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過去の放送分 過去の放送分 2008 8月2日 放送分
「オリンピックを科学する」(2)
コーチャー/寺門和夫さん(科学ジャーナリスト)
大村正樹&寺門和夫
大村正樹
キッズのみんな、こんにちは。いよいよ8月に入ったけれど、夏休みをエンジョイしてるかな? さぁ今回のサイエンスコーチャー、略してサイコーも先週に引き続き科学ジャーナリストの寺門和夫さんです。寺門さんは、どちらかと言えば宇宙の専門家。だけど先週は、スポーツを科学してくださいました。今週もお越しいただけるから、僕は思いついたの。宇宙の専門家と、スポーツ。そう!もし宇宙でオリンピックを開いたら、どうなるのか?オリンピックの競技には陸上や水泳、バスケットボールやレスリングと色々あるけれど、それを宇宙でやったら果たしてどうなるのか!?キッズたちも、ちょっと考えてみて。まず月でオリンピックというのは、あり得るんでしょうか?
僕は可能性あると思います。
大村正樹
素晴らしい(拍手)!いい人だぁ。あり得ますよねぇ。
  多分ですけどね。今アメリカのNASAが、2020年ぐらいにもう一度人間を月に送る計画を立てています。
大村正樹
いまから12年後?
  そうです。過去にアポロ計画というのがあって、これは今から50年前に終わってるんですが、50年ぶりに人間が月に行くことになるんですね。アポロ計画の時には何日間か滞在して帰って来たんですが、今度は月面に基地を造って長い間そこに住み、色々なことを調べたり実験したりする予定なんです。ですからこれからは、南極観測みたいに1年中、人間が月に行っているという時代が来ると思います。2020年からさらに20年後の2040年ぐらいには、月に観光旅行に行ったり、ホテルもつくられて泊まったりできるんじゃないかと思うんです。
大村正樹
32年後には。
  そうなると、そこで色々なことをしたいという人が出てくるでしょう。月面でスポーツをしたい、なんて人も出てくるでしょうから、そうなると「じゃあ、月面でオリンピックをやってみようか」という話しにもなるんじゃないかと思います。
大村正樹
オリンピックとまではいかなくても、月にアスリートを連れていって、人間の身体能力がどうなるかという研究が行われる可能性はありますよね。
そうですね。そういう意味でも面白いですねぇ。
大村正樹
32年間待つ前に、月でアスリートが運動したらどうなるのかについて教えてください。まず近いところから、走ることに関してはどうでしょう?地球では、100mを10秒以内で走る人もいますけど。
正直なところ、月面で走ることはちょっと難しくなるかも知れません。
大村正樹
難しい。なぜですか?
  月面の宇宙飛行士の映像をご覧になった方は分かると思いますが、歩くといってもピョンピョンと跳んでいる感じなんですね。つまり、月の重力は地球の6分の1しかないからちょっと踏み込むと跳んでしまう。浮いてしまうというか。ですから、100メートル走みたいに足をものすごいスピードで回転させて走ることが、できないかも知れません。
大村正樹
1回のキックで激しく跳んじゃうから、次の足が出づらいと。
  そうです。跳んでる間は、加速しませんから。
大村正樹
跳ぶスピードをものすごくすれば、1歩で50メートルぐらい行けたりしませんか?
  結局、走り方の工夫をしなければいけないでしょうね。
大村正樹
地球上での走り方では、いい記録は望めない?
  そうですね。多分ああいう走りはできないと思います。月面で最適な走り方が開発できれば、もしかしたらいい記録が出るかもしれませんね。
大村正樹
ちょっとイメージすると、どんな感じだろう。「ヨーイ、スタート!」とやると、一歩目はまず踏み込めるわけですよね。
  そうです。それから二歩目がかなり遠くまで行ってしまう。遠く5メートル、10メートルぐらい。
大村正樹
2歩目で踏み込みは強くできるんですか?
  陸上の場合は自分の体重をかけて瞬発力で踏み出します。しかし体重が6分の1になってしまうので、踏み込みも自然と弱くなるでしょう。
大村正樹
なるほど。じゃあ、スローモーションみたいな感じ?
  そうですね。スローモーションで、大またで跳んぶ走り方になっちゃうんじゃないかな。
大村正樹
あぁ、イメージできた!なるほど。じゃあ、水泳はどうですか?その前に、月にプールってできるんですか?
  プールをつくることはできると思うんですが、月面ではすごくぜい沢な施設になると思います。
大村正樹
水を持って行かなくちゃいけないですもんね。
  そう、月面には水がないんです。だから水をつくるか、持ってくしかない。地球から持っていくことは難しいでしょうから、考えられるのは実際に酸素と水素から水を作るか、あるいは月の南極と北極のクレーターの底には氷がたまっていると考えられているので、そこから持ってきて溶かすか。
月面
 
