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「クモの秘密」(1)
コーチャー/梅林力(元教員・日本クモ学会会員)
大村正樹&梅林力
大村正樹
キッズのみんな、こんにちは。先週は5連休だったけど、ゴールデンウィークはいい思い出ができたかな? 今日はある生き物を取り上げます。それはクモ、スパイダー。みんな、好き? あんまり好きじゃないでしょ。僕もあんまり好きじゃないのよ。だけど、「何でお尻からあんなにたくさん糸が出るの?」とか不思議に思わない? ということで、クモにとても詳しいサイコーを紹介します。
大村正樹
今週のサイコーは、この番組のタイトルコールで「日立ハイテクプレゼンツ」と言っていますけど、その日立ハイテクの電子顕微鏡をご自身で持っていらっしゃる梅林力(ツトム)さんです。こんにちは。
こんにちは。
大村正樹
先生は電子顕微鏡を使ってらっしゃる?
  はい。
大村正樹
自前でですか?
  そうです。
大村正樹
お宅にあるんですか?
  はい。
大村正樹
すご〜い! それで、元小学校の先生。杉並区で、先生でいらしたんですよね。
  38年間、学級担任をしてました。
大村正樹
それプラス、日本クモ学会の会員?
  はい。
大村正樹
会員ということは、もっと偉い会長さんとかいらっしゃるんですか?
  もちろん、そうですね。
大村正樹
じゃあ、たくさんいるクモ学会の会員のお一人。
  はい、ヒラです(笑)。
大村正樹
平会員?
  そうです
大村正樹
会員は何人ぐらいいるんですか?
  300人近くですかねぇ。私はクモのことを話せれば、こんなに幸せなことはないです
大村正樹
たぶんラジオを聴いているキッズや僕の世代も含めて、これまでに一番殺生してきたのはクモじゃないかなと思うんです。だって、クモの巣があったら、必ずはらってたでしょ(笑)。
ハハハハ。
大村正樹
別に邪魔じゃないけど、ちょっかいを出して巣をはらっちゃったりとか。そんなことは先生はしない?
  そうですね。私の家内は、それまでは網をはらっていたらしいんですが、私と結婚してから、一切しなくなりました。私自身も網をこわしたのは、セミを捕るのに使ったぐらいですねぇ。
大村正樹
セミを捕るときに、クモの巣を輪っかにくっつけてセミ捕りのトリモチにするっていう。
  そうです。
大村正樹
たぶん今の子どもたちは知らないと思いますよ。
  やらないでしょうねぇ。
大村正樹
へぇ〜。
  ですから、余り心配をする必要はないと思います。今、そういった前兆現象が観測されているわけではないですからね。
大村正樹
やらないですよねぇ。先生、クモの巣のことを“巣”っておっしゃらないで“網”というんですか?
  そうですね。巣は自分の住んでいるところで、網はエサを捕るための道具ですから。あれはあくまでも網で、巣ではないですね。
大村正樹
アミーゴ! 本当ですか!?
  そうです。
大村正樹
えっ! クモの巣って、クモはあそこに住んでないんですか?
  住んでませんね。あくまでもエサ捕りの道具です。
大村正樹
アミーゴ、そうなんですかぁ。
  はい(笑)。
大村正樹
知らなかったぁ。クモはどこで寝るのですか?
  網の端のほうから糸を引いて隠れ家を作って、そこで寝ているクモもいます。もちろん1日中網にいるクモは、網が巣ということも言えますけどね。でも、網にいる時間も夜は出てきて昼間はいないとか、そういうクモもいますから。
大村正樹
じゃあ、クモの巣を見つけてクモがいなかったら、今は寝ているんだと思えばいいんですか?
  まぁ大体そうですね。
大村正樹
知らなかったぁ。クモの巣って不思議ですけど、あっ! 巣って言っちゃいけないんだ。クモの網って不思議なんですけど、先生は電子顕微鏡でクモも見るでしょうし、当然クモの糸を拡大とかしますよね? そういう写真とかありますか、今日
はい。今日は持ってきていますよ、糸の写真。
大村正樹
おっ、これがクモの糸? ちょっと待ってください。今、僕の手元に、顕微鏡で拡大した髪の毛の写真があるんですけど、これは、太さは5ユーエムの10分の1ぐらい。5ユーエムはどれぐらいの単位ですか?
5ミクロン、つまり1000分の5ミリということですね。
巣
電子顕微鏡で見たクモの横糸
電子顕微鏡で見たクモの横糸
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大村正樹
1ミリを1000で割ったうちの5。1ミリの200分の1ということですか?
