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「エキゾチック・アニマルの病気」(1)
コーチャー/宇根有美さん(獣医病理学者)
大村正樹&宇根有美
大村正樹
キッズのみんな、こんにちは。サイエンステラーの大村正樹です。今週も東京浜松町にある秘密の科学研究所シークレットラボからお送りします「大村正樹のサイエンスキッズ」。
キッズの中には動物を飼っている人も多いと思うけれど、今日のサイコーは動物の病気の病原体を研究されている方です。専門は、「エキゾチック・アニマル」だって。それって何だろう? お知らせの後、サイコーの登場で〜す。
大村正樹
今週のサイコーは、女性です。麻布大学准教授の宇根有美さんです。こんにちは。
  こんにちは。
大村正樹
先生のご専門は、「獣医病理学」。
  はい。
大村正樹
「獣」に、医者の「医」に、病気の「病」に、理科の「理」に「学」。「獣医病理学」って何ですか?
  「獣医病理学」というのは動物が病気になったり、不幸にして死んでしまったりした際に、その原因を探る学問です。
大村正樹
いわゆる獣医さんの基礎となるようなことを研究されている学問ですね?
  はい。
大村正樹
特に「エキゾチック・アニマル」を専門に研究されているそうですね。「エキゾチック・アニマル」という言葉は初めて聞きました。
  エキゾチックを英語でそのまま訳せば、外国から来たものとか物珍しいという意味です。
大村正樹
へぇ〜。
  だから簡単に言うと、外国から来た物珍しいペットと言えるかも知れません。例えばハムスターとか。
大村正樹
えっ! ハムスターって「エキゾチック・アニマル」なんですか?
  はい、そうです。
ハムスター
 
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大村正樹
どうして? 子どもたちがいっぱい飼ってるじゃないですか。
  イヌとかネコ、それからウシとかブタから比べれば、つい最近、人間の近くにペットとして現れた動物ですから。
大村正樹
歴史が浅い動物たちも「エキゾチック・アニマル」?
  そうですね。
大村正樹
他には?
  カメやカエル、最近ではクモなんかもペットとして飼ってる方がいらっしゃいます。
大村正樹
クモも「エキゾチック・アニマル」なんですか? 虫じゃなくて、動物ですか?
  クモは動物です。
大村正樹
じゃあ、ヘビも?
  はい。
大村正樹
ひゃあ、最悪〜! 全然ダメ〜。そんなの、よくないよ。あんなの入れちゃダメよ。あぁ、やだ〜。
  ハハハ。
大村正樹
いわゆる本来、日本の人が飼ってたイヌやネコ、家畜系のブタやウマ、ヒツジ、ウシと違う動物たちを「エキゾチック・アニマル」と言うんですね。その「エキゾチック・アニマル」の病気を研究してらっしゃると。
そうですね。
大村正樹
ああいう動物たちにも病気があるんですか?
  もちろんです。
蛇
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大村正樹
えぇ〜、知らなかった!
  生きているものはいつか必ず死にますよね。老衰以外はさまざまな病気になって死んでいくわけです。ですから、人間とほぼ同じように病気を持っています。
大村正樹
飼い主の方が「ヘビの体調が悪いんです」なんて言って、獣医さんに診察してもらいに来るんですか?
  来ますね。
大村正樹
うわぁ、いやだな〜!
  ハハ。
大村正樹
イヌを飼っている人は、ヘビを持ってる人が来たら嫌じゃないですか?
  はい。
大村正樹
でも、それは獣医さんが受け入れるわけですね?
  そうですね。でも、獣医さんの中でも「私はヘビをちゃんと診ますよ」「うちはイヌ、ネコしか診察しませんよ」と分けている人もいます。
大村正樹
では、獣医さんの中にはクモまで診てくれる先生もいるということですか?
  それはちょっとわかりませんが……。
大村正樹
は虫類系を専門に診て治す先生もいて、その先生の研究のもとになっているのが宇根先生の学問なんですね。
  もとになるというほどでもないですが、研究をして成果を彼らに戻し、一緒に動物の病気を治そうとしています。
大村正樹
へぇ〜。ヘビはどんな病気にかかるんですか?
  私の専門は感染症なんですが、ウイルスが感染して神経症状で頭を振ったり。
大村正樹
ヘビが?
  はい。それからトグロを巻けなくなったりとか、食べたものをうまく消化できなくなったり、色々ですね。
大村正樹
よくヘビの博物館に行くと、ウサギを丸飲みしたヘビのレントゲンがありますよね。丸飲みした後でなかなかヘビの胴体が細くならなかったら、先生の場合は「気持ち悪い!」じゃなくて「病気かしら?」って思うわけですね?
そうです。
大村正樹
嫌だよ〜。そんな学問嫌だ(笑)。それは人の役に立つ学問ですか?
