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「金属から日本史を見る」(1)
コーチャー/齋藤努さん(国立歴史民俗博物館 研究部教授)
国立歴史民俗博物館HPはコチラ>>http://www.rekihaku.ac.jp/index.html
大村正樹&齋藤努

大村正樹

キッズのみんな、こんばんは。サイエンステラーの大村正樹です。今週も東京浜松町にある秘密の科学研究所シークレットラボからお送りします「大村正樹のサイエンスキッズ」。さぁ、今日はこれまでとひと味違ったテーマを取り上げます。金属―みんな見渡してみるといろんなものが金属でできているよねぇ。金属はいつ頃できたのか、考えたことあるかな? お金も金属だよね。このお金はいつ頃できたのかわかる? お金にはどんな秘密があるか?金属に詳しいサイコーが来てくれています。お知らせの後です!


大村正樹

今週のサイコーは、国立歴史民俗博物館 研究部教授の齋藤努さんです。こんばんは。

こんばんは、よろしくお願いします。


大村正樹

齋藤先生は1961年神奈川県のお生まれで、金属から日本の歴史を読み解く本『金属が語る日本史』という本を吉川弘文館から出していらっしゃるんですね。

はい、そうです。


大村正樹

これはおもしろい!

ありがとうございます。


大村正樹

金属は、今あたりまえにはびこっていますけれど、昔の人、石器時代は金属を扱うなんてまずなかったわけじゃないですか?

はい。


大村正樹

いつの間に人類は金属と触れ合うようになったのか?こういうことを考えると非常にロマンも感じます。金属は硬いものですよね。

はい。


大村正樹

それを加工してお金にかえる。

はい、そうですね。


大村正樹

こういうものに思いをはせるのは非常にいいですねぇ。

はい。ふだんとちょっと違う角度から今日はお話することになるかと思いますけれど。


大村正樹

ぜひ!齋藤先生は金属から歴史を読み解く、もうちょっとわかりやすくいうと、どういう研究になりますか?

刀

金属でつくられたものはいっぱいあるんですけれど、たぶん一番昔からあるものはお金とか刀、日本刀などですよね。それから仏様がお寺にありますけれど、奈良の大仏とか鎌倉の大仏も金属でできています。


大村正樹

いわれてみればそうですね。

そういうものは、時代や地域で「何でできているか?」とか、つくられ方が違うんですね。それを調べていくと「一体どうしてそういうつくられ方をしているのか?」とか、「背景にどういう考え方があったのか?」、などについてわかってくる。


大村正樹

はい。

歴史を調べていくということですね。


大村正樹

なるほど。その時代の金属を調べることによって、その時代が見えてくるという…。

そうですね。


大村正樹

今おっしゃった刀、お金、大仏。強いものですね、いずれにしても。

あっ、そうですね。


大村正樹

武力でも強く、あるいは人間社会でも強く、信仰の世界でも非常に強い、絶対的なものというのは、やっぱり金属でできていたという…。こういう解釈になるかもしれませんね。

はい。


大村正樹

この著書『金属が語る日本史』には、金属から見た貨幣の歴史が書かれています。貨幣というのは、今でいう500円玉とか100円玉とか10円玉とかコインですね。

はい、そうです。


大村正樹

日本で一番古いのは?

え〜と、今は無文銀銭(むもんぎんせん)とか富本銭(ふほんせん)というのが金属のお金として古いといわれているんですけれど、ただ初めてたくさんつくられたお金は和同開珎(わどうかいちん)という708年につくられたお金です。


大村正樹

飛鳥時代の末期ですね。

奈良時代ですね、もう。


大村正樹

奈良時代は、“なんと(南都)”=710年じゃないですか?“なんと(710年)平城京”で。

あぁ、そうですね。


大村正樹

だから、708年というと…。

飛鳥ですね。


大村正樹

飛鳥時代に和同開珎。

はい。


大村正樹

今おっしゃったもうひとつは、フホウ?

富本銭(ふほんせん)というのは、飛鳥時代です。


大村正樹

僕らは歴史で和同開珎が日本で一番古いお金と聞いていますけれど、その前からお金があったんですか?

そうです。あまりたくさん世の中に流通しなかったんですが、お金としてつくられたんですね。それが最近、和同開珎より古いということがわかって…。


大村正樹

へぇ〜、それが金属だったんですか?

それも金属でできています。


大村正樹

わかりやすい和同開珎からうかがいたいんですが、和同開珎は708年から?

次の時期ですから、いつだったかな…。


大村正樹

飛鳥時代、奈良時代、平安時代ぐらいですかね。

それが奈良時代にずっと使われていて、それから958年に乾元大宝(けんげんたいほう)というお金がつくられるんですが、その間12種類のお金が次々に発行されているんですね。


大村正樹

ほぉ〜。

それのことを「皇朝十二銭」という言い方をします。


大村正樹

708年から958年までの250年間で12種類のお金、硬貨が日本にあったんですか?