  そうですね。
大村正樹
1ミリの200分の1が5ミクロンで、クモの糸はそれよりもはるかに細いじゃないですか。何ミクロンですか、これ?
  0.2ぐらいしかないと思うんですけど。
大村正樹
0.2ミクロン。
  はい。
大村正樹
じゃあ、1万分の2ということですか?
  細いものだとそういう糸になりますねぇ。
大村正樹
これは家庭や理科室の顕微鏡では、絶対見えない世界ですか?
  まず無理じゃないですかねぇ。
大村正樹
やっぱり電子顕微鏡だから見えるということですか?
  ええ。
大村正樹
クモの糸、今、僕の目の前にあるんです。イメージしてもらうと、たぶん艶やかな髪の毛みたいな感じで、だけど、なぜかこれは2本分なんですね。2本?
はい。
大村正樹
クモの糸は2本重なっているということですか?
  そうですね。普通に1本引いてあるクモの糸は、必ず2本で出来ています。
大村正樹
クモの糸1本は、実は2本ということですか?
  そうですね。クモの体は、必ず左右対称に色々な道具ができています。人間の場合も、手でも耳でもみんな左右対称にあります。
大村正樹
ええ。
  糸を出すところの管も左右対称にあるので、その管から糸を出すと左右1本ずつの糸で合計2本が対になって出てくるわけです。
大村正樹
じゃあイメージからすると、口から糸を出しているんじゃなくて、鼻の穴から糸を出しているようなものですか?
  そういうことですかねぇ(笑)。
大村正樹
2本を同時にピューッと出して、それをくっつき合わせたのが1本のクモの糸ですか?
  そうです。
大村正樹
へぇ〜。基本的に全部のクモが2本の糸を出しているんですか?
  はい。
大村正樹
イメージできました。それで、このクモの糸は体内のどこに溜められているんですか?
  クモの体の中には糸を出す腺、――グランドと言うんですが、糸を出す袋があるんですよね。
大村正樹
人間で言うと胃みたいなものですか?
  そうですね。お腹の中にある袋に糸のもとになる液体が入っていて、その袋から細い管がのびて、管から押し出されると糸になるという原理になっています。
大村正樹
マジシャンの口からペロペロペロペロ旗が出るようなものじゃなくて、元々は液体が入ってるけど、押し出す時に、瞬間的に固まって糸になるということですか?
はい。糸を出す時に、液体の状態から固体の糸に変わっていく。お腹の中では糸ではなく、粘液というドロドロの液体です。
大村正樹
外に出たら糸になるということですか?
  はい。
大村正樹
みんな、クモの糸の作り方、イメージできる? ちなみに、先生はお宅でクモを飼ってらっしゃるんですか?
  現在は飼っていませんけれど、長生きしたクモは16年飼いました。
クモ
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大村正樹
じゃあ、朝起きて「そろそろ○○クモが網を張る時間だ」と観察して、昼になったら「そろそろこっちの何とかグモが張る瞬間だ」と見に行って、“24時間クモタイムテーブル”みたいなものがあったんですか?
(笑)ただねぇ、家で網を張るクモって飼いにくいんですよ。部屋の中で飼うのはねぇ。
大村正樹
網を張らないクモもいるのですか?
  半分近くのクモは網を張りません。
大村正樹
知らなかった、そうなんですか。どうしてですか?
  網を張らないクモは歩き回ってエサを捕りますから、網を張る必要がないわけです。
大村正樹
網を張らないクモは、クモって呼べるんですか?
  もちろんです(笑)。
大村正樹
ウソっ! 何で? クモは網とセットでクモでしょ!
  ハハハハ。普通に目にするのはそうですが、色々と調べるとクモの中には不思議な種類が…。
大村正樹
ちょっと認識がくつがえされました。網を張らないクモもいるということですか。先生、あっという間に時間になっちゃいました。来週もまたラボにお越しいただいて、より詳しい話を伺ってよろしいですか?
はい、わかりました。
大村正樹
今週のサイコーは、ご自宅で電子顕微鏡を使って蜘蛛の研究をされている梅林力さんでした。ありがとうございました。
  はい、失礼します。
大村正樹
あっという間に終わっちゃったから大事なことを聞き忘れたんだけど、クモの糸の強さに興味があるんだ。芥川龍之介の『蜘蛛の糸』という小説があって、地獄から上がってくる人の話だけど、後ろからどんどん人が付いてきて最後にちょっとオチがある話で、どれぐらいの強さがあるのかなぁ? 興味があるなぁ。まぁいいや。それじゃあ、来週夕方5時半に会いましょう。バイバ〜イ!
 
 
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