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「時間の話」(1)
コーチャー/一川誠(いちかわまこと)さん(千葉大学准教授)
大村正樹&一川誠
大村正樹
キッズのみんな、こんばんは。今、5時半を回ったところだけれど、今回のテーマは時間に関して。お父さんやお母さんが「時間が足りな〜い」とか「1日が30時間あったらいいのに〜」とか思うでしょ。でもキッズって余りそういうこと思わない。大人と子どもって時間の感じ方が微妙に違うみたいなんだよね。何でそんな現象が起きるんだろうか? ということで今日は時間を科学していきま〜す。今週のサイエンスコーチャー(サイコー)は、千葉大学准教授の一川誠(いちかわまこと)先生です。こんばんは。
こんばんは。よろしくお願いします。
大村正樹
一川先生は、時間の専門家ということでよろしいですか?
  ええ、感じる時間について研究しています。
大村正樹
一川先生の著書が集英社新書から出てて、タイトルがすごいよ。これキッズには分かんないと思うんだなぁ。『大人の時間はなぜ短いのか』。知りたい!これはもう永遠のテーマですね。
そうですね。
大村正樹
時間ってすべての人に与えられた共通のものですよね。何で大人になると転げ落ちるように、あっという間に時間が経っちゃうんだろうという根本的な疑問があります。
24時間という1日の時間はみんな同じはずなんですけど、感じる時間が色んな要因によって変わる。例えば年齢によっても変わる。だからキッズのみなさんにはよく分からないも知れませんが、年をとるとだんだん時間が早く進むような気がしてくるわけです。
大村正樹
これって大人の永遠のテーマといっても過言ではなくて、誰もがそれを知りたいと思うんですが、先生の著書ではメカニズムがひも解かれているということですね。そのメカニズムを含めてですが、本の中には錯覚というか色々な図が出てくるんですよ。「線の長さどっちが長いか?」とか、見ていたら中に吸い込まれちゃうような絵とか、これ1冊で2度得という本です。
ハハハハ。
大村正樹
一川先生は、『大人の時間はなぜ短いのか』ということをテーマにしようと思ったのは何年ぐらい前ですか?
  時間の研究は大学院の頃からやっていたので、かれこれ20年近く。
大村正樹
20年これを考えている。
  ええ。
大村正樹
その答は何ででしょうか?
  まだ究極的な答は出てないんですが、ただ時間の感じ方に影響を与えるような要因がいくつかあって、それぞれの組み合わせで決まってくることが大分わかってきました。
大村正樹
僕なんか今年1年が始まったばかりですが、「あれっ!?」という間に師走を迎えると思うんですね。そんな繰り返しで、先生も実際そうですか?
それはもうこれぐらいの年齢になると―私は40歳ちょっと過ぎですが、大体みなさん同じように感じてると思います。
大村正樹
そうですよねぇ。やっぱり40歳から50歳は短いですかねぇ。
  そのようですね。
大村正樹
お互いステキな40代を送りましょうね。
  そうしたいですね(笑)。
大村正樹
ある程度の中年期になって、どうすれば時間を長く有効に使えるんでしょうか?
  たぶんいくつか要因があるんですが、例えば大人の時間と子どもの時間の大きな違いを言うと、子どもの場合は色々待ち遠しいこととか、特別なイベントが多いというのが非常に重要なんです。大人になると決まったような仕事が多いとかスケジュール通り管理された生活が多いので、そうなると日常的に気づく出来事の数がだんだんだんだん減ってきます。感じる時間の長さは、実は体験している出来事の数に対応して増えてくるので。
大村正樹
いわゆるイベントの数ですか?
  そうですね。
時計
 
