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「エキゾチック・アニマルの病気」(2)
コーチャー/宇根有美さん(獣医病理学者)
大村正樹&宇根有美
大村正樹
キッズのみんな、こんにちは。サイエンステラーの大村正樹です。今週も東京浜松町にある秘密の科学研究所シークレットラボからお送りします「大村正樹のサイエンスキッズ」。
今週も、動物の病気に詳しいサイコーの方が来てくれています。「かえるのうたが…♪」という輪唱、みんな知ってるでしょう? もしかしたらこの歌、今日のサイコーがいなかったら10年後には歌えなくなっていたかもしれない。そんなお話です。
大村正樹
今週のサイコーは、前回に続きまして麻布大学准教授の宇根有美先生です。こんにちは。
  こんにちは。
大村正樹
先生、先週は面白かったですね! こんな女の人がヘビなどのは虫類やシマウマを解剖しているわけですよねぇ。恐ろしいです(笑)。
  ハハハ。
大村正樹
先生が携わった感染症分野の研究の中で、もっとも大きな発見があったら教えてくれますか?
  そうですね。2006年の12月のことです。
大村正樹
最近じゃないですか!
  すごい最近です。今、カエルが世界中で死んでいるんですけれど、ご存知ですか。
カエル
 
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大村正樹
知らない。
  世界中でカエルの4分の3ぐらいが絶滅、ないしは数が減っちゃって危機的な状態なんです。
大村正樹
えぇ〜!? だって、これからカエルのシーズンですよ、田んぼでは。
  でも、世界全体では数がどんどん減ってます。
大村正樹
4分の3も死んじゃてるの、カエルが? 何でですか?
  色々な原因があるんですが、ひとつは感染症です。
大村正樹
まさに先生のジャンルで。
  はい。カエルツボカビという感染症です。面白い名前でしょ?
大村正樹
いえ、全然面白くない。
  えっ〜(笑)。
大村正樹
カエルのツボのカビ? どんなものですか?
  カエルに感染するつぼ状のカビですね。
大村正樹
あっ、写真が出てきました。これは海の岩にいるフジツボみたいなイメージ?
  そうですねぇ。そう見えるかも知れませんね。
大村正樹
フジツボで足を切ったことがあります(笑)。みんな、フジツボを最近見たことがあるかなぁ? ちょっと小っちゃい口を開けてて、ベタッと張りついて火山の噴火口みたいになってるイメージ。
そうですね。
大村正樹
これがカエルツボカビで、世界中のカエルたちに蔓延している病気ですか?
  はい。
大村正樹
このカエルツボカビは、2006年に見つけたばっかり?
  そうですね。2006年に発見したことはアジアで初めてです。
大村正樹
へぇ〜。じゃあ、日本のカエルがカエルツボカビの原点と言ってもおかしくないんですか?
  いえ、世界中に流行していて、アジアでは見つかっていなかったのが見つかったということです。
大村正樹
なるほど。どこのカエルから見つかったんですか?
  「エキゾチック・アニマル」好き、特にカエルの好きなある飼い主さんが、たくさんカエルを飼育していたんです。ところが、2ヶ月ぐらい経った頃に、すごい勢いで死んでしまって。ポツリ、ポツリ、ポツリと、大体1週間に1〜2匹の割合で16匹ぐらい死んじゃった。飼い主さんはびっくりして、死因を調べようと考え、回りまわって私のところへ来て検査してみたんです。
大村正樹
どうやって検査するんですか?
  カエルツボカビはカエルの皮膚に感染するので、皮膚を切って顕微鏡で観察する標本を作って、見るんです。
大村正樹
じゃあ、フジツボみたいな部分は、カエルの皮膚の表面についているんですか?
  そうです。
大村正樹
肉眼では見えないんですか?
  見えない。すごく小っちゃいんです。
大村正樹
それで、アジアで初めて発見したと。
  そうです。
大村正樹
最初に見つけた時は、どう思いました?
  いや、びっくりしましたよ。世界中では「もう国家プロジェクトとしてカエルツボカビの対策を取らなくてはいけない」と色々な研究者が言っている病気が、顕微鏡を眺めたら目の前にちゃんと見えるんです。
大村正樹
はぁ。
  びっくりしました、本当に!
大村正樹
この病気はカエルたちにどんな害をもたらすんですか?
  カエルの皮膚に感染して、皮膚の持つ色々な機能を全部壊してしまうんです。酸素を取り入れる皮膚呼吸や体温の調整、細菌やカビを排除する外界との障壁となる機能などです。
大村正樹
ふ〜ん。
  だから、呼吸困難のように、すごい苦しそうな格好もしますよ。
大村正樹
それを2006年12月に先生が発見して、その後、いわゆる水際で止めるための策は取ったわけですね?
