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「モグラの生態」(1)
コーチャー/川田伸一郎さん(国立科学博物館研究員)
大村正樹&川田伸一郎

大村正樹

キッズのみんな、こんにちは。サイエンステラーの大村正樹です。今週も東京浜松町にある秘密の科学研究所シークレットラボからお送りします「大村正樹のサイエンスキッズ」。 今日のサイコーは、ある動物の博士です。その動物の研究で博士号を取ったという方ですが、その動物を知ってるようでよく分からない。イメージはサングラスが似合う動物。分かる? お知らせの後、答とサイコーの登場で〜す。


大村正樹

今週のサイエンスコーチャー略してサイコーは、国立科学博物館研究員の川田伸一郎さんです。こんにちは。

こんにちは、どうも。


大村正樹

川田さんは、何の博士でしょうか?

モグラを研究してまして、一応モグラ博士ということになっております。
大村正樹

モグラ! 今の時代の子どもたちで、モグラを見たことがある子っていますかねぇ?

そうですね。だいたい見たことががあるのは、地上で行き倒れて死んでる姿ではないかと思うんですが。生きてるのを見ようと思うと、ちょっと大変難しいですね。


大村正樹

やっぱりそうですよねぇ。都会に住んでると、死んでてもモグラとはすぐ分からないと思うし、ネズミかと思っちゃうかもしれませんし。

そうですね。


大村正樹

イメージは、モグラってイラストのイメージですよね。サングラスして、「地下工事中」みたいな感じで(笑)。

そうですね(笑)。


大村正樹

モグラという名前は知ってるけれど、その実態は知らなかったり、具体的にモグラのリアルな絵を描けといわれたら描ける子はいないですよね、きっと。

なかなかいないかもしれませんねぇ。


大村正樹

でも、川田さんはモグラをしょっちゅう見てるわけですよね?

       

はい。それが自分の研究テーマなもので(笑)。つかまえるのはけっこう得意です。


大村正樹

あっ、モグラつかまえるんですか?

はい。

大村正樹

えっ!すみません、モグラってどこにいるんですか?

土の中にいるんですが、このあたりにも新宿御苑とか東京都内23区内にも、けっこうあちこちにいるので、つかまえようと思ったらつかまえられる。


大村正樹

でも、むやみに穴を掘っているわけではないですよね。

はい。


大村正樹

よくポコッと土が盛ってるところがモグラの巣のあとで、モグラがうっかり表に出ちゃってまぶしいから急に閉めた後だとか、いわれてますけれど。ああいうところをたどって行くとモグラに行き着くんですか?

そうですね。あれは「モグラ塚」と俗に呼ばれてますが、実は巣じゃなくて、トンネルを掘る時にどうしても土を捨てなきゃならない。


大村正樹

はい。

土の中を掘ってる時に、余分な土を地上に捨ててる残りなんですね。

大村正樹

じゃあ、その一瞬、モグラは表に出てくるんですか?

なかなかあそこで待ってても、出てくることはないと思います。

大村正樹

はぁ〜。

ただの土捨て場としか使ってないので。だから、あそこをずっと掘っていくと、土がずっと詰まっているんです、トンネルに。

大村正樹

トンネルの中に土が詰まっているんですか?

それで、あるところまで掘り進んでいくとポコッと穴があいていて、そこからモグラの回廊があるような形になっているんですね。


大村正樹

じゃあ、盛り土、「モグラ塚」と呼ばれるところを掘り起こしても、土がけっこう詰まっていて、ある程度進まないとモグラのトンネルに行き着かないということですか?

行き着かない。

大村正樹

素人には無理ですね。

そうですね、30センチぐらい掘ればトンネルが見えてくる。何せ「モグラ塚」のあるところの下には必ずトンネルがありますので、根気よく掘ってみれば見つけることはできると思います。

 
大村正樹

モグラの巣の長さは、だいたい何メートルぐらいあるんですか?

巣がどういう解釈になるのか…。トンネル自体がすみかと考えたら巣ということになると思うんですが、最近、僕と別の研究者が電波発信機をつけて調べた感じでは、300メートルぐらいは間違いなく動いている。

大村正樹

えぇ〜、300メートル!それはモグラのファミリーで住んでるんですか?

モグラはかなり縄張り意識が強い動物なので、基本的には単独生活です。

大村正樹

ひとりで300メートル!

はい。

大村正樹

じゃあ、都会人の家族の暮らしよりもはるかに広いところで生活できる。

そういうことになりますね(笑)。


大村正樹

何とぜいたくなモグラ!地下使い放題ということですね。

巣を特定の場所に何ヵ所かつくるんじゃないかと最近はいわれてるんですが、だいたい20センチぐらいのボール状の部屋をつくって巣にするので、そこがお家です。ふだん300メートルあるトンネル網は、どっちかというとエサを探したりする場所です。


大村正樹

そうか、エサは、自分でトンネルを掘りながら探さなくちゃいけないということですね。

基本的には掘って探すということになってるんですが、むしろできてるトンネルの中を歩きながら、そこに落ちているミミズや小昆虫をひろって食べてるんじゃないかといわれてます。


大村正樹

なるほど。自分たちが拡張したトンネルにミミズとかのエサが現れる。それで来たら、パクッと食べちゃう。

そうですね。


大村正樹

で、基本的には20センチぐらいの自分のねぐらがあって。

そこに戻って、おネンネする。
大村正樹

へぇ〜。

エサが不足している場合には、新しいトンネルをちょっと浅い落ち葉の下などにモコモコモコモコ掘っていって、ミミズとかを食べてるみたいですね。


大村正樹

モグラはミミズを食べるんですか?