はい、そうです。それが日本で初めてたくさんつくられたお金です。


大村正樹

へぇ〜、和同開珎しか知りませんでした。恥ずかしい。

いや、意外に知られてないかもしれないです。


大村正樹

たくさんつくられるということは、金属をつくる技術がその頃の日本にあったということですよね。

そうです。ちょうどそのくらいから日本で、例えば金属そのものをつくる技術、そもそも鉱山から金属の素になるものを掘り出す技術が、朝鮮半島とか中国からやって来たんですね。教えてもらったわけです。


大村正樹

日本にも鉱山や銅山があって、金属がとれたということですか?

そうです。それまでは鉱山があっても掘り出す技術がなかったんですね。


大村正樹

ええ。

だけどその頃、外国から教わって日本でもそういうことができるようになった。


大村正樹

へぇ〜。いや、すごい昔の人は。外国ってどこの人が教えてくれたんですか?

はっきりとはわかってないんですが、おそらく朝鮮半島辺りではないかという…。


大村正樹

そっちのほうが早かったんですね、そういう技術に関しては。

はい。


大村正樹

へぇ〜。鉱山、銅山。僕の中で金属の山というと、栃木県の足尾銅山ですよね。

はい。


大村正樹

あと、最近は世界遺産云々といわれている山陰地方の石見銀山(いわみぎんざん)。

有名ですね。


大村正樹

あれもやっぱり金属のとれる山ですか?

そうですね。足尾銅山は銅ですし、石見銀山は銀と銅がとれます。


大村正樹

銀と銅。あと鉱山というと、どういうところがありますか?

鉱山で有名なのは、佐渡金山。


大村正樹

あぁ、佐渡島。新潟県。

日本中あまり名前を知られてないところもありますけれど、実は、あちこちに鉱山があるんですね。


大村正樹

じゃあ600年前の人は、そうやって鉱山から金属をとり出してお金をつくっていた。

ええ。


大村正樹

金属は主に何を使っていたんですか?

銅です。圧倒的に銅が多いです。


大村正樹

今でいう10円玉のイメージですね。

はい。10円玉の話をしましたが、今のお金というのも、実は1円玉以外は全部銅の合金でできていて…。


大村正樹

えっ、だって色が違うじゃないですか、50円玉、100円玉、500円玉…。

そうです。10円玉は赤っぽいというか茶色っぽい色をしているので銅でできているとわかりやすいですが…。例えば5円玉って黄色っぽいですよね。


大村正樹

ええ。

あれは、銅に亜鉛を混ぜると、ああいう色になるんですよ。


大村正樹

へぇ〜、そうなんですか(笑)。

はい。


大村正樹

100円玉にも銅が入っている?

50円とか100円玉って白っぽいですよね。これはニッケルを銅に混ぜるとそういう色になる。


大村正樹

ニッケルを混ぜると銅の赤っぽい色がシルバーになるんですか?

そうです、そうです。500円はさらに…。


大村正樹

もっと光ってますよね、500円玉。

100円玉とちょっと色が違いますが、それは亜鉛とニッケルを混ぜるとそういう色になるんです。


大村正樹

亜鉛、ニッケル、銅ですか。ちなみに500円玉で銅の含有率はどれぐらいですか?

ごめんなさい、ちょっとすぐにはわかりません。


大村正樹

10円玉だったらどれぐらいですか?

10円玉はそうですね、たぶん95パーセントぐらい銅が入っています。


大村正樹

10円玉は95パーセント銅。じゃあ、色がシルバーになってくればくるほど銅の含有率は減ってくるけれど、基本は銅なんですか?

基本は銅です、みんな。


大村正樹

どうですか、みんな? びっくりした!

フフフ。


大村正樹

これはちょっと、月曜日に学校へ行ったら知識ですよ。

そうですね(笑)。


大村正樹

「先生、100円玉は何でできているんですか?」、「シルバーだよ」なんて。そこで「銅です」っていえますよね。

大人でも知らないことがありますよね。


大村正樹

誰も知らなかったと思います。

はい。1円玉はアルミニウムです。


大村正樹

1円玉以外のコインは、全部銅が主体ですね。

はい。


大村正樹

いや、おもしろい! 銅、錫、鉛、その合金。それによってお金ができ、それを分析することによってその時代時代のお金がどういう流れでできたのか。ロマンですねぇ。先生、もう時間になってしまいました。

そうですか。


大村正樹

あっという間でした。この続きをまた来週うかがわせていただいてよろしいですか?

はい、ぜひお願いします。


大村正樹

今週のサイコーは、国立歴史民俗博物館 研究部教授の齋藤努先生でした。ありがとうございました。

ありがとうございました。


大村正樹

日本という国には6種類の硬貨がありますね。硬いお金ですよ。その中で1円玉はアルミニウム。残りの5種類、実は主成分が銅だったという…。いやぁ、知らないことがいっぱいあるねぇ。それでは、勤労感謝の日ですよ。すてきな夜を過ごしてください。バイバイ!