過去の放送分
過去の放送分 過去の放送分 2008 6月28日 放送分
「動物の話」(1)
コーチャー/實吉達郎(さねよしたつお)さん(動物学者)
大村正樹&實吉達郎
大村正樹
今日のテーマは動物なんだけれど、実は今日のサイコーは動物のことなら何でも知っているすごい人です。動物学者の實吉達郎(さねよしたつお)先生です。こんにちは。
こんにちは、實吉です。
大村正樹
實吉先生は何と! 1929年生まれ、昭和4年で、番組始まって2年近く経つけれど最年長のサイコーということになりますが、私の目の前にいるおじいさんは、やたら達者なおじいさんでございます。えっ!? もう四捨五入したら80歳ですよね。
四捨五入はしないことにしている。40歳を超えてからいっぺんもしないことにしている。
大村正樹
ハハハハ。経験も豊富でいらして、動物学者は動物のことだけ研究されているわけですか?
  そうですけれど、それは動物が大好きだから動物のことを一生懸命研究したというまでであって、そのほか歴史でも小説でも何でもいろいろな関心を持っています。何でも知っているというか、政治経済のほうは弱い。メカニズムは弱い。今向きの人間ではあまりないですね。
大村正樹
じゃあ、歴史とか生き物には詳しいわけですね。「生き字引」という言葉があるんだけど、そんな「生き字引」の言葉にぴったりの方が来てくださいました。實吉先生は動物をご専門に著書を何と70冊ほども書いていらっしゃって、今日はラボに『おもしろすぎる動物記』という本があるんですが、読ませていただきました。ものすごく面白かった! おじいさんが書いたと思えないような面白さで(笑)。
ハハハハ。
大村正樹
ちびっ子にも分かるような内容だったんですが、これを読むといろいろな動物の生き方をご存じで、何とブラジルでも若い頃生活されていた。戦後の移民。
はい。南アメリカのブラジルで移民生活をしていたんですよ。畑で働いたり、暇な時には昆虫採集をしたりという生活を7年間続けて、いくらかお金を貯めて最後に憧れのアマゾンへ行ったわけです。
大村正樹
アマゾンと言えばピラニアですよねぇ。
  それがチャンチャラおかしい。
大村正樹
何でですか?
  現地へ行くとピラニアが川でチラチラ泳いでいる。その川に住んでいる日本人がいくらでもいらっしゃるんですよ。
大村正樹
アマゾン川はピラニアがいるから危険という認識は、現地にはあまりないんですか?
  ないと言うより、ただの一つの野生動物ですから。発情期には危ないとか、この季節には泳いじゃいけないということを移民の方はちゃんと知っている。現に、日本から来たばかりの子どもたちが裸でバチャバチャ泳いでいて、その川の中流にはチラチラ泳いでいるんです。ナッテリーという一番危ないピラニアです。
大村正樹
ピラニアが泳いでいる! 僕のイメージではピラニアのいるアマゾン川に飛び込んだ瞬間、骨だけになっちゃうという、漫画でもありましたよね。
それは漫画とか、『緑の魔境』というドキュメント映画の罪でして、彼らはその頃、民衆を脅かす映画が大いにはやったものですから、プールの中に牛を追い込んで、そこにピラニアを飼っとくようなインチキをやって世界中の人を脅かしたんです。これはとんだことなんです。
大村正樹
実際、先生がかつてご覧になったピラニアはそんなに危険な魚ではないということですか?
  そうです。危険な魚ではない。私も足を踏み込んだり、手を洗ったりしました。ほんの数メートルの所でチラホラしてました。
大村正樹
アマゾン川は、ほかの魚とピラニアは一緒に生きているということですね?
  ほかの魚を主に食べているわけですから、人間や牛に襲いかかるチャンスはない。また必要はないです。また、ほかの魚でもピラニアに食べられない魚もいます。ピラニアより大きなものもいますし、スピードの速いのもいますから。一緒に生きているわけです。
大村正樹
アマゾン=ピラニアと思ってましたからねぇ。
  それがイメージの恐ろしさですよ。例えば“狼が恐い”とかそういうイメージが。
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大村正樹
狼は恐いじゃないですか。
  恐くないですね。人に馴れやすいです。私の先生は13頭飼いました。
大村正樹
狼を? ちょっと待ってください。日本は動物を飼う時は保健所に届けなくちゃいけない。日本で狼は飼っていいんですか?
  今の若い方は、すぐ違法かどうかを気にするんだねぇ。案外おとなしいんだねぇ。子どもたちもみんなおとなしい。その先生なんか明治の生まれですから、勇気を出して個人でお飼いになって、当時は野生動物を持ってきて飼うぐらいのことは許可要らなかったんです。
大村正樹
トラやライオンもOKだったんですか?
  飼う人があれば。許可制ではなかったんです。「人畜に害を与えたら撃ち殺せ」という時代、「鉄砲をもって撃ち殺せ」という時代ですから。子どもさえも空気銃を持っていた時代で、危ないと言えば危ない時代です。
大村正樹
今は飼うのは許可が必要だけれど、当時は狼を飼ってもよかったわけで。13頭も飼ってた先生がいた!
