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「時間の話」(2)
コーチャー/一川誠(いちかわまこと)さん(千葉大学准教授)
大村正樹&一川誠
大村正樹
キッズのみんな、こんばんは。今週のテーマも時間です。楽しい時間はあっという間に過ぎ、退屈な時間はやたら長い。それはなぜかという話を先週は聞きました。ほかにも時間の感じ方は状況によって色々あるんだって。その辺りを、みんなラジオの前で「あるあるある!」、「うんうんうん」、「ないないない」とか一緒に考えてみてください。今週のサイエンスコーチャー(サイコー)は前回に続きまして、千葉大学准教授の一川誠(いちかわまこと)先生です。こんばんは。
こんばんは。よろしくお願いします。
大村正樹
先週はあっという間だったんですが、今回も時間がテーマです。この1週間、ものすごく時間を大事に過ごしたら1週間が長く感じました。
それはよかったですね。
大村正樹
よかったです。また時間の話を伺いたいんですが、この間は恐い話で終わって…。やっぱり僕はヘビとか爬虫類が苦手なので恐い時間を長く感じたんですが、その他にも恐怖と時間の関係で分かりやすい例はありますか?
実験をおこなってバンジージャンプで飛び降りている間の、時間の感じ方を調べた人たちがいるんですね。
大村正樹
すごい研究ですね!バンジーで降りる人の時間の感じ方?
  はい。手首に高速で文字を示してくれる特別な装置を付けて、飛び降りている間にその文字が普段よりも細かい精度で見えるんじゃないかということと、飛び降りている最中の時間の感じ方を同時に調べる、という研究です。
大村正樹
飛んでる最中は恐くて文字なんて読めないんじゃないですか?
  それを、協力者に無理を言って見てもらうという、苛酷な実験をやったわけです。でも、なかには恐くて目をつぶってしまった人もいたみたいで、データとして使えなかった人も何人かいたそうです。その結果、やっぱり数十パーセントの人たちが、飛び降りている最中にかなり時間を長く感じていることが分かった。また飛び降りている最中の、心の時間の解像度が上がっているかどうかは、人によって違いがあった。この研究をやった実験者本人たちでは解像が上がったようなデータが出たらしいですが、一般の人ではそういうことは起こらなかったみたいです。
大村正樹
はい。
  心の時間が早く進むか、時間の解像度が上がるかどうかに関しては、まだ今後調べていかなければならない。
大村正樹
バンジージャンプにある程度慣れてる人は解像度が高いという?
  そうかも知れないですねぇ。慣れてない人とか、本当に強い恐怖を感じてしまった場合には、時間の精度が上がることはなかったかも知れません。
大村正樹
確かにバンジーの経験はなかなかできませんが、ジェットコースターで一番急なところを降りるのは、ものの2秒か3秒とかわずかですよね。でも、あの時の胸がキューンとなるのは長く感じますものね。
長く感じると思いますね。
大村正樹
それと似た原理ですかねぇ。
  たぶん同じようなものだと思います。
大村正樹
ジェットコースターに乗り慣れて、降りる時に細かい文字をどこまで読めるかというのは、意外にキッズのみんなも実験できるかもしれませんね。計算式が何本できるとか…。
バンジージャンプは子どもだと大変ですけれど、たぶんジェットコースターだとできますね。
ジェットコースター
 
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大村正樹
じゃあキューンとなっている時には意外に頭が切れ切れで、シャープに計算できたり漢字が読めたり文字が一気に読めるとか、そういう結果が出るかも分からない。
かもしれませんね。
大村正樹
ちょっとやってみようかなぁ(笑)。
  その辺りは科学の最先端で、まだよく分かってない分野なんですが…。
大村正樹
先生、これってちなみに科学ですか?
  そうですね。
大村正樹
へぇ〜。時間も科学なんですね。いやぁ、いい授業だ。あとは例えば何ですか?
  感じる時間の長さに影響を及ぼす要因としては先週もちょっとお話しましたが、体の代謝の状態を色々変えて、例えばコーヒーとか代謝を上げるようなものを体に入れると、やっぱり時間の感じ方が変わる。
大村正樹
コーヒーは代謝を上げるんですか?
  はい。そうすると、普段よりも時間がゆったり流れているような感じがする。先週お話した流れでいうと心の時計が早く進むわけですね。
大村正樹
はい。
  そうすると相対的に時計の時間よりも早くなるので、目の前の出来事がゆったり過ぎていくような感じがしてくる。
大村正樹
「コーヒーを飲むと落ち着く」という大人が多いけれど、そういう原理なんですね。
  それも関係していると思います。
大村正樹
じゃあ、ビールを飲むと時間の流れはあっという間ということですね。
  ビールとか鎮静させるような睡眠導入剤、睡眠薬とか一般にいわれているものだと、時間があっという間に過ぎているような感じが強くなります。
大村正樹
楽しい宴会はあっという間ですものね。
  そうでしょうねぇ。
大村正樹
だけど、上司に変なクダを巻かれちゃったら嫌ですけれど…。やっぱりお酒は楽しく飲まなくちゃいけませんね。
  宴会に限らず楽しい時間はあっという間ですね。
大村正樹
そういうことなんですね。例えばキッズたちだと、テストがあっという間に終わっちゃう。「うわぁ〜、終わってないのにチャイム鳴っちゃった」とかあるじゃないですか。あれはどういう心理ですか?
やっぱり難しい問題を解いている時――数学とか算数に限らずどんなものでも難しい課題に接している時には、時間があっという間に過ぎているような感じがしてきます。
大村正樹
やっぱりそうか。同じ45分50分のテスト時間でも、自分の得意な科目のほうが時間の流れはゆっくりということですか?
  時間的に余裕が出てくることになります。これは物事に対処する時に注意を集中させなければいけないことになると、時間の経過に余り注意が向かなくなるからです。実はどれだけ時間の経過に注意を向けるかが、時間の長さをどう感じるかに大事な影響を及ぼすことが分かってます。例えば、退屈な時間がなかなか過ぎないということは、退屈な時間は「早く終わらないかなぁ」と思って時間が気になりますよね。
コーヒー
 