  たくさん取りましたね。
大村正樹
じゃあ、先生の研究によって日本のカエルは救われたということですか?
  まぁそんな力はないんですが、皆さんがよく協力してくださって、色々なレベルで対策を取ってくれていますね。まず、飼ってるペットから野生のカエルにカエルツボカビが拡散していかないように、色々なところで注意をしています。
大村正樹
野生のカエルからは見つかっていないんですか?
  少しだけ見つかりましたが、広がる素振りはないですね。外国とはずい分違います。
大村正樹
このカエルツボカビが日本にやって来たのは、何が原因だったんですか?
  今回私が見つけたものは、外国から輸入したペット用のカエルの中で次々に広がっていってますね。
大村正樹
まさに先週お話していただいた「エキゾチック・アニマル」、異国の動物がもたらした病気ということですね。
  そうです。
大村正樹
じゃあ、2006年の12月に先生の研究室で発見してなかったら、もしかしたら日本のカエルの4分の3はいなくなっていた可能性もあったわけですね。
最初は本当にそう思いました。というのは、パナマではカエルツボカビが入って2ヶ月で、その水域に生息していたある種のカエルがいなくなっちゃいました。たった2ヶ月で。
大村正樹
へぇ〜。すごい感染力なんだ。
  すごく恐いんです。特に水の中に胞子がまぎれて、水がカエルの皮膚に付いただけで皮膚にもぐって増殖していくので恐いんですよ。
大村正樹
そういうことか。あ〜嫌だ嫌だ。一緒にお風呂に入ったら感染するのと同じですね。
  そうです。
大村正樹
すごいなぁ、そりゃ。カエルは水の中にいますからね。
  水がないと生きていけないんですが、水にチャポンと入ると感染しちゃう。
大村正樹
ミカン箱のミカンが腐るのとは、ちょっと訳が違いますね。水から感染となると、無限大に広がりそうですものねぇ。
  はい。
大村正樹
このツボカビは、人への感染はないんですか?
  全然ないんです。
大村正樹
両生類だけで留まっているわけですね。
  はい、そうです。
大村正樹
だけど、動物発で人に感染する病原体もあるわけですよね?
  はい。
大村正樹
そうなると僕らにはどうしたらいいかわかりませんから、やっぱり先生の研究が必要ですね。SARSじゃないけれど、可能性としてはまだまだ恐ろしい病気が蔓延することもあるわけですよね? 例えば誰かがアフリカから趣味で持ってきたムシが、とんでもない病気になって日本に蔓延するとか。
そうですね。おそらく病原体は、自然界でそれぞれ進化してきていると思います。しかし突然、全然違うところから動物ごと運んで来てしまうと、今まで生活してるところにはたくさんの敵がいたけど、新しい土地に来ると全く敵がいなくて、一気に病原体が増えることがあるんですよね。例えばアライグマがそうです。
大村正樹
へぇ〜。
  北米にいたアライグマを日本に持ってきて野に放してしまうと、アライグマはすごく強いので他の動物をやっつけていっちゃう。それは、目に見えるアライグマという動物ですが、病原体でも同じなんですね。
大村正樹
人間の死因の3分の1はガンと言われる時代、動物もガンになったりするんですか?
  たくさんあります。
大村正樹
えぇ〜!! 本当ですか。知らなかったぁ。
  イヌやネコは、昔は寄生虫やウイルスなどの感染症で死ぬことが多かったんです。有名な犬フィラリア症という寄生虫がいるんですが、それは駆虫薬を飲ませて駆除します。ウイルスもすごく恐い病気があったんですけど、ワクチンを打つことで対策できるようになりました。こうしてどんどんイヌやネコの飼い方が上手になって、長寿になってきたんです。長寿になると腫瘍がすごく多い。
アライグマ
ネコ
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大村正樹
そうか、そういうことか。長生きすると人間と同じような体内の腫瘍、ガンみたいなものができてくる。
  そうですね。
大村正樹
ワンちゃんを飼っているご家庭では「そんなの知ってるよ」と言われそうだけど、僕はワンちゃんも飼ってないし、あまり知識がなかったので動物がガンになるのは非常に驚きでした。あっという間でしたが、今日のサイコーは、麻布大学准教授の宇根有美先生でした。ありがとうございました。
どうもありがとうございました。
大村正樹
カエルツボカビってラボの研究員は結構知っているけど、僕だけ知らなくて恥ずかしい思いをしちゃった。このツボカビの発見が遅かったら、ほんとに日本の田んぼからカエルが消えていたかも知れないよ。水際で食い止めるのは大事なんだなと、よく分かりました。みんなはどうだったかな?
 
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