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「ワイルドライフ・マネージメントの話」(2)
コーチャー/三浦慎悟さん(早稲田大学教授)
大村正樹&三浦慎悟
大村正樹
キッズのみんな、こんにちは。春休み楽しんでる?今日も「ワイルドライフ・マネージメント」、野生動物を管理するというのがテーマ。野生の動物なんか管理できっこないと思っちゃうかもしれないけれど、研究している方は意外な方法で野生動物を管理して「何頭ぐらいいるのか?」、「何歳ぐらいなのか?」といったことを調べられているようです。興味深いでしょう?今週もサイエンスコーチャー(サイコー)として野生動物の管理人である早稲田大学教授の三浦慎悟先生にお越しいただきました。こんにちは。
こんにちは。よろしくお願いします。
大村正樹
お願いします。先生は野生動物の生態系をコントロールしながら人間の生活との関連性も研究されているそうですが、野生の動物がどれぐらいいるか正確には把握できないですよね。どうやって数を確認しているんですか?
全国にクマやシカが何頭いるのか把握するのは、なかなか難しいですからある場所を決めて数を推測する。その場所の群れが毎年毎年、子どもを産んでいったり生き残ったりという格好で変化してく数を、ずーっと追跡していくわけですね。
大村正樹
例えば、僕らの住んでる東京にもシカがいますよね。
  ええ。
大村正樹
何頭ぐらいいるんですか?
  東京都の方が研究者と一緒になって一生懸命数えています。実は、東京都のシカは奥多摩にいるんですが、広く見ますと埼玉県とか山梨県、それから群馬県に大きなまとまりとしているんですね。
大村正樹
彼らは県境、関係ないですからね。
  そうです、そうです。たぶん東京都はほんの一部ですけれど、1000頭近い数はいるといわれてます。
大村正樹
どうやって数えるんですか?
  色々な数え方があります。シカは毎日毎日糞をするんですが、ちょうど小豆が大きくなったような黒い糞を大人だと1000粒ぐらいするんです。
大村正樹
シカは大人だと1日1000粒のウンチをするんですか!
  そうです(笑)。
大村正樹
1000粒ウンチ、すごいなぁ!
  2キロから3キロの葉っぱや枝を食べますから、それぐらいするんです。その糞がある場所にどれぐらい落ちていたのか調べ、色々な係数をかけながら大ざっぱに頭数を推定できます。
大村正樹
ふ〜ん。
  より正確に数えるには上空からがベストなんです。特に森林が冬になって葉っぱを落とすような地域ですと、それができます。
シカ
 
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大村正樹
木が枯れて葉っぱがなくなったら見通しがよくなって。
  関東も一部そうですが、特に雪があるような東北地域とか北海道とかだとヘリコプターから数えることが可能になるわけです。
大村正樹
へぇ〜。ヘリコプターで上空から「1、2、3、4、5…」と数えるんですか?
  そうですね。
大村正樹
ダブっちゃったりしません?
  その可能性はあります。というのも90キロぐらいの速度で飛ぶので、地面から100メートルぐらいの距離がありますから。線の上をずーっと飛行して数えていくわけですね。
大村正樹
ヘリコプターって飛ばすのに、ものすごくお金がかかるんですよね。
  実はくまなく全部というわけではなくて、ある地域のラインで数えていきますからそれほど飛行回数がなくても全体の数は推定できます。それから別のやり方としては、地上で集団になってみんなで数え合う方法もありますが、結局どっちが安上がりになるかを計算してみるとヘリコプターでやるほうが結果としては安上がりになります。
大村正樹
1日でポンと終わっちゃうから?
  しかも、より正確です。
大村正樹
へぇ〜。
  それに、より広い範囲にわたってできますね。
大村正樹
ちょっと想像してなかった。ヘリコプターで野生動物の数を数えてるなんて。
  シカはそういうやり方をするんですが、クマは・・・。
大村正樹
どうやってやるんですか?
  地上でハンターたちが数える方法もあまり正確ではないことが分かってきて、今はエサをつけたリンゴやハチミツなどを置いて、その周りに有刺鉄線(ゆうしてっせん)を張りめぐらせて数えます。
大村正樹
トゲトゲの針金の線を。
  エサを食べに来ますから、クマの毛が付くんです。
大村正樹
その有刺鉄線に?
  ええ。その体毛を大切に回収すると毛根のところにDNAがあるんですね。
大村正樹
すごい!それで?
  そのDNAを分析すると、親子判定に使えるぐらい技術は進歩してますから、どの個体がかかったのか分かるようになってきた。
大村正樹
でも、ハチミツを仕掛けて、そこに来るクマの数を調べるということですよね。獲りに行く係とか巣の中にドーンと座っている亭主関白のクマもいるかもしれないじゃないですか。
ハハハ。クマは動き回りますから。特に6、7月には。
クマ
 