水泳
 
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大村正樹
月にある氷?
  そうです。そういうものを使うから、水はすごい貴重品になる。だけど、「月のプールで泳ぎたい」と言う人も出てくるんでしょうねぇ。
大村正樹
そのプールで泳いだら、どうなりますか?
  僕も色々考えたんですけれど、水の中に入っていると人間の体は浮力で浮いて無重力状態に近い感じになります。それで、泳いでいくのは水の抵抗をかきわけながら進んでいくわけです。そうすると基本的な条件は多分、月面でも変わらない。水の抵抗は変わらないですからね。
大村正樹
地球と変わらない?じゃあ、高記録が期待できるかも知れないですね。
  はい。泳ぎ方はちょっと工夫が必要かもしれませんけど、陸上競技とは違って月と地球とでは、泳ぎ方はそんなに変わらないのではないかと思います。
大村正樹
へぇ〜。水泳はOKか。じゃあ、格闘技系でレスリングや柔道はどうですか?
  これも体重が6分の1になってしまうので、ずっと相手を投げやすくなります。
大村正樹
投げ技は限りなく投げやすいでしょうね。
  そう。でも、逆に自分も投げられてしまうかもしれない。それからさっき言ったように重力が地球の6分の1だから、足を踏ん張ったり、急に相手に技を仕掛ける時には力が弱くなってしまうかもしれませんね。ですから、格闘技にしても月面で一番いい戦い方を考えなくてはいけない。
大村正樹
踏ん張りがきかないぶん技をかけられやすくなって、かけたもん勝ちになる可能性が高いんですね。でも人対人だから、組み合うことはできますよね?
はい。それは人間の筋力によるものですから。
大村正樹
じゃあどっちが先にかけるかによって、大きく結果が変わってくると?
  そう思います。それから、あと僕が面白いと思うのは体操競技です。
大村正樹
あっ、宙返りはムーンサルトというぐらいですからねっ!
  昔、「月面宙返り」と言ってたでしょ。まさに本物の月面宙返りができるかもしれませんね。鉄棒競技のフィニッシュでは重力が地球の6分の1なので、上空高く舞い上がったうえに着地までがゆっくりでしょうから、その間にものすごい難易度の高い技が出せると思います。
大村正樹
そうですよねぇ。いま、マックスできて2回転ぐらいですか?じゃあ、3回転、4回転?6分の1ってことは逆に言えば6倍だから、12回転ぐらいできる可能性も?
ありますねぇ。ですから、どんな技が開発されるのかも面白いと思います。
大村正樹
体操、いいですねぇ。跳馬とか床もありますよね。
  床運動もいいですねぇ。
大村正樹
夢、ふくらみます。多分ラジオでこんなフザケた話をしてるのは僕らだけだと思います。
  そうかもしれません(笑)。でも、最後に一つだけ気をつけなくてはいけないことがあります。月面は地球の重力の6分の1なので、地上に比べて筋肉が衰えやすいんです。
大村正樹
なるほど。
  いま宇宙ステーションに滞在している宇宙飛行士は、定期的に筋肉トレーニングをやっているんです。そうじゃないと骨が溶けて筋肉がどんどん弱ってくる。宇宙空間の無重力状態ほどではないにしても月面は地球の6分の1の重力ですから、筋肉の衰えが早くなります。選手は常に筋力トレーニングをして体をつくってないと、いい記録が出ないかもしれません。
大村正樹
最後までこんなバカバカしい話に真剣にお付き合いいただきありがとうございました。ちなみに宇宙でオリンピックをやったら、酸素のある施設でやるのか、それとも選手たちは宇宙服を着るのか、どちらでしょう?
宇宙服を着てオリンピックはできないでしょうし月は真空ですから、やはり室内の、空気があるところでやるしかないでしょうね。
大村正樹
分かりました。本当に最後までありがとうございました。サイコーは、2週にわたって科学ジャーナリストの寺門和夫さんでした。
どうも失礼しました。
大村正樹
ムーンサルトというのはキッズたちのお父さんより、もっと前の世代の話しだと思うけど、本当に月でムーンサルトをやるとなると、すごいものが見られるなぁ。32年後、確実じゃないけれど楽しみになってきた。みんなも楽しみにしててねっ!
柔道
 
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