キッズのみんな、こんばんは。もうすぐ楽しいクリスマスがやってきますねぇ。街はイルミネーションがとてもきれいです。世の中「不景気、不景気」といわれてますけれど、この時季のこの時間の街はとてもきれいですね。今週も東京浜松町にある秘密の科学研究所シークレットラボからお送りします「大村正樹のサイエンスキッズ」。1年を通して、これからの2週間ぐらいが、もっともキッズたちにとって楽しい時じゃないかなと思いますが、おいしいものをいっぱい食べる時季でもありますね。今日は“食べる”をまた先週に続いて科学したいと思います。今回のテーマは、ずばり「味覚」です。お知らせの後、サイコーの登場で〜す。
今週のサイコーは、またまた日本科学未来館からのサイコーです。貞光千春さん、こんばんは。

- こんばんは。
貞光さんは何の専門家ですか?

- 私は生物ですね。いろいろな生物学をやっているんですが。
ですよね。

- 今回は“食について”ということで。
去年お見えいただいた時は、遺伝子のゲノムの難しい話をされたけど、今回は食に関して。

- そうです。
貞光さん、何の味覚が一番好きですか?

- 何の味覚? 難しい質問ですね。味にはいろいろな味がありますよね。感じる味、甘いとか酸っぱいとか…。何が好きですか?
僕はフォアグラ。

- フォアグラ!
ハハハハハ。

- そうきましたか(笑)。
あのね、フォアグラは味もいいし、外側をカリッとオリーブオイルで焼いて、中がトロッとしてる。あの食感が、僕の中では究極の…。

- そして、脂のおいしい味ですよね。あのおいしさの秘密も、実は『‘おいしく、食べる’の科学展』でいろいろな目で分解してます。
そうなんですか。僕、3回行ってるけど、そこまで気づいてなかった。とにかく味覚に関して、人間の味覚というのは、何個あるんでしたっけ?

- 感じる味というのが5つあります。
5つ。甘い、しょっぱい、酸っぱい、苦い、辛い。

- ほかにありますか?
あと、ほろ苦い。えーと、甘酸っぱい。

- いろいろ出てきますが、実は何で「ほかにありますか?」と聞いたかというと、まだ出ていない味がもう1つあります。
何? 何ですか?

- うま味という。
うまい。「うまい」って感想じゃないですか。

- 「おいしい」とか「うまい」は個人的な感想としてありますが、そうではなくて、実は甘い、苦い、しょっぱい、酸っぱいに表せない味として、もう1つうまい、という味が。
それが5つの味の感覚。

- はい、そうです。
じゃあ、辛いは入ってないんですか?

- 辛いは入ってないです。
辛いは、どこの範ちゅうに入れればいいんですか?

- 辛いは、実は熱いとか痛いとかと同じような感覚です。
何でですか。辛い、かわいそう。

- 辛いは痛くないですか、ヒリヒリヒリヒリしたり。
カラシはどうだろう?

- カラシになると辛いと思うけど、そんなに熱くないですよね。トウガラシはどうでしょうねぇ。トウガラシはヒリヒリ辛かったり。
痛いってこと?

- 実は、感じる後の感覚が味を感じる神経ではなくて、痛みなどを感じる神経で伝わって脳に到達する。
では、辛いっていうのは味覚の5つに入ってないんですか?
じゃあ、痛いとかの範ちゅうに入るってこと?

- フフフフ。
へぇ〜。で、ベロの部位で感じる場所が違うじゃないですか。

- それが、実は現代の科学では誤りなんです。
違うんですか! だって、甘いのは先っぽで感じて、苦いのはベロの奥のほうで感じて、酸っぱいのはベロの両脇で感じると言うでしょう?

- 今のところの科学では、正しくないということで。
そうなんですか。

- はい。味を感じるのは、味蕾(ミライ)という味を感じる細胞がいっぱい集まってできていて、その中の1つの味蕾に、すでに甘いのを感じたり、酸っぱいのを感じたりするのが混じっている。
味蕾ってどこにあるんですか?

- 鏡で舌を見たことがありますか?
舌って言うのね。ベロって言っちゃった。下品な言い方しちゃいけないな。鏡で舌を見たことはありますよ。

- ブツブツしてますよね。あれを乳頭と言うんですが、その中にもありますし、それ以外にも奥のほうにもたくさんあります。
舌の周辺には味蕾、味を感知する器官がたくさんあるということですか?

