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「キッズの疑問に答えます」(1)
コーチャー/寺門和夫さん(科学ジャーナリスト)
大村正樹&寺門和夫
大村正樹
キッズのみんな、こんにちは。サイエンステラーの大村正樹です。今週も東京浜松町にある秘密の科学研究所シークレットラボからお送りします「大村正樹のサイエンスキッズ」。
今日は久しぶりにキッズからの質問特集ということで、みんなから寄せられた科学の素朴な疑問に応えていきます。お知らせの後、サイコーの登場で〜す。
大村正樹
今週のサイコーは、久しぶりの登場。番組ではおなじみの科学ジャーナリスト、寺門和夫さんです。ご無沙汰しています。
  こんにちは。
大村正樹
お元気でしたか?
  はい、元気です。
大村正樹
もう春ですね。
  そうですね。
大村正樹
久しぶりですが、キッズたちから質問が来ているので、今日は“寺門のおじちゃんに聞こう”という時間にしたいと思います。
  ぜひお願いします。
大村正樹
台東区のユウイチ君、小学校5年生。「少し前に浅間山が噴火したというニュースを見ました。火山が爆発する仕組みを教えてください。近くにおじいちゃん、おばあちゃんの家があるのですが、富士山は大丈夫なんでしょうか?」。――実は子どもたちの間で今、富士山大爆発というのが、まことしやかにささやかれているようなんです。
そうなんですか。
大村正樹
富士山、大丈夫ですか?
  まず、火山はどういうものかということを説明します。地面の下には岩石が溶けているところがあるのですが、そうした溶けた岩石が地面の上に出てきて吹き上がったものが火山です。日本は、世界的に見ると火山帯と言われる場所の真上にあるので、日本列島には火山がたくさんあります。噴火した浅間山もそうですし、富士山も火山です。ちなみに、富士山は今から300年ぐらい前に1度、噴火しています。
大村正樹
はい。
  ですから、我々がいつも富士山を見ていると「静かできれいな山だな」という印象がありますが、実際にはとても活発な火山だと考えられます。
大村正樹
なるほど。では、富士山が300年前に噴火した時も、先日浅間山が噴火したときと同じように火山灰がすごかったんですかね?
  そうですね。ただし、300年前の噴火は富士山の頂上からではなく、宝永火口というところから噴火しました。新幹線で東京から関西方面に行く時、右手に富士山が見えますよね。その富士山を見た時に、右肩が少しへこんでいるのが確認できます。そこが宝永火口と言って、300年前に噴火した跡です。実はその時、火山灰が江戸の町まで降ったという記録が残っています。
大村正樹
へぇ〜。やっぱりそうかぁ。
  ですから歴史的にも、噴火した場合に火山灰がかなり広範囲に広がるということは確かです。それから、関東ローム層って知っています?
大村正樹
はい、知っています。
  赤土の層。これ関東平野全般に見られるのですが、実はずっと昔の富士山噴火の時に吹かれてきた火山灰なんですよ。つまり、富士山の噴火は関東地方全域に火山灰を降らせたわけです。
大村正樹
僕、20年前に鹿児島に住んでいて、その時に桜島がすごい活発で火山灰だらけの町だったんですよ。だから、かつての東京、江戸も300年前は白い灰で曇ったような感じになっていたということですか?
そうですね、記録が残っていますから。 仮にこれから富士山が噴火した場合、例えば東京の町にその火山灰が降ってくる可能性もあるわけです。
浅間山
写真提供:信州・長野県観光協会
 
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大村正樹
ずばり、噴火の可能性は?
  それは、何とも分からないです。
大村正樹
えぇ〜!? ゼロではないのですか?
  ゼロではありませんね、自然現象ですから。ただし、基本的に現在は非常に静かな状態です。 火山活動が起こるかどうかは、周りに地震計を設置したりして観測しています。噴火の前には溶けた熱い溶岩が地表に上がってくるので、富士山の下の方で細かい地震が起こるのですが、そういったものを常に監視しています。
大村正樹
今は、噴火の予知ができるのですね?
  ある程度は、予知できます。例えば、この前の浅間山は完全に予測できた例ですね。何度も噴火している火山の場合、地震計を見ていると地震が起こった後どのくらいで噴火するかは大体分かってきます。ただし、富士山の場合はそれが分かっていないから、現在は観測している状態ですね。
大村正樹
へぇ〜。
  ですから、余り心配をする必要はないと思います。今、そういった前兆現象が観測されているわけではないですからね。
大村正樹
じゃあ、ユウイチ君のおじいちゃん、おばあちゃんが富士山の近くに住んでいても、今は予知することができるから、それを聞いてから脱出すれば大丈夫ということですね。
そうです。それから、富士山の周りにはハザードマップというものがあります。例えば万が一噴火した場合に、どの地域にどういった被害が出るか、その場合にどこに逃げたらいいかといったことがすべて検討されているんですね。このように、地元では噴火した時の対策がしっかり行われていますので、必要以上に心配することはないと思います。
大村正樹
静岡や山梨の富士山周辺の町のハザードマップを見ると、その周辺は相当被害が出ることが予想されているわけですよね。
  被害が出るというか、「噴火した時にこういうことが起こります」ということが分かるわけです。
大村正樹
例えば、どんなことが起きるとシミュレーションされているんですか?
