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「まいど1号」
コーチャー/長谷川洋一さん(有人宇宙システム)
大村正樹&長谷川洋一
大村正樹
キッズのみんな、こんばんは。先週は宇宙エレベーターという、僕が本当に大好きな話で盛り上がっちゃったけど、今週も宇宙の話。しかも今月は“宇宙月間”だね。1ヶ月ほど前に「まいど1号」という衛星が打ち上げられたニュースを見たでしょ。「何であれが人工衛星なの?」、「何であんなにちっちゃいのに衛星なの?」と色々疑問に感じたキッズもいると思うんだ。僕自身よく分かってないの。その辺りを今週のサイエンスコーチャー(サイコー)にじっくり聞いてみたいと思います。久々のご登場、有人宇宙システムの長谷川洋一さんです。こんばんは。
こんばんは。よろしく。
大村正樹
今日は長谷川さんすごく張り切っているみたいですが、先月打ち上げられた「まいど1号」でそんなに興奮したんですか?
  そうですねぇ。ほんとにオヤジの夢!
大村正樹
やっぱりそうなんですか。ニュースで「大阪の中小企業の夢」とか言ってたけど、ニュースのオヤジたちのトーンは見てる側からするとちょっと今いち…。「あれは何のために?」とか「いくらぐらいオヤジたちは払ったんだろう?」、「今どうしてるんだろう?」、「宇宙でどうなってるの?」とか言ってほしかった。
ハハハハ。
大村正樹
まず現実問題、あの「まいど1号」って何ですか?
  人工衛星ですが画期的なんです。というのは、まず小さいんですね。
大村正樹
小さい、小さい。
  国が打ち上げる人工衛星は大きくなっちゃいます。それは色々な人の色々な観測をやって、いっぱいデータをつくらないといけないから。「まいど1号」は、まず私たちの“星”を上げようというところから入ったので、とにかく小さくした。
大村正樹
あの40センチぐらいの「まいど1号」も、衛星のうちに入るんですか?
  人工衛星なので、業界では“星”と呼んでいます。
大村正樹
“星”。普通のいわゆる人工衛星は直径どれぐらいですか?
  数メートルになることが多いです。
大村正樹
1メートルを超える。
  特に太陽電池の翼を広げると何メートルという大きさになって、とても明るく輝くので地上からもよく見える。
大村正樹
大きくても小さくても、無重力の空間では衛星になり得るということですか?
  そういうことです。
大村正樹
あのオヤジたちの夢には何が入っているんですか? 「5年後の自分へ」とか書いてあるわけではないですよね(笑)。
  そういうみんなのメッセージも書いてあるそうですが、何より大事なのはオヤジたちの――オヤジと言うと失礼ですが、町工場の技術が詰まっているということ。宇宙技術ではなくて、町の技術を集めて本当に宇宙で通用する人工衛星ができてしまったんです。
大村正樹
鹿児島の種子島(たねがしま)からロケットで飛ばしてもらったんですよね。だったら、何でも衛星になるんじゃないですか?
  それがねぇ、なかなか人工衛星は大変で、宇宙空間ですから日なたは百何十度、日陰はマイナス百何十度とものすごい気温の差がある。そして真空ですよね。例えば、キッズがお持ちのラジカセを宇宙に上げたらすぐ壊れちゃう。
大村正樹
そうなんですか。
  ええ。ですから、それらに耐えられるようにつくらなくてはいけない。もっと大変なのは打ち上げる時、これはもう大変揺れる。東海道線や常磐線どころではないです。
宇宙空間
 
