浜美枝のいつかあなたと

毎週日曜日
 9時30分~10時00分
Mr Naomasa Terashima Today Picture Diary

寺島尚正 今日の絵日記

2023年9月4日 防災公園 かまどスツール

9月1日、関東大震災から丁度100年。
関東大震災では約10万5000人が亡くなったと言われる。
関東大震災は、相模トラフ(海溝)で起きたマグニチュード(M)8クラスの海溝型の大地震だった。
本震の揺れた時間は、およそ10分。とんでもない長さである。
加えて、M7クラスの地震が2日で6回も起きた事は余り知られていない。
本震の後、何度も強い揺れが家屋や人々を傷つけたのである。

現在の東京都墨田区にあった陸軍被服廠跡では、多くの人が避難していた時に火災旋風が起き、約4万人が命を落とした。
本震は土曜の昼前に起き、当時熱源は主に炭火だったため、倒れた木造家屋に火が移った。
台風の影響で風が強かったという悪条件も重なった。
普通の火災で建物から延焼するときは、隣の建物、近い建物の順番で燃え移っていくことが多い。
そのため、火災現場から離れたところにいた人は、この段階では命の危険を感じていなかったはず。
強風時に発生する"飛び火"は、出火した建物から生じた無数の火の粉が、広範囲に飛び散る現象である。
小さな火の粉であっても、状況によっては遠く離れた建物に火災を延焼させてしまうことがあり、関東大震災のときには、火の粉による広範囲な延焼が多く起きたという。

関東大震災の教訓を生かすため、震災翌年の大正13年、市街地建築物法改正施工規則で「瓦葺き屋根にありては、引掛け桟瓦の類を使用し、又は野地にて緊結すべし」と法律が改正された。
瓦を土で接着するのではなく、釘などで固定する工法が推奨されるようになった。
地震の揺れで落ちる瓦を少なくして、屋根を火災から守ろうとしたのだ。

しかし、現代でも、飛び火火災の危険性がゼロになったわけではない。
7年前、新潟県糸魚川市では飛び火によって延焼が拡大し、147棟の建物が全半焼するなどした。
出火元はラーメン店で、店主が気づいたときには、炎は消し止められないほどの大きさになっており、風に乗った火の粉は、15か所で飛び火火災を引き起こした。
じつはこの日も、関東大震災が発生した日と同じように、10m/sの強い風が吹いていた。
たった1棟の火災が、147棟に燃え広がってしまったのだ。
しかし、糸魚川では地震も起こっていないし、瓦も落ちていない。
屋根板は瓦に覆われたままだ。
では、どうして飛び火火災が起こったのか。
じつは、大規模火災が発生した地域には、昭和初期に建てられた木造建築が密集していた。
当時用いられた瓦は寸法が不揃いだったり、ねじれがあったりすることで、瓦と瓦の間に指1本ほどの隙間ができており、そこから火の粉が侵入したのだ。
一方、寸法の狂いが少ない現代の瓦屋根で同様の実験を行ったところ、屋内への燃え抜けは確認されなかった。
糸魚川の他にも、全国には古い瓦が用いられた木造家屋が密集している地域が多々ある。
東京でも山手線の外周部を中心に数多く残っている。
地震によって瓦が落ちなくても、飛び火によって大規模な火災が起こる危険性は十分あるのだ。

では、飛び火火災を起こさないために、我々ができることは何か。
大震災が起こったときには、建物の倒壊や道路の遮断などで、常時の消防力が発揮できないことも考えられる。
そんなとき、我々がすべきことは「火を出さない」という出火防止だ。
さらに「もし火事になっても、火が小さいときに消す」という早期覚知・初期消火が重要になってくる。
具体的な対策として、総務省消防庁は、出火防止の対策として
 1.住まいの耐震性を確保
 2.感震ブレーカー(一定以上の揺れを感知すると、電気が自動的に止まる機器)の設置
 3.家具類の転倒防止対策
 4.安全装置などを備えた火気器具の使用
をあげている。
また、早期覚知・初期消火の対策として
 1.住宅用火災警報器の設置
 2.住宅用消火器等を設置し、使用方法を確認しておく
としている。

今後心配されている大地震は、首都直下地震が30年以内に起きる確率が70%とされている。
これはM7クラス、阪神淡路大震災と同じタイプのものだ。
直下型の場合、揺れるのはせいぜい20秒(阪神淡路は長くて15秒)。
必ず済ませておかなくてはならないのは、家具や電化製品の固定である。
特に、寝室や居間など主に生活している場所は絶対に留めておく。
また、外出(職場)中に大地震が来たら、無理に帰宅しない事も大切。
首都直下地震の際、約450万人が帰宅困難者になると言われる。
無理に帰ろうとして、駅などで1平米に6人以上がひしめくと、
群衆雪崩の危険がある。
2022年10月29日の夜に韓国の首都・ソウル特別市の繁華街・梨泰院(イテウォン)でハロウィン時季の混雑の中で発生した際、159人が死亡している。
専門家によれば、群集雪崩に巻き込まれた人々が胸や腹を強く圧迫され、立ったまま意識を失い死亡した、あるいは長時間にわたり圧迫され、呼吸や血液の循環不全を起こす人がいた可能性が指摘されている。
家族の安全を知ることが出来れば、無理に帰らなくとも良いはずである。
震災時には電話が通じにくくなることから、災害用伝言板171が用意されている。是非活用してほしい。
また、避難場所は各所にあるが、例えば、「防災公園」といわれる公園があるのをご存じだろうか。
単なる公園ではなく、食事の炊き出しやトイレ、生活用水など、"いざ"というときに大活躍する。
私が平日暮らす浜松町近くにある「南桜公園」には、「かまどスツール」や「仮設トイレ用スツールマンホール」などが準備されていた。
どのタイプの大地震が来るかは専門家にも分からない。
しかし、共通する備えは存在する。準備しておくのかしないのか、災害においては大きな差を生む。

ある専門家はこう唱えている。
「備えていたことしか、役には立たなかった。備えていただけでは、十分ではなかった」
私達は、想定外が起きることも事前に考えておかねばならないのである。
明日と言わず、今日から始めよう。

防災公園 かまどスツール
防災公園 かまどスツール

仮設トイレ用スツールマンホール
仮設トイレ用スツールマンホール

雨水を溜めた井戸もあります!
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ムクゲも見守る残暑の1日
ムクゲも見守る残暑の1日

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