
キッズのみんな、こんにちは。サイエンステラーの大村正樹です。今週も東京浜松町にある秘密の科学研究所シークレットラボからお送りします「大村正樹のサイエンスキッズ」。 今日のサイコーは、ある動物の博士です。その動物の研究で博士号を取ったという方ですが、その動物を知ってるようでよく分からない。イメージはサングラスが似合う動物。分かる? お知らせの後、答とサイコーの登場で〜す。

今週のサイエンスコーチャー略してサイコーは、国立科学博物館研究員の川田伸一郎さんです。こんにちは。
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こんにちは、どうも。

川田さんは、何の博士でしょうか?
- モグラを研究してまして、一応モグラ博士ということになっております。

モグラ! 今の時代の子どもたちで、モグラを見たことがある子っていますかねぇ?
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そうですね。だいたい見たことががあるのは、地上で行き倒れて死んでる姿ではないかと思うんですが。生きてるのを見ようと思うと、ちょっと大変難しいですね。

やっぱりそうですよねぇ。都会に住んでると、死んでてもモグラとはすぐ分からないと思うし、ネズミかと思っちゃうかもしれませんし。
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そうですね。

イメージは、モグラってイラストのイメージですよね。サングラスして、「地下工事中」みたいな感じで(笑)。
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そうですね(笑)。

モグラという名前は知ってるけれど、その実態は知らなかったり、具体的にモグラのリアルな絵を描けといわれたら描ける子はいないですよね、きっと。
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なかなかいないかもしれませんねぇ。

でも、川田さんはモグラをしょっちゅう見てるわけですよね?
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はい。それが自分の研究テーマなもので(笑)。つかまえるのはけっこう得意です。

あっ、モグラつかまえるんですか?
- はい。

えっ!すみません、モグラってどこにいるんですか?
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土の中にいるんですが、このあたりにも新宿御苑とか東京都内23区内にも、けっこうあちこちにいるので、つかまえようと思ったらつかまえられる。

でも、むやみに穴を掘っているわけではないですよね。
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はい。

よくポコッと土が盛ってるところがモグラの巣のあとで、モグラがうっかり表に出ちゃってまぶしいから急に閉めた後だとか、いわれてますけれど。ああいうところをたどって行くとモグラに行き着くんですか?
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そうですね。あれは「モグラ塚」と俗に呼ばれてますが、実は巣じゃなくて、トンネルを掘る時にどうしても土を捨てなきゃならない。

はい。
- 土の中を掘ってる時に、余分な土を地上に捨ててる残りなんですね。

じゃあ、その一瞬、モグラは表に出てくるんですか?
- なかなかあそこで待ってても、出てくることはないと思います。

はぁ〜。
- ただの土捨て場としか使ってないので。だから、あそこをずっと掘っていくと、土がずっと詰まっているんです、トンネルに。

トンネルの中に土が詰まっているんですか?
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それで、あるところまで掘り進んでいくとポコッと穴があいていて、そこからモグラの回廊があるような形になっているんですね。

じゃあ、盛り土、「モグラ塚」と呼ばれるところを掘り起こしても、土がけっこう詰まっていて、ある程度進まないとモグラのトンネルに行き着かないということですか?
- 行き着かない。

素人には無理ですね。
- そうですね、30センチぐらい掘ればトンネルが見えてくる。何せ「モグラ塚」のあるところの下には必ずトンネルがありますので、根気よく掘ってみれば見つけることはできると思います。

モグラの巣の長さは、だいたい何メートルぐらいあるんですか?
- 巣がどういう解釈になるのか…。トンネル自体がすみかと考えたら巣ということになると思うんですが、最近、僕と別の研究者が電波発信機をつけて調べた感じでは、300メートルぐらいは間違いなく動いている。

えぇ〜、300メートル!それはモグラのファミリーで住んでるんですか?
- モグラはかなり縄張り意識が強い動物なので、基本的には単独生活です。

ひとりで300メートル!
- はい。

じゃあ、都会人の家族の暮らしよりもはるかに広いところで生活できる。
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そういうことになりますね(笑)。

何とぜいたくなモグラ!地下使い放題ということですね。
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巣を特定の場所に何ヵ所かつくるんじゃないかと最近はいわれてるんですが、だいたい20センチぐらいのボール状の部屋をつくって巣にするので、そこがお家です。ふだん300メートルあるトンネル網は、どっちかというとエサを探したりする場所です。

そうか、エサは、自分でトンネルを掘りながら探さなくちゃいけないということですね。
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基本的には掘って探すということになってるんですが、むしろできてるトンネルの中を歩きながら、そこに落ちているミミズや小昆虫をひろって食べてるんじゃないかといわれてます。

なるほど。自分たちが拡張したトンネルにミミズとかのエサが現れる。それで来たら、パクッと食べちゃう。
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そうですね。

で、基本的には20センチぐらいの自分のねぐらがあって。
- そこに戻って、おネンネする。

へぇ〜。
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エサが不足している場合には、新しいトンネルをちょっと浅い落ち葉の下などにモコモコモコモコ掘っていって、ミミズとかを食べてるみたいですね。