  いっぺんにじゃなくて、前後して。
大村正樹
狼は可愛かったんですか?
  とても可愛かったよ。グーグー寝ているのを抱っこして、自由が丘の駅前を歩いてらっしゃった。
大村正樹
東京都の目黒区を! 狼飼ってらっしゃるおじさんがいたんですか!
  はい、そうです。可愛いんです。その中で一番臆病なヤツは、羊を見ておしっこしちゃったそうです。狼が、です。
大村正樹
狼が羊を見てチビッタということですか(笑)。
  そうです! そういう臆病なのもいた。
大村正樹
あとイメージで恐いと思った動物で臆病なのは何ですか?
  それは若い方から聞いたほうがいい。何が一番恐い?
大村正樹
えーと、みんな何が恐いかなぁ。――やっぱりトラ、ライオンでしょ。
  トラ、ライオン恐いですかねぇ。あれは非常に精神が安定してまして、馴らすこともできますし、馴れたら部屋の中に座って頭をなでることができる動物です。頭をポンポンたたいたら大変だと思うでしょ? 大丈夫です。これが犬なんかだと、うっかりポンポンたたくと噛みつくヤツがいますけどね。
大村正樹
じゃあ、先生の認識ではトラやライオンよりも犬のほうが恐いということですか?
  それは犬によります。世間の評判と違って、名前を出すと犬屋さんに文句を言われるけれど、おとなしいと言われている2、3の種類は噛みつくことで有名なんです。
大村正樹
何という種類の犬ですかぁ?
  言ってもよろしいですか? テリアがトップです。
トラ
ライオン
 
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大村正樹
テリアっておしゃれな。ヨークシャーテリアとか。
  いえ、あんな洒落たテリアでなく、いわゆる日本テリアです。桃太郎さんのお供しそうな、日本的な小柄な犬です。ペットショップに売ってます。
大村正樹
えっ、危ないですね。
  いえ、危なくないです。噛まれても「まぁしょうがない」と言ってあきらめちゃうから。今のは割合おとなしくなったからね。以前は真っ白でよく噛みつく犬がいました。スピッツです。アイツは噛むので有名でした。
大村正樹
“アイツ”呼ばわりですか(笑)。
  見た目美しいでしょ。非常に美しいから愛されるんですよね。私も好きですよ、形は。だけど噛まれましたね。でも、噛まれないように扱う術を覚えると大丈夫です。なるべく頭の上に手をやらないとかね。首筋に真っ直ぐ、友好的に手をやるとか。
大村正樹
頭の上に手をやってはダメで。
  押さえつけられた気がするから、犬は非常に嫌がるんです。みんな知らないから、お母様方が特に「いい子いい子しましょうね」と頭の一番危ないところに手をやる。小さい子は、頭をいい子いい子すればいいかと思って、一番犬の嫌なところへ手をやる。そうすると、犬にしてみれば「俺の一番嫌だと思ってるところへ触りやがって」と思うから、「ウ〜ッ!」と言ってるんです。「ウ〜ッ!」と言うと、人間っていい気なもんで、馴れたと思ってるんですね。第一、シッポを振っているのは喜んでいるんではありませんよ。
大村正樹
何でですか?
  あれは緊張してるから、その緊張を流し出すために、そのストレスを解消するために振るのであって、一種の緊張を現している。時には怒りにもなるんです。あれは何かのストレスがある証拠です。喜ぶのも一種のストレス、興奮状態ですからウソとは言わないけれど、3分の2ぐらいはウソです。上唇をよくご覧なさい。上唇を上へ持ち上げて、鼻の周りにしわが寄ってキバが現れていたら危ないです。
大村正樹
犬が笑ったような顔をすると危ない。
  本当に笑った顔はすぐ分かります。笑った顔はいかにも友好的で、身をくねらせて「好きだぁ〜」ってフリをするから分かります。だけど、キバをむき出しても全体をくねらさないで、のどの奥で低いうなり声が聞こえる時は逃げたほうがいいです。危ない。
大村正樹
上の歯だけ見えて、ちょっと笑ったように見えるかも知れないけれど、体全体をくねらせてなければ、それは喜んでいる証拠にならない。
そうですね。そういう時はならない。その場合は怒っている、あるいは噛む予告だから、少なくとも警戒してるんだから気をつけなさいと。
大村正樹
シッポを振りながら笑顔のワンちゃんイコール喜んでいるわけじゃないということですね。
  そうですよ。みんなももう少し観察しなければね。
大村正樹
へぇ〜。先生ちょっと、この『おもしろすぎる動物記』の本の話を聞こうと思ったら、時間があっという間に過ぎちゃった。だって、この本「動物、とんでもない事実の数々」という見出しで、いろいろな動物の生き方が書いてあって、今日も充分とんでもない事実を聞いたけれど、とりあえず今日はここまでで。
ハハハハハ。残念でしたね。
大村正樹
今日は恐い系の動物の話ばかりうかがったけれど、確かに動物からすれば、人間に会うということも恐いわけだよね。そのあたりもちょっと考えて、もう一度動物にやさしく接してみようかなぁ。とりあえずワンちゃんはアゴのあたりをなでる。これが基本だそうです。
チワワ
 
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