過去の放送分
過去の放送分 過去の放送分
「地学を学ぶ」(1)
コーチャー/左巻健男(さまきたけお)さん(法政大学教授)
大村正樹&左巻健男

大村正樹

キッズのみんな、こんにちは。サイエンステラーの大村正樹です。今週も東京浜松町にある秘密の科学研究所シークレットラボからお送りします「大村正樹のサイエンスキッズ」。さぁ、今回は地学という学問を取り上げます。地球科学、僕らが住んでる地球を研究対象とした科学なんですね。みんな、世界で一番高い山を知ってる?じゃあ、今日は世界地図を用意してみてください。お知らせの後で〜す。


大村正樹

今週のサイコーは、おぉ!わが母校ですね、法政大学教授の左巻健男先生です。こんにちは。

こんにちは。


大村正樹

左巻さんは理科教育、科学技術教育がご専門で、PHPから『面白くて眠れなくなる地学』という本も出版されています。地学ですね。地面の“地”に“学”ぶ。地球を学ぶということですね。地学はどういう学問でしょうか?

僕は理科教育が専門なので、物理も化学も生物も地学も、みんな学校で教えるものは専門なんですよ。


大村正樹

はい。

その中で地学というのは、扱う範囲がすごく広いというのが特色ですね。「自分の足元の地面の下の地球がどうなっているか?」からずーっと遠くの宇宙まで、それが地学の範囲になってます。


大村正樹

宇宙も地学の?

そうなんです。


大村正樹

そうですか、へぇ〜。

だから学校で学ぶとしたら、火山や地震や岩石、鉱物というのは地球の中の問題ですね。それから、地球の上に大気圏がありますよね。


大村正樹

ええ。

そこで天気の変化などが起こっているので、そういう気象とか天気が地学の範囲です。さらにそれを飛び越えて、宇宙も地学の範囲になっているんですよ。


大村正樹

じゃあ、小惑星イトカワから持ち帰った物質なども、地学の範ちゅうに入ってくるんですかねぇ。

イトカワを探査するのは地学の分野ですけれど、それを分析したりするのは物理や科学を使って分析するんだと思いますけどね。


大村正樹

なるほど。火山の話がありました、地震とか。今、関東のキッズたちが気になるのは富士山の動きじゃないでしょうかねぇ。あれも地学の範ちゅうですか?

そうですね。


大村正樹

先生はどういうふうにご覧になっていますか?

地学の場合は時間スケールが非常に長く明日明後日という話ではないので、だからそれが100年後かもしれないし1万年後かもしれないし、もっと先かもしれない。でも、富士山はいろいろな噴火の兆候をあらわしているので、きっと今に噴火すると思いますけどね。


大村正樹

そうですか。でもそれはこの夏とかというレベルではなくて、もうちょっと長い?

長い範囲で考えないといけないんですね。ただそれもわからないんですよ。


大村正樹

ええ。

明日かもしれないし(笑)。


大村正樹

そうなんですか。となると、またみんな不安で。難しいですよねぇ。そういう富士山の山の話がありますけれど、先生の本の中で、「エベレストは世界一高い山ではない!?」というくだりがあるんですね。

はい。


大村正樹

エベレスト(チョモランマ)が一番高い山というのは僕ら常識だと思っていたんですけど。8,848メートル。

はい。山のどこを基準にして高さを測るかによって違ってくるということですね。


大村正樹

いわゆる標高というもののゼロ地帯がどこかということですか?

そうですね、はい。


大村正樹

東京ではゼロというと海面ですよねぇ。

そうですね。


大村正樹

海面がゼロですよね。

海面も上がったり下がったりしますよね、満ち潮引き潮で。


大村正樹

はい。

だから平均海面が基準面になりますね。


大村正樹

一部の地域では海抜ゼロメートル地帯なんてありますけれど、だいたい平均海面がゼロ。

はい。


大村正樹

エベレストのゼロというのはどこなんですか?

やはりエベレストの辺りの平均海面を基準にしてるんです。


大村正樹

山の奥の奥にヒマラヤってありますが、その周辺の海の平均海面を?

まぁ、そういうことですね。その海の平均海面を延長して考えて、エベレストの下でどうだというのを基準にしている。


大村正樹

ほぉ〜。となると、エベレストが世界で一番高い山でないということは、どこが一番高いんですか?