モグラはミミズを食べるんですか?
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はい。ミミズがけっこう多いみたいですね。一番いいエサは、ミミズのようですよ。

この時季はミミズが多いと思うんですが、ミミズは一年中いるんですか?
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基本的には、います。冬にはちょっと深いところへもぐるようなことがいわれてます。ですから、モグラもそういう時は、網目状のトンネルをもうちょっと深いところに掘り直してエサをとってる。冬眠はしないので、ずっとそういうふうに過ごしているようですね。

すみません。モグラのトンネルは、深さとか幅はどれぐらいですか? 全体的に半径どれぐらいのところに、深さどれぐらいあるとか。
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モグラのトンネルはサイズからいうと、モグラの体にぴったりぐらいのサイズになってる。

何センチぐらい?
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だいたい4センチ。横の幅がちょっと広いといわれていますが、横幅が4センチで、縦幅が3センチぐらい。

楕円形のトンネルですね。
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そうですね。

ちょっとホースをつぶしたような感じ。
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はい。深さは夏場、今の時季はかなり浅いところにいるんですが、だいたい地下10センチとか、そんなとこじゃないでしょうか。

えぇ〜!すぐそこにモグラがいるんですねっ。
- いますねぇ。

冬になると?
- 冬になると、30センチとかもっと深くもぐるような傾向があります。

それで枝分かれしながら、いろいろなトンネルが広がっているという。
- はい。

イメージ湧きました。アリの巣とは、またちょっと違う感じですね。
- そうですね。アリの巣みたいに縦にずっと深く掘っていくというよりは、平面的にずっと広がりをつくっていく。あまり深さを変えずに、ずっと掘っていくような形ですね。

へぇ〜。僕のイメージでは、モグラは太陽の光を浴びたら死んじゃうと聞いてるんですが、実際はどうですか?
- 実際には、太陽の光をあてたからすぐ死んじゃうわけではないと思うんです。ただ熱に弱いんじゃないかと僕は思ってまして。つまり地下の環境は温度変化が少ないんですよ。ですから、彼らの体のメカニズム自体が、温度調節がそれほど得意ではないと思ってます。だから、直射日光をあてるとやっぱり体温が高くなって、熱射病みたいな感じになることはあるだろうと。

目がやられるんじゃなくて、熱で伸びちゃうという感じですかねぇ。
- そうだと思うんです。目はほとんど見えませんし、光をあててもほとんど反応しません。

川田さんは、『モグラ博士のモグラの話』という本を岩波ジュニア新書から出されてらして、モグラの写真が載ってます。
- はい。

僕、恥ずかしながら43年間生きてきて、モグラをまともに見たことがない。
- そうですか。

モグラ、ちっちゃい目がついてますよね。
- はい、ついてます。

キッズのみんなも何か機会があったら、パソコンなどでモグラを調べてみるとモグラの写真が出てる。目がついてる。これは、物が見えない目ですか?
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日本のモグラの話ですが、目の上に薄い皮膚がおおってます。

へぇ〜。
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その上にさらに長い毛が密生しているので、光は感じられるといわれてますが、光自体をちゃんと脳で知覚してるかどうかはよく分かってない。おそらくほとんどないんじゃないかといわれてます。

ほぉ〜。
- 実際に僕らが飼育する時に、金網のトンネルをつくって歩かせると、そういう明るいところでモグラを飼育することもできますし、ペンライトなどで光をあてても反応はないですね。

そうか。たまたまモグラの生活が地下というだけで、別に地上で環境さえ整えば、明るいところでもモグラは生きていけるということですね。
- 生きていけますね。

ほぉ〜。今日はモグラが意外に身近、地中10センチのところにいることが驚きで、だけどほとんどの人が見たことない。ちょっとこの番組、時間が短いんですよ。もう終わっちゃったんですけど。
- はい(笑)。

川田さん、来週またお話を聞いてよろしいですか?
- はい、分かりました。

あっという間で、何かしゃべり足りないですよね。
- まぁ、そうですね(笑)。

来週またうかがいますので。
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よろしくお願い致します。

今週のサイコーは、国立科学博物館研究員の川田伸一郎さんでした。ありがとうございました。
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ありがとうございます。

いや〜、地中10センチぐらいのところに夏場はモグラがいるなんて、想像したことないでしょ? 新宿御苑とか行ったら、地下にモグラがいるんだって。え〜、びっくりした!でも意外にラジオを聴いてるキッズの家で庭を持っている人がいたら、「モグラ塚」というものがあって、そこをクリクリクリクリ掘っていくと全部で300メートルにおよぶモグラのトンネルに行き着くかもしれないという、けっこう身近なロマンのある話で。間違っても、工事現場のモグラのイラストに入り込んだら怒られるからね。気をつけてね!それでは来週も夕方5時半に会いましょう。キッズのみんなも楽しい週末を。バイバイ!