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大村正樹
へぇ〜。
  これにも耐えなきゃいけない。ところが町の技術も大変進んでいて、例えばみんなのお父さんがいつも乗る車にある機械は、ガタゴト揺れても壊れちゃいけないですよね。振動に大変強くなっている。
大村正樹
車は音響装置とかスピーカーもタフにできてるんですか?
  ええ。日本の工場技術は優れているんです。その技術が本当に宇宙で人工衛星として通用するのかを、今回証明したということです。
大村正樹
なるほど。すごく分かりやすい。宇宙空間という苛酷な条件でも壊れない機械を、町工場の夢として打ち上げたということですか。分かった、分かった。じゃあ、宇宙で何かするための機能はあるんですか?
一応「まいど1号」は雷の観測をするために色々な実験や、雷から出る電波を測定したりしてるんですが、次に計画している「まいど2号」でそれをさらに発展させて、本当に雷予報ができるようにしたいなと考えているそうです。
大村正樹
そのために飛ばしたんですか?
  ええ。あとは「オヤジの雷」の予報ができたら、もっといいんですけどねぇ(笑)。
大村正樹
怒る時の雷ね、なるほど。今のは、きっと宇宙で「あきまへんなぁ」と言われてます(笑)。
  あきまへんか(笑)。
大村正樹
いい話でした。実は僕、鹿児島で勤めていた時代に種子島(たねがしま)へ何度か行って、すごく感動したんですよ。美しい島のはずれ、本当に南のはずれまで行ったらロケットの発射台があって。ニュースで見るたびに「あぁ、自分はあそこに立ったんだなぁ」と思うんです。あのロケットのどの辺に「まいど」はあったんですか?トップの辺ですか?
トップですが、トップは2階に分かれてまして、上と下があるんです。上にはご本尊の「いぶき」という1.75トンもある大きな人工衛星が載ってました。
大村正樹
「いぶき」というのが本来飛ばすためのロケットで、「まいど1号」はついでですか?
  相乗りなんです。相乗りなんですが、それが7個もあったんです。そのうちのひとつが「まいど1号」です。
大村正樹
じゃあ、本来「いぶき」を飛ばすためなんだけど、「ほかに誰か相乗りしませんか?」という感じでちょっとずつお金を集めて、逆にコストを安くしようと。
そうですね、募集されて。
大村正樹
「いぶき」がメインで、「まいど」よりもデカいんですね。
  もう全然大きいです。
大村正樹
「いぶき」は何のために飛んだんですか?
  キッズのみなさんもきっと学校で習っていると思いますが地球温暖化、その原因のひとつがCO2、炭酸ガスだろうと言われてます。その炭酸ガスを各国がどれぐらい出しているのか、宇宙から測っちゃおうという大変な人工衛星なんですね。
大村正樹
僕はCO2といったら二酸化炭素と勝手に思ってるんですけど、プロから言うとCO2は炭酸ガスという解釈ですか?
  すみません。プロから言っても二酸化炭素です。
大村正樹
そうですか。分かりやすく言うと炭酸ガスですか?
  そうですね、日常用語で炭酸ガスです。
大村正樹
それを観測するんですか?
  そうです。実は、地球上の二酸化炭素を観測する人工衛星としては世界で初めてのものなんです。
発射台
 
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大村正樹
えっ、アメリカのNASAでもやってないんですか?
  実はやってるんですが、ちょっと遅れてだったので日本が2、3ヶ月早っかたです。
大村正樹
1月に飛ばしたのがよかったんですか?
  そうですね。
大村正樹
来月辺りNASAも飛ばそうとしてるんですか?
  NASAもこの春頃には飛ばしたいといってます。
大村正樹
へぇ〜。実は2年ぐらい前にこの番組のサイコーとして日大の学生さんだったかな?「何年か後にインドのロケットに僕らの人工衛星を乗っけたいんだ」って夢を語っていました。今回「まいど1号」のニュースを見て「同じじゃん」と思ったんです。
アハハハ。
大村正樹
もっとちっちゃくて、その時にはよく分からなかったんですけど。彼らが言っていたのは、20センチ四方ぐらいの箱が宇宙の苛酷な条件に耐えられるように研究した上で、日本人の色々な夢を書いた寄せ書きをデータにして飛ばすという夢だったんです。僕もそこに「平和」と書いて入れてもらったんです。それと同じ原理なんですね。
そうですね。
大村正樹
宇宙空間でも壊れないものを飛ばすという技術も大事だし、衛星として機能するかも大事だし、そこからコンピューターで何らかの情報を送れるかということも大事なんですね。
そうです。
大村正樹
ラジオを聴いているキッズたちも今のを聞いて、自分たちの夢を衛星に託して宇宙に飛ばすことができる時代がもう来てるとわかったでしょ。
キッズのみなさんが成人する頃には、みんなのうちの何人かが設計をやっているかもしれませんし、人工衛星をつくっているかもしれない。もしかすると高校生でもつくれるようになるかもしれない。
大村正樹
そうですよねぇ。ある程度研究のためのお金がある高校だったら、「人工衛星を君たちがつくってJAXAのロケットに乗っけよう」ってなるかもしれない。すんごいロマン!宇宙エレベーターはもうちょっと先の話かと思ったけれど、今のように衛星を飛ばそうという話は、もうあるんですね。
そうです。
大村正樹
何かいいなぁ。もう時間。早ッ!宇宙の時間はあっという間だな。長谷川さん、来週もお越しいただいていいですか?
  はい。
大村正樹
今週のサイコーは有人宇宙システムの長谷川洋一さんでした。ありがとうございました。
  ありがとうございました。
大村正樹
「まいど1号」のことが初めて分かったね。ラジオを聴いているキッズたちも大きくなってからといわず、今、大勢で「人工衛星を打ち上げた〜い!」という声をあげたら、手伝ってくれる大人がいたりして。“子どもたちの夢、宇宙へ”がひょっとしたら1年か2年後にあるかもしれないよ。みんな、どうだったかなぁ?
人工衛星
 
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