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「涙の話」(2)
コーチャー/有田秀穂さん(東邦大学医学部)
大村正樹&有田秀穂
大村正樹

キッズのみんな、こんにちは。サイエンステラーの大村正樹です。今週も東京浜松町にある秘密の科学研究所シークレットラボからお送りします「大村正樹のサイエンスキッズ」。
新学期が始まって、みんな慣れたかな? 慣れなくて泣いちゃったというキッズはいないかな?
でもね、先週話した通り、泣くことは良いことなんだって。ということで、今日もサイコーから涙に関してもっともっと深い話を聞いていきま〜す。

大村正樹
今週のサイコーも、東邦大学医学部の有田秀穂先生にお越しいただきました。こんにちは。
  こんにちは。
大村正樹
2週連続でよろしくお願いします。先週から気になって、気になって…。笑いは一瞬のストレスしか解消できないけど、泣けば1週間のストレスが解消できるというお話。僕は、この1週間まだ泣いてないんですが、もうちょっと詳しく教えてもらえますか?
先週、共感する脳の話をしました。そこで血液の変化を見ていますと、笑いの時は確かに泣く時と同じように動くんです。でも、ほんの少し動くだけなんですが。
大村正樹
笑いも、やっぱりおでこの上にある共感脳が刺激されて笑うんですか?
  はい。そのレベルはほんの少しですが、涙が出る時は本当にドバーッと変わります。だから、笑いも涙も同じように共感脳を動かしています。悲しいから泣いて、嬉しいから笑う。ネガティブとポジティブという意味で考えると反対の感情だと思われますけど、脳内現象とすると意外に共通の部分があるんです。
大村正樹
泣くことも笑うことも脳の中では同じなんですか。似てるってこと?
  リセットという意味では、泣くことも笑うことも気持ちを和らげてくれます。
大村正樹
人間には、笑い上戸と泣き上戸がいるじゃないですか。でも、泣き上戸の人とずっと過ごすのは、気持ちよくはないですよね?
  そうですね。涙は強い力を持っていますから、そんなにしょっちゅう流すものではなくて、お勧めは週末に1回ぐらい。毎日泣かれると、ちょっと重いですよね。
大村正樹
重い、重い(笑)。
  でも、毎晩ちょっとお笑いを見て元気になったり、ストレスを解消することは日常生活の中にあるでしょ?
大村正樹
やっぱりお笑いを見て笑うのは、ストレス解消の効果がある?
  あります。
大村正樹
でも、泣くほうがもっと効果がある。
  強い。だから、そんなにしょっちゅう泣く必要はないと考えてもいいですね。
大村正樹
なるほど。じゃあ、「今週は1回泣いてるから、どんなにつらいことがあっても頑張ろうかな」というふうに思えばいいんですね。
  そうですね。結構つらいことがあって本当に号泣できた時は、不思議なくらいスッキリしてますよね。
大村正樹
なるほど。大会のトーナメントを劇的な逆転で勝ち上がって、応援するお母さんや選手たちが毎回泣いてたら、それはそれでちょっと重いですよね(笑)。
重いね(笑)。
大村正樹
先生は基本的にお医者様でいらっしゃるわけですね。
  はい。
笑い
劇的な逆転
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大村正樹
お医者様が涙を研究するのは、医療に役立っているんですか?
  今、医療の現場では涙より“笑い療法士”。笑うことが注目されています。嬉しいから笑うんじゃなくて、笑うと心が和むんです。だから、別におかしくなくても笑う。表情と声を出して「アッハッハ」と大きな声でしばらく笑っていると、実は身体の調子が良くなるんです。
大村正樹
医療の現場に“笑い療法”というジャンルがあるんですか?
  ありますよ。
大村正樹
“涙療法”はないんですか?
  “涙療法”は今のところないです。でも、これから生まれるかもしれないですね  (笑)。
大村正樹
ちょっとネガティブな印象があるからですかね?
  そうかも知れないですね。ただ、笑いと泣きの時の心理テストの効果を見ると、笑いはどちらかと言うと人の気持ちを元気にするんです。
大村正樹
第三者の?
  いえいえ、自分の気持ちを元気にするんです。一方で、泣きのほうは心が混乱している状態をスッキリするという点で少し心理的な違いがありますから、脳の中の変化も微妙に違っている可能性がありますね。
大村正樹
心のモヤモヤを水に流すのが涙で、心のモヤモヤに対して注射を打つのが笑いということですかね。
  そうですね。元気にしちゃうということです。
大村正樹
なるほど。先生はどちら派ですか?
  そうだね。やっぱり笑ってたほうがいいけど。でも…。
大村正樹
ハハハハ。でも、涙に詳しいんですよね。
  涙の力って、そういう意味では、びっくりするぐらい強いものがあると思う。
大村正樹
確かに、「笑いが健康にいい」ということを説いている専門の方はこれまで大勢いらっしゃったけど、「泣くことが健康にプラスになる」とおっしゃる方には初めて会いました。
そうですか。今、結構涙を流すドラマってあるでしょ。『天地人』だって、男が結構泣く場面がある。だから、そういう意味では泣くことは「女々しい」とか「悲しい」とかネガティブなものではなくて、人の気持ちがよく理解できると捉えてほしい。相手の気持ちが読めることで涙が出るのは、人間としてものすごく大切なことですしね。
大村正樹
なるほど。
  そういう意味では、必ずしも涙を否定的に捉える必要はないと思います。
大村正樹
ラジオを聴いてるキッズの世代は、泣き虫はいじめの対象になりがちだけど、そうじゃないということですね。
  と言うか、泣いて人に何かを伝えるというのは間違っている。だけど、泣くことは自分にとってすごいストレス解消なんです。人前じゃないところで、大いに泣くことでスッキリして、また元気になる。これは“あり”なんです。
 
