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「ロボットの今」(1)
コーチャー/富山健(とみやまけん)さん(千葉工業大学教授)
大村正樹&富山健

大村正樹

キッズのみんな、こんにちは。サイエンステラーの大村正樹です。今週も東京浜松町にある秘密の科学研究所シークレットラボからお送りします「大村正樹のサイエンスキッズ」。さぁ、みんなの家では掃除する人って誰?お母さん?自分?お父さん!?なかには「もうお掃除ロボットあるもん」という人もいるかもしれないよね。今日のテーマはロボット。日本のロボットの第一人者の方がお知らせの後、登場します。


大村正樹

今週のサイコーは、千葉工業大学教授の富山健(とみやまけん)先生です。こんにちは。

こんにちは。


大村正樹

千葉工業大学というと、ロボットでとても有名なんですよ。

はい。


大村正樹

たぶん誰もが知っていますよね。

知ってますよ〜。


大村正樹

「あのロボットの大学だ!」という、そこの教授ということですね。

はい。未来ロボティクス学科というのがあるんですが、それをつくるために大学に行きましたので。


大村正樹

学生さんたちが日夜ロボットの開発を?

していますよ。


大村正樹

いそしんでいるわけですね。

はい。


大村正樹

先生は、汐文社の『はたらくロボット』シリーズという本も監修されています。その本を見るといろいろなロボットがありますよ。

ありますねぇ。


大村正樹

ロボットって、僕の子どもの頃40年ぐらい前からいろいろなことができるロボットがあるんだけれど、近づいているような近づいてないような…。

う〜ん、ある面では近づいていますけどね。一般的にいったら、まだ遠いですねぇ。


大村正樹

最近はやりのお掃除する、丸い…。

ルンバですね。


大村正樹

いろいろなメーカーから出ていますけれど、あれはロボットの範ちゅうですか?

そうですね。範ちゅうです。


大村正樹

ロボットは手があって目があって足があるというイメージなんで(笑)。

私もよくお話をするんですが、ロボットといいますと、どうしてもヒューマノイドという言葉で代表されるロボットを想像するんですよ。


大村正樹

人間っぽいという。

そうですね。普通ヒューマノイドが何かというと、手があって足があって頭があって人間みたいに見えるもの。


大村正樹

はい。

「じゃあ、仕事は何をするの?」−わかんないですよね。


大村正樹

はい。

でも、普通のロボットはちゃんと目的があってつくられているんですね。丸いお掃除ロボットさん−家にも2台あって、片一方はちょっと年をとっちゃったんで「そろそろかな」と思っていますけれど。


大村正樹

“ロボットは永遠”じゃないんですね(笑)。

違いますね。


大村正樹

人間と同じですね(笑)。そうか、イメージで人間らしいものをロボットと僕ら思い込みがちだけれど、ある目的のためにつくられたものは総じてロボットというわけですね。

そうですね。もともとロボットというのは万能マシン、万能機械という意味だったんですよ。


大村正樹

あっ、そうなんですか。

「何でもできるもの」という。


大村正樹

へぇ〜。

ですけれども、そういう意味でなかなかできないですね。だからやっぱり限って、こういうことに対して役に立つというものをつくっているわけです。丸型のお掃除ロボットさんも、本当にお掃除にかけては素晴らしいですよ。


大村正樹

ええ。

もう毎週使っています(笑)。


大村正樹

そうですか。まだ私はそれを買う経済力がないんで(笑)。今、ヒューマノイドという言葉がありました。

はい。


大村正樹

人の形をしたロボットというと、やっぱりASIMO?

ですね。


大村正樹

未来館に行くとASIMOのショーがあるんですよ、今なお。

はい。


大村正樹

あれは登場して相当経ちますよね。

そうですね。ASIMOの原型ができたのが1996年。


大村正樹

17年経つのか。

そうですね。96年に初めてASIMOのおじいさんにあたるロボットが、普通の人間みたいな歩き方をしたんですね。


大村正樹

あれがヒューマノイドの原点みたいな?

原点といわれると、ちょっと私としては引っかかります(笑)。


大村正樹

もっと原点はあるんですね。

そうですね。ヒューマノイド型のロボットでしたら、昔からいっぱいあるわけです。


大村正樹

へぇ〜。

例えば、うちの研究室でつくったマークファイブというロボットはヒューマノイド型です。30センチの小さいやつですが、自分でボールとゴールを見つけて、ボールのところまで歩いていってゴールキックをする。2000年にそれをやったのはけっこう少ないですよ。


大村正樹

わかった、サッカーするロボットですね。

そうです。ロボットというとどういうものかが考えられるんですが、我々は「感じて動く」といっていて、そういうことができるものがロボット。だから感じるということで、センサーで感じ取るわけです。


大村正樹

はい。

わざわざ感じるという言葉を使っているのは、それを頭の中で考えるところまでいかないと“感じる”にならないので。ただ単純にセンシングをするだけじゃなく感じて、それによって自分の動きが変えられるもの、それがロボットですよね。


大村正樹

何となくわかりました。じゃあ、心で感じることは可能ですかねぇ?

それが一番面白くて、私の研究室は感性、ロボットにおける感情をつくっています。


大村正樹

えっ!

