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「ワイルドライフ・マネージメントの話」(1)
コーチャー/三浦慎悟さん(早稲田大学教授)
大村正樹&三浦慎悟
大村正樹
キッズのみんな、こんにちは。もう春休みに入ったかなぁ?あるいは小学校を卒業してのんびりしてるとかね。今日のテーマは僕も初めて聞いた言葉「ワイルドライフ・マネージメント」。何それ?野生の生活のマネージメント?ということで、それを研究されている先生が今週のサイエンスコーチャー(サイコー)、早稲田大学教授の三浦慎悟さんです。こんにちは。
こんにちは。どうぞ、よろしくお願いします。
大村正樹
お願いします。早稲田大学の先生ですね。はじめて聞いた言葉がテーマなんですが、「ワイルドライフ・マネージメント」って何ですか?
ワイルドライフは、「野生動物」という意味です。マネージメントは、日本語で「管理」とか「経営」とか訳されますが、元をたどると「上手にやりくりする」とか「うまく付き合う」といった意味があるんです。だから「野生動物と人間がいかにうまく付き合っていくのか」を、科学をベースにして行なうんです。
大村正樹
そういうジャンルの研究もあるんですか?
  これは、欧米のほうで広く行なわれてきました。
大村正樹
へぇ〜。先生は早稲田大学で「ワイルドライフ・マネージメント」を教えていらっしゃるんですか?
  そうですね(笑)。
大村正樹
何学部でやっているんですか?
  人間科学部です。
大村正樹
へぇ〜。興味深いですねぇ。
  人間環境科学科というところにいますので、人間が環境とうまく共存していくための様々な研究をやっています。
大村正樹
大学生になると研究チームでゼミというのがありますが、先生のゼミでは結構、野山を歩いたりするんですか?
  そうですね。
大村正樹
楽しそうですねぇ。
  ハハハハ。フィールド系です。
大村正樹
フィールド系。先生のお顔を拝見すると、相当あちこち歩き回っているような感じですかねぇ。
  まぁ野生動物がいる所はどこへでも行く(笑)。
大村正樹
そうなんですか。野生動物というと、やっぱり絶滅危惧種が一番頭に思い浮かぶんですが、僕の中で絶滅の危機というと、ニッポニア・ニッポンと呼ばれるトキです。トキは何で絶滅しちゃったのかと思うんですが…。
そうですよね。一般的には環境の破壊や農薬の使用とかが原因に挙げられるんですが、ずーっとたどって行くと江戸時代、トキはかなり普通に見られた鳥だったんです。
大村正樹
日本全国に?
  ええ、日本のほぼ全国に。
大村正樹
へぇ〜。
  それがなぜ減少していったのか。日本が開国した明治時代、欧米では婦人用の帽子などに鳥の羽根がよく使われていたんです。日本から輸出するものがほとんどなかった時代ですから、そのためにトキの羽根だとかアホウドリの羽根・・・。
大村正樹
アホウドリ?
  羽毛で布団を作るんですが、いわゆるダウンを明治時代に外国へ輸出していた。その時に大規模な乱獲が起こったんです。
大村正樹
そういうことかぁ。
  その乱獲によって、トキもアホウドリも集団の大半が滅んで、その後、昭和40年代以降に農薬の使用とか生息地の大きな変化で絶滅の道を歩んだ。カワウソもそうなんですね。
トキ(イメージ)
(イメージ)
 
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大村正樹
カワウソも絶滅の危機!?
  カワウソも同じシナリオで。
大村正樹
トキ、アホウドリ、カワウソ。カワウソって確かに見たことないですねぇ。
  たぶん、おそらく絶滅してるんでしょうけど。
大村正樹
基本的なことですが、トキというと新潟県の佐渡島のイメージがあるのに、本当は“佐渡生まれのトキ”ではないということですか?
  今はね。2003年に日本産の最後のトキが死にまして、今のトキは中国から。
大村正樹
中国ですよね。最後、“キンちゃん”というトキが長生きした。
  そうです。
大村正樹
たまたま生き残ったトキというか、保護したのが佐渡島ということですか?
  佐渡島と、あと能登半島ですね。
大村正樹
知らなかったぁ。
  その時には個体数がすでに少なくなってて、救うことができなくなっている状態でした。
大村正樹
アホウドリはどこにいたんですか?
  鳥島というところにいました。
大村正樹
南鳥島とか沖ノ鳥島とかありますよね。小笠原のずーっと先の、日本の最南端とか最東端とか言われている場所。
  そうそう。そこに、推定ですけど500万羽以上いたんですね。
大村正樹
でも、当時そんな沖のほうにいた鳥を、どうやって捕獲してたんですか?
  当時は東京府とか市だったわけですが、ある人が鳥島でアホウドリを獲るということで許可を得て、無人島に十数人を船で連れて行って毎年20万羽ぐらい獲ったんです。ちょうど農作業のようにこん棒を持って。アホウドリは人を恐れずヒナを育てますから、ほとんど動かないということで。
大村正樹
アホウドリはこん棒でたたいたら捕獲できちゃうんですか?
  そうです。
アホウドリ(イメージ)
(イメージ)
 
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大村正樹
アホウドリは飛べない鳥ですよね。
  いえいえ、飛べます。けど人を恐れないから、そこで産卵してヒナを育てている状況ですと、簡単にこん棒でたたけるというか。
大村正樹
へぇ〜。鳥島というめちゃくちゃ遠い所から船で人が陸にあげて、それを外国人にダウンとして売ってたんですか?
  そうなんですね。最後にこれは幸いだったんですが、鳥島が噴火したんです。それでその島から撤退してアホウドリを捕獲することができなくなって、かろうじて少数のアホウドリたちが残って現在につながっているわけです。
大村正樹
今かろうじて、いるんですね。
  徐々に徐々に増加している状況です。
大村正樹
へぇ〜。逆に増えて困っちゃう野生動物は、例えば何ですか?
  保護しなければならない動物の一方で、増えて農林業に対して大きな被害を起こしている典型的な動物がシカ。
大村正樹
シカ?クマじゃなくてシカですか?
  ええ。シカとかイノシシ。
大村正樹
今、何割ぐらい多くい過ぎるんですか?
  それはねぇ、何とも言いようがないんですが・・・。勢いが止まらないということですから、この勢いを何とか止めていく。それから人間との関係をうまく調整していかなければならないし、維持すべき自然生態系についても、時と場合によっては個体数を調整していかなければならないと考えます。
大村正樹
調整を。
  これが「ワイルドライフ・マネージメント」の大きな課題だと。
大村正樹
それが先生のお仕事なんですね。
  そうですね。
大村正樹
野生動物とはいえ、人間がある程度調整することによって生態系を維持していくというのがお仕事。
  ええ。人間の生活を守るということも含めてです。
大村正樹
この番組、あっという間に時間が来て…。また来週も続きのお話を伺ってよろしいですか?
  はい。ありがとうございます。
大村正樹
あっという間でした。今週のサイコーは、早稲田大学教授の三浦慎悟先生でした。ありがとうございました。
  ありがとうございました。
大村正樹
みんな、知ってた?特別天然記念物のトキ。そのトキがほぼ絶滅した状態だったけれど、ここに来てようやく繁殖技術がうまくいって、もしかしたら国内でうまく繁殖して自然にいた時のように戻れるかなというところまで来ている。元々は日本中にトキがいたという話を今日初めて知ったのね。新潟県の佐渡島にしか居ない鳥だと思ってました。ワイルドライフをマネージメントすることが職業の方もいらっしゃって驚きでした!
イノシシ(イメージ)
(イメージ)
 
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