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「味覚の話」(1)
コーチャー/貞光千春さん(日本科学未来館)
大村正樹&貞光千春
大村正樹

キッズのみんな、こんばんは。もうすぐ楽しいクリスマスがやってきますねぇ。街はイルミネーションがとてもきれいです。世の中「不景気、不景気」といわれてますけれど、この時季のこの時間の街はとてもきれいですね。今週も東京浜松町にある秘密の科学研究所シークレットラボからお送りします「大村正樹のサイエンスキッズ」。1年を通して、これからの2週間ぐらいが、もっともキッズたちにとって楽しい時じゃないかなと思いますが、おいしいものをいっぱい食べる時季でもありますね。今日は“食べる”をまた先週に続いて科学したいと思います。今回のテーマは、ずばり「味覚」です。お知らせの後、サイコーの登場で〜す。


大村正樹

今週のサイコーは、またまた日本科学未来館からのサイコーです。貞光千春さん、こんばんは。

こんばんは。

大村正樹

貞光さんは何の専門家ですか?

私は生物ですね。いろいろな生物学をやっているんですが。

大村正樹

ですよね。

今回は“食について”ということで。

大村正樹

去年お見えいただいた時は、遺伝子のゲノムの難しい話をされたけど、今回は食に関して。

そうです。

大村正樹

貞光さん、何の味覚が一番好きですか?

何の味覚? 難しい質問ですね。味にはいろいろな味がありますよね。感じる味、甘いとか酸っぱいとか…。何が好きですか?

大村正樹

僕はフォアグラ。

フォアグラ!

大村正樹

ハハハハハ。

そうきましたか(笑)。

大村正樹

あのね、フォアグラは味もいいし、外側をカリッとオリーブオイルで焼いて、中がトロッとしてる。あの食感が、僕の中では究極の…。

そして、脂のおいしい味ですよね。あのおいしさの秘密も、実は『‘おいしく、食べる’の科学展』でいろいろな目で分解してます。

大村正樹

そうなんですか。僕、3回行ってるけど、そこまで気づいてなかった。とにかく味覚に関して、人間の味覚というのは、何個あるんでしたっけ?

感じる味というのが5つあります。

大村正樹

5つ。甘い、しょっぱい、酸っぱい、苦い、辛い。

ほかにありますか?

大村正樹

あと、ほろ苦い。えーと、甘酸っぱい。

いろいろ出てきますが、実は何で「ほかにありますか?」と聞いたかというと、まだ出ていない味がもう1つあります。

大村正樹

何? 何ですか?

うま味という。

大村正樹

うまい。「うまい」って感想じゃないですか。

「おいしい」とか「うまい」は個人的な感想としてありますが、そうではなくて、実は甘い、苦い、しょっぱい、酸っぱいに表せない味として、もう1つうまい、という味が。

大村正樹

それが5つの味の感覚。

はい、そうです。

大村正樹

じゃあ、辛いは入ってないんですか?

辛いは入ってないです。

大村正樹

辛いは、どこの範ちゅうに入れればいいんですか?

辛いは、実は熱いとか痛いとかと同じような感覚です。

大村正樹

何でですか。辛い、かわいそう。

辛いは痛くないですか、ヒリヒリヒリヒリしたり。

大村正樹

カラシはどうだろう?

カラシになると辛いと思うけど、そんなに熱くないですよね。トウガラシはどうでしょうねぇ。トウガラシはヒリヒリ辛かったり。

大村正樹

痛いってこと?

実は、感じる後の感覚が味を感じる神経ではなくて、痛みなどを感じる神経で伝わって脳に到達する。

大村正樹

では、辛いっていうのは味覚の5つに入ってないんですか?
じゃあ、痛いとかの範ちゅうに入るってこと?

フフフフ。

大村正樹

へぇ〜。で、ベロの部位で感じる場所が違うじゃないですか。

それが、実は現代の科学では誤りなんです。

大村正樹

違うんですか! だって、甘いのは先っぽで感じて、苦いのはベロの奥のほうで感じて、酸っぱいのはベロの両脇で感じると言うでしょう?

今のところの科学では、正しくないということで。

大村正樹

そうなんですか。

はい。味を感じるのは、味蕾(ミライ)という味を感じる細胞がいっぱい集まってできていて、その中の1つの味蕾に、すでに甘いのを感じたり、酸っぱいのを感じたりするのが混じっている。

大村正樹

味蕾ってどこにあるんですか?

鏡で舌を見たことがありますか?

大村正樹

舌って言うのね。ベロって言っちゃった。下品な言い方しちゃいけないな。鏡で舌を見たことはありますよ。

ブツブツしてますよね。あれを乳頭と言うんですが、その中にもありますし、それ以外にも奥のほうにもたくさんあります。

大村正樹

舌の周辺には味蕾、味を感知する器官がたくさんあるということですか?