- そうですね、5000個以上。
えぇ〜!

- 個人差もありますけれど、5000〜1万個ぐらいはあります。
じゃあ、味蕾で5つの感覚を感じてるわけですか?

- そうですね。5つの味を感じてます。
知らなかったぁ。でも、苦いのが舌の奥で残るのは何でですか?

- あれはもうひとつ、味自体の性質があるんです。例えば苦い、って後に残りますよね。
残る。

-
酸っぱいのは、「あぁ酸っぱい」と思ったらけっこうすぐなくなりますね。それは、味の性質で舌の上に残りやすいので、奥でも感じられるんじゃないかという説があります。
なるほど。じゃあ、甘いのを先っぽで感じるのは何でですか?

- 甘いのも、どうでしょうねぇ…。実際に、舌の奥のほうまで甘い液と苦い液をつけた紙を載せてあげると、変わらないように感じるという実験があるので…。
へぇ〜。僕が子どもの頃に人体の図鑑で舌の仕組みを見ると、甘いとかしょっぱいは先っぽで感じるし、苦いのは…。

- 地図みたいのが出てましたよね。
そう、地図みたいなのが。

- 今でもそういう本はあるんですが、味覚の先端の研究では、そういうことはないと。
常識をくつがえされた今日でした(笑)。クリスマス直前に常識をくつがえされて、どうしようかなという感じですけれど。

- はい(笑)。
じゃあ、それぞれ感覚の役割があるんですか?

- そうですね。例えば、疲れた時に甘いものを食べるとちょっとホッとしますよね。
はい。特に女の人のほうがホッとしますよね。

- ええ、大好きですね。甘いものって何かというと、糖分は、実はエネルギーになるんですね。体の中でエネルギーになるから、エネルギーを見分けることができる味。
えっ、甘い感覚はエネルギーを見分けるってこと?

- そういうことができる。
甘いものを摂取するということは、「おぉ〜、エネルギー摂ってるな」という。

- ちょっと体も幸せな感じになりますし。
甘みがない時は、高カロリーのものを食べても感覚的にはエネルギー感がないんですか?

- 高カロリーのものは甘みだけじゃなくて、たん白質などもありますので、甘み以外の味でも…。例えば、うま味がたん白質の味なので、うま味を摂ると「あっ、栄養たっぷりだな」と思ったり。
うまいものね。おいしいものをいっぱい食べたら、満たされた感じになりますものね。

- 特にうま味というのは、昆布のだしの味とか、そういうようなものなんです。あれは「たん白質があるよ」ということを教えてくれる味。
そう、未来館でうま味といったら、昆布とかつお節とシイタケがぶら下がっているわけですよ。その3つは、昔からある日本のだしの素みたいなものでしょ。

- そうですね。
それがうま味の成分ということですか?

- もともと、うま味は日本で発見されて。
そうなんですか!

- そうなんですね。1908年に池田菊苗(キクナエ)という人が、昆布のだし汁の味が甘くもないし苦くもない、しょっぱくも酸っぱくもないけれど何か味がある。「これは何だろう?」と思って、それで発見したのがうま味の最初です。
101年前に!

- 101年前に。
へぇ〜。それから、うま味って言われてるんですか?

- はい。
この池田さんという人は偉いんですか?

-
うま味の発見者ということです。
その方は、未来館で?

- はい。
上映会は?

- 7階のほうでおこないます。
分かりました。舌が感じる部位で、甘みは舌の先っぽということを、僕は30年以上ずっと思って生きてきたので、今日ちょっとくつがえされました。また新しい自分で今年のクリスマスを迎えたいと思います。

- ええ、ぜひ!(笑)
ありがとうございました。今週のサイコーは、日本科学未来館の貞光千春さんでした。

- ありがとうございました。
さっき話のあった池田菊苗さんの姿を描いた作品『AMBITION(志)』という映像は、未来館の7階で来週の土曜日と日曜日、午前11時それから午後1時と3時の1日3回ずつ合計6回上映があるそうです。未来館のウェブサイトから事前の申し込みができます。今日は未来館にちなんで、舌の中にある味蕾という器官、これが味を分ける、味覚を分ける器官であることが分かりました。味蕾、おぼえてください。来週もまた夕方5時半に会いましょうね。みんなもハッピークリスマスを過ごしてね。バイバ〜イ!