はい。ミミズがけっこう多いみたいですね。一番いいエサは、ミミズのようですよ。


大村正樹

この時季はミミズが多いと思うんですが、ミミズは一年中いるんですか?

基本的には、います。冬にはちょっと深いところへもぐるようなことがいわれてます。ですから、モグラもそういう時は、網目状のトンネルをもうちょっと深いところに掘り直してエサをとってる。冬眠はしないので、ずっとそういうふうに過ごしているようですね。


大村正樹

すみません。モグラのトンネルは、深さとか幅はどれぐらいですか? 全体的に半径どれぐらいのところに、深さどれぐらいあるとか。

モグラのトンネルはサイズからいうと、モグラの体にぴったりぐらいのサイズになってる。


大村正樹

何センチぐらい?

だいたい4センチ。横の幅がちょっと広いといわれていますが、横幅が4センチで、縦幅が3センチぐらい。


大村正樹

楕円形のトンネルですね。

そうですね。


大村正樹

ちょっとホースをつぶしたような感じ。

はい。深さは夏場、今の時季はかなり浅いところにいるんですが、だいたい地下10センチとか、そんなとこじゃないでしょうか。


大村正樹

えぇ〜!すぐそこにモグラがいるんですねっ。

いますねぇ。
大村正樹

冬になると?

冬になると、30センチとかもっと深くもぐるような傾向があります。
大村正樹

それで枝分かれしながら、いろいろなトンネルが広がっているという。

はい。
大村正樹

イメージ湧きました。アリの巣とは、またちょっと違う感じですね。

そうですね。アリの巣みたいに縦にずっと深く掘っていくというよりは、平面的にずっと広がりをつくっていく。あまり深さを変えずに、ずっと掘っていくような形ですね。
大村正樹

へぇ〜。僕のイメージでは、モグラは太陽の光を浴びたら死んじゃうと聞いてるんですが、実際はどうですか?

実際には、太陽の光をあてたからすぐ死んじゃうわけではないと思うんです。ただ熱に弱いんじゃないかと僕は思ってまして。つまり地下の環境は温度変化が少ないんですよ。ですから、彼らの体のメカニズム自体が、温度調節がそれほど得意ではないと思ってます。だから、直射日光をあてるとやっぱり体温が高くなって、熱射病みたいな感じになることはあるだろうと。
大村正樹

目がやられるんじゃなくて、熱で伸びちゃうという感じですかねぇ。

そうだと思うんです。目はほとんど見えませんし、光をあててもほとんど反応しません。
大村正樹

川田さんは、『モグラ博士のモグラの話』という本を岩波ジュニア新書から出されてらして、モグラの写真が載ってます。

はい。
大村正樹

僕、恥ずかしながら43年間生きてきて、モグラをまともに見たことがない。

そうですか。
大村正樹

モグラ、ちっちゃい目がついてますよね。

はい、ついてます。
大村正樹

キッズのみんなも何か機会があったら、パソコンなどでモグラを調べてみるとモグラの写真が出てる。目がついてる。これは、物が見えない目ですか?

日本のモグラの話ですが、目の上に薄い皮膚がおおってます。


大村正樹

へぇ〜。

その上にさらに長い毛が密生しているので、光は感じられるといわれてますが、光自体をちゃんと脳で知覚してるかどうかはよく分かってない。おそらくほとんどないんじゃないかといわれてます。


大村正樹

ほぉ〜。

実際に僕らが飼育する時に、金網のトンネルをつくって歩かせると、そういう明るいところでモグラを飼育することもできますし、ペンライトなどで光をあてても反応はないですね。
大村正樹

そうか。たまたまモグラの生活が地下というだけで、別に地上で環境さえ整えば、明るいところでもモグラは生きていけるということですね。

生きていけますね。
大村正樹

ほぉ〜。今日はモグラが意外に身近、地中10センチのところにいることが驚きで、だけどほとんどの人が見たことない。ちょっとこの番組、時間が短いんですよ。もう終わっちゃったんですけど。

はい(笑)。
大村正樹

川田さん、来週またお話を聞いてよろしいですか?

はい、分かりました。
大村正樹

あっという間で、何かしゃべり足りないですよね。

まぁ、そうですね(笑)。
大村正樹

来週またうかがいますので。

よろしくお願い致します。


大村正樹

今週のサイコーは、国立科学博物館研究員の川田伸一郎さんでした。ありがとうございました。

ありがとうございます。


大村正樹

いや〜、地中10センチぐらいのところに夏場はモグラがいるなんて、想像したことないでしょ? 新宿御苑とか行ったら、地下にモグラがいるんだって。え〜、びっくりした!でも意外にラジオを聴いてるキッズの家で庭を持っている人がいたら、「モグラ塚」というものがあって、そこをクリクリクリクリ掘っていくと全部で300メートルにおよぶモグラのトンネルに行き着くかもしれないという、けっこう身近なロマンのある話で。間違っても、工事現場のモグラのイラストに入り込んだら怒られるからね。気をつけてね!それでは来週も夕方5時半に会いましょう。キッズのみんなも楽しい週末を。バイバイ!