過去の放送分
過去の放送分 過去の放送分 2008 7月26日 放送分
「オリンピックを科学する」(1)
コーチャー/寺門和夫さん(科学ジャーナリスト)
大村正樹&寺門和夫
大村正樹
さぁ、今年の夏の最大イベントと言うと、そうオリンピックがあります。しかも、中国の北京で開かれるから時差が1時間しかない。だから、みんなもリアルタイムで競技を観ることができるわけだね。今日の放送は、オリンピックを10倍20倍楽しんでもらいたいなということで、オリンピックを科学していきます。夏休みに入って最初のサイコーはおなじみ、科学ジャーナリストの寺門和夫さんです。こんにちは。
こんにちは。
大村正樹
暑い中ありがとうございます。今日はオリンピックの話で、北島康介選手の記録も気になりますけれど、やっぱりキッズたちはカケッコですよね。この間、すごい100メートルの記録が出たじゃないですか。
100メートルのスピード記録が昔は10秒切ることができないと言われてた。ところが最近もう9秒72まで行ってしまっている。すごいですよねぇ。
大村正樹
ジャマイカのウサイン・ボルト選手。9.72と言うと、大体キッズたちは50メートルを9秒切るか切らないかというところで一生懸命頑張って、8秒台出たら「やったぁ!」となる。ということは、キッズのみんなが50メートル走ってる間に100メートル駆け抜けちゃうことですね。
すごいですね、これは本当に!
大村正樹
陸上競技というのは、基本的に人間の持つ能力に頼るわけですよね? だから、100メートルの記録は限界があってもおかしくないと思うんですよ。もうこれ以上短縮できないところまで来てると思ってたら9.72が出て、この記録は破られるんですかねぇ?
これは不思議なことに、「記録は破られるためにある」と言いますけれど、いつもこの辺で限界なんじゃないかと言われた記録がどんどんどんどん更新されているわけです。僕が考えるには、人間の体にはまだ隠された能力、潜在能力がたくさんあって、これから科学的なトレーニングで一番いい走り方をしたり、一番いい体作りをする。そういった科学的なトレーニングや健康管理、精神的な面のコントロールをやっていけば、まだまだ記録が伸びるんじゃないかという感じがしますねぇ。
大村正樹
記録を出すための科学的なトレーニング、やっぱり科学も必要になってくるわけですか?
  今はほとんどそうなっていると思います。スポーツ医学はきちんとした学問の分野としてありますし。
大村正樹
じゃあ、9.72で驚いている場合ではなくて、場合によっては8秒台が出る時代が来るかも知れないですか? でも、いつかは限界がありますよね。
もちろん、そうです。物理的な限界はその内に来るけれど、まだまだ記録は短縮されるんじゃないでしょうか。
大村正樹
そうですか。いや、信じられないよね、100メートルで8秒台が出たら。でも、ほかにも記録がまだまだ伸びそうな競技はありますよね。棒高跳びの棒、昔は竹だったのがグラスファイバーに変わってから飛躍的に伸びたじゃないですか。棒の材質をもっと変えれば、10メートルという世界もいつか出るかも知れないですよねぇ?
そうですね。道具や水着とかも科学ですごい進歩している。ですから、そういったことでも記録は伸ばせるけれども、やはりオリンピックは人間の体の能力で記録を競うのが基本ではないかと思いますね。
大村正樹
その辺りが北島康介さんの「泳ぐのは僕だ」と言うあのTシャツにつながってくるんですかねぇ。だけど、科学の力も借りて選手たちはより高い記録を目指していく。
今そういう状況なんじゃないでしょうか。
水泳
 
陸上
 
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大村正樹
オリンピックの選手、いろいろな選手たちがいる中で、すごく大きな選手−ハンマー投げの室伏選手や柔道の選手もいれば、すごくきゃしゃな選手−男子のマラソン選手とかはすごいきゃしゃに見えるじゃないですか。体型が違うけれど、体の特長を活かしながらオリンピックに出場している。スポーツに適した体型はやっぱりあるわけですよね?
たぶん、それぞれの競技であるんだろうと思います。ですから、それに合った体力作りや筋肉の付け方が必要じゃないかと思います。基本的に筋肉は2種類あるんです。例えば、短距離走の選手や重量挙げの選手は、ほんとに筋肉がモリモリしてる感じですよね。
大村正樹
末續慎吾さんは、肩とかすごい筋肉ですよ。
  こういう瞬発力のスポーツは、人間の体の中の瞬発力を発揮する筋肉が必要なんですね。そういう瞬発力を発揮する筋肉ともう1種類、持続的にずーっと働く筋肉と2種類ある。
大村正樹
持続力ということはマラソンですか?
  はい。ですから、短距離の陸上選手と長距離の陸上選手では、使っている筋肉が違う。短距離の選手は瞬発力を発揮する筋肉をたくさん付けるので、筋肉モリモリの体になるわけです。長距離、マラソンの選手は、自分の体の中でエネルギーを作りながら酸素呼吸をして走りますから、むしろ瞬発力を発揮する筋肉はあまり重要ではない。ということで、筋肉の作り方が競技によって違ってくるということはあります。
大村正樹
例えばラジオの前のキッズたちが太ももを触ってみて、短距離の筋肉はどこの筋肉ですか?
  一番大きなのは、太ももとかお尻の筋肉です。太ももの前も後ろもそうですが、特に前はよく分かります。
大村正樹
太ももの前。
  ここの筋肉は瞬発力を発揮する、色で言うと白っぽい色の筋肉です。これをどんどん鍛えれば、瞬発力が出ます。ただし、この筋肉は体の中の栄養素を分解するだけなんですね。消費するだけなので数十秒ぐらいしか続かない。
大村正樹
へぇ〜。最大限の力を発揮できる時間が?
  はい。そうすると疲労がたまってきて100パーセントの力が出せない。そういった限界があるので、いくら瞬発力がある筋肉を付けても、長距離のレースには逆に向かなくなってしまう。
大村正樹
長距離に適した筋肉はどの辺が発達しているんですか?
  長距離の場合には長いですから、一番大事なのは体の中でちゃんと呼吸をして、そして酸素を体中に運んで筋肉が疲れないように持続的に走るということです。
大村正樹
特にどこの筋肉の部位が発達しているというわけではなくて、体全体のバランス。そして酸素の筋肉への供給のバランスがとれていると長距離ランナーとしては望ましいということですか?
そうです。しかも筋肉が付いたり太ったりすると体重が重くなり、走るのにエネルギーが余計かかります。なるべく少ないエネルギーでずーっと持続的に走ることが必要なので、マラソン選手が割と小柄だったり、痩せた選手がいるのはそういうことでしょうねぇ。だから、小柄な東洋人はマラソンに強いのかも知れません。
大村正樹
昔、アメリカの選手でドーピングで記録を剥奪されちゃったベン・ジョンソンという選手がいて、あの人なんかモリモリでしたよね。
  そうですね。あの場合には、筋肉を発達させる薬を使って、瞬発力を生む筋肉を体中に付けてたわけですよね。いわゆるドーピングということです。瞬発力を付ける筋肉を発達させるために、いけない薬をのんじゃったと。
大村正樹
マラソンは血液を体内に循環させて、酸素を筋肉に送り込むことが重要だって。いわゆる心肺機能が重要だそうです。「心配する」のシンパイではなくて、心と肺と書く心肺機能。この心肺機能、人間がピークになるのは20歳前後だと言われてる。キッズのみんなは、これから何年か心肺機能を高めることができるんですよ。うらやましいなぁ。
柔道
 
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