  人だけでなく、動物すべてに役立つと思います。色々な動物に色々な病気があり、その病気を一つずつ解明していことはすべての生き物にとって意味のあることです。人間の病気を治すことや家畜の病気を治すこと、また治すだけでなく防ぐことによって、私たちの周りにいるたくさんの自然界の動物を守りたいというのが研究の目的です。
大村正樹
結構壮大なお話なんですね。
  そうですね。ヘビの病気を治すことによってわかったことを、ほかのヘビやほかの動物に応用していく。そういうふうにしていきたいと思っています。
大村正樹
例えば先生の研究の中で、「今でこそすごく有名な病気だけれど、本当はここから始まって、調べてみたらこういうことがわかった」というわかりやすい例はありますか?
私の専門は感染症ですが、皆さんがよくご存じなのはSARS(サーズ)ですね。
大村正樹
ああ、SARS。中国でも流行った。
  世界中で流行して大変なことになりましたね。最初にSARSというウイルスを持っていた動物はアライグマやハクビシンなどの哺乳類だと思っていたんですが、研究が進み、どうもSARSのウイルスを持っていたのはコウモリだろうと大体わかってきています。
大村正樹
へぇ〜。どういう過程でコウモリに行き着いたんですか?
  コウモリをつかまえてきて、コウモリの血液の中にSARSのウイルスに対する反応があるかないか、組織の中にウイルスの実態があるかないかなどを調べました。保菌動物とか自然宿主などと呼ばれる、ウイルスをずっと持っている動物を世界中の研究者が探して、コウモリだということがわかったんです。
大村正樹
では、今すごく有名になっているSARSをもたらしたのは元々コウモリだってことが、明らかになったということですか?
  はい。
大村正樹
鳥インフルエンザとか、この間も豚インフルエンザがすごい問題になりましたね。ああいう病気も研究の対象になるんですか?
  そうですね。
大村正樹
鳥インフルエンザなどはある程度解明が進んでいると思うんですが、鳥インフルエンザをもたらしたのは何ですか?
  インフルエンザにも色々な種類がありますが、鳥と鳥インフルエンザというウイルスは、ずっと一緒に進化をしてきています。動物の中で増殖するうちに、ウイルスはどんどん変わっていきます。変異と言いますが、鳥に対して害なく変異する場合と、他の動物にとって有害なウイルスに変異する場合があるんです。
大村正樹
鳥インフルエンザは、元は鳥だった?
  はい。
大村正樹
鳥インフルエンザは人に感染しないと言われていたじゃないですか?
  そうです。
大村正樹
豚インフルエンザは人に感染するから「恐い、恐い」と言われていますよね。SARSの場合も人に感染したから、当時すごく恐れられたわけですね。
そうです。
大村正樹
で、SARSの元はコウモリだったわけですね。
  だから、SARSのウイルスとコウモリとは、自然界で絶えず進化をしてきました。それが何かの拍子に、人間やハクビシンなど違う動物に移るようになってしまったんです。
大村正樹
なるほど。だから、新しい病気が次々に出てくるんですね。
  はい。
大村正樹
未知の病原体もあるわけですよね。
  そうですね。
大村正樹
それをうっかり吸い込んだりして感染する恐怖とか、突然体調が悪くなって普通の人だったら「風邪かな?」と思うところを、先生だったら「あのヘビから移ったのかしら?」と思うとか、そんな恐怖はありませんか?
いや〜、ないですよ(笑)。でも一度、噂が回ったことがありました。
大村正樹
へぇ〜。
  シマウマを解剖した後、元々扁桃腺が弱いので数日後に高熱が出たんですよ。そしたら大学中に「先生はシマウマを解剖して病気になった」って噂が流れましてねぇ(笑)。
大村正樹
この研究をやっていたら、そういう風評はつき物として覚悟しなくちゃいけない?
  私みたいな研究者にとって、それはとても恥ずかしいこと。自分が感染してしまうのは、プロとして恥ずかしいことなんです。
大村正樹
僕らしゃべり手も、のどを悪くしてマイクの前に立てなくなったりしちゃいけませんからね。お互いプロとして頑張っていきましょうね。
  そうですね(笑)。
大村正樹
あっという間に時間がきてしまいました。来週も先生の研究の細部に迫ってよろしいですか?
  はい。ぜひぜひ!。
大村正樹
来週また来てくださいね。今週のサイコーは、動物の感染症などを研究されている麻布大学准教授の宇根有美先生でした。ありがとうございました。
どうもありがとうございました。
大村正樹
こういう研究をしていると、自分に思わぬ病気がふりかかる可能性もあるわけです。でも研究者がいるから病原体がわかって、また次につながっていく。色々なお仕事があるんですねぇ。
コウモリ
 
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