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大村正樹
先生はそういう現場にも行くんですか?
  もちろん(笑)。出くわさないように大きな声を上げたり笛を吹いたり、時と場合によっては唐辛子スプレーを持って・・・。
大村正樹
出くわしたことはあるんですか?
  何度もあります。
大村正樹
えっ!身の危険はどうなんですか?
  お互いに分かっているとそれなりの距離であれば、クマのほうから人間を避けるようにゆっくりと逃げていきますから。
大村正樹
そういうのって楽しいですねぇ。楽しいというか、命がけなのは分かりますが。
  そういうことを調べながら、現在、野生動物はどういう状態なのかを見ていくことが非常に重要ですね。野生動物と人間との関係を調整するには、彼らの状態を見ながら共存の方向を探っていくことが重要だと思うんです。
大村正樹
例えば今、先生が研究されててあまりテレビや新聞、ラジオでやってないけど「この野生動物の、これはまずいぞ」ということはあります?
外来の動物をたくさんペットで飼育していることです。
大村正樹
イグアナとかですか?
  ええ。イグアナとかアライグマとかマングース。このアライグマは、ペットでそのまま逃がしてますから、どんどん増えて留まるところをしらない。農作物も荒らしますが、そのほかの野生動物たちに大きな影響を与えているわけです。どうして行けばいいのか、ということです。
大村正樹
本当は日本に生息してなかった動物たちが、幅をきかしちゃってるということですね。
  そうなんです。日本が元々持っていた在来種、貴重な生態系も含めて大きな影響を受けている。このままの状態ですと、私たちはアライグマと一緒に生活していかなければならなくなるわけです。果たしてそれでいいかどうか。
大村正樹
アライグマの問題なんて僕ら全然知らなかったですけど、やっぱりプロから見たら非常に気になるんですね。
  非常に危険な状況です。
大村正樹
へぇ〜、そうなんですか。
  だったら間に合いますから、人間は積極的に外来の動物とどう折り合いをつけていくのか、考えていかなければならない。今だったら間に合います。
大村正樹
そうですかぁ。分かりました。ちなみに、先生の年齢は何十代ですか?
  ハハハハ。
大村正樹
あっ、60代でいらっしゃるんですね。まだまだ野山を歩いてマネージメントをされているということで、いつまでもお元気でいていただきたいと思います。今週のサイコーは、早稲田大学教授の三浦慎悟先生でした。ありがとうございました。
ありがとうございました。
大村正樹
釣りが好きなキッズなら知ってると思うけど、ブラックバスとかブルーギルとかを「スポーツフィッシング」といって、釣るスポーツが流行ってるよね。実はそのブラックバスも外来種で元々は日本にいなかった。だけど放流しちゃったらブラックバスは一番強くて、湖に住んでた魚たちが一気にいなくなっちゃった。そういう現象が地上でも起こり得るという話で、この問題に興味があったらみんなじっくり考えてもらいたいと思いました。
アライグマ
 
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