そうですね、5000個以上。

大村正樹

えぇ〜!

個人差もありますけれど、5000〜1万個ぐらいはあります。

大村正樹

じゃあ、味蕾で5つの感覚を感じてるわけですか?

そうですね。5つの味を感じてます。

大村正樹

知らなかったぁ。でも、苦いのが舌の奥で残るのは何でですか?

あれはもうひとつ、味自体の性質があるんです。例えば苦い、って後に残りますよね。

大村正樹

残る。

酸っぱいのは、「あぁ酸っぱい」と思ったらけっこうすぐなくなりますね。それは、味の性質で舌の上に残りやすいので、奥でも感じられるんじゃないかという説があります。


大村正樹

なるほど。じゃあ、甘いのを先っぽで感じるのは何でですか?

甘いのも、どうでしょうねぇ…。実際に、舌の奥のほうまで甘い液と苦い液をつけた紙を載せてあげると、変わらないように感じるという実験があるので…。

大村正樹

へぇ〜。僕が子どもの頃に人体の図鑑で舌の仕組みを見ると、甘いとかしょっぱいは先っぽで感じるし、苦いのは…。

地図みたいのが出てましたよね。

大村正樹

そう、地図みたいなのが。

今でもそういう本はあるんですが、味覚の先端の研究では、そういうことはないと。

大村正樹

常識をくつがえされた今日でした(笑)。クリスマス直前に常識をくつがえされて、どうしようかなという感じですけれど。

はい(笑)。

大村正樹

じゃあ、それぞれ感覚の役割があるんですか?

そうですね。例えば、疲れた時に甘いものを食べるとちょっとホッとしますよね。

大村正樹

はい。特に女の人のほうがホッとしますよね。

ええ、大好きですね。甘いものって何かというと、糖分は、実はエネルギーになるんですね。体の中でエネルギーになるから、エネルギーを見分けることができる味。

大村正樹

えっ、甘い感覚はエネルギーを見分けるってこと?

そういうことができる。

大村正樹

甘いものを摂取するということは、「おぉ〜、エネルギー摂ってるな」という。

ちょっと体も幸せな感じになりますし。

大村正樹

甘みがない時は、高カロリーのものを食べても感覚的にはエネルギー感がないんですか?

高カロリーのものは甘みだけじゃなくて、たん白質などもありますので、甘み以外の味でも…。例えば、うま味がたん白質の味なので、うま味を摂ると「あっ、栄養たっぷりだな」と思ったり。

大村正樹

うまいものね。おいしいものをいっぱい食べたら、満たされた感じになりますものね。

特にうま味というのは、昆布のだしの味とか、そういうようなものなんです。あれは「たん白質があるよ」ということを教えてくれる味。

大村正樹

そう、未来館でうま味といったら、昆布とかつお節とシイタケがぶら下がっているわけですよ。その3つは、昔からある日本のだしの素みたいなものでしょ。

そうですね。

大村正樹

それがうま味の成分ということですか?

もともと、うま味は日本で発見されて。

大村正樹

そうなんですか!

そうなんですね。1908年に池田菊苗(キクナエ)という人が、昆布のだし汁の味が甘くもないし苦くもない、しょっぱくも酸っぱくもないけれど何か味がある。「これは何だろう?」と思って、それで発見したのがうま味の最初です。

大村正樹

101年前に!

101年前に。

大村正樹

へぇ〜。それから、うま味って言われてるんですか?

はい。

大村正樹

この池田さんという人は偉いんですか?

うま味の発見者ということです。


大村正樹

その方は、未来館で?

はい。

大村正樹

上映会は?

7階のほうでおこないます。

大村正樹

分かりました。舌が感じる部位で、甘みは舌の先っぽということを、僕は30年以上ずっと思って生きてきたので、今日ちょっとくつがえされました。また新しい自分で今年のクリスマスを迎えたいと思います。

ええ、ぜひ!(笑)

大村正樹

ありがとうございました。今週のサイコーは、日本科学未来館の貞光千春さんでした。

ありがとうございました。

大村正樹

さっき話のあった池田菊苗さんの姿を描いた作品『AMBITION(志)』という映像は、未来館の7階で来週の土曜日と日曜日、午前11時それから午後1時と3時の1日3回ずつ合計6回上映があるそうです。未来館のウェブサイトから事前の申し込みができます。今日は未来館にちなんで、舌の中にある味蕾という器官、これが味を分ける、味覚を分ける器官であることが分かりました。味蕾、おぼえてください。来週もまた夕方5時半に会いましょうね。みんなもハッピークリスマスを過ごしてね。バイバ〜イ!