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大村正樹
へぇ〜。
  大人になると大体決まりきった仕事が増えてきますよね。そうすると待ち遠しい出来事は減ってくるし、時間の感じ方がずい分変わってきます。
大村正樹
じゃあ、先生は非常にフレッシュな学生さんと接する機会が多いし、毎年その顔ぶれも変わるわけで、まだ時間を長く感じる職業のほうではないですか?
たぶん職業的にはそうだと思いますが、ただ毎年の繰り返しになるとちょっとルーティンワーク(きまりきった仕事)になってしまうところがありますね。
大村正樹
どんな職業の人が時間を早く感じるんでしょうか?
  やっぱり日々の出来事に対して毎回毎回接し方が違うという人は、時間の感じ方がなかなかルーティンワークにならないということがあるみたいですね。
大村正樹
なるほど。じゃあ、僕らはいいほうかも知れないですね。
  色々なイベントがあるでしょうから。
大村正樹
いわゆる事務職の方とか、毎日ハンコをつくような人とか…。偉くなればなるほどハンコをつくのが増えますから、そうするとあっという間でしょうかねぇ。
というふうに言われてますね。
大村正樹
子どもたちはこれからバレンタインデイやホワイトデイがあったり、春休みがあったり色々なイベントがあるわけですから。
  ドキドキするような出来事が多いですよねぇ。
大村正樹
だから、多少充実して長く感じるわけですね。
  それは大きいみたいです。
大村正樹
あとは、地球上の時間は基本的には24時間は24時間で、もう1メートルは1メートルと同じように基準ができているわけですよね。
はい。
大村正樹
例えば、こういうところに時間の違いがあるようなことは?
  そうですねぇ。1日24時間ですが、朝方の時間と昼の時間は感じ方が全然違っています。これは、感じる時間の長さに影響を及ぼす別の要因で、体の代謝に関わります。朝起きた時は体全体がまだ起きてなくて、だんだん昼にかけて活動が活発になってくるんですが、心の時計もそれにしたがって進み方がだんだん早くなってくる。逆に言うと心の時計は、朝方はゆっくりで昼から午後にかけてだんだん早くなるので、感じる時間も朝方はあっという間に時間が経ったような感じがする。
大村正樹
そうかも知れない。
  昼間は割と普通の進み方で、夜になってだんだん眠たくなってくると、また時間がだんだん早く過ぎるような感じがしてくる。
大村正樹
代謝というのは、よく健康診断で基礎代謝の数値がありますね。多い人は僕らの世代だったら1500ぐらい、少ない人はたぶん1000は行かないと思いますが、その代謝が少ないと時間の流れが早く感じちゃうということですか?
心の時計がゆっくり進むということは時計の時間が相対的に早く進むことになるので、心の時計の状態がゆっくりだと世の中の出来事がものすごく早く進んでいるような感じ方をする。だから、代謝が落ちている朝の10分間と昼の10分間では長さが違って、朝の10分はあっという間に経ったような感じがするということが起こります。
大村正樹
心の時計、いい言葉ですね。
  そうですね。24時間という時計の時間、1秒の感覚は昼も夜も同じですが、心の時計は刻み方が昼と夜では違うんですね。
大村正樹
先生が「心の時計が早いなぁ」と思う時は、ご自身の生活の中でどんな時ですか?
  例えば、疲れてきて急いで仕事をしなきゃいけないけれど、なかなか思うように進まない時は、あっという間に時間が経っている感じが強くなりますね。
ルーティーンワ−ワーク
 
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大村正樹
その時は、心の時計が遅いということですか?
  ゆっくり。特に疲れている時には、ゆっくり進みがちになると思います。
大村正樹
実はせわしくなく動いているようだけど、心の時計はゆっくりで逆ですか?
  逆に短い時間の中で色々なことをしなきゃいけないことになるとあせってしまうことになって、時間の進み方も余計早く感じてしまう。
大村正樹
なるほど。逆に心の時計が早い時はどういう時ですか?
  例えば昼間、特に運動した後に体の代謝が上がると心の時計は早く回ってます。そうすると意外と10分間で普段だったらなかなかできない仕事ができちゃうということが起こる。
大村正樹
なるほど。あとは僕の身近なところでは何だろう? 恐い時―この間ラボにすごい気持ち悪いカメがいっぱい来たんですよ。この番組はサイコーの方としゃべっている時間は10数分という短い時間で結構あっという間ですが…。カメが甲羅の中に首がちぢこまらなくて甲羅に沿って首を収納するカメがいて、僕が見たカメの中ではあり得なくて、あの時のカメトークはラボにいるもんだから30分ぐらいに感じたんですね。これは時間が長く感じるいい例?
そうですね。恐いもの、恐怖心を感じるものと一緒にいる時間は長く感じると言われています。
大村正樹
ヘビとかいたら、もうたまらないですもの。
  でも、それはほかの人には分からないですね。
大村正樹
あっという間に時間が来ちゃって。これは楽しかったからなんですね。
  そうですね。
大村正樹
短かったなぁ。ということで、今日はキッズじゃなくてお父さんお母さんに聴いてもらいたいね。時間が早く感じる人は、日々新鮮に、楽しいことばかりというふうに40代50代の人生を送っていただければと。
意識的にそういうイベントをつくっていくことは有効だと思います。
大村正樹
じゃあ、わが子を怒っていることも大事かもしれないけれど、子どもたちと楽しい時を過ごしながら時間を刻んでいくと、実は1年がものすごく充実するかも知れない。
そうですね。子どもと一緒に過ごしていくと、子どもの時間を共に生きることになるので、子どもと一緒じゃない人と比べると時間がやっぱり充実してくると思います。
大村正樹
そうですよねぇ。ひとつ勉強になりました。先生、時間の話をぜひ来週も伺いたいので、また千葉から来ていただいてよろしいですか?
はい、分かりました。
大村正樹
今週のサイコーは、千葉大学准教授の一川誠先生でした。ありがとうございました。
  ありがとうございました。
大村正樹
本当に冷静に考えると怒られてる時間って長いよねぇ。お父さんお母さんはもちろん、先生に怒られてる時間も長く感じるでしょ。でも、怒ってるほうはそんなに長くないんだよね。時間って感じ方が違う。長く感じないためにどうすればいいのか?―それは怒られないようにすればいいってこと。ということで、みんなも今一度、自分の生活を改めて考えて、新しい年が始まって間もないから色々と時間のことを考えてはどうでしょう。
カメ
 
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