 
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大村正樹
なるほど。もし、泣いてる子を見かけても「あまりからかっちゃダメよ」と。涙の理由を知ったら、もしかしたらその子の心にすごくプラスになってるかもしれないということですね。
はい。
大村正樹
かつての有名な総理大臣の言葉に「涙は女性の武器だね」というのがありますけど、男性と女性を比べて、女性が涙もろいというのは本当ですか?
僕は本当だと思います。基本的に男性と女性は脳も違います。脳が原因で涙を流すわけですから、そういう意味では男性の脳と女性の脳が違うために、女性のほうが泣きやすいということはあると思いますよ。
大村正樹
すごいジャンルの学問ですね、先生。
  面白いですよね。
大村正樹
何年ぐらい涙の研究をされているんですか?
  もう7、8年ですかね。
大村正樹
へぇ〜。研究を始められてから、驚いた質の涙とかはありますか?例えば「テレビで有名なこのシーンの涙が実はすごい効果がある」とか。
僕がテレビを見ていてよく一緒に泣くのは、北島や古田のような表彰台に上がった人たちが泣いたときですね。色々な人が試合に勝って、思わず泣いた時って一緒に泣くでしょ。もらい泣きして、それでスッキリしますからね。あれが、僕の好きな涙ですね(笑)。
大村正樹
スポーツを見て、選手も見ている側も流す涙が、ある意味、最高の涙だと。
  そうですね。ドラマもありますし、感動して嬉し泣きになります。あれは、男としては比較的いい涙でしょ。女性はメロドラマというか恋愛物で、色々なことがうまくいった時に思わず一緒に泣くとか、あの涙もやっぱりお勧めですね。
大村正樹
もう一つ聞いていいですか? 先週、「結構泣くんだ」って自慢したけど、僕はストレスがたまっているということですか?
  それだけストレス解消法を持っているということですね。
大村正樹
微妙ですね(笑)。
  ただ、泣けるということは、実は共感するものをたくさん持っているという意味なんです。だから、子どもよりは大人、大人よりは年寄りというか苦労した人ほど涙がたくさん流れるというのは、おそらくそういう理由があります。
大村正樹
よくドラマで「年を取ると涙もろくなっちまってねぇ」というおじさんがいるけど、それは正しい?
  そうですね。それだけ人生の苦労を色々見てきたということだと思いますよ。
大村正樹
じゃあ、先生もこれからどんどん涙もろくなっていくわけですね。
  それはそうですね。そうなってほしいですね(笑)。
大村正樹
そうですか。しかし、勉強になったなぁ。涙を研究されている大学の先生がいるって、驚きました。色々なジャンルの勉強があるんですね。先生は現役である限り、涙や脳に関して研究されていくわけですね。
そうですね。
大村正樹
また何か新しい発見があったら、ぜひラボに来てください。2週にわたってありがとうございました。今週のサイコーは、東邦大学医学部の有田秀穂先生でした。
ありがとうございました。
大村正樹
この2週間の放送は、ストレスを抱える大人のみなさんにもぜひ聴いていただきたかったです。大人の方だったら、仕事を1週間頑張った週末の夜、スポーツのシーンをビデオでもう1回見て、感動の涙を流すことで翌週のエネルギーにする。ということで、僕にとってもすごく勉強になりました。みなさんはどうだったでしょうか?
北島
 
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