということですね。無理に意識してS字をイメージする必要はない。意識するのは、水に対して垂直に手の平を入れて、そして後半になるにしたがって強くかき出す。これでタイム上がりますね。
そうですね。今度は、最後大事なのはフィニッシュ。後半のフィニッシュから手を上げる時に手の平を上に向けて水を押し上げると体が沈むので、その時最後まで押し切ってリカバリーする。そこが大事。
大村正樹
最後まで押し切って、手をまた空中に出すんですか? 押し切って、「はい、おしまい」と上に出してあげる。
  そうです。その出し方が、僕がある人から聞いたんですが、「ポケットから手を抜くように」というアドバイス――それはアメリカのコーチですが、「ポケットから手を抜くようにリカバリーしなさい」という教え方をしていました。
大村正樹
みんな、海パンの中に手を突っ込まなくていいからね。ポケットから手を抜くイメージで、クロールの時は水の中から手をスッと出せばいいんですね。
そうです。その辺は基本的にはバタフライも両手一緒なだけで抜き方は一緒です。
大村正樹
手の動きは分かりましたけれど、足が子どもの頃から分からなくて。バタ足をバタバタやるべきなのか、それとも水中でやるべきなのか、どうなんですか?
あまり水面上に足が出るということは、やはり水を後ろに蹴れませんので、若干ちょっと出るぐらいはいいと思います。基本的には水中でヒザを打った後はヒザが伸びる。伸ばして打つ。まぁ曲げて打つんですが、結果的には打ち終わった時にヒザが伸びていればいいという形です。
大村正樹
子どもの頃に習ったのは、ヒザは曲げちゃいけない。足の付け根を上下にバタバタやるのが効果的と聞いたんですが・・・。
  実際はそんな泳ぎ方はできない。だから、クロールの場合は上に足を上げる時は真っすぐに上げるんですが、打とうとする時には若干ヒザを曲げて下に打たないといけない。
大村正樹
なるほど。あと、この夏にやる効果的な練習方法、小学校高学年ぐらいの子どもたちに一番「こういうことをやるといいよ!」というのがあれば教えてもらえますか?
一つの例で、バタフライや背泳ぎはドルフィンキックやバサロキックがあるんですが、やはり速い人は強く大きく打っているのではなくて、細かくテンポよくというかリズム感にあふれた形で、あまり大きくなくスムーズに打っているんですね。ですから、バタ足も含めて、細かく力まないでススススッと打つ。そういうことを心がけるとかえって速くなるんじゃないかな。力まないということです。
大村正樹
全身の筋肉を硬直させないで柔らかい感じで、しかも早い動きをやればタイムは上がるんですか?
  そうなんですね。だから、普通は頑張ったほうが速いんですけれど、頑張ると大体力んじゃう。それで、僕としてアドバイスできるとすれば、腹筋というかオヘソの辺りに力を入れて泳ぐと、他の力が抜けるんじゃないかと思います。
大村正樹
なるほど。イメージできた。今すぐ、この後プールに直行したいですよ。ヘソに力を入れて、あとのところの力は極力抜いてなるべく細かい動きをする。分かりましたよ先生、ありがとうございました。みんなも明日、プールへ急げ!
水泳
 
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