  火山噴火には色々な現象がありますが、極端な例を挙げると、火山灰が降ったりする以外にも溶岩が流れてきたり、岩がものすごい勢いで空中に吹き上げられた火山岩が落ちてくるとかです。 ただし、今度仮に富士山が噴火するとして、どういったタイプの噴火になるかまだ分かってないので、単に噴煙が上がるだけかもしれないし、火山灰が少し出てくるだけかも知れません。それは分かりませんね。
大村正樹
90年だったかなぁ。雲仙の普賢岳で取材をしていたテレビ局の人たちが、見た目にはただの煙だけどものすごい熱を持っている火砕流に飲み込まれて、14人の方が亡くなったのかな…。ああいうのをつぶさに見ていたので、今の話でちょっと不安になっちゃったけど、予知できるから大丈夫ですよね?
大丈夫です。ですから前兆現象を見ていて、安全な内に避難すれば、そんなに心配する必要はないと思います。
大村正樹
ユウイチ君よりも、大村のほうが不安になりましたけど大丈夫です。
続いての質問です。これも興味深いね。神奈川県のショウ君、小学校5年生からいただきました。「クローン人間は本当につくれるんですか? イチロー選手のクローンをつくって、イチローばっかりの野球チームをつくることもできますか?」。
――クローン人間って、よくSF映画とか漫画の世界で僕が子どもの時から耳にしているんですけど、いまだにないですよね。
はい。
大村正樹
どうして、ないのですか?
  まず、クローン動物をつくることは、科学の世界で色々と行われています。例えば哺乳類で言うと、ヒツジが最初につくられてウシとかウマとかイヌ、色々な動物でクローン動物がつくられています。
大村正樹
はい。
  ただし、大きな問題があるのです。それはどういうことかと言うと、自分とそっくりの人間をつくったとしても、色々なところに病気が出てきたり、欠陥があったりすることが非常に多いといわれています。
富士山
ヒツジ
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大村正樹
クローンは、全く同じ人間のコピーになるわけではないのですか?
  原理的に言うと、遺伝子が全く同じなので、全く同じ人間です。
大村正樹
でも、欠陥がでるということは?
  今つくっているクローン動物でも色々な事例が発見されていますが、例えば体に色々な病気が出てきたりなど、欠陥は随分あります。自分と同じ分身をつくろうとしても、100パーセントちゃんとした健康な人間が生まれてくる保証は全くないのです。
大村正樹
そうなんですか。
  ですから今、クローン人間をつくろうということは、基本的には非常に危ないし、誰もやろうとしていないと思いますね。
大村正樹
できる技術はあるのですか?
  それは動物で成功しているわけですから、原理的にはあります。
大村正樹
でもつくらないのは、いわゆる倫理観というものですね。
  難しい言葉で言うと社会倫理というものがあって、基本的に今、人間のクローンをつくるという研究は多くの国で禁止されています。
大村正樹
なるほどね。クローンって研究が進んでいると思ったけど、やっぱりやっちゃいけないジャンルもあるし、哺乳類のクローンは意外に難しいということですね。
そうですね。今の時代で言うと、この番組でも以前にお話に挙がったかも知れませんが、自分の体の中でちょっと壊れた部分の細胞を自分の細胞で治そうという万能細胞や再生医療の技術がどんどん進んでいます。ですから、あまりクローン人間をつくるという必然性がないのです。
大村正樹
そうか。万能細胞でね、なるほど。
あっ、もうこんな時間だ。寺門さん、もっと質問があったんですけど時間になっちゃったので、来週もまたキッズたちの質問に答えていただいてよろしいですか?
はい、分かりました。
大村正樹
すみません、よろしくお願いします。今週のサイコーは、科学ジャーナリストの寺門和夫さんでした。ありがとうございました。
大村正樹
浅間山の噴火によって、火山のことを不安がっている子たちが多いみたいです。何年か前から、やっぱり家の子どもたちもそういうふうに話していたし、僕も子どもの頃、科学雑誌を見ながら「いつか火山が爆発して…」とか、「そうなると東京がこうなる」とかシミュレートがあって不安になっていました。でも、その時に比べると、はるかに予知技術が発達しているから安心してくださいね。
 
 
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