はい。


大村正樹

僕は45歳ですが、いまだに『フランダースの犬』の最終回で泣けるんですよ。

あれは泣けますね、確かに。


大村正樹

先生も!? 嬉しい。ロボット泣かしたら本物ですよねぇ。

確かにねぇ。


大村正樹

そこまでいけますかねぇ。

いくんですが、ここでどうしても私の主張があるんですね。それは何かというと、「ロボットの感情をつくってる」といいました。それは真っ赤なウソです。


大村正樹

えっ!

実はロボットは機械です。ロボットは機械なので、持てるものは擬似感情ですね。英語でいうとバーチャルな感情です。


大村正樹

はい。

だから、技術者は“バーチャル感情”であればつくり込むことができるわけです。なので、ロボットが持ってるのは“バーチャル感情”。


大村正樹

それはバーチャルなものをインプットしなくちゃいけないんですね、人間が。

インプットはしません。


大村正樹

どうして?

ロボットが自分で判断するんですね。


大村正樹

何をもってバーチャルな感情になるんですかねぇ?

面白いんですけれど、何かシステムがあります。それに人間が「こういう状況の時にこういう感情をつくったよ」と学習させるんです。


大村正樹

はい。

そうすると、こういう状況の時にそういう感情をつくれるロボットができるわけです。


大村正樹

はい。

ですが感情はつくりますけれど、ロボットが本当にそういうことを感じているわけではない。人間と同じ感情をつくれる。だから、私は厳格に「バーチャル感性だよ」というふうにわけたいんです。


大村正樹

なるほど。

ですけれども、それを持っているとやはり人間との親和性がすごく高くなりますから、これからロボットさんはどんどんどんどん人間の生活に出てきますよね、工場から出てきて。


例えば介護施設だと、介護者と一緒になって働きます。そういうロボットはやはり人間の感覚まで、要するに感情までわからないといけないと思うんです。それをやっているのが、うちの研究室です。


大村正樹

いやぁ、介護の話で介護ロボットというのをよく活字で見ますよ。介護ロボットの開発ってありますよね。

はい。


大村正樹

介護するマンパワーが圧倒的に不足してるじゃないですか。

そうですね。


大村正樹

お給料の問題とかいろんな問題があって、実は高齢化社会で大変な問題になっている中、先生の研究室ではその介護ロボットを研究されている?

そこもこだわりがありまして(笑)。私はちょっとへそ曲がりなものですから、介護ロボットはつくっていません。


大村正樹

じゃあ、どういうことですか?

介護者支援ロボットはつくっています。


大村正樹

へぇ〜。もっと知りたいですねぇ!

要するに、介護は非常に人間的なことですね。ですから、介護者を排除してはいけないと思っているんです。


大村正樹

はい。

介護ロボットは、介護者の代わりに介護するロボットです。私は、それはつくりたくない。介護の本質はやっぱり人間がやるべきだと思います。


大村正樹

“人対人”ということですね。

そうです。ですから“人対人”の介護がやりやすいように、介護する方を支援するロボットをつくろうと思っているわけです。


大村正樹

それはどういう支援をしてくれるんですか?

例えば、「24時間この人を見守ってあげなさい」−人間は簡単ですか?


大村正樹

いやぁ。

できませんよね。でもロボットだったら簡単ですね。


大村正樹

はい。

「今、排便排尿がありました」と。人間だったら開けてチェックしなければいけません。ロボットだったら、センサーをつけてあればすぐわかります。そういうことはロボットのほうが得意なんですよ。


大村正樹

ええ。

いいたいのはロボットが得意なこと人間が得意なことがあって、ロボットが得意なことはロボットにやらせればいいでしょ。それを私は介護者支援ロボットと呼んでいるんですね。


大村正樹

とってもわかりやすいお話でした。

ありがとうございます。


大村正樹

結局、例えば寝たきりの方の床ずれのケアは人の手じゃないとケアできないわけですよね。だけどそのセンサーでもって「ちょっとこれは床ずれが…」あるいは「おむつが…」ということですよね。そのサインを人に送るのがロボットの役割で、それに対してサービスを行うのが人間の役割という。

そうですね。私のところを出た学生が自分で起業しているんですが、彼女がつくってるのはそういう排尿を検出するシステムですね。


大村正樹

この番組は助手が先生の経歴などから先生への質問をワープロで打ってくるんですが、今日初めて全く見なかったですね、先生。

ハハハ。


大村正樹

ごめんなさい、助手(笑)。いやぁ、面白かったです。もう時間なので、また人のために役立つロボットの話、これからのキッズたちがロボットに対して夢を持つようなお話を来週もうかがいたいのでぜひお願いします。

ありがとうございます。ぜひ!


大村正樹

今週のサイコーは、千葉工業大学教授の富山健先生でした。ありがとうございました。


大村正樹

やっぱりロボットにはロボットの適材適所があって、人間には人間の適材適所がある。そういうすみわけの時代が来るのかもわからないねぇ。みんな、どう思ったでしょうか?それでは、来週も夕方5時半に会いましょう。キッズのみんなも楽しい週末を。バイバ〜イ!