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大村正樹
はい。
  その回数が多ければ多いほど、なかなか時間が経たないという皮肉なことが起こります。難しい問題に当たっている時は注意をとにかく集中しなきゃいけないので、余り時間経過に注意が向かない。ということになると、あっという間に時間が経ったような感じがしてくる。
大村正樹
時間に対する意識の問題もあるんですね。余り時間を気にしなくなっちゃうと、あっという間に流れちゃう。
  そうですね。
大村正樹
確かに算数が難しくて計算に集中しちゃうと、あっという間に10分20分経っちゃって、まだ半分もできてないのに「あと5分か」ということがありますものね。
だから、まめに時間をチェックするようにしとかないと、あっという間に時間が経って残り時間が足りなくなり焦るということが起こりやすくなる。難しい問題だとあらかじめ分かってるんだったら、時計を見ようと意識的に考えといたほうがいいでしょうね。
大村正樹
なるほど。算数が苦手なキッズは、なるべく教室の時計を見るようにすると時間を有効に使えてテストの成績もいいかも分かんない。
そうですね。ただ余り時計に集中しすぎると、問題がおろそかになってやたらと長い時間になってしまい、そっちのほうが…。
大村正樹
バランスも大事なんですね。
  バランスは大事ですね。
大村正樹
あとは、例えば感じ方ってどんなものがありますか?
  やっぱり時間の経過に対する注意というのは非常に大事なので、先ほども言ったように楽しい時間があっという間に過ぎるように感じるのは、楽しい時間にはなかなか時間の経過に注意が向きません。これが、楽しい時間が短く感じられるというふうに影響することが考えられています。
大村正樹
なるほど。
  子どもと大人の時間の感じ方でいうと、子どもの頃は色々なものが大きく見えます。空間が広いと感じる時間も長く感じる、ということがあって、例えば大人になってから自分が行ってた小学校に行くと、「こんなちっちゃな教室だったっけ?」とか「こんなちっちゃなグランドだったっけ?」となると思います。実際、人間は体を基準にして空間の広さを測るので、昔感じた広い空間が狭く感じてしまう。そうすると、同じ空間でも大人は短く、子どもは長く時間を感じる。体の大きさが、その空間の見え方とか感じる広さを変え、時間の感じ方にも影響を及ぼすといわれています。
大村正樹
そうですか。勉強になったなぁ。先生は時間の研究で、これからどういうことを研究されていくんですか?
  色々な要因が影響を及ぼすことは分かってますが、まだ感じる時間を操作する、コントロールするところまでなかなかできてないので、もうちょっと人間の時間の感じ方を理解することによって、例えば苦にならない待ち時間の使い方とか、時間の充実した使い方ができるように研究を持っていければなぁと思ってます。
大村正樹
何年か経って「待ち時間を苦にならないように過ごすための画期的な商品ができ上がりました!」なんてニュースがあったら、それは一川先生のアイデアかなと思っていいかも知れませんね。
そういう研究もしたいなと思ってます。
大村正樹
楽しみにしてます。今週のサイコーは、千葉大学准教授の一川誠先生でした。ありがとうございました。
  ありがとうございました。
大村正樹
“時間を長くするも短くするも君次第”――よく分かったかな?あとは、例えば駅からまっすぐ1キロ歩くのとジグザグに1キロ歩くのとでは、やっぱりジグザグに歩いた方が早く感じちゃったりしない?「東京タワーを目指して歩こう」と聞くと「えっ〜!?」と思うけど、同じ距離でも東京タワーという目標がなければあっという間に着いちゃうとか、本当に色々な感じ方があると思うんだけど、今週は時間を科学してみました。
教室
 
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