基準を次の基準として、山の麓がありますね、一番麓が。


大村正樹

はい。

地面を基準にその平均海面を地面にして高いというのは、やっぱりエベレストが世界で一番高いわけですね。だけど、地球の場合には海があって、海の中に麓がある山があるじゃないですか。


大村正樹

なるほど。

そうすると海底面の山の麓から測ると、海面から突き出している。


大村正樹

ええ。

だけどエベレストと比べると平均海面から上だけを考えるんだけど、山としては本当だったら「麓からどこまでそびえているのかな?」という話ですよね。


大村正樹

つまり地球上の海の水を全部抜いちゃったら、だいたいイメージできるということですね。

そういうことです。


大村正樹

わかりやすい話ですね。

はい。


大村正樹

そうなると、どこが一番高い山になるんですか?

ハワイのマウナ・ケア。


大村正樹

えっ、ハワイが世界一高いんですか! すごい!

まずマウナ・ケアのほうが、山の麓から測ったら高いというのが一つあります。


大村正樹

はい。

もしかしたら基準を地球の中心から山の天辺まで測って、それで一番距離があるやつを高い山とする基準もあるじゃないですか。


大村正樹

地球の中心ですね。僕らが住んでいる日本列島の下はマントルでしたっけ?

はい。まずわれわれは、地殻の上に住んでいます。


大村正樹

はい。

その下にマントルがあって…。


大村正樹

これがマグマみたいにドロドロしているといいますけれど。

ドロドロはしてないです。


大村正樹

そんなにしてないですか(笑)。何かフロートしてるというか。

まぁ、その一部が何というんだろう、「非常にゆっくりだけれど、ちょっと動いてますよ」という話ですね。


大村正樹

だから、地震が起きるということですよね。

まぁ、そういう。


大村正樹

地殻、マントル。

その次に外殻というのがあります。外の殻。


大村正樹

はい。

そこは液体だと考えられているんです。


大村正樹

そうなんですか。

で、真ん中に内郭があります。これがほんとの中心ですね。


大村正樹

一番コアなところですね。

はい。


大村正樹

内郭は何でできているんですか?

きっと一番多いのは鉄だろうという…。


大村正樹

へぇ〜。鉄でできていて、そこの中心部から計算するとエベレストではない山が世界で一番高い。

はい。


大村正樹

この地球の中心のこと、内郭の中心を何ていうんですか?

地球の中心ですね。


大村正樹

地球の中心。

ハハハハ。


大村正樹

へぇ〜。地球の中心から一番遠いところを僕らはエベレストと思っていたけれど、そうじゃない。

はい。赤道のほうがちょっとだけふくらんでいるので、その赤道にある山はふくらんだ分だけ高くなっちゃう。


大村正樹

そうか、赤道のほうに若干ふくらんでますものね、地球は。

はい。地面から出てる部分はエベレストより低いんだけれど、地球の中心からは一番高い山になる可能性がある。


大村正樹

それはどこでしょうか?

それが、チンボラソ山というのかな。


大村正樹

チンボラソ山?

行ったことないんですけれど(笑)。


大村正樹

サイコー、「チンボラソ山というのかな?」って(笑)。これエクアドル、アンデス山脈の北のほうにある。

あぁ、そうですか。


大村正樹

地図で調べると、チンボラソ山があります。世界地図で見てね。南アメリカ大陸の西の海岸のずーっとアンデス山脈の北のほうにチンボラソ山とあります。これが世界で一番高いというか、地球の中心から一番遠いという?

遠いということになりますね。


大村正樹

登山家の方で登った人はいるんでしょうか?

もちろん登っている人はいると思います。登ってない山はないでしょう、今世界で。


大村正樹

そうですか。三浦雄一郎さんもチンボラソ山に挑戦したら、またちょっと違った記録になるかもしれませんけれど(笑)。地学、面白いですね。

フフフ。


大村正樹

先生、僕が子どもの頃、漫画で穴を掘るおじさんが日本から穴を掘ったらアルゼンチンへ行っちゃったという。そこまで人間は全く行ってないわけですよね(笑)。

もうほんとに地球の表面ちょっと掘っただけなので。


大村正樹

まだまだ聞くこといっぱいあったんですけれど、あっという間に時間になってしまいました。先生、また来週もお話をうかがわせてください。今週のサイコーは、法政大学教授の左巻健男先生でした。ありがとうございました。


大村正樹

いやぁ、驚いたねぇ。ハワイのマウナ・ケア−これ、ハワイのハワイ島だそうです。日本からの直行便はオアフ島のホノルル空港があるんだけれど、そこから別の島に行ったところに1万203メートルのマウナ・ケア。それから、エクアドルのチンボラソ山。これもおぼえてくださいね。アンデス山脈の北のほうにあります。それでは、また来週も夕方5時半に会いましょう。キッズのみんなも楽しい週末を。バイバ〜イ!